原キョウコ ダンスセラピーラボ

ダンスセラピーという手法を通して心身の解放をサポートし、心と身体と魂をつなぐことを目標に、研究を重ねている場です。

水と緑に生かされてきた

2011-05-05 | ダンスセラピークラス/スケジュール
大阪WSを終えた翌日、大正まろんさんに誘われて
天川村を訪ねた。

近鉄の下市口駅からバスで1時間ほど。
奈良の、山の奥にある。

まずは「天の川温泉」に行く。
午前中でまだ誰もお客さんがいなかった。
お湯は熱すぎずぬるすぎず、
露天で長湯をするにはもってこいの温度だった。

外の緑と、細かい雨を眺めつつ入っていると、
あとから入って来た方があり、
話が弾んだ。

本当に久しぶりの長風呂で、
身も心もすっかり緩んだ。

温泉での禊をすませて
天河弁財天へ。

社殿の造りにびっくりした。
社殿は階段状になっていて、
社殿と向かい合わせの能舞台の間は玉砂利の通楼になっていて、
風が吹き抜けてゆく。

ここの開祖は役行者であり、
修験道の山であることを初めて知った。

わたしがよく訪れる箱根神社も
修験道系であるが、
まったく「気」の質が違うのだ。
とても優しい、包み込むようなエネルギーを感じた。

お風呂で教えてもらった「禊殿」に行くべく、
川の上流に沿って歩いて行った。
ある地点に来た途端、
背骨に何かが通るようにゾクゾクとしたのにびっくりして、足が止まった。
すぐ左手に、禊殿があった。
ゾクゾクする感じは、敷地に足を踏み入れてからも何度も起こった。

脇の岩の上に横になって空を眺めた。
「自然は神だなあ」と思った。
雨が降ったり、時折晴れたりの空。
雲が動いて行く。
それをそのままに見つめているだけで、
もう何もいらなかった。

先客のカップルがおり、
長い時間座って「気」を充填しているようだった。

名残惜しい気持もあったが
さまざまな場所を感じてみたかったので、
またそぞろ歩くことにした。

川沿いを下ってゆく。
川の向こう側は、延々と山である。
新緑と常緑のところどころに、桜が咲いている。
その景色が、今も網膜に焼付いている。

水は、場所ごとにその色を変える。
橋の上から見ても底まではっきりと見渡せる澄んだ水だ。

神社の入り口で汲んだ水で口を潤しながら歩く。
とても甘い。
いい水は、とても甘い。

つうっ、と全身の細胞に流れて染み渡って行くような
何も引っかかりもない、純度の高い水。

思えば、水と緑には今までも、何度も助けられて来た。

PTSDの方が多く見えるクリニックで仕事をしていた時、
休みになると無意識的に水と緑を求めてたびたび遠出をした。
PTSDの方に接しているスタッフは、気づかないうちに「二次受傷」を受けることがある。

当時は、反動的に人のいないところに行きたいという気持があったからと思っていたが、
水と緑はそれ以上に自分の傷を癒す効果があったからなんだ、とあとから気づいた。


311以来、震災と原発のことを考えない日は一日たりともなかったが、
この日、この美しい景色以外は何も目に入らず、
信頼できる友人とともに歩き、心地よい沈黙を共有し、時々話し、
ほうぼうに咲く花を眺め、川のせせらぎを聞く。
それがすべてだった。

細胞が洗われ、
身体の中に、空間ができた。

食べ物としての水と緑は
もちろんのことだが、
この美しい水と緑が
わたしも含め、多くの人間をさまざまな意味で育んでくれている。

こんなに豊かな恵みを与えてくれる自然を、
たかだか70年ほどしか生きない人間が、
己れの利益のために穢していいわけがない。
どんな理由があろうとも、
放射性物質という「負の遺産」を、
長期にわたって残す権利なんかない、と思う。


チベット仏教の巡礼の「五体投地」は、
大地への感謝をそのままに表現しているものといつも感じる。

この自然や、地球への畏敬の念と感謝を持つこと。

自然は、神だ。
祈りと感謝を捧げたくなる。
自ずから、深々と、頭を垂れたくなるのだ。


そしてひとりでも多くの人が、
感謝の気持を思い起こしてくれることを信じよう。
思いも「波動」なのだ。
「波動」は、見えないものだけれど
社会の空気に大きく影響するものなのだ。



天川村の入り口付近にあった「道の駅」のような店で、
檜の精油とまな板を買った。
本当に素晴らしい香りで、
この香りを嗅ぐたびに、
あの日の空気を思い出す。

あの日があって、
わたしの中で何かがリセットされた感じがしている。

まろんさんのさりげない心遣いに深く感謝です。

人の気持の美しさのことを、愛情と言うんだなあ。



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付記

まろんさんもこの日のことをブログにあげています。





コメント (2)
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