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近ごろ、たぶん、ラジオなんだけど、フェリーニさんの「道」を紹介していました。
あそこには、人生の真実が描かれているのに、若い人たちは、白黒映画だし、イタリア語だし、おしゃべりは録音が悪くて聞こえないし、主役のアンソニー・クインは本当にイタリア語をしゃべっているのか、ついついその口もとが気になるし、まともに見られないだろうな。
もっときれいなプリントで、クリアーな音声で、百人も入らない小劇場のゆったりした椅子で見せてもらいたい映画なんですけど、そういう環境ってたぶんないから、歴史の中に埋もれていくんだろうか。
でも、いつか若い人たちが年を取った時には、見られる環境になっていて欲しいなと思う映画なのです。
私は、ラジオで紹介してくれて、懐かしいなと思った程度です。でも、時々は思い出すのです。
なにしろ、フェリーニさんは夫婦を描いた映画作家だからです。男を描いた黒澤明。家族を描いた小津安二郎。日本の空気を描いた溝口健二。いろんな映像作家がいますが、初期のころのフェリーニさんは、圧倒的に夫婦がテーマなのです。
だから、いい大人の皆さんに、改めて見てもらえたらと思ったりします。
「道 ラ・ストラーダ」は1954年の作品です。この年、「ゴジラ」が公開され、「七人の侍」も公開されています。日本のエースのAさんだって生まれています。
いろんなものが生み出された中で、何の気なしに見ると、「何だこの薄暗い、貧乏くさい映画は何だ」と思うのです、たぶん。
旅芸人のアンソニー・クインに、貧しい家庭の娘であるジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は買われます。奴隷みたいなもので、あちらこちらで助手やら、家政婦やら、こき使われる。
アンソニー・クインは、男くさい、強引で、スケベーで、お金にはせこくて、しかもあんまり儲からないさえない旅芸人をしている。彼には展望も何もなくて、貧しい世の中で、わずかの金を求めて、つまらない芸を見せて旅をしている。
最大の芸が、鎖を筋肉で引きちぎるみたいなウソくさい芸でした。あんな芸に人々が最初はビックリするのが不思議なくらいに、ちんけな芸なのです。
それでも、彼は自らの芸を信じてあちらこちらをジェルソミーナを連れまわして細長いイタリア半島を旅している。南はもっと貧しい地区だったろうから、北部中心に回っていたんでしょうか。それはどうだかわかりません。
そして、わがままで高圧的なアンソニー・クイン(役名は何だったかな?)は、とうとうジェルソミーナは足手まといだと置き去りにして、自分一人でどこかへ行ってしまうのです。
まさに男の中の男、筋肉で売る旅芸人の男は、役に立っているのか、立っていないのか、よくわからない女と一緒に旅をするのが面倒になったのでした。
さて、放り出したはいいものの、すぐに自らの過ちに気づくのです。
足手まといに見えたジェルソミーナは、長年一緒に旅をしているうちに、自分の大切な一部になっていた。それを瞬間的な怒りに身を任せて、切り捨てた気分でいたザンパノ(これがアンソニー・クインの役名でした)は、ジェルソミーナなしでは生きていけない自分を見つけたのでした。いなくなって初めてその大切さがわかるなんて、男って、わかってないですね。
どれくらいの月日がたっていたのか、とにかく置き去りにしたところにもどってみたら、ザンパノと二人三脚で生きてきたジェルソミーナは、生きる力を失ってすでに亡くなっていたのでした。
それから、どれだけ悔いようとも、もうザンパノは取り返しがつかなくて、ひたすら泣く。映画では描かれないけど、その後のザンパノの生活も推し量られるような、悲しい結末となっていました。
監督のフェリーニさんは、それを34歳の時に作っていた。ジェルソミーナ役のジュリエッタ・マシーナさんとは10年前に結婚していた。もうそのころから、ジュリエッタさんの大切さをしみじみと知り、それをちゃんと映画の中でドラマとして作ることに成功していた。
監督の個人的な思いではなくて、まさに女と男の真実を知り、映画に仕立てることができていた。
それだけではなく、その後も、私的な体験のようなことをテーマに映画を作ったり、年老いた男女のスターを映画にしてしまったり、自分たちから題材を取りつつ、人生の真実を探し出そうとしていた。
そのフェリーニさんが亡くなって、もう26年になるわけです。ものすごく早い気がします。奥さんのジュリエッタさんはその5か月後に亡くなるのですから、なんと仲良しで、それこそ実人生でも二人三脚で来られた人たちでした。
このお二人だからこそ、30代前半で「道」が作れたのです。
私は、まだまだ人生の何たるかを知らず、ギックリ腰で毎日ヒーコラ言っているだけです。今日もお仕事をそれなりには頑張りましたが、ちっとも何にもわかってなくて、ただ無意味な動きが多い。
そして、みっともなく、情けないオッサンです。
いくら卑下しても何も生まれないですね。せいぜい体操して、ギックリを治します!?
実は、私もフェリーニさんみたいに、奥さんのありがたさを知り、それを口に出したり、行動に移したりしたい、そういう気持ちは持っているんです。
でも、つい眠かったり、面倒だったり、誠実ではなくて、日々反省していて、原点回帰の気持ちで、突然フェリーニさんのことを書きました。言い聞かせているんだと思います。気持ちだけです。
みっともなく、なさけないオッサン・・
そんなことありませんっ❗❗❗❗
こんなにセンスのいい文しょう(章)をかけるおじさんはステキなおじさんですっ✨✨
ぎっくりごしなんて、モデルでもなります‼️
クリンより🌼