万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカは‘民主党一党独裁体制’に移行する?

2021年01月14日 12時31分00秒 | アメリカ

1月6日に首都ワシントンD.C.で発生した国会議事堂占拠事件を機に、アメリカでは、ツイッターやフェイスブックといった大手SNSをはじめ、IT大手が一斉にトランプ大統領やその支持者を自らのプラットフォームから追放するという暴挙に出ることとなりました。今日、SNSは、公共インフラの役割を担っていますし、大手メディアも民主党系列に属していますので、この行為によって、トランプ大統領もその支持者の人々も、事実上、言論空間から締め出されることを意味します。こうした排除行為は、民間企業による私的検閲、あるいは、政治介入として国際的にも批判を浴びていますが、メディアや大手IT企業を含む民主党陣営は、幾つかの重要な点で国民の基本的な自由と権利を奪っているように思えます。

 

 先ずもって挙げられますのが、言わずもがな、言論の自由を含む表現の自由です。誰であれ、言論の自由は天賦の権利としてそれを有しています。しかしながら、歴史を振り返りますと、この自由は、為政者によってしばしば抑圧される、あるいは、奪われてきました。権力や権威を保持したい為政者にとりましては、言論の自由は、自らの悪政や失政、あるいは、悪行を国民から指摘される‘リスク’でしたので、体制維持や保身のためにはこの自由を認めたくなかったのです。今日にあっても、中国では、共産党一党独裁体制を保持するために徹底的な言論統制が敷かれ、国民は、自由に政治的発言することは許されていません。政府や政権批判は、一党独裁体制を脅かす‘政治的犯罪行為’なのです。

 

 国家の最高法規である憲法を以って言論の自由を厚く保障する理由は、それを国民から奪おうとする為政者を拘束するところにあるのですが、今般の民主党陣営の行動は、悪しき政治的言論弾圧、あるいは、政治的口封じの感があります。言論空間からの締め出しについては、‘暴動を扇動した’として肯定する意見も聞かれますが、トランプ大統領のツウィートに対する批判は、民主党側の主観的な解釈によるものです。為政者側の一方的な解釈によって冤罪を被せる手法は、ソ連邦にも見られた一党独裁体制における政治的粛清の常套手段でもありました。また、トランプ大統領こそが言論の自由を束縛する‘権力側’にあるとする指摘もありますが、資金力が政治力ともなり、‘第4の権力’とも称されているメディアが言論空間にあっても君臨してきた今日にあって、民主党陣営は、政府をも脅かす‘権力’です。そして、民間のメディアや大手ITとも結託して一大政治勢力を形成している民主党陣営は、政経が一体化し、民間企業をも共産党の傘下に置く中国の現体制と類似しているのです。

 

 また、国民の基本的権利に目を向けますと、民主党陣営は、国民の知る権利を奪おうとしています。国民には、政治判断に必要となる情報として、公職にある大統領の発言を聞く権利が当然にあるはずです。SNSは、トランプ大統領のみならず、政治家の情報発信ツールとしても機能してきましたので、その主観的、かつ、恣意的な判断に基づく一方的、かつ、即時的な遮断は、トランプ派の言論の自由を奪うと同時に、国民の知る権利をも奪う行為ともなるのです。

 

 以上に述べてきましたように、今般の一件を観察しますと、民主党派の排除行為にこそ、民主主義を破壊し、アメリカ国民を全体主義へと導く危険性が潜んでいるように思えます。民主党は、トランプ派に対して民主主義の破壊者として糾弾していますが、基本的な自由や権利の観点から見ますと、前者の方が‘破壊的’と言わざるを得ないのです。言論の自由は、国民が政治的な自由と権利を行使する上での前提条件ともなりますので、自由の抑圧は民主主義をも棄損します。

 

今後とも、この排他的な行動が強化されてゆくとしますと、‘言葉狩り’が強まると共に(不正選挙は禁句に…)、‘刀狩り(銃規制の徹底…)’も進むでしょうし、IT大手も、中国と同様に国民監視の手段となりましょう。‘万年野党’となる共和党も民主党に賛同する党員のみがその存在が許され(事実上の‘一党化’)、アメリカは、いつの間にか、中国の共産党一党独裁ならぬ、‘民主党一党独裁国家’へと変貌しかねないのです。真の危機とは何なのか、そして、それは何処にあるのか、アメリカ国民も、そして日本国民を含む全世界の人々が、真剣に見極めなければならない時期に至っているのではないかと思うのです。


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