万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

厚労省の健康調査LINE利用問題

2020年04月02日 12時15分22秒 | 日本政治

 日本国内でも新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大が懸念される中、日本国の厚労省は、LINEを利用した大規模な調査を実施しました。SNSとしてはユーザー数が国内トップであるため、政府はLINEを採用したのでしょうが、この一件、政府と民間IT大手との間に横たわる様々な問題を浮き彫りにしています。

 第1の問題点は、非ユーザーの行政サービスからの排除です。日本国憲法は、法の前の平等を原則としていますし、公務員は特定の人々に対する奉仕者ではあってはならないと定めています。今般の厚労省の健康調査では、その対象が民間のメッセージアプリ運営会社であるLINEと利用契約を結んだ人々に限定されており、公平・平等の原則に反します。近年、国のみならず地方自治体レベルでもLINEを利用するケースが増加していますが、こうした動きが拡大するほどに、非ユーザーは行政サービスからはじき出されてしまうのです。災害情報や被災の通報など、それが命に関わる重大なサービスであれば、非ユーザーは政府によって見捨てられる、あるいは、見殺しにされてしまうかもしれません。

 第1の問題点と関連して第2に指摘し得るのは、民間IT大手が統治機能の末端を担うことによる政治的リスクです。企業の社会的責任の文脈からIT大手によるユーザー投稿の検閲が正当化されがちですが、これは反面、民間の一企業が統治権の一部を行使すると共に、ユーザーの個人情報を入手し得る立場にあることを意味します。特にLINEの場合には、親会社が韓国企業ですので、日本国政府が実施した健康調査であっても、収集されたデータが情報提供の義務により韓国政府の手に渡る可能性があります。韓国は反日政策を国是としている国ですので、日本国内で収集された個人情報が対日戦略に利用されないとも限らないのです。つまり、情報・通信大手が外資系である場合には、統治権が重複する、あるいは、外国政府からの介入経路となるリスクがあるのです。

 第3に考えるべきは、災害時等における政府の情報発信や国民相互通信の在り方です。情報・通信分野とは、公開性と機密性という正反対の要求を同時に含むと共に、公共性とプライバシーが複雑に交差する特別な領域です。不特定多数の人々がコミュニケーションの手段として自由に利用し得るプラットフォームはいわば社会インフラの一つですので、公共性を重んじるならば、サイバー上のオープンスペースの提供事業として公営とすべき分野とも言えます(道路や公園と同じ…)。この点からすれば、厚労省をはじめ政府や地方自治体は、LINEを介さずして災害時の情報提供や連絡にも使用でき、かつ、全ての公共機関が利用できる公共インフォメーション・アプリを開発し、国民にダウンロードしてもらう、あるいは、販売時にスマートフォンに搭載してもらう方が余程理にかなっています(ちないに、スマートフォンを保有していない人々は、この場合でも、情報提供からはじかれてしまう)。

 そして第4として挙げるべき問題があるとすれば、それは、政府と韓国系利益団体との癒着への疑念です。今般、日本国内でも新型コロナウイルスの感染者数が増加の一途を辿っており、予断を許さない状況が続いています。政府は、飲食店等を列挙して利用自粛を訴えていますが、ネット上では、パチンコ店が抜けているとの指摘があります。LINEに対する優遇措置は、あるいは、日本国の政治家による韓国系利益団体への利益誘導であるのかもしれません。

 以上に政府とLINEとの関係について述べてきましたが、これらは、IT大手が支配的な力を及ぼす現代という時代が抱えている諸問題を象徴しています。情報・通信分野にあって官民の境界線はどこに引くべきか、そして、公共性とプライバシーの保護という正反対の要請を如何にして両立されるのか、新型コロナウイルス禍は、様々な問題をも炙り出しているように思えるので

コメント (2)
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