私は、「国民」という言葉は使わないようにしてきました。そういう人はいないし、「国民」を口にする人とあまり仲良くしたいと思わないから、好きでもない言葉は使わないようにしました。
国民とは、確かに政治家の皆さんが相手にするのは国民なのかもしれないのです、あの人たちにとっては。
でも、その相手にされている「国民」と呼ばれる人々の具体的な顔は見えてきません。
「国民」の暮らしが大事、と言いつつ、どれだけあの人たちは「自分たち」の都合を通して来たんでしょう。
国政選挙においては、「自分たち」の利益を守るため、どれだけ「国民の皆様」と呼びかけたことでしょう。それにまんまと載せられた人もいただろうけど、結果を見てみれば、「国民」なんてどこにもいないことが明白です。
国民の暮らしを守るために、ワクチンを七月末までに高齢者に打てるようにしますよ。ねっ、早いでしょ。それまでに、相変わらず急変する人たちも出るだろうけど、それはその人たちの運がなかっただけであって、私たちは最善を尽くしたのです。
と平気で言うでしょう。そして、素直にそう思っていて、それくらい鈍感になれている。国民なんて、その程度のごまかしで何とかなるさと思っているんでしょう。
高齢者は七月末までに何とかする、ほかの人たちはどうなるんだろう?
それはワクチンの到着次第ですよ。ちゃんといろんなところにお願いはしたので、少しずつ届くでしょう。すでに手は打っています。
そういうのかな。
特許技術も公開されるんだから、日本で作ったらどうなの?
それは、各企業にも事情があるはずですから、私どもは何とも言えません。企業の理屈が優先されるのであって、国民の安全はその次なのです。
えっ、そんなので平気なんですね。他にはどんなことしてくれるの?
国民の皆様のために、憲法を改正しやすくし、国民投票制度も作り上げ、さらに赤字国債を乱発して財政赤字を作ります。
国民の暮らしのため、原発を再稼働させ、あと40年後まで、せいぜい寿命を延ばしますよ。2060年くらいになれば、エネルギー政策も変わっているでしょう。再生エネルギーも新しい技術が開発されています。遠い未来まで予測はできなくて、小手先のことばかり、目の前の利益ばかり優先していきますよ!
ということかな。
他には、カジノを各地につくり、安い賃金の外国人労働者を使い捨てにして、家族を持とうとする者たちは国外退去させ、地方には人を住まなくさせ、関東圏・関西圏・中京地区など大都市圏に国民を集中して住まわせますよ。地方は切り捨てて、まあ、植民地みたいな経営でもしますか。地方に外国人をたくさん受け入れさせる必要がありますね。
ほらね、「国民」と呼ばれる人たちは漠然としていて、あの人たちはこの漠然とした黙々と税金だけを納める人間たちが、ぼんやりと自分たちに信任票を出すことを期待している。もしくは、何も考えたくないなら、選挙に行かなくてもいいですよ、くらいに思っているかもしれない。
ああ、もうこういうのたくさんです。あの人たちは、自分たちの利益、自分たちの家族の利益、自分たちの党の利益、自分たちの仲間の会社の利益、そういうとこには熱心だけど、自分と関係のない人たちは、「国民」とは呼ぶけれど、利益を分配する相手としては見ていないし、ただ使役する相手として、せいぜい黙って働け、そして税金を納めろ、程度にしか見ていないのはアリアリです。
中国や韓国・北朝鮮とはまともに向き合わない。原発はどんどん作っていく。地震はどうなるか知らない。外国人は働けるだけ働かせて、すぐに国外に出させる。地方もあまり気にしない。
ああ、そういう「国民」として私たちはあの人たちにワク付けされています。
何もしてくれないし、そもそも眼中にないのに、テレビの向こう側から下卑た笑い顔だけをみせて、みんな一からげにして「国民」と呼んでいる。
そんなの当たり前でしたね。だから、平気でオリンピックにまい進できるんです。自分たちに痛みはないから、あるのは利益だけだから、外国のオリンピック委員さんも同類だから、平気で「犠牲になってね」なんて言えてしまう。
恐ろしいことですが、そういうことでした。
誰も止められない。
選挙結果だけがあの人たちを止められるけれど、残念ながら選挙はありません。
私は、「ら抜き言葉」も避けるようにはしてきたつもりだけど、あやしいものですね。
それはあの人たちと同じレベルです。
でも、少なくとも私は、大ぼらは吹かないようにしてるつもりなんだけど、それも怪しいかな。
なんだ、あの人たちと一緒なのか。あの人たちと違う人間になれるように、明日からも少しでもがんばりたいです。差し当たって、どこかを歩くことかな。文句も言わない。でも、正直になりたい。そんな感じです。