1968年の9月の初め、ウルトラセブンの最終回「史上最大の侵略」前後編があったそうです。
当時の私は、そんなことがあったなんて、まるで記憶がありません。どうでもいいことになっていたのかどうか。それからも、何度も再放送がありましたが、ウルトラセブンなんて、見てる場合ではなかったと思われます。
大きくなってきたし、そんなの子どもだましなんじゃないの? みたいに思ってたのかもしれません。
けれども、「ウルトラセブンが音楽を教えてくれた」の著者の青山 通さんには大きな出来事だったそうです。そもそもうちはカラーで見られたのかどうか、まだ白黒テレビだったのかもしれません。テレビって、貴重な存在だったかな。
最終回で劇的に使われていたクラシック音楽、この曲は何だろう、とずっと求め続け、シューマンのピアノ協奏曲だと知って、レコード屋さんに走ったそうです。そして手に入れたのは、テレビの内容をカセットに録音して何度も聞き、耳に残っている音楽とは似ても似つかないものだったそうです。
ルービンシュテインのピアノ、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団の1967年の録音だったそうです。当時としては最新版のシューマンだったんでしょう。でも、ルービンシュテインさんはすでに80歳だったそうで、「なんだか枯山水を見ているような感じ」だったそうです。勢いとドラマチック的な要素がなかったんだそうです。淡々とした味の演奏で、ゆっくりとしたテンポだった。
それからも、ずっと求め続け、28種類の演奏をチェックしたそうです。第一楽章がセブンで使われていたそうで、その演奏時間も16:18から13:54までのいろいろなものがあった。
どちらかというと、短く勢いで演奏しているものが耳に残っている。それを求めてお小遣いで「エイ、ヤー」と次に買ったのが、ウイルヘルム・ケンプのピアノ、ラファエル・クーベリック指揮のバイエルン放送交響楽団の1973年版を買ったそうです。
ここでも、若さゆえの失敗があって、1968年に放送されたものなのだから、音楽もそれ以前の録音でなければならないのに、レコード屋さんでとにかく「シューマンのピアノ協奏曲」を買うのだというだけで、細かいことは気にせずに買ってしまったのです。
ソリスト、指揮それぞれで同じ曲なのに、味わいがまるで違うという不思議なクラシック音楽の世界に若き青山さんは入っていったそうです。
そして、経験を積んだ青山さんは、3枚目、ディヌ・リパッテイのピアノ、エルネスト・アンセルメ指揮のスイス・ロマンド管弦楽団、1950年版を買うのです。
すると、「一瞬、求めていた最終回の演奏かと思った。ピアノのニュアンスもに近いものを感じたのだ」そうです。でも、「近いけれど、同一ではない」とも思ったそうで、中三になって、友だちのお兄さんにリパッテイ、カラヤン指揮、フィルハーモニア管弦楽団、1948年版を聞かせてもらい、7年越しに求めていた音楽に出会ったそうです。
こうした求める音楽に出会うこと、昔はずっと時間をかけてやっと出会えるものだったんですね。
というところで止めておきます。いまからワールドシリーズ第6戦を見ようと思います。