日曜日美術館を見ました。亜欧堂田善(あおうどうでんぜん)という人のことを45分かけてふり返ってくれました。お名前は知っていました。司馬江漢さんの後から絵を描いていった人です。銅版画もスケッチも、洋画も(油絵具だって自分で作ってしまったそうです。アイデアと努力もあった人らしいのです)描いておられます。
代表作は、と訊かれると、どれがいいというのは言えないんだけど、江戸の名所各地を銅版画(エッチング)で描いたシリーズは、なかなかの冴えがあります。
両国橋やら、浅草の浅草寺やら、ヨーロッパを妄想で(いくつかの見本を組み合わせて、現実にはない風景を再構成してみたり、わりと器用なこともできる人だったみたいです)描いてみたり、これらの作品が代表作でしょう。
福島の須賀川の人らしく、円谷英二さんの遠戚にあたるそうで、細密な描写ができるところ、仕事が丁寧なところ、いろんな要素を組み合わせた絵作りをしているところなど、共通点がありますけど、まあ、偶然でしょうか。
福島の方だから、福島県立美術館にいくつかの作品が収蔵されているようです。福島で回顧展みたいなのがやってたみたいですが、現在は千葉市美術館で3月くらいまでやっているのかな。
それから、各地に巡回しないかなと甘い期待もありましたが、それはないみたい。千葉に行かないと見られないようです。たぶん、私は千葉にも行かないです。残念だけど、見に行けないな。
それに、版画って、わりと写真の通りなんです。だから、本物を見るよりも図録を買って見させてもらった方があれこれ見られる。でも、図録を買うと、それだけで満足してしまって、もう情熱が冷めてしまう。
困りましたね。せいぜいネットで田善さんをフォローしますか。
というんで、一つだけネットから借りてきました。江戸の名所のシリーズです。品川の遊郭なんでしょうか。そこに女の人がひとり。たたずんでいる。
何をしているんだろう。と思ったら、「二十六夜待ち」というタイトルがついているそうです。ということは、月を待つんですね。二十六夜の月、ということは明け方近くになるんだろうか。東の空は少し明るくなりかけてますか。
ネットでは、「江戸時代、陰暦正月・7月の26日の夜、月の出るのを待って拝むこと。月光の中に弥陀・観音・勢至の三尊が現れると言い伝えられ、特に江戸高輪(たかなわ)から品川あたりにかけて盛んに行われた。六夜待ち。」というのが載っていました。
品川あたりで流行っていたなんて、夜遅くまで騒いで、ふと気づいたら、明け方も近くなるし、海が向こうに見える高台にいれば、この世のものとも思えない不思議な夜明け前を感じることができたでしょう。
そんな時間に、この女の人は、疲れた感じでぼんやりと海の彼方を眺めていたんですね。
改めて、この女の人のポーズ、表情、テレビで見ている時は、よく描けてるなと思いました。うちにも一枚欲しいくらいです。和紙にでも印刷してくれたら、それらしい雰囲気出るかなあ。エッチングは和紙でもできるんだろうか。
わからないことがいっぱいですけど、今回、亜欧堂田善という人を見直しました。先輩格でもある司馬江漢さんに、「日本に生まれたオランダ人」と絶賛されたり、白河藩主の松平定信さんにスカウトされたり、みんなにチヤホヤもされたけれど、自分の道をコツコツ歩いたところもあるようです。
最近、江漢さんと田善さんの二人を特集した本も出ていたので、タイムリーでしたね。
それより何より、「二十六夜待ち」という習俗がかつてあったなんて、それが品川あたりだけで流行ってたなんて、おもしろいものが流行る時代だったんですね。
今は、そういう時代をはるかに離れて、混乱と貧困と値上げと病苦の厳しい時代です。そして、お年寄りをターゲットにする組織犯罪がさらにエスカレートしそうなのに、NHKのスポットCMだけ流して、注意喚起してますよ。あとは自衛してね。自己責任だよ。コロナで命を落としても、ワクチンしないからだよ。五回でも、六回でもワクチンに頼りなさい。そういう放置されてる私たちです。
よその国よりはましなのか、よその国よりも危ないのか、よその国を知らない私は、うろたえるだけです。たぶん、中の下? 下の上? わからないなあ。
今日は満月でしたね。スノームーンというらしい。でも、昼から曇って来たから、全く見られません。昨日、奥さんが「今日は満月?」と訊いてくれて、「いや、違うと思うよ」と答えただけだったけれど、昨日のうちに一緒に寒いけど月を見ればよかった。ユーミンの歌みたいに「十四番目の月がいちばん好き……」なんて言えたのにね。