山本夏彦さんと山本七平さんの対談集(1982)を読んでいます。税金のことが書いてありました。それと「嫉妬」の関係はどうなるのかな?
(七平)戦前は百円[この本の出た当時の30万円くらい?]や二百円の月給取りは税金なんか納めなくてよかった。不動産さえ持っていなければ一銭も払わなかった。これ驚くべきことですよ。税金がいらない世の中が、ついこの間まであったなんて。月給取りは給料も賞与も全部、耳をそろえて丸ごともらっていたんですよ。手の切れるようなお札で。
(夏彦)原稿料なんかも丸ごとくれた。税を一割差し引くってのは戦後ですよ。それで、中野重治が怒ったことがある。三千円の原稿料だというから書いたのに三千円ないじゃないか。
(七平)三千円の約束なのになんで二千七百円しかくれないのか。いや、一割は税金でございます。なんで、あんたンとこが税金を差っ引くんだ。いや、これは納税責任者ってものがございましてね、私んとこで払わなければならない……。私が出版社に入った戦後すぐのころ、何度も押し問答がありましたよ。そのくらい、戦前は税金を払う人は限られていた。
そんな時代があったそうです。どうして国は税金を取らなかったのだろう。集金するシステムの整備が遅れていたためでしょうか。