[7月5日18時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

夕食の鍋はすき焼きだった。
リサ「いただきまーす!」
愛原「これで前のマンションだったら、昔に戻ったみたいだな」
高野「先生、私が指名手配されている理由って何でしょう?」
愛原「まあ、日本では非合法扱いされている“青いアンブレラ”に所属して勝手にドンパチした罪とか、それで逮捕されたのに脱獄しやがってこの野郎罪とか、その辺りだろ?」
高野「表向きはそうですね。本当の理由は、いくつかあります。まず、今の日本政府にとって“青いアンブレラ”の存在は非常に不都合であるということ。テラセイブは潰れ掛かっていますが、日本で再興したいと思っているようです」
愛原「困るな。外国の組織が、勝手に日本で再興されちゃ」
高野「日本もバイオハザードの被害を受けているわけですから、本当は日本人達でそのような組織を作らないといけないんですよ」
愛原「しかし、アンブレラ関係者達は逮捕されているだろう?」
高野「白井は違うでしょう?」
愛原「おっと!」
高野「日本の話ではありませんが、アンブレラの生き残りで贖罪意識の無い者達が『コネクション』を作って活動しているのも実情です。その日本人メンバーもいますしね」
愛原「高橋は、いつからメンバーだったんだ?」
高野「もちろん、先生と接触してきた時点で既に、ですよ。先生、マサが先生の所に住み込みをお願いした時、『部屋代払います』と言って現金1000万円を置きましたよね?」
愛原「ああ」
大赤字で廃業寸前の零細探偵事務所には、大助かりの資金であった。
高野「あれ、『コネクション』から出ているお金ですよ」
愛原「……らしいな」
高野「先生は知らず知らずのうちに、テロ組織から資金提供を受けたのです」
愛原「し、しかし……」
高野「いいタイミングだと思いませんか?その後で、デイライトの善場が接触して来たでしょう?」
愛原「そ、それは確かに……」
高野「当然、デイライトは『コネクション』の存在を知っています。そして、早くからマサに目を付けていたのでしょう」
愛原「高野君はその時、どう思った?」
高野「最初は私の事を疑って来たのかと思いました。私もその時既に、“青いアンブレラ”のメンバーでしたからね」
愛原「そうか……」
高野「でもあの女、本当に隠し事が得意ですからね。本当に私の事を疑って来たのかと首を傾げました。そうしているうちに、リサちゃんを預けて来ましたね?」
愛原「そうだな!」
高野君はすき焼きの肉を頬張るリサを見ながら言った。
高野「あの女は、『本人の強い希望だから』という理由でリサちゃんを先生に預けましたが、外国では絶対にあり得ないことです。ぶっちゃけ、殺処分または一生研究所で飼い殺しが普通ですよ」
愛原「じゃあ、どうしてだ?」
高野「罠を仕掛けたんでしょう。リサちゃんみたいな、『制御できているBOW』は、バイオテロ組織としては、喉から手が出るほど欲しい存在ですから」
しかし、高橋は直接リサを攫うようなことはしなかった。
この時はまだ、ただの連絡員だったからだそうだ。
『コネクション』は決まった拠点を持たない流動型のテロ組織である。
リサの動向を逐一組織に報告するだけの簡単なお仕事だったようである。
高橋もまたスマホをよく弄っていたが、特に仕事に支障を来たしていない場合は禁止していなかったので。
愛原「『コネクション』って、リサを攫いに来たことがあったか?」
栃木の栗原家に攫われたことはある。
高野「無いですね。ただ、別の組織に攫われたことはあったでしょう?」
愛原「栃木の栗原家だな。日光の奥地だ」
高野「あれで『コネクション』が騒いだみたいです。何しろ、ノーマークの組織に攫われたみたいですからね」
愛原「それでキミ達が出動したわけか?」
高野「はい。私達は当初、マサが組織をけしかけて、ついに『コネクション』が動いたのかと思いましたが」
愛原「うーむ……」
高野「何しろあの大混乱ですからね、よく先生達は逃げられたものです」
愛原「最後の最後で、高橋の仲間達が迎えに来てくれたからだな。やあ、いい所に来てくれたもんだ。……って、実はあれも『コネクション』のメンバーでしたってんじゃないだろうな!?」
高野「多分、違うと思います。もしそうなら、先生方はここにいらっしゃらないはずです。あれは本当にマサの友人、或いはマサが雇ったただの闇バイターです」
愛原「何だ、そうか……」
高野「ただ、報告では『コネクション』のメンバーが、本当にピックアップするつもりだったようで、先生方に逃げられたと悔しがっていたのだとか」
愛原「マジで?」
じゃあ、高橋の仲間達が先に来なかったら、私達は『コネクション』に攫われていたということか。
愛原「高橋以外にも、俺の周りに『コネクション』のメンバーはいるのか?」
高野「今のところ確認できているのは、マサだけですね。もちろん私も他人ですし、先生のお知り合い全員を知っているわけではありませんが」
愛原「それもそうか。でも、高野君が確認できている俺の知り合いにあっては、メンバーはいないということだな?」
高野「そうです」
愛原「分かったよ。これで、高橋ともパールともお別れとなってしまった……」
高野「テラセイブの方は分かりませんよ?後でまた戻って来るかもしれません」
愛原「一体、何が起こったんだろうな?」
高野「多分、テラセイブ側とコネクション側で、同時にマサに手紙を送っていたのでしょう。そして、テラセイブ側が後から届くことで、マサに何か指示が伝わるようになっていたのかもしれません」
愛原「そこで俺が余計なことして、テラセイブから手紙を速達で送ったばっかりに……?」
高野「その後でコネクションの手紙が来て、マサはコネクションの指示に従ったのかもしれませんね。恐らくテラセイブ側では、かなり正確にコネクションのマサ奪還作戦を把握していたんでしょうね。マサが作戦に反対して、コネクションの車に乗らなければ、ただ単にコネクションが暴走しただけということにできますから」
愛原「うぁちゃー……!ヤベェことしちゃった……!」
高野「まあまあ。先生は悪くありません。テラセイブの女も、私みたいにさっさと正体を明かすべきだったんです。そして、先生に正式に協力を求める。それをしなかったテラセイブの責任です」
愛原「そ、そうかな……」
リサ「じゃあ、どうしてパールさんはそうしなかったの?」
高野「理由はいくつか考えられますが、1番大きな理由は、組織にそうしろと言われていたんでしょうね。指示があるまでは、正体を明かさないようにって」
リサ「じゃあ尚更テラセイブが悪いね」
高野「ええ。そんなだから組織内にスパイを抱え込んでしまったり、BSAAに先を越されたりしてしまうのですよ。先生、いかがです?“青いアンブレラ”と契約しませんか?デイライトよりも高い報酬をお約束致しますよ?」
愛原「興味はあるが、それで今度は俺が公安に追われる身になるのは嫌だなぁ……」
私は苦笑した。
結局パールが今日中に帰って来ることはなかった。

夕食の鍋はすき焼きだった。
リサ「いただきまーす!」
愛原「これで前のマンションだったら、昔に戻ったみたいだな」
高野「先生、私が指名手配されている理由って何でしょう?」
愛原「まあ、日本では非合法扱いされている“青いアンブレラ”に所属して勝手にドンパチした罪とか、それで逮捕されたのに脱獄しやがってこの野郎罪とか、その辺りだろ?」
高野「表向きはそうですね。本当の理由は、いくつかあります。まず、今の日本政府にとって“青いアンブレラ”の存在は非常に不都合であるということ。テラセイブは潰れ掛かっていますが、日本で再興したいと思っているようです」
愛原「困るな。外国の組織が、勝手に日本で再興されちゃ」
高野「日本もバイオハザードの被害を受けているわけですから、本当は日本人達でそのような組織を作らないといけないんですよ」
愛原「しかし、アンブレラ関係者達は逮捕されているだろう?」
高野「白井は違うでしょう?」
愛原「おっと!」
高野「日本の話ではありませんが、アンブレラの生き残りで贖罪意識の無い者達が『コネクション』を作って活動しているのも実情です。その日本人メンバーもいますしね」
愛原「高橋は、いつからメンバーだったんだ?」
高野「もちろん、先生と接触してきた時点で既に、ですよ。先生、マサが先生の所に住み込みをお願いした時、『部屋代払います』と言って現金1000万円を置きましたよね?」
愛原「ああ」
大赤字で廃業寸前の零細探偵事務所には、大助かりの資金であった。
高野「あれ、『コネクション』から出ているお金ですよ」
愛原「……らしいな」
高野「先生は知らず知らずのうちに、テロ組織から資金提供を受けたのです」
愛原「し、しかし……」
高野「いいタイミングだと思いませんか?その後で、デイライトの善場が接触して来たでしょう?」
愛原「そ、それは確かに……」
高野「当然、デイライトは『コネクション』の存在を知っています。そして、早くからマサに目を付けていたのでしょう」
愛原「高野君はその時、どう思った?」
高野「最初は私の事を疑って来たのかと思いました。私もその時既に、“青いアンブレラ”のメンバーでしたからね」
愛原「そうか……」
高野「でもあの女、本当に隠し事が得意ですからね。本当に私の事を疑って来たのかと首を傾げました。そうしているうちに、リサちゃんを預けて来ましたね?」
愛原「そうだな!」
高野君はすき焼きの肉を頬張るリサを見ながら言った。
高野「あの女は、『本人の強い希望だから』という理由でリサちゃんを先生に預けましたが、外国では絶対にあり得ないことです。ぶっちゃけ、殺処分または一生研究所で飼い殺しが普通ですよ」
愛原「じゃあ、どうしてだ?」
高野「罠を仕掛けたんでしょう。リサちゃんみたいな、『制御できているBOW』は、バイオテロ組織としては、喉から手が出るほど欲しい存在ですから」
しかし、高橋は直接リサを攫うようなことはしなかった。
この時はまだ、ただの連絡員だったからだそうだ。
『コネクション』は決まった拠点を持たない流動型のテロ組織である。
リサの動向を逐一組織に報告するだけの簡単なお仕事だったようである。
高橋もまたスマホをよく弄っていたが、特に仕事に支障を来たしていない場合は禁止していなかったので。
愛原「『コネクション』って、リサを攫いに来たことがあったか?」
栃木の栗原家に攫われたことはある。
高野「無いですね。ただ、別の組織に攫われたことはあったでしょう?」
愛原「栃木の栗原家だな。日光の奥地だ」
高野「あれで『コネクション』が騒いだみたいです。何しろ、ノーマークの組織に攫われたみたいですからね」
愛原「それでキミ達が出動したわけか?」
高野「はい。私達は当初、マサが組織をけしかけて、ついに『コネクション』が動いたのかと思いましたが」
愛原「うーむ……」
高野「何しろあの大混乱ですからね、よく先生達は逃げられたものです」
愛原「最後の最後で、高橋の仲間達が迎えに来てくれたからだな。やあ、いい所に来てくれたもんだ。……って、実はあれも『コネクション』のメンバーでしたってんじゃないだろうな!?」
高野「多分、違うと思います。もしそうなら、先生方はここにいらっしゃらないはずです。あれは本当にマサの友人、或いはマサが雇ったただの闇バイターです」
愛原「何だ、そうか……」
高野「ただ、報告では『コネクション』のメンバーが、本当にピックアップするつもりだったようで、先生方に逃げられたと悔しがっていたのだとか」
愛原「マジで?」
じゃあ、高橋の仲間達が先に来なかったら、私達は『コネクション』に攫われていたということか。
愛原「高橋以外にも、俺の周りに『コネクション』のメンバーはいるのか?」
高野「今のところ確認できているのは、マサだけですね。もちろん私も他人ですし、先生のお知り合い全員を知っているわけではありませんが」
愛原「それもそうか。でも、高野君が確認できている俺の知り合いにあっては、メンバーはいないということだな?」
高野「そうです」
愛原「分かったよ。これで、高橋ともパールともお別れとなってしまった……」
高野「テラセイブの方は分かりませんよ?後でまた戻って来るかもしれません」
愛原「一体、何が起こったんだろうな?」
高野「多分、テラセイブ側とコネクション側で、同時にマサに手紙を送っていたのでしょう。そして、テラセイブ側が後から届くことで、マサに何か指示が伝わるようになっていたのかもしれません」
愛原「そこで俺が余計なことして、テラセイブから手紙を速達で送ったばっかりに……?」
高野「その後でコネクションの手紙が来て、マサはコネクションの指示に従ったのかもしれませんね。恐らくテラセイブ側では、かなり正確にコネクションのマサ奪還作戦を把握していたんでしょうね。マサが作戦に反対して、コネクションの車に乗らなければ、ただ単にコネクションが暴走しただけということにできますから」
愛原「うぁちゃー……!ヤベェことしちゃった……!」
高野「まあまあ。先生は悪くありません。テラセイブの女も、私みたいにさっさと正体を明かすべきだったんです。そして、先生に正式に協力を求める。それをしなかったテラセイブの責任です」
愛原「そ、そうかな……」
リサ「じゃあ、どうしてパールさんはそうしなかったの?」
高野「理由はいくつか考えられますが、1番大きな理由は、組織にそうしろと言われていたんでしょうね。指示があるまでは、正体を明かさないようにって」
リサ「じゃあ尚更テラセイブが悪いね」
高野「ええ。そんなだから組織内にスパイを抱え込んでしまったり、BSAAに先を越されたりしてしまうのですよ。先生、いかがです?“青いアンブレラ”と契約しませんか?デイライトよりも高い報酬をお約束致しますよ?」
愛原「興味はあるが、それで今度は俺が公安に追われる身になるのは嫌だなぁ……」
私は苦笑した。
結局パールが今日中に帰って来ることはなかった。