万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ローマ法王は罪深いのでは?‐コロナ禍天罰説

2020年04月11日 12時03分16秒 | 国際政治

 新型コロナウイルスが全人類を恐怖に陥れる中、フランシスコ法王は、今般の疫病の蔓延を‘環境危機に対する自然の反応’と述べて人類を戒めたそうです。小鳥と会話し、物心両面の豊かさを否定した聖フランシスコに因んで自らの法王名を命名し、かつ、かのイエズス会の出身であるだけに、フランシスコ法王にとりましては、環境破壊を引き起こしてきた大量消費社会、そして、飽くなき営利主義は改めるべき悪行なのでしょう。同法話では、コロナ禍と並んで世界各地で発生している異常気象の事例も列挙しています。

 キリスト教では全知全能の神は宇宙創造の主でもありますので、‘大自然の反応’とは、とりもなおさず神から罪深き人類に下された罰、即ち、天罰ということになりましょう。『新約聖書』の最後の巻となる「黙示録」にも疫病の蔓延が登場しています。しかしながら、法王の説に素直に従い、コロナ禍は人類を懲らしめるための天罰と捉えてよいものなのでしょうか。ローマ法王によるコロナ禍天罰説には、幾つかの問題が潜んでいるように思えます。

 第一に、新型コロナウイルスのパンデミック化は、明らかに人災です。そもそも、同ウイルスは、自然界におけるウイルスの突然変異によって発生したのではなく、研究室にあって人為的に作成された人工ウイルスであるとする否定し難い有力な説があります。中でも武漢に設けられていたウイルス研究所からの漏洩説が最も信憑性が高いのですが、意図的に散布された可能性も100%は排除し切れません。況してや全世界の諸国に感染を広げたパンデミック化の責任ともなりますと、対処可能な初期段階で有効な封鎖措置を採らず、かつ、情報を隠蔽した中国は、逃れようもない罪を負っています。中国と癒着して事実とは異なる情報を全世界に向けて発信し続け、かつ、早期の封鎖措置奨励を怠ったWHOも、それがたとえ善意、あるいは、騙された結果であったとしても、罪深いと言わざるを得ません(過失致死罪?)。コロナ禍の人為性からしますと、中国と懇意なだけにフランシスコ教皇の天罰説は、責任の所在を曖昧とし、中国を庇っているかのように聞こえてくるのです(昨日の新聞報道によりますと、中国政府はヴァチカンに医療用品を寄贈している)。‘中国に罪はない、この災いは、天におわします神からの罰である’として…。

 第二に、仮に人類に対する神の罰であるならば、何故、罪なき人々が罰せられるのでしょうか。世俗の因果応報や善悪の彼岸を超えた絶対者である神、あるいは、宗教者の立場からしますと、災害も人類全体に対する警告の一つとして是認されるのかもしれません(被災者は罪深き人類の代表…)。しかしながら、実際には、多くの無辜の人々が同ウイルスで命を落とし、かつ、今なお病床にある感染者も多く、そして、健康な人々も感染の恐怖に直面しています。こうした現実を見ますと、天罰説は無慈悲、かつ、不条理にも響いていきます。真に天罰が当たるべきは中国政府なのですから…。

 第三に挙げるとすれば、フランシスコ法王が、神の意志を勝手に‘忖度’している点です。神の存在証明が不可能なように、人は誰も神の意志を知ることはできません。否、神の意志を伝えるとされる預言者の言葉であっても、それが真に神の意志であることを証明することは誰もできないのです。この厳然たる事実を前にしては、カトリック教団の長であり、伝統的な権威でもある法王であったとしても、その言葉は、そのまま神の言葉であるとは言えないはずです。因みに、16世紀のヨーロッパで起きた宗教改革は、教会による聖書の独占的解釈に対する抵抗から始まっています。人々は、解釈はおろか、直接に『聖書』を読むことさえ禁じられていたのです。

 もっとも、フランシスコ法王の言葉に含意されているように、新型コロナウイルス禍は、退廃的な生活に靡き、拝金主義に染まってしまった人類の来し方を反省し、より善き時代への扉を開く転機となるかもしれません。しかしながら、仮に、中国がコロナ禍を全世界に広げることで他国の経済と社会を根底から破壊し、自らがまき散らした災いを踏み台にして世界支配の野望を達成するとすれば、法王の言う天罰は、神が悪魔に人類支配を許すことを意味してしまいます。ここに、善なる神が、真の悪者を罰することなく善良な一般の人々を罰した挙句、当の悪者に支配権を与えるという恐るべき矛盾が起こってしまうのです(現に、中国政府は、世界各国における医療・医薬品の不足を悪用して、暴利をむさぼっているようです)。全人類は、自己の全ての言動から生体測定の詳細なデータに至るまで強欲で底意地の悪い支配者に差し出さねばならず、再教育という名の洗脳によって心までも壊されてしまう、‘人類家畜化’の未来像もあり得るのです(文明嫌いのフランシスコ派やイエズス会であれば、人類の野蛮への回帰を歓迎するかもしれない…)。

結局、コロナ後の世界が人類にとりまして善きものになるのか否かは、善悪の識別を含む人類の賢明な判断に委ねられているように思えます。今を生きる人々が、知性と良心を懸命に働かせ、コロナ禍を悪用しようとする勢力をも排しながら難局を乗り越えてこそ、善き時代が開かれると言えるのではないでしょうか。仮に神が存在するならば、この時、はじめて人類に祝福を与えるように思えるのです。

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6 コメント

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異教の民を罰する (北川)
2020-04-12 06:39:11
>>善なる神が、真の悪者を罰することなく善良な一般の人々を罰した挙句、当の悪者に支配権を与える

もともとキリスト教の神は(異教徒の)善良な一般の人を罰する(=殺す)ことがその本質にあるのだと思います。ノアの洪水しかり。エジプト人長子の皆殺ししかり。他にも沢山あります。それに基づいて十字軍が中近東や中南米の異教徒を殺しています。民をおぞましい異教の神の束縛から救い、正しい神に導くために!

一神教と一党独裁・個人崇拝は似ている面があるのではないでしょうか。
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北川さま (kuranishi masako)
2020-04-12 08:10:44
 『旧約聖書』におきましては、北川さまのおっしゃる通りではないかと思います。一神教の他の宗教に対する非寛容性、あるいは、排他性は、確かに一党独裁や個人崇拝とも似ております。そしてこの点に鑑みますと、『新約聖書』の「黙示録」において、最初にして最後に神がサタンを滅ぼし、神の裁きを下しているのは、極めて興味深いように思えるのです。
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仰る通りです。 (ベッラ)
2020-04-12 18:18:48
私もイタリアからの報道でローマ法王が神父たちの「患者のところに行きましょう」と言って実際にそれを実行した神父たちが何十人も感染して亡くなっている、中世のようなこのやり方、これを批判しても偏屈なクリスチャンの人は冒涜しているように思ったのでしょうか。説得は無理でした。信心って恐ろしい。今回の貴ブログの記事は正鵠を得ていて納得します。フェイスブックにもご紹介をさせていただきます。
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ベッラさま (kuranishi masako)
2020-04-12 18:49:04
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 報じられるところによりますと、司祭たちには患者のもとへ赴くように薦めながら、自らは、感染を避けるために誰とも接触しないそうです。先日も、聖堂にて一人でミサをあげておりました。信者の方々は、何故、疑問に思わないのか、不思議でなりません…。
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人工ウィルス説も (Unknown)
2020-04-13 05:33:09
 壮大な嘘となるだろう。新型ウィルスはチャイニーズのみ、あるいはモンゴロイドのみという説はコーカソイドの壮烈な感染で壮大な嘘となった。WILLとかHANADAなどは知らんぷりで、まだ人工ウィルス説に固執しているらしい
が、これも壮大な嘘と判明するだろう。そもそもアメリカのCDCが否定しているのに、ただチャイナをディスりたいから嘘に固執しているのだろう。
 そもそも三月半ばにアメリカの感染者数は数千人だった。今じゃ50万を超えている。感染爆発で指数関数で増えると言っても、こんなにはならないぞ。
 B型インフルエンザが大流行していたが、おそらく新型ウィルスの患者が紛れ込んでいたのだろう。それが検査で判明したのだろう。南カリフォルニア大学が無作為で選んだ住民1000人の抗体を調べるようだがインフルエンザだと思っていたものがコロナではないかと怪しんでいるのだろう?つまりだ9月からのインフルエンザの流行の正体はコロナであった可能性がある。武漢が始まりではない。日米の交流から日本にもインフルエンザだと言うコロナが流行しており、日本人の多くが抗体を持っている可能性がある。日本の感染者の異様な少なさから、そういう疑惑が生じる。
 ま、チャイナ憎しの思い込みで武漢発生だと思い込むべきではない。
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Unknownさま (kuranishi masako)
2020-04-13 11:36:06
 いただきましたコメントにつきましては、本日の記事にて私の見解を認めましたので、一読いただけましたならば、幸いでございます。
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