報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「月曜日の夕方」

2025-02-10 20:32:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日16時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所→ 同区菊川3丁目 墨田菊川郵便局]

 パールが買い物から帰って来るまでは、事務所を空にはできない。

 パール「これから郵便局に?それなら、私が行きますよ」
 愛原「いや、いいんだ。パールは暑い中、買い物に行ってくれたし、今度は俺が行くよ」
 リサ「私も行く!」
 パール「そうですか。ということは、これから郵便局に?」
 愛原「そう」

 レターパック2つ分に分ければ送れそうだが、それよりはダンボール1箱に纏めた方が料金も安く済むというもの。
 貴重なVHSテープとDVDということもあり、沖野貢氏は1つずつプチプチで梱包してくれていた。
 今度は私がその意気をデイライトさんに見せる番だ。

 愛原「というわけで、留守番よろしく」
 パール「かしこまりました。……あ、先生」
 愛原「ん?」
 パール「郵便局に行かれるのでしたら、これもお願いできますでしょうか?」

 パールは1通の封筒を私に差し出した。
 それは高橋宛ての手紙であった。
 宛先は東京拘置所から、再逮捕先の本所警察署になっている。
 高橋を再逮捕するのに、本所警察署が動いた理由は不明だ。
 この菊川地区も管轄している警察署で、高橋の現住所はここだからだろうか。

 愛原「分かった。速達にしておこうか?それとも簡易書留?」
 パール「い、いえ。普通郵便で結構です」
 愛原「遠慮しなくていいのに」
 パール「留置場に入っているマサを気遣うだけの内容で、特に急ぎの内容とかは書いてないので」
 愛原「そうか?」

 今日は弁護士の秤田先生が高橋の面会に行ったと思うが、まだその結果は来ていない。

 愛原「まあいいや。とにかく、行って来る」
 パール「行ってらっしゃいませ」
 リサ「行ってきます」

 Tシャツにショートパンツに着替えたリサが、私の腕を取った。

 愛原「お前は来なくてもいいんだぞ?」
 リサ「わたしも途中で買いたい物があるから」
 愛原「何だそりゃ……」

 というわけで、家から徒歩5分くらいの所にある郵便局に向かった。
 空は太陽が雲に隠れ、ジリジリとした照り付けは無いものの、非常にムシムシしている。
 こりゃまた夜は雨でも降ってくるのだろう。
 というか、天気予報ではそうなっていたはずだ。
 曇り方からして、夜とは言わず、もっと早くから降ってくるかもしれない。
 菊川駅前の大きな交差点を渡り、その先の郵便局に入る。

 リサ「先生、ポストに入れないの?」
 愛原「パールはああ言ったけど、今ポストに入れても回収は明日になる。そうなると、届くのは明後日だ。せっかくの愛の手紙、早めに届けてあげたいじゃないか」
 リサ「さすがは先生!」

 郵便局の中は、さすがに冷房が効いて涼しい。
 記帳台に行って、ゆうパックの伝票を書く。
 善場係長は着払いで良いと仰ったので、ここは素直に着払いの伝票に記載する。
 ……え?日頃からお世話になっている大口顧客なのだから、送料サービスにしろって?
 もちろん、相手が民間人または民間企業だったらそうする。
 だが、相手はNPO法人の名を借りた国家公務員の集団だ。
 こういう会計関係もきっちり管理しているのだろう。
 着払いと織り込んでいるのに、勝手に発払いにして書類の書き直しをさせるようなことになったら、逆に迷惑ではないか。

 愛原「すいません、ゆうパックと、この手紙を速達でお願いします」
 局員「かしこまりました。ゆうパックは着払いですね?」
 愛原「そうです」

 時間指定については特に何も言われなかったが、一応、午前中指定にしておいた。
 明日も平日だから、仮に善場係長が不在だったとしても、他の職員が受け取ってくれるはずだ。

 愛原「あと、これを速達で」
 局員「かしこまりました」

 既に切手は貼ってあるので、その差額分を請求される。
 もちろん、ここは私が出してあげることにする。
 ゆうパックと速達の控えをもらうと、私達は郵便局をあとにした。

 愛原「あとは係長に『ゆうパック送りました』とメールするだけ」

 私は伝票の控えをスマホのカメラで撮影すると、それを添付して報告した。
 ちゃんと送ったという証拠になるし、追跡番号も分かるので、係長側からも荷物の行方を調べることができる。
 速達郵便に関してはそういった番号が無いので、明日届くのを期待するだけだ。
 まあ、明日届いてもすぐ本人には渡されず、検閲されてから本人に渡されるシステムだろうが。

[同日16時20分 天候:晴 同区菊川2丁目 ファミリーマート墨田菊川駅前店→愛原学探偵事務所]

 ついでにゆうちょ銀行のATMで自分のポケットマネーを少し下ろしてから、リサに手を引かれて菊川駅前のコンビニに入った。
 ここも冷房がよく効いている。
 リサが買ったのは、おやつはもちろんだが、生理用のナプキンなど、女の子ならではの物だった。
 そういった物ならパールに頼めば買って来てくれるだろうが、パールの行きつけのスーパーだと、なかなか売っていないのだそうだ。
 自分に合うナプキンは、何故かこういうコンビニに売っているとのこと。
 尚、ドラッグストアに行けば、確実に手に入るらしい。
 残念ながら、男でそういう物が不要な私には、話を聞くことだけしかできなかった。
 ドラッグストアには男性向けにも尿漏れパッドが売られているが、それが合う合わないというのに近いのだろうか。
 もちろん、私はそんなものは使っていない。

 リサ「最近、重くて起きられない日もあるからね。これも少し変えた方がいいと思った」
 愛原「そういえばリサ、そういう時もあるな」
 リサ「鬼型BOWというか、鬼の女はやっぱり『軽い』事が普通みたいだよ。ミキもそう言ってたし、ミキの村の鬼の女達もそうだって。半鬼のリンとリコは、『重い日』」もある」
 愛原「ということはお前、人間に戻れているということになるんじゃないか?」
 リサ「でも、そんな自覚無いよ?あー……最近、電撃とか出せなくなってるかも」
 愛原「やっぱり!」
 リサ「寄生虫とかは出せるけどねw」

 リサは口をモゴモゴさせると、舌をペロッと出した。
 その舌の上には、真っ白なイモムシのような物が載っている。

 愛原「いいよ、見せなくて」
 リサ「んん」

 リサは再び口を閉じると、寄生虫を体の中にしまった。
 この寄生虫は、ただの寄生虫ではない。
 リサの思い通りに行動させ、寄生虫が見ている視点をジャックできるスキルを持つ。
 G幼体が更に超小型化したものではと見られているが、関連性は不明である。
 とにかく、リサが体内に有しているGウィルスによるものなのは明らかである。

 愛原「さっさと帰るぞ」
 リサ「はーい」

 残りの事務作業があるし、リサは再びテスト勉強だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「旅行翌日の月曜日」

2025-02-10 16:03:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月3日08時00分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 学校掲示板に学校新聞が掲示される。
 そこには、毎年恒例の“学校の七不思議特集”が掲示されていた。

 リサ「最近の話題が無いなぁ……」

 七不思議を見てみると、最新の物でも2008年に起こった物とか、怪奇現象全盛期の1990年代の話ばかり。
 それもヒトコワ系ばかりだ。
 結局、幽霊や妖怪が出てくる話の正体は、特異菌による幻覚症状だという真相が分かってしまったからだ。
 それとは無関係のヒトコワ系ばかりが紹介されている。

 淀橋「最近の『学校の怪談』は怖くなくなったね」
 小島「今や、『学校の七不思議』のうち、ほとんどがリサが関わってるものばかりだしね」
 リサ「エッヘン!」

 今や廃れたボクシング部の怖い話は、学校から外れた合宿所内での話だったが、これも結局学園内で特異菌に感染し、その幻覚症状が合宿所内で現れたものとされている。

 淀橋「今回は七不思議の集まりに呼ばれなかったんだ?」
 リサ「どうしてだろうねぇ……」
 小島「魔王様が参加したりして、機嫌を損ねるヤツがいたらバッドエンドになるからじゃない?90年代、バッドエンドになった回とかあったんでしょ?」
 リサ「らしいね。わたしも呼んでくれたら、とびきり怖い話をするのに……」
 小島「存在だけで怖いのに、話までされたらお漏らししちゃいます」
 リサ「いいね!」

 尚、教育資料館に転用されている旧校舎は、未だに再建中とのことで立入禁止のままである。
 これもまた、今回の『学校の七不思議特集』が盛り上がらなかった理由でもある。

 リサ「久しぶりに『血の老廃物』をもらおうかな?ねぇ、2人とも?」

 リサは学校にいる時は基本人間形態なのだが、時折力を解放する時がある。
 ギラッと2人に赤い瞳を見せるリサだった。

 淀橋「御意」
 小島「仰せのままに……」

[同日15時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 リサ「ただいまァ!」
 愛原「お帰り。ん?今日は少し早いな?」
 リサ「期末テスト期間中だからね」
 愛原「マジか。勉強してたっけ?」
 リサ「してたよ!昨日、一昨日は仕事だっただけで。てか、昨日帰ってから勉強してたでしょ?」
 愛原「あー、そうだったか。悪い悪い。俺も仕事が忙して気がつかなかったよ」

 愛原は頭をかいて弁明した。

 愛原「で、テストどうだった?」
 リサ「まあまあじゃない。学校のテストなんて、赤点取らなきゃいいんだし」
 愛原「おいおい。受験生でもあるんだから、それは困るよ」
 リサ「東大とか狙うんだったら、先生の言う通り。それこそ、満点狙う勢いじゃないとダメだと思うけど、わたしは違うから」
 愛原「まあな」

 正直、リサの志望校である東京中央学園大はFランク大学に匹敵するような所なので、付属の高校で赤点を取らないで済む学力なら普通に合格できると言われている。
 なので、わざわざ学習塾や予備校に通う必要が無いわけだ。
 そもそもまだ人間に戻れていないリサの進路はほぼほぼ決まったようなもので、本来なら高校など行かなくても、デイライトに入って善場係長の部下として働くことになっている。
 それが高卒でOKに変わっていたのだが、リサの希望で愛原達は大学に行かせることにした。
 元々は高卒でもいいような採用条件なので、大学も学歴フィルターも掛けられることなく、そのまま採用となる。
 BOWのままのエージェントなど世界初となるので、その筋からは注目されている。
 アメリカではBOWと化す直前にワクチンを投与されたことでそれを防げたものの、残ったGウィルスが遺伝子と融合して驚異的な身体能力を残したシェリー・バーキンや、日本では1度BOWになったものの、すぐに人間に戻れた善場優菜の例がある。
 つまり、BOWのままのエージェントはリサが初めてとなる。
 それが大学進学を機に、4年延長となった。

 愛原「それでも、夏期講習には行くか?」
 リサ「ミキが『一緒に行こう』って言うからねぇ……」
 愛原「学校の友達は?『魔王軍』とか……」
 リサ「皆して行きたい大学がバラバラだから、勉強の仕方が違うんだよ」
 愛原「あらま!」
 リサ「まあ、しょうがないね。どうせわたしが卒業したら、『魔王軍』も解散だよ」
 愛原「そんで、大学でまた『仲間』を作るわけか……」
 リサ「そう!」
 愛原「早く人間に戻れるといいなぁ……」
 リサ「ねー!」

 その時、事務所のインターホンが鳴った。

 リサ「はーい!」
 愛原「いいよ、俺が出る」

 因みにパールは夕食の買い出しに行っている。

 愛原「はい、愛原学探偵事務所です」
 配達員「こんにちは!佐川急便です!」
 愛原「はーい、今行きます」

 愛原がハンコを持って1階のエントランスに向かった。

 リサ「わたしが行ってもいいのにぃ……」

 制服姿だからだろうか?
 今は盛夏服のポロシャツと短いスカートを穿いている。

 愛原「やっと届いたよ。あのペンションからの……」
 リサ「それ、なに?」
 愛原「地下の資料庫で見つけた動画のテープとDVDだよ。あれは貴重な資料だから、デイライトさんも確認したいんだってさ」
 リサ「あのエロ動画を?」
 愛原「両親の記録映像をエロ動画って言うなしw」
 リサ「だってエロ動画だもん」
 愛原「……まあ、内容はな。あとは中身を確認して、デイライトさんに送るだけ」
 リサ「中身を確認!?わたしも観る!!」

 リサは鼻息を荒くした。

 愛原「映像は観ないぞ!ちゃんと届いたかどうかって意味だ!」

 私はそう言うと、段ボール箱の中を開けた。
 すると、原本と思われるVHSテープが2つと、それらをDVDに焼いた物が2枚入っていた。
 それから、添え状も。

 愛原「なるほど。それじゃ、早速、デイライトさんに電話だ」

 私は自分のスマホを取り出し、それで善場係長に掛けた。
 リサは、自分の両親による自分の製造工程記録テープをまじまじと見つめていた。

 愛原「愛原です。お疲れ様です。今しがた、ペンション『いたち草』より、例のテープが届きました。……はい。原本と思われるVHSテープと、それを焼き直したと思われるDVDが2枚ですね。……あ、はい。……あ、そうですか。……はいはい。……あー、分かりました。では、後ほど送らせて頂きます。……はい。……はい。失礼致します」

 愛原が電話を切る。

 リサ「何だって?」
 愛原「取りに来られるのかと思ったら、忙しいから取りに来れないから、送って欲しいって」
 リサ「どうするの?」
 愛原「梱包し直して、郵便局に持って行くさ。着払いでいいらしい。さっきのも着払いだったからな」

 愛原が送って欲しいと頼んだのだから、着払いは当然だ。
 そして今回も、善場が送って欲しいと頼んだのだから、着払いでの発送ということだ。

 リサ「ふーん……。また観たかったなぁ……」
 愛原「だからダメだって。それより、早く着替えて来い」
 リサ「はーい……」

 リサは渋々とエレベーターで4階に向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする