失敗した誘拐事件の記者会見の場で、殺害された被害者より
自分の娘の方が大事だと発言し大失態を犯した神奈川県警の刑事巻島
世間から非難をあび地位を追われて、虚無な毎日を送りながらも
その職を離れることができなかった巻島が
誘拐事件から6年後、連続男児殺害事件の指揮者となり
上司に使われる形でTV出演を通じて犯人逮捕をねらう
公開捜査をすることになる。
世間の興味と反感を浴びながらすすめられる犯人と巻島の逮捕劇。
ミステリものは自分で買って読むってことはあまりないんだけど
友達からいただいたのでさっそく読んでみたら
おもしろかった。
駅についてもページを閉じることができなくて
何度もホームで立ち読みしてしまった。
被害者を殺害され犯人をと取り逃がした誘拐事件から
あっと言う間の6年後の男児連続殺害事件に舞台が変わってしまい
あれ?誘拐事件はどうなっちゃうの?これは巻島が失脚するに至る
ただのさわり話なの?と思ったらそうでもなくて。
この誘拐事件の犯人<ワシ>が意外な形でかかわってくるあたりは
すごい盛り上がる。
刑事がTVに出て犯人に呼びかける捜査っていうのは
現実的ではない設定だけど、巻島を取り囲む警察の人間たちが
個性あってしらけさせない。
捜査情報をキャスターをしているかつての恋人にリークする植草課長は
腹立たしく、年配の津田の存在はほっとする。
津田が植草に言った
『痛そうじゃないから痛くないんだろうと思ったら大間違いだ・・・
それは単にその人が我慢してるだけですからな』という一言が印象深かった。
なるほど深い。
誘拐事件の被害者の父親に刺された巻島が、病室で6年前の事件を
涙ながらに詫びるところはちょっともらい泣きしそうになってしまった。
10月にトヨエツが主演で映画化されてたらしく
読みながら脳内イメージの巻島はすっかりトヨエツ。
上下巻にもおよぶこの話を2時間そこそこの映画にするっていうのには
無理があるのであんまり期待はできないけど、
トヨエツがあの声で“今夜は震えて眠れ”って言うのは
聞いてみたい。