万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

エイプリルフールを恐れる中国?

2020年04月01日 11時46分44秒 | 国際政治

 報道によりますと、新型コロナウイルスのパンデミックは一向に収まらず、アメリカやフランスの死亡者数も、イタリアやスペインに次いで、凡そ3300人とされる中国の死者数を超えたそうです。この勢いが続くとすれば、全世界における死亡者数はさらに増え続け、オーストラリアの研究チームが警告するように、最悪の場合には全世界で6800万人にも達する大惨事に至るかもしれません。‘現代のペスト’と言っても過言ではないのですが、新たな感染者数や死亡者数が報告されるにつれ、いよいよ怪しくなるのは中国政府が発表している公式の数字です。

 中国湖北省武漢で発生した新型コロナウイルスは、武漢市のみならず、首都北京や上海を含む中国全域の大都市が封鎖される異例の事態となりました。前代未聞とも言える強制封鎖は、裏を返せばこれほどの強硬な措置を採らなければならないほど、中国の感染状況が危機的であったことを示唆しています。中国政府を迂回して海外に漏れ伝わる様々な動画や文字情報からしても、武漢市を中心とした感染被害は甚大です。それでも、同ウイルスの感染者や死亡者が中国国内に凡そ限定されていた時期には、中国政府の発表する数字もそれらしく聞こえたのです。

 しかしながら、新型コロナウイルスの感染がパンデミック化し、諸外国でも感染者や死亡者が報告されるようになりますと、中国側の公表してきた情報とは食い違うケースが目立ち始めました。例えば、中国側の最初の説明では、同ウイルスにあって重篤化するのは主として高齢者、あるいは、持病を持った人であり、乳幼児や若年層は、たとえ感染したとしても無症状か軽症で済むとされていました。こうした中国情報をベースにした感染情報がWHO等を介して諸外国でも広く報じられ、若年層を中心に気の緩みを与えてきたのですが、欧米では10代で死亡する事例も相次ぎ、中国発の情報を鵜呑みにしてはならないとする空気が広がるようにもなったのです。もちろん、同ウイルスの遺伝子が変異した、あるいは、別種のウイルスである可能性もあるですが、それでも、中国発の情報は疑わしいのです。

 そして、その最たるものが、中国が公表した感染者数、並びに、死亡者数なのかもしれません。武漢上空の大気の測定から公表数を上回る火葬者数が推測されていましたし、ネット上には、中国の情報・通信大手3社が公表した昨年12月から3月中旬までのスマートフォン利用料金の未納者が1860万人にも達していることから、この数字こそ真の中国における死亡者数ではないか、とする指摘があります。もしかしますと、未納者である1860万人の中には、感染による入院治療のために利用料金支払いの手続きができなかった人の数も含まれているかもしれませんが(中国当局によるスマートフォンを利用した徹底した国民管理システムからすれば、利用料金は口座からの引き落としでは…)、この数字の方が、凡そ14億とされる中国の人口規模、非共産党員を主とする貧困層の存在、並びに、同国の医療体制からしますと、あり得ない数字ではないように思えてきます(仮に、中国政府が公表した公式の数字が正しいとすれば、新型コロナウイルスは中国人固有の遺伝子により中国人が特に感染し易いとする当初に流布された説とは逆に、同国人が最も罹り難い感染症ということにもなる…)。‘中国超え’という中国を基準とした比較は、同国政府発表の数字が嘘であれば意味がないのです。

 本日は4月1日、即ち、嘘を吐くことが唯一許されるエイプリルフールです。偽情報を発信し続けてきた中国では毎日がエイプリルフールですので、新型コロナウイルスが全世界に蔓延する今年は、全てがあべこべな中国にとりましては、嘘が‘バレ’てしまう恐怖に慄く日となるのかもしれません。


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