甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

戦メリとゆがんだ時間とピアノ

2018年01月12日 22時25分25秒 | Back To The 80's

 今夜もラジオを聞いて帰ってきました。FMはとらえどころのない音楽なので、AMにしました。NHK第一は国府弘子さんがリクエストの曲をかたっぱしから弾き倒すという企画で、家に帰るまでの時間内に何曲聞くことができたんだろう。たくさんたくさん聞かせてもらいました。

 ベートーベンの月光もよかったですし、ドビュッシーのアラベスクもよかった。あわてんぼうのサンタクロースも楽しかった。ものすごく楽しませてくれるピアニストなんだなとびっくりして、チャンスがあれば見に行きたいくらいでした。

 CDやFM、いろんなところで聞くことはありますが、ライブはきっとその場の楽しさがあるのだと思います。どうしてライブも見に行きたくなったかというと、弾いている姿が楽しそうというのもあるのだけれど、空間の中にピアノとおしゃべりがそこで行われているのが、楽しそうだなと思いました。

 さて、そうした弾きまくっている曲の中で、坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」がありました。

 この曲は、映画でも見ました。大島渚さんの特集のキネマ旬報も読みました。サントラは買わなかったけれど、坂本さんのベストは持っています。「戦メリ」よりも「ラストエンペラー」の曲が好きだったので、こちらはサントラを買いました。

 1983年の作品だそうです。ああ、三十数年前になるのですね。まだ結婚していなかったし、ちゃんとした仕事もしていないころでした。自分自身がフラフラしている時期でした。今よりもフラフラしていた。体は元気だったろうけれど、気持ちはフラフラでした。

 そんな不安定な時、作った本人の大島渚さんはとても自信をもっておススメなんだけど、今まで私は、大島渚さんの作品なんて見たこともなかったので、とりあえず見てみようと行ったんでした。前売り券も買ってひとりで見に行きました。

 作品は、予想されたように、あまりよくわからなくて、今思うと、「戦場にかける橋」の延長線上の、大島さんなりにデビッド・リーンを越えようとした作品だったのかと思うけれど、面白くないとはいえなくて、何だかよくわからないモヤモヤを抱えて見終わったはずでした。

 それから、なるべく近寄らないようにして、ずっと忘れていたけれど、時々音楽だけは気になって、聞きたくなったら、なるべく聞ける環境にいるようにしました。

 という間に三十数年です。だから、わりと「ついこの間」という気にならないわけでもない。いや確実に「この間」感があります。

 でも、若い人たちには1983年といえば、自分たちの生まれていない、日韓ワールドカップだってないし(2002)、アトランタ五輪だってないし(1996)、長野冬季五輪だってないのです(1998 荒川静香ちゃんが東北高校の高校生としてポチャポチャで出ていました!)。

 若い人には、自分の生まれていないころのことって、全くどうしようもない、やたら伝説だけが幅を利かす、わけのわからないモヤモヤしたことに見えるでしょう。



 でも、私は、83年には、二十代でいじけながら生きてはいました。ついこの間のことのようです。そして、ふと思います。

 1983年も、今度150周年という明治維新も、1945年の敗戦も、生きてはいなかったりするときもあるけど、わりといろいろお話を聞いて、なんとなくボンヤリ空想できるようになってきたなという感覚があります。

 そんなのは私の勘違いであり、幻想・妄想のはずだけれど、徳川慶喜さんも、会津藩の松平容保(かたもり)さんも、少しずつ近しい人になってきています。二千五百年前の孔子さんだって、少しずつ近しい存在になっているような気分でいます。

 そして、二千五百年といわずに、何万年・何億年という昔だって、岩壁を見たり、火山の後を眺めたりして、少しずつ近しくなってきつつある。

 どれも昔であることは同じで、長短はあるけれど、どれも想像不可能というわけではなくて、今、自分がいるところから時空を超えてそちらまで行けそうな気がしたりします。

 こうして時間が伸びたり縮んだりして、私たちはどんどん昔となじみになっていきます。それで今は? と訊かれるとトンチンカンで、全く現実感はないし、今世の中はどうなっているのか、うまくとらえきれていないような気がするんです。やたらと昔だけがリアル。

 そんなこんなで時間が伸びたり縮んだりしている自分という存在を改めて知りました。

 そして、1983年にはあこがれたのに、映画の後ではトラウマになって遠ざかって、でも時々は聞きたくなったりした「戦メリ」。

 これが今夜たまたま聞くと、たぶんライブ演奏なので、ゆったり弾いてくれたみたいで、妙に私の心に入り込んできて、坂本さんのCDよりも、クルマのラジオから流れる演奏が、あんな雑音がいっぱい入った音で、感動できてしまって、どういうんだろうなと思ったんでした。

 たぶん、運転しながら、私の時間も伸び縮みしていて、そのゆらめきのなかで私はいつもの道を走りながら、どこか違う心の世界へ行ってしまっていたのでした。

 「戦場のメリークリスマス」、映画はふたたび自分からは見ようとはしないと思います。どこかでオールナイトとか、雨の休日の昼とか、そういうぽんやりした時間に入り込んでくれたら、見るかもしれないな。

 そして、ああ、この前見たのはいつだったかな、1983年なのか、ついこの間だなと思うでしょう。私の中身はまるで変ってなくて、ただ頭がパーになっているだけです。ハーア。


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