報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「ペンションをチェックアウト」

2025-02-03 20:22:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日08時30分 天候:晴 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』3階301号室]

 朝食が終わり、私とリサはコーヒーやジュースのお代わりを執事から受けていた。
 食べ終わった食事は、アルバイトと思しき若い男がワゴンに乗せて運んで行った。

 執事「さて、愛原様。私に質問したい事とは、何でございましょうか?」
 愛原「実は私は、15年弱くらい前、あなたの弟さんに殴られて気絶したようです」
 リサ「ええっ!?」
 愛原「長野県白馬村の屋敷は、もう無いんですよね?」
 執事「はい。既にあの屋敷は取り壊され、更地になっていると伺ってございます。土地の所有者も変わり、現在ではインバウンド政策に乗じ、新たなホテルの建設工事が始まっているとか……」
 愛原「あの屋敷を訪れた時、私はあなたの弟に殴られて気絶させられ、屋敷の警備員達によってどこかに連れて行かれた。私の記憶が無いのは、そのせいだとあの映像を観て分かった。私がどこに連れて行かれ、何をされたか、あなたは御存知ですか?」
 執事「私の弟が愛原様にとんでもないことをしてしまい、申し訳ございません。ですが、申し訳ないことに、私もあの屋敷の事については詳しく存じないのです。あの屋敷は白井本部長の管轄にあり、研究部門の統括担当は副社長でした。ですが私は長年、社長秘書の方を務めてございまして、他の役員の担当については詳しく存じ上げません」
 愛原「どうしても知らないと?」
 執事「ですので、社長も警察の取り調べなどにロクに答えることができなかったようです。その……こういう言い方は乱暴ですが、社長はお飾りの状態だったので。アンブレラコーポレーション・インターナショナル日本支部のお飾り支部長としての存在だったと……こういうわけです」
 愛原「あの屋敷のことについて何か詳し……ああっ!」

 そこで私は気づいた。
 何でこんなことに気づかなかったのだろう。

 愛原「あなたの弟はまだ生きているんですよね!?」
 執事「は、はい。千葉刑務所で懲役10年の刑を受けまして、服役中でございます」
 愛原「千葉刑務所か……」

 初犯ではあるが、いきなり10年以上の長い懲役刑を受けた者が収監される刑務所である。
 それに対し、懲役5年の刑を受けた五十嵐元社長は、初犯で懲役10年未満の者が収監される府中刑務所にいたとのこと。

 愛原「弟さんのお名前は?」
 執事「沖野献と申します。因みに私は、沖野貢と申します」
 愛原「2人合わせて、『貢献』か」
 執事「さようでございます。アンブレラに貢献することが我が国、引いては世界の人々の為に貢献することになると信じておりましたが、実態は御存知の通りでございました」
 愛原「それは残念でしたな。あなたの弟さんに直接面会して、真相を聞こうと思います」
 リサ「でも先生、面会は家族とか親族とか、弁護士さんとか、顔見知りの人でないとできないんじゃ?」
 愛原「そこでまずは、手紙のやり取りさ。兄であるあなたにも協力して頂きたいのですが」
 執事→沖野「は、何でございましょう?」
 愛原「あなたと弟さんの兄弟仲はどうでしたか?悪い方でしたか?それとも良かった方?」
 沖野「恐らく普通だったと思います。子供の頃はよくケンカもしましたが、絶交するほどのケンカはしませんでしたし、逮捕前は親族の集まりがあると、一緒に顔を出しておりましたので。とはいえ、しょっちゅう顔を合わせるわけでもありませんでした」
 愛原「では、あなたが弟さんに手紙を出して、私との面会を斡旋して頂くことで、弟さんが受けてくれる可能性はありますか?」
 沖野「あると思います。……承知致しました。直ちに弟に手紙を書いて、愛原様の面会を受けるように伝えておきます」
 愛原「ありがとう。私も手紙を書いてみるけど、なるべく急ぎ……速達でお願いできるかな?」
 沖野「かしこまりました」
 愛原「気絶した私を連れて行った警備員達は、今どうしているか分かりますか?」
 沖野「恐らく警備員達というのは、JUSS(日本アンブレラセキュリティサービス)の警備員達ですね。残念ですが、こちらも存じ上げません。その警備会社もアンブレラ100%出資の子会社ということもあり、同じく信用を失って倒産してしまったものですから。再就職もままならなかったと聞いております」

 慢性的な人手不足の警備業界だ。
 普通は同業他社から引く手があるだろうが、さすがに火中の栗を拾うことはしたくなかったようだ。

 愛原「分かりました」
 沖野「それでは私は、弟への手紙をしたためて参ります」
 愛原「ありがとう」

[7月2日09時30分 天候:晴 ペンション『いたち草』駐車場]

 チェックアウトした私達は、駅まで送ってもらえることになった。
 車はトヨタのプロボックスである。
 しかし、運転席や助手席のドアの所には、『ペンション いたち草』という文字が書かれていた。
 送迎しようと思えば、できるのではないか。
 私とリサはリアシートに乗り込み、執事の沖野氏が運転席に乗り込む。
 これが高級車ならサマになるだろうに、4ナンバーの商用車という辺りが何ともミスマッチだ。

 沖野「最終的には駅まで送らせて頂きますが、立ち寄らせて頂きたい所がございます」
 愛原「どこですか?」

 すると沖野氏は、私に封筒を見せた。

 沖野「御依頼通り、弟宛ての手紙をしたためさせて頂きました。速達で送付する御用意もできてございます」

 確かに封筒には上部に赤い線が入り、『速達』と赤字で書かれていた。

 沖野「ですが、切手がございません。途中で切手を購入し、ポストに投函する所を見届けて頂きたいのです。これがせめてもの、私の愛原様に対する誠意でございます」
 愛原「分かりました。そういうことでしたら、それでお願いします」
 沖野「かしこまりました。その後で、駅まで送らせて頂きます」
 愛原「分かりました」

 沖野氏は車を発進させた。
 舗装はされているが、1車線だけの狭い道を走る。
 対向車が来たらアウトだが、ペンションに用のある者しか通らない道なので、滅多なことでは対向車と遭遇することはないという。
 善場係長への電話報告は、駅に着いてからしようと思った。
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“私立探偵 愛原学” 「一夜明けたペンション『いたち草』」

2025-02-03 15:18:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日07時00分 天候:晴 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』301号室]

 

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。
 電波は入らないものの、それ以外の機能なら使える。
 私は手を伸ばしてアラームを止めた。
 隣のベッドではリサが寝ている。
 麻酔がよく効いているらしく、夜中に起き出すことは無かった。
 私は起き上がると、バスルームに向かった。
 最初に入室した205号室にはトイレと洗面所しか無かったが、それより豪華な301号室はバスルームがある。
 温泉に入ろうかとも思ったが、リサを1人にしておくのはどうかと思い、それは諦めた。
 ただ昨夜、執事が貸切風呂を解放してくれたので、昨夜はそこに入った。
 その前に入った大浴場をコンパクトにした感じで、家族風呂としてはちょうど良い感じであった。
 バスルームの洗面所で顔を洗ったり、トイレを済ませる。
 戻ると、リサはまだ寝ているが、寝返りを打ったりしているので、そろそろ目が覚めるだろう。

 愛原「リサ、そろそろ起きろ」

 私がリサの肩を布団の上から揺すった。

 リサ「ウ……」
 愛原「!?」
 リサ「ウガァァッ!!」

 リサは鬼形態のまま飛び起きた。
 が、すぐに赤い瞳を私の方に向けて剥いた牙を隠す。

 リサ「あ……先生」
 愛原「寝ぼけてるんじゃない!もう朝だぞ!」
 リサ「朝……?朝ぁっ!?」
 愛原「そうだよ。さすがに今日は天気がいい」

 私はシャッとカーテンを開けた。
 梅雨晴れの強い朝日が部屋に差し込んで来る。

 リサ「うお、眩しッ!」

 リサは昨日着てた服のまま寝ていた。
 まあ、脱がすわけにも行かなかったし……。

 愛原「お前も早く朝の支度をしろ。朝8時に朝食が来るから」
 リサ「はーい」

 リサはベッドから起き上がった。

 リサ「うわ、制服のまま!」
 愛原「しょうがないだろ。脱がすわけにはいかなかったし……」
 リサ「先生ならいいのに……。とはいえ、ちょっと臭っ」

 リサの体臭が強くなっていた。
 自分でも分かるほどに。
 昨夜、両親による自分の製造工程を観てオ○ニーしていたからだろう。

 愛原「シャワーでも浴びろよ。この部屋、シャワー付いてるから」
 リサ「ホントだ!部屋が違う!」
 愛原「昨夜の斉藤さんの部屋を使わせてもらうことになったんだよ。こっちの方が広いしな」
 リサ「ふーん……」

 リサは自分の荷物の中から替えの下着を取ると、臭う服を脱ぎ始めた。

 愛原「おいおい、バスルームの中で脱げよ」
 リサ「いいじゃない。わたし達、夫婦なんだから」
 愛原「オマエ、まだ17歳だろ」
 リサ「魂の年齢は五十ン歳」

 リサは結局、上のポロシャツだけ脱いだ。
 その下は白系のブラを着けている。

 リサ「あーあ。白だと汚れが目立つんだよねぇ……」

 リサはブツクサ言いながら、バスルームの中に入って行った。
 今着ていた下着は普通の4/3カップブラと、ショーツだったが、着替えとして持って行った下着は黒のカルバンクラインだった。
 バスルームの中からシャワーの音が聞こえた時、部屋の内線電話が鳴った。
 洋風のアンティークなデザインのダイヤル式電話である。
 なので着信音もジリジリベルである。

 愛原「はい、もしもし?」
 執事「おはようございます。フロントでございます。御朝食は予定通り、8時で宜しゅうございますか?」
 愛原「あ、はい。それでお願いします」
 執事「かしこまりました。それで御相談なのですが、チェックアウトの御予定は何時になさいますか?」
 愛原「そうだなぁ……。ここは10時だったよね?」
 執事「さようでございます」
 愛原「このペンションの最寄りの駅から、10時台の高崎方面の電車に乗りたいとは思っているよ」
 執事「かしこまりました。実は御主人様を警察署にお迎えに参るに当たり、ついでと言っては何ですが、愛原様方を駅までお送りできればと思いまして……」
 愛原「あ、そうなんだ」

 結局、オーナーは警察署に一晩泊められたらしい。

 執事「設備の不具合について、建築基準法とか、消防法とか、そういうことを警察は捜査したがっているようなので、その前にチェックアウトされることをオススメします」
 愛原「分かりました。では、是非車に乗せてください」
 執事「かしこまりました。では、後ほど御朝食をお持ち致します」
 愛原「宜しくお願いします」

 電話を切ってから、私は首を傾げた。
 このペンションのシェフでもあるオーナーは警察署に留置されているのに、朝食は誰が作ってくれるのだろうかと。

[同日08時00分 天候:晴 同ペンション301号室]

 リサは予想通り、カルバンクラインなら平気とばかり、その下着上下だけでバスルームから出て来た。
 そして、バッグの中から着替えのブラウスを取り出して着替えた。
 ポロシャツは1着しか持ってきていなかった為、着替えとしてのもう1着は半袖のブラウスだ。
 替えのスカートは無いのだが、仕方が無い。

 リサ「あーあ、スカート少しシワになってる」
 愛原「スカートの替えなら、家にあっただろう。それは後でクリーニングだな」
 リサ「うん」

 という会話をしていると、部屋のドアがノックされた。

 執事「失礼します。おはようございます。御朝食をお持ち致しました」

 ワゴンに乗せて、執事が朝食を運んで来る。

 

 オムレツとウィンナーと生野菜だった。
 他にロールパンが2つ。
 オーソドックスな朝食だった。
 聞くとこれは、執事が代わりに作ったものだという。

 執事「お飲み物は何になさいましょう?」
 愛原「コーヒーを」
 リサ「オレンジジュース」
 執事「かしこまりました」

 執事は、まるで車内販売のワゴンに乗っているようなポットからコーヒーを注いだ。
 オレンジジュースに至っては、ミニッツメイド。

 執事「それでは、ごゆっくりお過ごしください」
 愛原「ありがとう。……後で話、いいかな?」
 執事「は、かしこまりました」

 執事は頷くと、空になったワゴンを押して退室した。
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“私立探偵 愛原学” 「梓弓執りて」

2025-02-02 21:04:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月1日24時00分 天候:不明 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』地下3階]

 私がしばらくリサを探していると、ようやくリサは見つかった。
 資料室は2層構造になっており、私がいる場所は上層部。
 恐らく地下中3階と思しき場所。
 リサは下層部の地下3階にいた。
 リサもまた、何かの映像を観ているようだった。
 だが、様子がおかしい。
 ヘッドホンをしているので、音声は聞こえないが、リサはオ○ニーしているようだった。
 グチョグチョという音が聞こえてくる。
 まさか、こんな所にエロDVDでも保管されていたのだろうか?
 私は階段をそっと下り、リサの背後にそっと近づいた。
 性的興奮のせいで人間形態から鬼形態に戻っており、角が生えているのが見えた。
 一体何を観ているのだろうと、モニタを覗き込んでみると、随分古い映像であった。
 往年のポルノ動画だろうか?
 確かに、最近のエンターテイメント性に寄り過ぎているAVと比べ、平成時代初期から中期くらいのAVの方が『いかにも』的な感じで良いかもしれない。
 とはいえリサ、まだ3ヶ月早いぞ。
 AVも18歳になってからだ。
 リサの誕生日は10月1日である為。
 いや、それにしても……映像が古過ぎるな。
 平成どころか、昭和時代か?
 となると、日活ロマンポルノとか……。
 いや、何かそれも違う。

 リサ「お母さん……お母さん……お父さん……お父さん……!い、イク……イク……ゥゥッ!!」
 愛原「え?」

 リサが何故かそんなことを言いながらイッた。
 何で、お母さんとお父さんなんだ?
 何か、そういう設定のポルノ作品なのか?
 だが、大きく後ろに仰け反ったリサに見つかった。

 リサ「ア……?」
 愛原「り、リサ……。そ、そういうのは、18歳になってから観ようね」

 私は作り笑顔で言った。
 まあ、パチンコ店などにしても、表向きは18歳であっても高校生はダメとか言ってるが、私服に着替えた18歳が高校生とは分からんだろう。
 ここにいるリサは、制服姿であるが……。

 リサ「ダーリン……」

 リサは牙を剥いたまま、涎を垂らした。

 リサ「お母さんとお父さんの映像見つけたよ……」
 愛原「ええっ!?」

 すると、画面内の男が呻いて射精したようだ。
 その男には、見覚えがあった。
 もちろん、実際に見たわけではない。
 しかし、写真で見たことがある。

 愛原「上野医師……!?」

 リサの実の父親とされる上野医師であった。
 すると今、膣内射精されたのは……随分と若い女であった。
 ここにいるリサと遜色ない年頃だが、リサよりはグラマーである。
 上野医師は北東北から南東北まで、逃亡の旅を続けていた。
 その際、リサの実の母親とされる斉藤玲子と一緒であった。
 そして逃亡の最中、2人はずっと貞操を守っていたわけではない。
 親子ほど歳の離れた2人であったが、逃避行初期の頃から既に両想いであり、少しでも安全が確保されれば、性交に及んでいたという。
 斉藤玲子が逃避行を開始したのは14歳、最終的には17歳の時に福島県桧枝岐村の郊外に落ち着き、上野医師との間に何人もの子供を産んだと聞いている。
 だが、そこへ白井伝三郎率いる日本アンブレラが乗り込み、2人を殺害、娘達は日本版リサ・トレヴァーとなるべく、全員拉致されている。

 愛原「すると、あれは斉藤玲子……」

 心底満足そうな笑みを浮かべる斉藤玲子は、リサと顔はよく似ていた。
 リサの地頭が良いのは、父親が医師だからだろう。

 リサ「お父さんね、こういう映像を残していたんだよ……。何の為だかは知らないけど。でもねぇ、わたしもヤりたい。当然……先生……ダーリンと……!!」

 リサは両手の爪を鋭く長く伸ばし、唸り声を上げて飛び掛かって来た。
 性欲と食欲が入り混じった人食い鬼娘そのものだった。

 愛原「待て待て待て!」

 私は近くにあったモップを取ると、飛び掛かったリサの口を挟んだ。

 愛原「お、落ち着け!落ち着けって!!」
 リサ「ウウウ……!ガァァァァァッ!!」

 何て力だ!
 これが鬼型BOWの力……!
 私が諦めかけた時だった。
 リサの背後から銃声が聞こえた。

 リサ「ガハ……ッ……!!」

 それはリサに被弾し、リサは私に倒れ込んだ。
 何が起きた?
 リサは頭を撃ち抜かれても死なないはずだが……。

 執事「危ないところでしたな」

 リサの背後には、ライフルを持った執事が立っていた。

 執事「お怪我はございませんか?」
 愛原「だ、大丈夫。だけど、どうやって?リサはマグナム撃ち込んでも死なないぞ?」
 執事「これは麻酔銃です。日本アンブレラは、BOWが脱走してしまった場合、射殺の他に麻酔銃を使って動きを止めるという事もやっていました。この辺りは山の中ということもあり、野生動物も出没しますから、表向きにはその対策用として、麻酔銃の所持は許可されています」
 愛原「それがリサに効いたのか?」
 執事「一か八かでした。本当はハンター用ですが、日本版リサ・トレヴァーにも効いたようですな」
 愛原「そうか……」

 私は立ち上がった。
 確かにリサは意識を失っているが、呼吸はしているから、生きているようだ。

 愛原「オーナーは?」
 執事「公務執行妨害の容疑で、吾妻警察署に行かれました」
 愛原「えっ?何したの?」
 執事「御主人様自体は、何もされておられません。まあ、管理者責任といったところでしょうか」

 パトカーから警察官2名がやってきて、オーナーとエントランスホールで話をしていた。
 ところが、突然警察官達が立っている場所に穴が開き、2人はそこに落ちてしまった。
 落ちた先は地下1階の大浴場。
 2人の警察官は、そのまま湯船にダイブしてしまった。

 執事「どなたかが、施設のギミックを作動させてしまったようです。どなたかが」
 愛原「ギクッ!」

 も、もしかして、暖炉の取っ手を最初に引いた時、『ガコン』という音がしたのだが、それのことか!?

 愛原「え、えっとぉ……それは……」
 執事「まあ、古い建物ですし、設備も古くなってございますから、たまたまそういう不具合が発生することもあるのでしょう。たまたま」
 愛原「た、たまたまね……」
 執事「とはいえ警察官達の心証を著しく悪化させてしまったことは事実。御主人様は警察官達を追い出す為に、わざとあのギミックを作動させたのではと疑われ、警察署に連れて行かれました」
 愛原「ま、まさか逮捕なんてことは……」
 執事「あくまでも任意同行です。取り調べが終われば、戻って来られることでしょう」
 愛原「そ、そう……」
 執事「それより、何か興味のある物はございましたか?私共は、捜査にはいくらでも協力させて頂く用意がございます」
 愛原「えっとね……2つあります」

 私は長野県白馬村の屋敷の動画と、リサが観た動画の2つを所望した。

 執事「ほほぉ……。これでございますか。さすがは愛原様、お目か高うございます」
 愛原「1つ、教えて欲しい。この動画に出ている執事は、あなたにそっくりだが、同一人物ではないのでしょう?」
 執事「お察しの通りです。長野で働いていた男は、私の双子の弟でございます。私は兄です」
 愛原「そうだったのか。その弟さんは?」
 執事「最初は白井本部長の秘書を務め、その後は副社長の秘書を務めておりましたが、今は刑務所の中です。……ええ、副社長があのような感じですから、弟も共犯として裁かれました。ただ、弟は控訴することはなく、地裁判決に従い、今は服役中です」
 愛原「そうか。あなたは社長秘書だったから、ギリギリ裁かれずに済んだのか」
 執事「はい。もっとも、逮捕されて取り調べは受けましたが、最終的には起訴猶予となりました」
 愛原「そうかそうか」
 執事「どちらも、古いVHSテープですね。特に、リサ様が御覧になっておられた物は劣化が激しゅうございます。お時間は頂きますが、宜しければ私共の方でDVDに焼き直させて頂きますが、いかがでしょうか?」
 愛原「そう、ですね。じゃあ、お願いします。ただ、一応、原本も頂けないでしょうかね?」
 執事「はい。お時間は頂きますが、御希望に沿えるようにさせて頂きます。まずは、お部屋へどうぞ。宜しければ、サトウ様がお使いになっておりました301号室をお使いになりませんか?翌朝の御朝食も、そちらにお持ちさせて頂きますが?」
 愛原「あー……そうだな。まあ、もう斉藤さんは戻ってこないだろうし、ベッドも綺麗だったし、そうさせてもらおうかな」
 執事「かしこまりました。では、どうぞ。エレベーターへ。御案内させて頂きます」

 私はリサを背負い、執事の先導で別のエレベーターに乗り込んだ。
 こちらは地下3階と3階だけでなく、各階のボタンが付いていた。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原の記憶」

2025-02-02 17:26:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月1日23時00分 天候:曇 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』地下3階]

 ペンションの地下3階は書庫や資料室になっていた。
 中は案外広い。
 埃っぽいが、朽ち果てているわけではないから、今でも使われているのだろうか?

 愛原「クリーチャーやBOWはいそうかな?」
 リサ「うーん……そんな感じはしないねぇ……」

 資料室程度だと、そんなものは保管されていないか。

 愛原「ん?」

 本棚と本棚の間には、映像資料も保管されていて、それが閲覧できるようになっていた。
 DVDプレイヤーとモニターとヘッドホンが置かれている。

 愛原「『バイオハザードリベレーションズ』?何だこれ?」

 私はこのDVDを再生してみた。
 するとそれは、2004年に地中海で起きたテラグリジアパニックの真相を映した動画が入っていた。
 即ち、実行犯たる宗教テロ組織ヤング・ホーク団……もとい、ヴェルトロのボス(ジャック・ノーマン)と、それを依頼したFBCの長官(モルガン・ランズディール)の闇取引の隠し撮り映像だった。
 彼らは英語で喋っているが、編集済みなのか、ご丁寧に日本語の字幕がついている。

 ジャック「……して、散布手段は?」
 モルガン「用意した偽装客船にUAVを積んでおいた。散布に使えるだろう」
 ジャック「いいだろう。では、ブツを見せてもらおうか?」

 モルガン、ジュラルミンケースを粗末な木製テーブルの上に置き、ジャックに向けてそれを開く。
 中には紫色をしたガラス製の大きなアンプルが数本入っていた。

 モルガン「Tアビスだ。ワクチンは無い。まだな」
 ジャック「まあ、そうだろう。これだけの量で町1つをひっくり返せるというわけだ」
 モルガン「話は済んだ。帰らせてもらうよ」
 ジャック「……誰も想像付かないだろうな?我々、忌むべきテロリストに力を与えたのが、親愛なるFBCの長官殿であるとは……」

 ここで映像は終わっている。

 愛原「へえ……。これ、デイライトさんの資料映像で観たことあるけど、やっぱりアンブレラが関わっていたのか」

 もっとも、アメリカ本体のアンブレラはその時点で倒産している。
 独立採算制で設立された日本法人、日本アンブレラ製薬だけが、その後何年かしぶとく生き残ったわけだ。

 愛原「こういう資料映像が他にもあるかもしれないな。それも、まだデイライトさんが持っていないようなヤツ」
 リサ「そうだね」
 愛原「よし、手分けして探そう。ホテル並みに広いペンションの地下だから、ここも割と広い。迷子にならないようにな?」
 リサ「うん」

 私とリサは手分けして、貴重な映像を探した。
 デイライトやBSAAから見せられたことのない映像が手に入れば万々歳だ。
 他にも資料とか……。
 ……因みに、私が個人的に探しているものがある。
 それは、長野県の屋敷を訪れた時に起こった記憶障害。
 アンブレラなどの組織は、逐一映像に残しているようだから、私の身に何が起こったのかも分かれば良いと思ったのだ。

 愛原「うん?」

 エレベーターは地下3階まで下りたが、どうやら資料室は2艘構造構造になっているようだった。
 階段が中央にあり、それを昇ると、また本棚が並んでいたからだ。
 ここは地下2階、あるいは地下中3階(エレベーターの表示的には、『MB3』と表記されるフロア)なのだろう。
 そこは照明が点いていなかったが、階段を昇った先に、先ほどエレベーターの横にあったのと同じレバーがあったので、それを操作してみた。
 すると、ここも照明が点いた。

 愛原「本当に、結構広いんだなぁ……」

 私が首を傾げていると、ある物を見つけた。
 それは1本のVHSテープ。
 DVDに焼かれているだけではなく、VHSそのままのヤツもあるのだ。

 愛原「ん!?」

 拾って見てみると、ラベルの所には、『長野 白馬 探偵A』と書かれていた。
 こ、これはもしかして……!?
 私はすぐに近くのモニターに移動した。
 幸いそこにはDVDデッキだけではなく、VHSデッキもある。
 それを再生してみた。

 愛原「ああっ!?」

 その映像は正しく、私が昔、訪れた長野県白馬村の屋敷であった。
 視点は……あの執事か!?

 愛原「あ、あの……私は……」

 玄関の向こう側から、若かりし頃(今から15年くらい前)の私が入って来る。

 愛原「ぱ、『パンツ穿かせてください』!」
 執事「どうぞ。中で御主人様がお待ちです」

 あの執事の声がした。
 どうやら執事がカメラを回しているらしい。
 しかし、私の記憶では執事はカメラは持っていなかったはずだ。
 恐らく、着ていたタキシードの中に小型カメラを隠し持っていたのだろう。
 屋敷内はこのペンションよりも更に薄暗かったし、執事が着ていたタキシードも黒かったので、黒いレンズのカメラには気づかなかったのだ。

 愛原「『あなたと一緒に食事がしたいな』」

 執事の後ろを付いて行く過去の私が、要所要所で暗号を執事に伝える。
 そして、過去の私が主人の部屋の前に着く。
 ここで私は、『ありがとう』と礼を言って、執事の頬にキスをするはずだ。
 もちろん妙な趣味があってやったわけではなく、これも暗号の1つである。
 そうしてやっと主人の部屋に入ろうとした時、中から叫び声がして、主人の部屋に飛び込んだら……そこで私の記憶が途切れているのだ。
 私が知りたいのは、記憶が途切れている間、何があったのかだ。
 ところが!!

 愛原「ん!?え?え?え?」

 画面を観ている私は狼狽した。
 何故なら、画面の中の過去の私は、今の私の記憶と違う行動をしたからだ。
 画面の中の私は、普通に主人の部屋をノックした。
 すると!

 執事「ノックと言えば、横山ノック~~~~~!!」

 執事がタキシードの中から警戒棒のようなものを取り出すと、それで私の頭を殴り付けた。
 いきなり後ろから殴られた過去の私は、抵抗する間も無く、後頭部から血を噴き出し、主人の部屋のドアに叩きつけられるかのように倒れ、そのまま動かなくなった。

 愛原「!?!?!?」

 私は何が何だか分からなくなった。
 記憶と違うぞ!?
 どういうことだ!?
 映像に映る来客は、私で間違いない。
 40年以上付き合った自分の顔を忘れるわけがない。
 私が茫然としていると、主人の部屋のドアが開いた。

 白井「またサンプルが見つかったようだな」

 何と、それは白井伝三郎!
 五十嵐皓貴元社長ではなかった!

 執事「ははっ!」
 白井「いつもの通り、例の場所へ運んでおけ」
 執事「ははっ!大沢警備長!」
 大沢「はっ!」

 どこからともなく、警備服を着た守衛が2人ほど現れて、倒れた私を担架に乗せて運んで行った。

 執事「……このようなこと、群馬の兄には到底言えませぬ」
 白井「悪かったな。だが、この仕事は今夜で最後だ。上野博士の居場所が見つかったからな」
 執事「何と……!」
 白井「私は私で明日、ここを発つ。社長にそう伝えておけ」
 執事「かしこまりました。白井本部長」

 ここで映像は終わっている。

 愛原「…………」

 私は……一体何をされたんだ???
 と、とにかく、このテープは頂いていこう。
 とんでもない証拠品だ。

 愛原「そ、そうだ。リサは……?」

 私はヨロヨロと椅子から立ち上がると、リサを探すことにした。
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“私立探偵 愛原学” 「ペンションの地下」

2025-01-30 20:20:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月1日22時00分 天候:曇 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』3階プレイルーム&バー]

 リサがスロットマシーンに興じている。
 オーナーが戻ってくる様子は無いし、窓から外を見ていても、まだパトカーが止まっている状態だ。
 どうする?
 こちらから出向いて、警察と合流しようか?
 そう考えていると……。

 リサ「やった!クイーン・ゼノビア全部揃った!」
 愛原「な、なに?」

 マティーニを飲み終わった私がスロットマシーンに近づくと、船の絵柄が揃っていた。
 他にも浮き輪や錨、舵輪の絵が描かれている。
 もしかして、本当に地中海でバイオハザードを起こした豪華客船“クイーン・ゼノビア”号のカジノにあった物だったのだろうか?
 メダルがジャラジャラと出てくる。
 そこで気づいたのだが、カジノバーでもある以上、VIPルームがあるのではないかと思った。
 壁際には、他にも暖炉がある。
 本当に燃やすのではなく、ただのオブジェであろう。
 私がそちらに注目したのは、ジャラっと鎖が動く音がしたからだ。

 愛原「ここに何かあるのか?」

 私が暖炉の中を覗いてみた。
 ただの飾りの為に、あまり奥行きは無い。
 だが、入って上を見ると、取っ手がぶら下がっているのが分かった。
 鉄製の三角形の吊り革のような形をしている。

 愛原「何だこれ?」

 私が引っ張るとガコンという音がした。

 愛原「ガコン?」

 しかし、目に見える範囲では何も起きていない。

 愛原「何か、変な音がしたが、何かあったか?」
 リサ「ううん」

 リサは首を横に振った。
 一旦暖炉から出たが、特にプレイルーム内でも何か起きたようでもなかった。
 どこか別の所で音がしたらしい。
 だが、この部屋から出るわけにはいかなかったので、探索を続けることにした。

 愛原「どうやら、そのスロットマシーンで勝つと、ギミックを操作できる仕掛けらしい」

 ここが元々、日本アンブレラの施設であったことを思い出した。
 ペンションとしてリニューアルされてからも、ギミックが完全に封印されたわけではないのだろう。
 あのエレベーターが普段停止されているのも、通常の昇降以外に、何か仕掛けが施されているからかもしれない。

 リサ「こっちのトランプゲームは?」
 愛原「よし、やってみよう」

 トランプ台にあるものとは別。
 最近のカジノにもあるそうだが、画面でコンピューター相手にゲームをするというもの。

 ルーカス・ベイカー「今日のお相手は、コイツだぁーっ!」
 愛原「ビックリした!」

 画面一杯に、白人の若い男が目一杯に映し出される。
 その狂気じみた笑顔が、カメラから離れる。
 カメラが動くと、そこには麻袋を被った者が座っていた。
 目の所と鼻の所だけ穴が開いている。

 ルーカス「赤コーナー、ホフマーン!」
 愛原「プロレスか!」
 リサ「これ、何のゲーム?」
 愛原「ブラックジャックらしい」
 リサ「ブラックジャック?」

 リサは目を丸くした。

 リサ「できるの?」
 愛原「何とかな」

 そして……。

 ルーカス「このゲームに勝ったのはァ~?……ミスタぁ~、アイハラぁ~ッ!!」
 愛原「何でコイツはノリがプロレスの司会みたいなんだ?」
 リサ「BSAAに殺された人だよね?」
 愛原「違う。“青いアンブレラ”だ。最後は体に注入した特異菌が暴走してな、“青いアンブレラ”の特別顧問をしていたBSAAのクリス・レッドフィールド氏に倒されたんだ」

 もちろん、画面の中のルーカスは変化前の人間の姿をしているが。

 ルーカス「負けたホフマンはァ~?……残虐切り裂きの刑だぁぁぁぁぁぁっ!!」
 ホフマン「ぎゃああああああああっ!!」
 愛原「おい、これ造ったのどこのメーカーだ!?」

 しかしどこにもラベルが貼られていない。

 ルーカス「このゲームに勝ったミスターアイハラには、次なるゲームにチャレンジしてもらうぜ。今、音がした所をよーく調べてみな。そんじゃ、チャオ!」

 ブツッと画面が消える。
 するとまた暖炉の方から、鎖がジャラジャラと音を立てるのが聞こえて来た。

 愛原「今度は何だ?」

 再び暖炉の中に入る。
 すると、また同じ取っ手が別の所から伸びていた。

 愛原「よし、引っ張ってみるぞ」

 私はそれを引っ張った。
 すると、ゴロゴロと目の前で何か引きずる音がした。
 暖炉の向こうの壁は引き戸になっていて、それが開いたのだ。
 開くと同時に、向こう側の照明がパッと点灯する。

 愛原「よし、行ってみよう」
 リサ「うん」

 そこへ屈みながら入ると、エレベーターになっているのが分かった。
 反対側にも扉がある。
 しかし、先ほど乗ったエレベーターと違い、格子状の扉になっているわけではない。
 普通の鉄扉であった。
 ボタンを見ると、今いる3階と地下3階しかボタンが無い。

 愛原「地下3階があるのか?」

 私はそのボタンを押した。
 すると、今入ってきた小さな扉が閉まり、エレベーターが動き出す。

 愛原「一体、どこへ連れていかれるんだろう?」
 リサ「多分、研究施設だろうね。ハンターとかいたりして?」
 愛原「いやいや。ここもBSAAが訪れているはずだぞ?地下の研究施設だって、捜査されているはずさ」
 リサ「それもそうか」

 オーナーはTウィルスを研究していたというから、まあ、いるとしたらハンターかタイラントか。
 あいにくと武器は持って来てはいないが、ハンターくらいならリサが簡単に勝つし、日本製のタイラントは日本版リサ・トレヴァーの命令で動くことを前提として製造された為、リサの命令なら何でも聞くから危険は無い……はずだ。

 愛原「着いた」

 ガコンと古いエレベーターならではの振動付きで停止した。
 そして、チーンというベルと共に、反対側のドアが開く。

 愛原「これは……」

 エレベーターの明かりに照らされた先は真っ暗だったが、少なくとも研究施設ではないことが分かった。
 本棚がズラリと並んでいることから、書庫、資料室のようである。

 愛原「電気は点くかな?」
 リサ「このスイッチ?」
 愛原「それだ」

 古めかしい上下に操作するタイプのレバーを、リサは下にガチャンと動かした。
 すると、この空間の照明がパッパッと点灯する。
 エレベーターの照明も含めて、ここの照明も蛍光灯だった。
 停電したり、断線しているわけではないことから、今も使用されているのだろうか?
 私達はこの書庫を探索することにした。
 
コメント
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