この前、うちの奥さんと近所のサクラを見に行きました。なるべく山の方へ行こうと、いつもの山里の公園に行きました。
彼女はいろいろと調べて、サクラよりも、ここのメタセコイアが私たちとほぼ同年代であるというのを教えてくれました。
メタセコイアは、アケボノスギという名前だったでしょうか。*昭和天皇と南方熊楠さんとをつなぐ木でもあったわけで、高校の中庭にも大きなのが生えていました。短い間にグングン伸びるから、世の中には何百年という木もあると思われますが、メタセコイアは割と人間目線で大きくなってくれている感じがします。成長が早くてワクワクします。
何百年は無理だけど、数十年なら、植えた年とか、伐採されたときとか、自分たちの年月に重ね合わせてみることができます。
この公園には、二十メートルくらいのメタセコイアと、それより少し低いイチョウの木が並んで立っています。
仲良く並んで、葉がついてるときはまるで雰囲気は違うんだけど、今はまだ春のサクラの時期だから、サクラが散ったら、みんな勢い込んで葉を茂らせるんでしょう。その直前のにぎやかしとしてサクラたちはあるのかもしれません。
そういえば、丸裸でツルンツルンしてた柿の木の先端に花かと思えるような鮮やかな葉になりそうなものが出てたのも、ついこの間でした。
もうすぐ葉っぱの季節がやって来るんですね。もうみんなが競うように葉っぱをつけます。その競争に支えられて、私たち人間の生活も落ち着きを見せ、スギとヒノキの花粉も落ち着くし、穏やかな毎日を過ごせるようになるのでしょう。それまでの辛抱なのかな。
メタセコイアとイチョウの木の奥に、もう一本違う木がありました。何度もこちらに行かせてもらってますが、こんな木があったなんて、まるで知りませんでした。何の木なんだろう。
メタセコイアも、イチョウも、わりと淡白に空に向かっていますが、こちらはわりともがきながら空をつかもうとしていた。
もう少し季節が進んだら、どんな葉っぱが付いているのか、見に行きたいと思います。木を見ただけで何の木と言えるオトナになりたいけど、それはあまり勉強してきていませんでした。また、今度です。
最後に、全然違うところに生えているハナノキ、こちらは八十歳くらいで、ついこの間まで赤い花をつけていました。
樹木の花、私はこちらには心惹かれます。草花は、イマイチ興味がなくて、奥さんの情熱はすごいなあと感心するばかりです。
* [熊楠記念館からの借りたものを勝手にアレンジしました!]1929年、熊楠さんは昭和天皇に田辺湾の貴重な生物について御進講したそうで、その翌年には、神島に行幸記念碑が建立されたそうです。そして、熊楠さんはこの島の森が末永く保たれることを願った和歌を詠みました。
一枝もこゝろして吹け沖つ風 わが天皇(すめらぎ?)のめでましゝ森ぞ
田辺湾の神島の沖を吹く風よ、心して吹くようにしなさい。この神島の森は天皇様に認めていただいた貴重な森なのだから。
一方、昭和天皇さまは、1962年、再度の行幸の折りに、熊楠さんを偲ぶ和歌を詠まれたそうです。
雨にけふる神島を見て 紀伊の国の生みし南方熊楠を思ふ
雨に煙る神島を見て、ふと一昔前の紀伊の国の偉大な学者である南方熊楠を思うのです。(そのまんまの歌だけど、天皇が一個人を思い出すなんて、あり得ないことでした。ましてや、それを歌にして詠んでくださるなんて、有り難いことだったのです。)