山本コータローさんが亡くなったそうです。大学で若い人たちを指導されてたということでしたけど、いい先生だっただろうな。厳しくて、でも優しくて、そんなにエラぶらなくて、ちゃんと若者たちを見てくれるし、タイミングよく声もかけてくれたことでしょう[阪神で活躍している大山選手にもちゃんと心配りしてくれてたそうです。ありがたいことです]。
山本さん、意外とそういうお仕事に向いてたかもしれません。そして、ずっとやってもらいたかったけれど、いつか誰でもこういう時が来るんですね。それにしても、突然のニュースで、あまりに突然な感じです。もう少し前から事情がわかっていたら、それなりの気持ちになったと思います。
私は、70年代に山本さんの歌をそのまま聞かせてもらった世代です。もう何十年も昔です。
何十年も昔だけど、あれからずっと「岬めぐり」は、私たちのテーマの一つになりました。
都会や人の中で、くたびれ、くじけて、小さくなっていたこころを、田舎の半島をめぐるバスに乗り、少しずつ自分の行くべき道を見つめていく歌でした。人の中で疲れたこころは、やはり人の中で癒していくしかないし、人の中で私たちは生きていかなくてはならないのだ、というのを教わりました。
それは理屈・理論であって、実際はそれぞれが、自分の抱える現場の中で個々に対応して、個々に道を見つけていくしかないのだけれど、そこまでは教えてくれませんし、それを自分でやりくりしていくのが人生の醍醐味でもあったので、私たちなりに今まで「岬めぐり」をしてきたのだと思います。
「岬めぐり」を、私たちはまだ続けていると思っています。コロナで、少しだけ知らないところを旅することは控えていますが、私たちの出会っていない人はいないか、いたら、どんな風に出会えるのか、どれだけこころを交流し合えるのか、私たちには人生のバスでどのような乗客になるのか、今も問われているはずです。
行き先はどこですか?
たぶん、海が見えたり、山のふもとだったり、寒かったり暑かったりしているだろうけど、誰かがいて、私たちが声掛けしなくちゃいけない、そんな場面が設定されています。
私は、あまりシャレたことは言えません。お手伝いもできないかもしれない。ぼんやり見ているだけかもしれない。でも、しっかり見て、声掛けして、無言でもいいから手を差し伸べて、無言でいいから立ち去っていきましょう。
コータローさんは亡くなられましたけど、私たちは歌い続けていきますよ。若い人にも歌ってもらえたらいいけど、伝わらないですね。私たちが楽しそうにしてないからかな。みんなでギャーギャーいいながら歌えたらいいな。
♬ みさきーめぐっりのーバスは、はしるう、ぼくはどうしていきてーゆこー
かなしみーふかくー、むねに……たら、このたびーおえーてーまちにーかえろー
みんなで歌えたらいいな。うろおぼえでもいいや、誰かがちゃんと歌ってくれるだろうし……。