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夏の松本、そんなに暑くありませんでした。古本屋さんにはチラッと行けただけでした。松本城はお堀のそばから眺めただけです。
何年振りかで松本に来たというのに、また行くからと言い訳して、民芸にこだわってあるいたんでした。
だから、民芸のお店のちきりやさんに行きました。そこで便せんを1つだけ買いました。他にも欲しいものはありましたが、貧乏なので便せん1つだけでした。
お店のおばあさんが雰囲気のある方で、民芸に詳しそうな方でした。そのあとに人に聞いてまわって、やっとこ松本民芸館を訪ねることができて、ここを作った丸山太郎という方につながるおばあさんだとあとで気づいて、もっと前からあれこれ聞けたらよかったのにと思ったけれど、もう後の祭りでした。
これから何度も松本を訪ねなきゃいけないと思ったきっかけの1つがちきりやさんで、さらに強化したのは民芸館で、わからなくさせたのは松本市美術館の草間彌生さんのパワーでしたっけ……。
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とにかく、カーナビのない私たちは、人に聞きまくって、ようやくたどりつきました。もうたどり着けなかったら、もう諦めるという覚悟でしたが、何回目かのぐるぐる回りでやっと着きます。
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しーんと静まっていて、先客は車が一台。私たちは、おっかなびっくり建物の方へ歩いていきました。
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エントランスを歩いて、建物にたどり着きます。わりとこじんまりとして、少し大きな旅館に入った感じ。展示物は、丸山太郎さんという松本の民芸を追求した方のコレクションが展示されていた。
そうでした。以前姫路で訪れたおもちゃ博物館みたいな、熱意があって、私たちはそれを簡単には受け止められないのだけれど、とにかくその一つ一つに思いがこもっているのを知るのでした。
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だるまさんも、しっかりした家具の上にのせられている。もうすべてが私の生活とは違う次元にあって、とりあえずこれらを目標にして、私は私の生活スタイルを考えていかなくてはならないのだと思わざるを得ないのでした。
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丸山太郎さんの絵も、とても印象的でした。こんな何気ない風に描かれているけれど、その絵の中に、私たちがいつまでもずっとくみとることができる泉があるような気がしました。
写真を撮っている場合じゃなくて、もっと絵を見つめなきゃいけないのに、私は写真を撮ったらそれで終わりになってしまったんだろうな。
そして、何もかも忘れて、家の中はドッチラケになったまま、ちっとも片付かないで、ぼんやりしている。
ああ、そんな夏がありました。奥さんは「また、松本に行こう」と彼女にしては意欲的です。何か彼女を刺激するものがあったんですね。
台風も来なくて、もう少しいい天気で、時間的にも余裕があれば、楽しかったろうけれど、どこに行っても、私はデバガメで、落ち着きなくうろつくばかりです。
いつになったら、大人の旅ができるんだろう。ふたたびチャレンジする価値はありそうです。人があまり行かないときにゆっくり行きたいです。