これは借り物の写真です。岩手県一関市の猊鼻渓(げいびけい)という渓谷です。棹で川舟を操り、上流にのぼっていきます。そうすると、ちょうど舟を止めるのに適当な砂浜が現れます。船頭さんはそこに止めてくれて、お客さんは一番奥のライオンの鼻の岩まで行くことになっています。
ライオンの鼻の下には、少し穴の開いてるところがあって、すぐに人間は適当な理屈をつけて、あの穴の中に投げた石が入ったら、あなたの願いごとがかなうとかなんとか、どうして人はそういういい加減なハードルを作ってしまうのかな。
もちろん、私も投げたような気がするけど、もちろん簡単には入らなかったような気がします。
いや、これはどこか他のところと記憶が重なっていますか? わからないけど、そんなことがあったような気がします。
90年代の初め、私たちが若かった頃、何度もこちらには来させてもらいました。それから三十年余り、何度かここまで到達したり、増水して舟が出なかったり、悲しい出来事があって、舟遊びどころではなかったり、最近は、岩手に行くことはありますが、舟には乗らなくなりました。
彼女の実家には、一泊だったり、二泊だったり、何だか慌ただしくて、のんびり渓谷を上り下りすることがありません。
何だかザンネンです。
ものすごく昔、結婚したての頃は、岩手に行かせてもらっても、それこそ借りてきたネコでした。彼女はなんとなくウキウキと、自分が育った町を案内してくれますし、時どきは知り合いにあったりするし、まあ、出会うほとんどの人が彼女の知り合いだから、不思議な体験ではありました。
子どもが生まれ、甥っ子・姪っ子も集まると、みんなで舟遊びしよう、なんていうこともありましたけど、あれは90年代の初めだったでしょうか。
もう二十数年前のことになるんです。
ほんとに、時間というものは、進むなと思う時には恐ろしいくらいに早く、早く進めと思う時にはいつまで経っても過ぎて行かないし、ままならないものです。
舟乗り場の近くに、観光ホテルというのがありました。宴会で利用したことも何度かありますけど、つい最近廃業したそうです。お風呂だけ入りに行くとか、そんなこともコロナの前にはさせてもらってたのに、もうあのホテルも利用できないなんて!
何もかも、いろいろと変わっていきます。嘆いても仕方がない。
またいつか行かせてもらおう。そして、新緑なら藤の花、夏なら涼しさ、秋なら紅葉を、冬なら雪見舟を、また見せてもらいましょう。
そのためには、彼女を連れて、彼女のふるさとに行かせてもらわなくちゃ!
2019年には行きました。でも、舟には乗らなかったのかあ。
大船渡線にも長い間乗っていません。いや、もう長い間旅してないですもんね。
また、今度行きます。猊鼻渓、ライオンの鼻の岩がある渓谷。すぐそこに人々の生活のある町があるのに、舟で少し登れば両側から岩が迫ってきて、桃源郷に行けるような、不思議な空間に入っていけるところです。
テーマパークの作り物ではなくて、ごく自然に異次元空間がそこにあるんですから、昔の人たちも不思議だったことでしょう。
高い壁の向こうには、また普通の生活空間があるそうですから、それがまた不思議ですけど、この砂鉄川をさかのぼること、来年の夏にはできるかなあ。それまで元気で過ごしていきたいです。最近運動不足で、クルマに一時間乗っただけで、足腰がクタクタになってたりします。恐ろしいです。