去る1月25日、大統領に就任したばかりのドナルド・トランプ大統領は、ヨルダンのアブドラ国王との電話会談で、パレスチナのガザ地区の住民の受入を拡大するよう要請したと報じられています。翌26日には、エジプトのシーシー大統領に対しても同様の申し入れを行なったようです。アメリカでは、不法移民の強制退去が始まっているために、周辺諸国に対するガザ住民の受け入れ要求については、ダブル・スタンダードとしての批判があります。そして、昨日2月3日に、石破茂首相も、日本国におけるガザ住民の受入を検討すると発言したと報じられたことから、日本国内では反対の声が広がっています。
仮に、アメリカの不法移民の強制退去が、出身国への強制送還であれば、ダブル・スタンダードの批判は免れたことでしょう。不法移民の強制送還は、何れの国でも実施されている合法的な措置です。一方のガザ地区住民の受入要請も、戦争と無縁であれば、アメリカによる中東地域への横柄な介入と見なされたことでしょう。ところが、戦時にあり、しかも、移住を強いられる人々がその国の古来の定住者である場合には、全く様相が違ってきます。明らかに国際法違反となるからです。イスラエルのガザ地区に対する民間人にも容赦のない無差別攻撃は、ジェノサイド、戦争犯罪、人道上の罪、そして、侵略にも該当する程に凄まじいものです。トランプ大統領の発言がイスラエルによる軍事作戦の一環としてのガザ住民追放政策に対する協力であることは明らかですので、アメリカは、国際犯罪の‘共犯国’になりかねないのです。
国際法違反の観点からしますと、日本国政府がガザ住民を受け入れるとすれば、日本国も‘共犯国’の一国に名を連ねることになります。しかも、多くの人々が指摘しているように、ガザ住民が日本国内の居住者となるとすれば、受入側の日本国民の財政並びに社会的な負担も計り知れません。受け入れ国が出身国でもないという点では、明らかなるダブル・スタンダードにもなります。重税に苦しむ日本国民の反発を買うのは当然であり、むしろ、国民の否定的な反応を全く予測も考慮もしない日本国政府の態度には空恐ろしくなるのです。
時系列的にみますと、日本国政府、否、石破首相が唐突にガザ住民の受入を検討しはじめたのは、トランプ大統領からの要請があったからなのでしょう。到底、同首相自らの発案であったとは考えられないからです。岩屋外相による中国人ビザ緩和に際しても、自民党内でさえ寝耳に水であったことが判明していますが、今般のガザ住民受け入れについても、トップ・ダウン形式での首相本人への直々の要請、あるいは、在日米大使館等を介して連絡があったのかも知れません。受入検討の表明の場は衆議院予算委員会なそうですので、自民党の党内でもメディアの報道で初めて同案を知って驚いたという議員も少なくないことでしょう。
アメリカ政府からの要請を日本国政府が二つ返事で引き受けるケースは今回が初めてではないのですが、国際法違反行為への加担を要求され、日本国民の民意が完全に無視されるともなりますと、既に一線を越えてしまっている観があります。日米同盟の絆をもって許容されてきた対米協力も、あたかも属国のような扱いを受け、かつ、日本国民に負担のみが押しつけるようでは、忍耐も限界に達してしまうことでしょう。かくして、日本国の国益重視や伝統の尊重を掲げ、保守党を名乗ってきた自民党は、自国を属国化したことにおいて日本国民に対する背信者となると共に、‘傀儡’にして‘偽旗政党’という自らの正体を明かしてしまったことにもなります。
もっとも、石破首相をはじめとした日本国の政治家の大半が、アメリカの‘傀儡’であると判断するのは早計かも知れません。何故ならば、トランプ大統領は、イスラエル、すなわち、ユダヤ人のためにアメリカの大統領権限を行使しているからです。つまり、トランプ大統領自身もまた‘傀儡’なのであり、全世界に張り巡らされている指揮命令系統のトップに座しているのは、世界権力とも称されるユダヤ系グローバリストである可能性が高いのです。おそらく、世界権力の得意技は二頭作戦ですので、アメリカの基本的なユダヤ・ファーストの外交政策は、民主党政権時代と大差はないでしょう。否、過激化しているようさえ見えます。今や、日本国民も、‘陰謀論’という世論誘導策に惑わされることなく、自国の政治家の傀儡化、並びに、自国の属国化の危機を現実として受け止め、この問題に正面から向き合うべきではないかと思うのです。