万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

自民党の‘保守’は大日本帝国系?

2022年07月29日 12時16分25秒 | 国際政治
 保守主義と申しますと、自国が歩んできた歴史や今日に息づく伝統を大事にし、後世に末永く伝えてゆくことを良しとする考え方、というイメージがあります。国民一般が抱いてきた保守政党としての自民党のイメージも、対外政策に関しては親米という基本路線はあるものの、同党から当選を確実にした候補者が常々神棚を背に万歳しているシーンが報じられるように、日本古来の伝統の擁護者というものです。よもや、朝鮮半島系の新興宗教と密接な繋がりがあるとは思いもよらなかったことでしょう。

元統一教会は、同教団の親米路線、否、CIAの協力機関としてのポジションから発しており、延いてはアメリカの諜報機関であるはずのCIAを掌握している超国家勢力による世界支配に問題に行き着いてしまうのですが、自民党が、親朝鮮・中国でありながら、‘保守’を自称する背景として、戦前のその領域を台湾や朝鮮半島にまで広げた大日本帝国の存在があるように思えます(帝国の勢力範囲という観点からは、満州国や日本軍の占領下にあった中国の一部地域まで・・・)。

北は大ブリテン島から南は北アフリカまで版図を広げた古代ローマ帝国は、その末期にあって、‘ローマ人はいなくなった’と言われています。異民族が居住する周辺諸国を次から次へと征服したために、征服者であるローマ人は多民族国家におけるマイノリティになると共に、混血により古来のローマ人の血筋が希釈化されてしまったからです。しかも、皇帝の位にも、北アフリカやガリアなどの出身者などの非ローマ系の軍人などが就任するようにもなりました。自国民の消滅は、征服という業を背負う帝国の運命であったとも言えるかもしれません。

一方、今日の国民国家体系にあっては、一民族一国家を一般原則として成立していますので、帝国という存在は例外的な国家形態です。もっとも、中国やロシアは帝国の形態を維持しており、帝国的思考回路が、ウクライナ問題や台湾問題のみならず、日本国の安全保障をも脅かしていると言えましょう(もっとも、背後で両国を操る影の存在や地政学的思考にも問題が・・・)。主権平等、民族自決、内政不干渉等を原則として成立している国民国家体系こそ、国家間にあって支配・被支配の関係を造らず、フラットで自由な国際社会を約束しているのです。このことは、勝者であれ、敗者であれ、特定の民族が消滅する、という悲劇を生まない国際体系なのです。

いささか脇道にそれてしまいましたが、明治維新以来、日本国も、異民族を包摂する帝国となった時期がありました。台湾の併合は日清戦争による割譲によりますが、朝鮮半島のケースは条約による併合であり、満州国は‘日清合作’という側面もあります。何れにしましても、日本国の勢力は、今日の領域を越えて広がっており、アジアの大国の地位を不動のものとしていたのです。一般的な認識からすれば‘栄光の時代’となるのでしょうが、帝国の時代は、戦後にあってこれが消滅した後も、過去の栄華を取り戻すという復古主義的な意味における‘保守’という立場を生み出したように思えます。

このような大日本帝国系の保守系の人々の世界観、あるいは、国家観では、日本国という国の枠組みは、戦後のサンフランシスコ講和条約で確定された今日の領域に留まりません。頭の中の地図では、台湾、朝鮮半島、満州国、そして中国の一部も含まれているのでしょう。そして、戦後にあっては、戦前に外地に渡った日本人の引き揚げ者を含めて、朝鮮半島や満州と縁のある人々が、日本国内にあって民主的選挙を経て政治家となるのです(この際、アメリカ、あるいは、超国家勢力からの支援を受けていたかもしれない・・・)。元統一教会との関係が確認されている岸信介氏が、満州国の国務院高官であったのは単なる偶然ではないのでしょう。

満州国や中国大陸の事業や開発に携わった経歴を持つ自民党の首相経験者としては、岸信介氏以外にも、吉田茂氏(奉天総領事)、田中角栄氏(満州国にて兵役)、福田赳夫氏(汪兆銘政権の財政顧問)、大平正芳氏(興亜院勤務)、伊東正義氏(興亜院勤務)、中曽根康弘(主計科士官として台湾勤務)、並びに宇野宗佑氏(シベリア拘留)がおります。先代や先々代等を加えれば、森喜朗氏、小泉純一郎氏、菅義偉氏、岸田文雄現首相なども外地との関係が見られるのですが、しばしば首相候補として名が上がる山崎拓氏なども満州生まれです。こうした自民党政治家の経歴が、大日本帝国系の保守色を強める一因となったと推測されるのです。

もっとも、大日本帝国系の保守と国民一般がイメージしている伝統保守とは、時にして正反対の方向性を示します。前者が元統一教会や創価学会と言った朝鮮半島由来、あるいは、中国との関わりの深い新興宗教団体との間に強い親和性を有し、自国や自国民が消滅しかねない‘帝国化’を容認する一方で(移民やグローバル化も歓迎・・・)、後者にとりましては、これらの外来の団体は自国の独立性や独自の文化を壊しかねない危険な存在であるからです。否、後者にとりましては、自民党の保守は‘偽旗作戦’にしか見えず、とりわけ故安倍元首相は伝統保守を装っていただけに、多くの国民は、なおさらに騙されたように感じるのでしょう。

おそらく、米中両国を背後から操っている超国家勢力は、戦後、外地運営の経験者が多く(同ノウハウを戦後の日本支配に利用?)、大日本帝国系の保守色が強い自民党に、内側からの開国政策(グローバル化)を期待して支援すると共に、そのお目付役並びに動員手段の提供の意味を込めて元統一教会と創価学会というおよそ二つの新興宗教団体を‘貼り付け’たのかもしれません。そしてそれは、伝統保守を政治から排除するに等しく、かくして、伝統保守が大多数を占める一般の日本国民は、今日、支持政党を失ってしまうと言う危機的事態に陥っているのではないでしょうか(続く)。

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