万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

河野デジタル相の‘お仕事’とは?

2023年07月27日 09時04分50秒 | 国際政治
 河野デジタル相と言えば、無神経で傲慢な発言が国民の神経を逆なでしてしまい、しばしば炎上を起こすことで知られています。今般も、国会にてデジタル相の職にありながら、マイナンバーカードのシステムに重大なエラーが発生したにも拘わらず、7月中旬に計10日以上に亘って外遊する姿勢が厳しく追及されることとなりました。7月12日から16日の5日間はフィンランド、スウェーデン、エストニアを、17日から22日までの6日間は、ヨルダン、パレスチナ、イスラエルを訪れています。

 度重なる外遊は、マイナンバーを所管するデジタル庁のトップとして無責任と言うことになるのですが、同大臣は、同機関はトラブルの実態調査を実施していた機関であり、回答を待っている待機期間中に「デジタル庁におけるほかの必要な仕事をするのは当たり前」と述べたと報じられています。‘外遊はデジタル庁のお仕事’という認識なのですが、この弁明、本当なのでしょうか。

 前半の外遊先であるエストニアは、‘電子国家’と称されるほどにデジタル化が進んでいる国です。もっとも、エストニアがデジタル化を急いだ理由は、ソ連邦に併合された過去の苦い経験に基づくものです。たとえ実態としての国家を失ったとしても、‘電子国家’としてサバイバルできる体制を今から準備しているという側面があります。日本国とエストニアが置かれている状況は異なるのですから、日本国のデジタル相が敢えて同国を自ら訪問する必要性はそれ程には高くないように思えます。それとも、将来にあって起きうる中国による日本占領に備えようとしているのでしょうか。

 エストニアについてはデジタル化との関連性がないわけではないものの、フィンランドやスウェーデンについては、敢えてこの時期に訪問する必要性も必然性も見当たりません。中東参加国の訪問も、デジタル先進国とも言えるイスラエルについては参考となる面もあるのでしょうが、ヨルダンやパレスチナを訪問先に選んだ理由も今ひとつはっきりしません。言い換えますと、河野デジタル相が弁明したように、欧州諸国や中東諸国への訪問が‘デジタル相としてのお仕事’であったのかどうか、至って疑わしいのです。

 それでは、何故、河野デジタル相は、かくも積極的に海外に赴こうとするのでしょうか。その真の目的を推測してみますと、やはり、世界権力のお仕事であったようにも思えます。河野デジタル相は、クリントン政権時代に国務長官を務めたオルブライ女史の愛弟子ともされ、リベラル系の人脈に属しています。オルブライト女史は、カトリック教徒ではあるものの、その出自はユダヤ系とされます。また、安倍政権にあって外相を務めた頃から、‘日本のエネルギー資源の供給地’として、中東和平に対する関心を強め、頻繁の同地域を訪問しております。ここにも世界権力と繋がるエネルギー利権の影が見えるのですが、今般の中東諸国の訪問も、実のところはデジタル相のお仕事ではなく、同相の個人的な活動、否、世界権力のミッションを受けていたとも推測されるのです。

 国民からの厳しい視線を受けてさすがに8月の訪米は見送ったものの、河野デジタル相が世界権力の僕であるならば、同相が、国民を無視する理由も頷けます。そして、これまで賞賛されてきた‘突破力’も、実のところは、世界権力に対する揺るぎない忠誠心の現れであったのかもしれません。そして、同相の言行は、グローバル化の時代であるからこそ、政治家と国境を越えた巨大な利権組織との繋がりに注意を払うべきことを教えているようにも思えるのです。
 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする