最後のボツ原稿 室根山とアブたち

　結婚して１０年目くらいに、妻の実家の岩手県へ三重県からクルマで２日がかりで行きました。道に不案内であまり遠出もできずにいたところ、せっかくだからと、クルマで１時間足らずの室根山に行くことになりました。私たち家族３人と妻のお兄さんの奥さんとお嬢さん２人、合計６人で室根山にドライブに行くことになりました。

　室根山の上では、夏の日差しは届いているのに、高原の風がとてもさわやかで、穏やかな山の形もステキだし、たぶんクルマで山頂近くまで行けたと思います。ドライブは華やかでした。幼い２人の少女はいろんなお話をしてくれて、そこにとにかく加わろうとウチの子もがんばっていたようです。うちの子にしてみれば、年上の２人の従姉に関わりを持ちたかったのだと思います。珍しく意欲的な動きでした。みんなが楽しそうでした。

　その楽しいひとときをムチャクチャにしたのがクルマの窓から飛び込んできたアブでした。私は運転中でしたし、乗客のみんなは逃げるところがないわけですし、クルマの中は大パニックになりました。必死で外に追い出そうとするのですが、アブにはヒトを刺そうという目的があります。アブは１番か弱そうな女の子を見つけてチクリと刺してからうちのクルマを出て行ったのでした。

　それからは、すぐに治療をしなくてはと、帰路につくことになり、何もかもがメチャクチャで、ションボリとしながらドライブから帰ったものでした。もっと他に行きたいところもあったでしょうに、何もかも計画は消えてしまいました。



　あれから２０年ほどが経過して、上のお嬢さんは今年お母さんになりました。下のお嬢さんはあちらこちら世界各地を旅して歩いているようです。そして、うちの子はまだ自分の道を見つける途上にあります。まあ、私だって自分の道は見つかっていないんですけどね……。でも、何かそれらしく歩く道がほしいですね。合っていても合っていなくてもいいから、それらしく歩ける道を歩いていたいなあ。

　あの時の室根山の風が、今ふたたび三重県に吹いて、うちの子を刺激してくれたらなあと、私は思っています。今年の夏、私たち夫婦はふたたび岩手に行くと思いますが、その前に正平さんに室根山の風と、イタズラなアブを見つけてもらえるとうれしいです。

　きっと山の上には、たくさんのトンボたちがふもとの町へ繰り出す準備をしているんじゃないかなと思います。風は気持ちいいけど、自転車では大変ですね。どうぞ、よろしくお願いします。



★　ああ、やはりネタとしてはイマイチでしたね。もう、私のこころの風景はないですね。これから見つけに行かなくちゃダメですね。さて、どこへ行ったものか……。

　明日はまだまだ台風１１号がいるからどこへも行けません。せいぜい室内で本でも読んでいましょう。