先日、奈良市の写真美術館に行きました。特別な日のため無料だったので、せっかくだからと、入江泰吉さんの写真と、瀬戸正人さんという写真家の作品を見せてもらいました。
入江泰吉さんの作品は、とても大きな作品で、圧倒的な重量感がありました。奈良のあれこれは、それなりに作品としてまとまるというのか、画面から歴史みたいなものがにじみ出てきますけど、私はカラー作品よりも、小さな作品でいいからモノクロの写真を見せてもらえたら、うれしかっただろうなと思って見ていました。
モノクロ作品は、今の若い人たちにはつまらないかもしれないけど、私みたいなオッチャンが見せてもらうと、すぐに引き込まれてしまいますよ。ただの郷愁なんだろうか。もの珍しさなんだろうか。
私も、若い時なら、モノクロ写真なんて、なんだ色がないなんて、つまらないとか思ってましたっけ。それがオッチャンになって、やたらモノクロだし、えらそうに光と影を標榜していますよ。口だけなんだけど、理想のイメージがあるらしいのです。
ただのモノクロだなあ。
去年初めて大和文華館に行ったんでしたね。
あまり光と影とは言えないなあ。東大寺の戒壇院を抜けて、クルマの通りに出る直前の風景です。
瀬戸正人さんって、どんな人でしたっけ? いや、どんな作品?
あちらこちら旅して歩いているのかもしれません。作品展では、台湾のビンロウ売りの女の人たちを取り上げたものが四つくらい並んでいました。
みんなカプセルなのか、水槽なのか(まさかね、まるで水槽に見えるような空間にポツンとたたずんでいるのです)、ガラス張りの室内で、ポツンと女の人が立っている。
女の人たちは、わりと軽装で、水着みたいな感じなのです。
海の家ではないし、マネキンでもないし、ショウウインドウみたいなところに、所在なげに座っていたり、何か疲れたような顔をしていました。
これが検索した瀬戸正人さんの作品ですけど、この女の人のまわりの家具、テーブル、壁など、安っぽく狭い空間にしばられている女の人がひとり。
どうして女の人はひとりなのか。彼女は何をしている人なのか、さっぱりわからない。そして、どうしてこうした刺激的な服装なのか? 家に帰ってから調べてみました。
ここで「ビンラン」と題名を付けられていた女性たちは、かみタバコのビンロウというのを売る人たち、売り子さんだったのだと家に帰って知りました。そして、彼女たちが刺激的な服装であるのは、お客たちを引き寄せるためだったそうです。
台湾に行けば、刺激的な服装の女の人たちが、けだるく座っている。物見高いスケベな人たちが押し寄せているようで、日本においても彼女たちの姿を追いかけた写真がいくつもあるというのを知りました。
そして、女の人の姿を撮るのではなくて、彼女たちのお店とそこにいる女一人をそれぞれに切り取っている瀬戸正人さんの在り方が、他の写真と比べると珍しいものなのだと知ることができました。
とはいうものの、彼女たちの生活まで、見た時には知ることができませんでした。今改めて見せてもらえたら、何か発見があったかな。いや、たぶん、ないだろうな。
それくらいボンヤリと奈良の美術館を歩いていましたね。着いたのが遅かったから、イマイチ頭も動いてなかったんですね。ザンネン!
でも、まあ、私の狭い世界も、ほんの少し広がったかな。