万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

‘国籍条項’なき日本国の農地法の問題

2025年03月11日 09時29分44秒 | 日本政治
 日本国政府は、今になって慌てたかのように、短期滞在資格の外国人に対して、農地取得を禁じる措置をとりました。同対策からしますと、外国人の農地取得については、既に外国人に対する農地取得の法的規制があり、それを今般、食料安全保障の観点から厳格化した、とする印象を受けます。国民の多くも、外国人に対しては、当然に取得制限や規制があると思い込んでいるかもしれません。しかしながら、米価高騰への疑念から少しばかり調べてみましたところ、その実態に驚かされることとなったのです。日本国の場合、実のところ、外国人に対する農地取得制限は、なきに等しかったのですから。

 3月7日付けの日経新聞朝刊で説明されている(1)年150日間の取得農地耕作も、(2)法人に対する農業関係者の議決権50%保有も、外国人に限ったことではありません。農地取得を希望する者が、市町村の農業委員会に申請して許可を得る手続きも、外国人限定ではないのです。継続的耕作や法人に対する株式保有の基本的な要件は、1952年に制定された農地法において定められています。そして、同法には、‘外国人’や‘外国籍’という言葉は何処にも見当たらないのです。つまり、農地法には、所謂‘国籍条項’というものがないのです。

 このことは、国籍による内外の区別なく、申請さえすれば、外国人でも農地を取得できることを意味します。実際に、ネット上には、外国人による農地取得をサポートすると謳った行政書士等の宣伝サイトもあり、農地取得の成功例なども紹介されています。こうしたサイトからも、現状にあって、相当数の外国人が既に農地を取得しているものと推測されるのです。農村では、高齢化や後継者不足、さらには採算性の低下による経営難による耕作放棄地が増加傾向にありますので、外国人による農地取得も加速していることでしょう。

 日本国政府が、ようやく外国人の農地取得に伴う問題性に気が付いたのは近年のことであり、昨日の記事でも述べたように、農地法の施行に当たってその詳細を定めている農地法規則が、2023年9月に改正された時のことです。同規則の改正により、農地取得の申請に際して国籍を記載することが義務付けられたのですが、農地取得そのものを制限するものではありません。農業委員会の判断と言うことになるのでしょうが、同委員会が、国籍を理由として不許可とするのかどうかは、怪しい限りです。必ずしも同委員会のメンバーが食料安全保障に関する意識が高いとは思えませんし、取得希望農地と同一の村落出身でもあるとも限りませんし、今日では、メンバー自身が外国人である可能性も否定はできないのですから(農業委員会のメンバーの選任にも、国籍条項はないのでは・・・)。

 グローバル化の時代には、容易に国境を越えて人もマネーも移動しますし、‘規模’がものを言います。このまま現状が続けば、やがて、日本国の農地の大半が、マネー・パワーや人口に優る外国人や外国法人によって所有あるいは経営される事態に至ることでしょう。パレスチナ紛争における入植地問題も、ユダヤ人がこぞってパレスチナ人から土地を買い取ったことに起因しています。国土でもある農地が外国人や外国法人に押さえられてしまいますと、国家としての独立性も危うくなるのは言うまでもありません(植民地化の危機・・・)。平時にあっては、食料の‘外国依存’が高まり、実質的な‘食糧自給率’はさらに低下することでしょうし、有事に際しても、農地を保有する人が‘敵国人’であれば、食糧の供給不足による飢餓が発生し、‘戦わずして敗北を見る’事態も予測されます(平時でも、反日教育を実施してきた諸国の外国人による農産物の生産・供給には不安を覚えるかもしれない・・・)。先日も、イスラエルが、ガザ地区に対するエネルギー供給を停止するとの情報が報じられたばかりです。

 このように考えますと、日本国の農地法は、早急に改正する必要がありましょう。そもそも、国民の知らぬ間に、かつ、国民の合意もなく、外国人の農地の所有を許している現行の法律が異常なのです。全世界の穀物市場の掌握を狙うグローバリストの世界戦略が牙を剥いている今日、食料の確保は生存条件でもありますので、日本国政府も国民も、外国人による農地保有問題への対応を、先ずもって急ぐべきではないかと思うのです。

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