万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

反ユダヤ主義の原因はユダヤ人にある

2024年01月31日 10時08分15秒 | 国際政治
 第二次世界大戦最中の1945年1月27日は、ポーランドに設けられていたアウシュヴィッツ収容所は、ソ連軍によって解放された日です。この日は、特にユダヤ人にとりまして重要日となるのですが、国際ホロコースト記念日にも選ばれています。ところが、今年の1月27日は、ユダヤ人を取り巻く空気は例年とは大きく違っています。ホロコーストの犠牲者を悼み、ナチスドイツへの怒りが新たにされるはずが、今年は、イスラエルによるガザ地区に対する蛮行を背景に、ユダヤ人の側が批判の矢面に立たされているのです。

 この日、アントニオ・グテーレス国連事務総長も、動画メッセージを配信して反ユダヤ主義の高まりに警戒感を示しています。同メッセージにあって、「ネット上で反ユダヤ主義が周縁から主流のコンテンツになった」と述べているそうですので、ユダヤ系に牛耳られている主要メディアは別としても、一般のネット世論やSNSでは、圧倒的にユダヤ人に批判的な意見が多数を占めているのでしょう。反ユダヤ主義が再びユダヤ人迫害へと向かうことがないよう、非ユダヤ系の人々に対して自制を求める発言とも解されるのですが、同発言は、ユダヤ人に対する警告でもあるように思えます。

 ディアスポラ以来、流浪の民となったユダヤ人は、世界各地にあってマネーの力で影響力を伸ばしてきました。古来、利益率の高い遠隔貿易や高利貸しがその主たる生業であったのでしょう。キリスト教における宗教的な禁忌に加え、借金が返済できずに身を滅ぼす人も少なくなく、ユダヤ人が恨みを買ってしまったり、マネー・パワーによる政府腐敗や堕落、独占や乗っ取り等の問題によって怨嗟の的になったことも容易に理解されます。かくして、反ユダヤ主義は、古代より燻っていたのですが、戦前のドイツにおける反ユダヤ主義の激化には、戦争利権や戦争利得が関わったことも指摘されましょう。第一次世界大戦におけるドイツの敗北は、戦争のみならず戦後のハイパーインフレーション等により一般のドイツ人を没落させる一方で、ユダヤ人の金融家や実業家にさらなる富をもたらしたからです(また、マルクスがユダヤ人であったため、キール湾の水平の反乱は、ユダヤ人に責任を帰する主張もあった・・・)。つまり、ユダヤ人に対する反感には、それを引き起こした‘原因’があったと言えましょう。

 物事の是非を判断するに際して、‘原因’の存在、つまり、因果関係は極めて重要です。‘結果’ばかりを問題視し、その問題の解決には、‘結果’をなくせばよい、とする主張も見られます。しかしながら、たとえ‘結果’を消滅させたとしても、‘原因’の方が残っていれば、何度でも同じ問題が再発します。今般の反ユダヤ主義もその原因がユダヤ人自身の行動にあるならば、それを改めないことには、反ユダヤ主義が収まるはずもないのです。

 物事の因果関係を考慮しますと、今、ユダヤ人がすべきことは決まっています。第一にすべきは、原因の究明と因果関係の自覚であることは言うまでもありません。客観的な視点から自らの来し方を振り返ると共に、現状の行いを自で検証するという作業です。この作業を行なえば、非ユダヤ系の人々が、何故、ユダヤ人に対して怒りや反感を抱くのか、明確に理解できるはずです。怒りや嫌悪は、‘悪(利己的他害行為)’に対する人間の当然の心理的な反応ですので、自己の悪しき行為に原因がある場合、これを除去しなければないのです。

 同作業にあって、ユダヤ人は、今日の反ユダヤ主義を引き起こした原因となる行為が、イスラエルによるガザ地区のパレスチナ人に対する非人道的、かつ、国際法に違反する行為であることに思い至るはずです。既に南アフリカからの提訴を受けたICJがジェノサイドを防止する手段を講じるよう暫定命令を下していますが、イスラエルが、人類が普遍的に‘悪’と認識する残虐行為を止めないことには、ユダヤ人に対する批判が高まりこそすれ、決して沈静化することはないでしょう(ハマスを育成したのはイスラエル自身であり、かつ、たとえハマスの行為が違法であったとしても、イスラエルのジェノサイドを正当化しない・・・)。今日のユダヤ人の一般のパレスチナ人に対する仕打ちは、ホロコーストよりもなお一層残虐ですし、しかも、パレスチナ人は、‘約束の地’に住んでいるという理由だけで‘民族浄化’の対象にされているのですから。これは、人類共通の倫理道徳観に照らしてイスラエルに罪があり、ユダヤ人が真に信心深いならば神からの罰を恐れるレベルです。

 このように考えますと、反ユダヤ主義への対応は、ユダヤ人を批判する側に要求すべきことではなく、原因を作っているユダヤ人の側に求めるべきではないでしょうか。そして同様のことが、ユダヤ系の金融・産業財閥・マスメディアの人々が中心となって推進している‘グレート・リセット’という名の世界支配構想にも言えるのではないかと思うのです。

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