報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「群馬の旅」

2025-02-05 20:35:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日10時33分 天候:晴 群馬県吾妻郡東吾妻町大字原町 JR群馬原町駅→吾妻線530M列車・先頭車内]

 1面1線のホームに4両編成の電車がやってくる。

 

 この路線を走る普通列車は、基本的に4両編成の電車のみである。
 211系と呼ばれる車両であるが、ロングシート車しか無い。
 ボックスシート車も共通運用されている中央本線や長野地区とは対照的だ。
 半自動ドアが採用されている為、乗車の際はドアボタンを押して乗客がドアを開ける必要がある。
 乗り込むと賑やかな冷房装置の音が車内に響いていたが、その分、外よりも涼しい。

 

 空いている座席に腰かける。
 リサはピタッと密着してきた。
 微かに後ろの方から車掌が笛を吹く音が聞こえたかと思うと、プシューッと大きなエアー音を立てて、開いていた一部のドアが閉まった。
 そして、ガクンという揺れと共にインバータの音が響かない電車が動き出す。
 こういうアナログ制御の電車も、今となっては珍しい。

〔「次は中之条、中之条です」〕

 自動放送も無く、車掌の肉声放送のみというのも珍しくなった。
 そもそも、普通列車が1時間に1本の割合でしか運転されないローカル線で、ワンマン運転が実施されていないのも珍しい。

 リサ「あーあ……。せっかく、ダーリンとの熱い夜を過ごしたかったのに……」
 愛原「お前が暴走して襲って来たからだろw あれ、BSAAがいたら集中砲火ものだったぞ?」
 リサ「ロケラン撃ち込まれる?」
 愛原「BSAAならやりかねないだろうな」

 最近、“鬼ころし”を飲んでいなかったからか。

 リサ「でも、あの動画欲しかったなぁ……」
 愛原「実は後で家に送ってもらえることになっている」
 リサ「ほんと!?」
 愛原「あー、でも内容的に、リサは3ヶ月経ってから観てくれな?」
 リサ「どうして?」
 愛原「殆どエロ動画みたいなもんだろうが……」
 リサ「違うよ。お父さんとお母さんのイチャラブ記録動画だよ」
 愛原「あのなぁ……。イチャラブにも程があるっての」

 そもそも、両親による自分の製造工程画像でオナる娘が何を言ってるんだって感じだな。
 もっとも、私もチラッと観ただけだからよくは分からない。
 というのは、上野医師と斉藤玲子の間には、リサを含めて何人もの娘がいたらしく、ここにいる本人をして、自分が長女なのか次女なのかも分からないもよう。
 リサは幼稚園に入る前には既に白井に拉致されていた為、物心はついていたものの、人体改造もされた為に記憶が曖昧なのだ。
 するとそこへ、善場係長からメール着信があった。

 善場「了解しました。ビデオテープの件も含め、まとめて明日報告をお願い致します。千葉刑務所に収容されているという沖野献受刑者についても、こちらで調査致します。とりあえずまずは、気をつけて帰京してください」

 とのことだった。

 愛原「急いで帰らなくちゃいけないというのは、報告書をまとめないといけないという意味だ。今回の旅行、色々あったからな。帰ったからすぐに報告書を書きたいから、在来線でゆっくりというわけにはいかないんだ」
 リサ「分かったよ。新幹線代もデイライトから出してくれるんでしょ?」
 愛原「身も蓋もない話だが、普通車までなら面倒看てくれるらしいぞ」
 リサ「なるほど、そうか」

 リサは頷きつつも……。

 リサ「ダーリンとの熱い夜……。お父さんとお母さんがしてたこと、わたしもしたい……」
 愛原「リサの両親は、アンブレラに追われてたんだろ?……っと、母親の方は上野医師について行っただけのようだが」

 私達は違うからなぁ……。
 強いて言うなら、“コネクション”が私達をどう見ているのかだ。
 いや、そもそもリサはともかく、私は眼中に無いか?
 上野医師は自分でもアンブレラに追われていると自覚して逃亡の旅をしていたようだが、私達はなぁ……。
 もし“コネクション”が私達を狙おうものなら、網を貼っているデイライトさんが真っ先に気づいて警告してくれるだろうし。

 愛原「まあ、いずれは2人旅をしよう。温泉旅行でいいか?」
 リサ「おおっ!」
 愛原「ホテル天長園にも、『貸切風呂』があったな」
 リサ「何で天長園が出てくるの?他にも露天風呂付き客室のホテルとかあるでしょ?」
 愛原「あくまでも一例だよ。まあ、検討しておく」
 リサ「検討だけで終わらないでよ?夏休みとかに連れてってね?」
 愛原「そうは言ったってお前、受験生だろ?過去のやらかしのせいで学校推薦が受けられなくなって、一般入試を受けることになったんだから、尚更勉強しないと」
 リサ「わたしの普段の成績なら大丈夫だと思うけどね」
 愛原「甘いな。例え付属の大学と言えど、1度は停学食らったことのある生徒を入れるのには躊躇すると思うぞ。逆に面接の無い一般入試で良かったかもな。ただ、一般入試でも、相当高得点を取らないと、停学食らったというハンデは返せないかもよ?」

 と、やや私は少し脅し気味に言った。

 リサ「むー……。塾の夏期講習とか行っておく?」
 愛原「そうだな。まあ、そういうのも選択肢に入れておくといいだろう。結局、受験勉強の為に高校3年生は夏休みが少なく、冬休みの宿題に至っては皆無だからな」
 リサ「ミキも夏期講習に参加するって言ってたな……」
 愛原「ミキ?ああ、秋田の太平山美樹か。秋田のどこかの塾にでも通うって?山奥の『鬼の里』から通うの大変だな」
 リサ「いや、何か、『一緒に行こう』って誘われてるんだけど……」
 愛原「どこに?」
 リサ「予備校の合宿?」
 愛原「あー、そういうのもあるなぁ。行きたいか?」
 リサ「どうだろうねぇ……。そこまでして勉強する必要あるかなって思ってる。まあ、ミキは『そこまで勉強しないといけない状態』らしいけど」
 愛原「まあ、それも検討課題にしておこう。美樹にはそう伝えといてくれ」
 リサ「分かった」

 そうか。
 リサも、大学受験の時期か。
 月日が経つのは早いな。
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“私立探偵 愛原学” 「帰りの旅」

2025-02-05 16:12:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日10時00分 天候:晴 群馬県吾妻郡東吾妻町大字岩下 ローソン吾妻岩島店]

 私達を乗せた車は、まず国道沿いのローソンに立ち寄った。
 そこで切手を買い、速達郵便の封筒に貼ってもらう。
 ローソンならレジ付近にポストがあるので、そのまま投函できる。
 一応、今日集配があるのかどうか確認しておいた。
 地方だと土曜日や日曜日の集配が無い場合もある為。
 ポストを確認すると、これから回収に来るそうなので、そのままそこに投函してもらった。
 速達であれば、1日で配達されるだろう。
 私の場合は帰宅してから手紙を作成し、普通郵便で送るので2日くらい掛かるだろう。
 菊川から千葉刑務所のある千葉市内でも、普通郵便なら2日掛かる。
 それが遠く離れた群馬からでも、速達なら1日なのだから早い。
 尚、ローソンの向かい側には郵便局もあったりする。
 日曜日だから休みであるが、もしも平日であれば、そのまま窓口で出すという手が使えた。
 再び車に乗って群馬原町駅に向かった。
 本当は岩島駅で降りるはずだったのだが、沖野氏は吾妻警察署に留められているオーナーの迎えに行く為、群馬原町駅まで乗せてくれることになった。
 警察署もその近くにある為。

[同日10時10分 天候:晴 同町大字原町 JR群馬原町駅]

 車は駅北側のロータリーに到着した。
 こちら側には駅舎は無いが、国道で行こうとすると、ここに到着する。
 駅舎にはロータリーに直結している跨線橋で向かう形となる。

 沖野「到着致しました」
 愛原「どうもありがとう。オーナーに宜しくお伝えください。あと……1つ謝っておきたいことが……」
 沖野「何でございましょう?」
 愛原「もしかすると、警察官2名を大浴場にダイブさせるギミックを作動させてしまったの、私かもしれません。だとしたら、オーナーにはとんでもない御迷惑をお掛けしてしまったなぁ……と」
 沖野「そうでしたか。ですが、私はその仕掛けを存じ上げません。愛原様も、その仕掛けが作動した所は直接御覧になっておられないのでしょう?」
 愛原「そ、そうです」
 沖野「でしたら、証拠がありません。御主人様も警察も、設備の不具合によるものと思っておられるようですし。御主人様は公務執行妨害の疑いで連行されてしまいましたが、恐らくそれで立件は難しいでしょう。もしも警察がどうしても御主人様を立件したい場合、あの事故でケガをしたとして、業務上過失致傷罪で捜査することになるのでしょうが、見たところ警察官達はケガはしていませんでしたし、後に診断書が提出されたとしても、弁護士さんを介して示談に持ち込むおつもりかと思われます」
 愛原「なるほど」
 沖野「とはいえ、一応愛原様の御言葉は御主人様にお伝えはさせて頂きます」
 愛原「ありがとう。宜しく」
 沖野「では、また何かありましたら、いつでも御連絡願います」
 愛原「どうもお世話様」

 私達は車を降りて、跨線橋を昇った。
 冷房の効いた車から、梅雨晴れの暑い日差しの中を歩くことになる。
 梅雨晴れとはいえ、やや強い風は吹いており、大気の状態がけして安定しているわけではないことを物語っている。
 天気は晴れているのだが、時折、太陽が雲に隠れたりしているので、快晴というわけではない。

 リサ「おっと!」

 階段を昇っているとピュウッと強い風が吹いて、リサの短いスカートが捲れ上がる。
 リサはパッとスカートの裾を押さえたが、黒いカルバンクラインのショーツが一瞬見えた。

 愛原「あれ?お前、ブルマはどうした?」
 リサ「ん?先生に渡したじゃない」
 愛原「あ……」

 そういえば私の荷物に入っていた。

 愛原「1着しか持って来てないのか?」
 リサ「うん。『使い終わったら』返してよね?欲しかったらあげてもいいけど、その場合、お小遣いw」

 リサは人間形態ながら、少し尖った爪が特徴の手を差し出した。

 愛原「『後で』洗って返すよ」
 リサ「今、ブルマもスパッツも穿いてない状態だから校則違反だね」
 愛原「別に学校に行くわけじゃないからいいよ。これから帰るところだし」
 リサ「そっか」

 跨線橋を渡り切って、駅舎のあるロータリーに辿り着く。

 

 群馬原町駅は無人駅だが、こちら側の方は自販機やバス停、トイレもある。
 かつては有人駅だったが、今では無人駅となっている。
 有人駅だった名残で出札窓口が残っているが、今ではそこは地元の観光案内所の窓口となっており、乗車券の発売は行われていない(地元の路線バスの回数券などは取り扱っているもよう)。
 乗車券はその横に1台だけある自動券売機で購入することになるが、近距離しか発売されておらず、Suicaなどの交通系ICカードにも対応していない。
 まずはこの券売機で、高崎までのキップを購入した。

 愛原「帰りは少し急ぐ必要があるから、高崎から新幹線に乗ろうと思う」
 リサ「そう。新幹線のキップは?」
 愛原「高崎駅で買えばいいさ。取りあえず、リサのキップな」

 私はキップを2枚買うと、1枚をリサに渡した。

 リサ「ありがとう」

 この時、領収証を出すのも忘れない。
 改札口はあるが、有人駅だった頃の名残であり、駅員はいないので、そのままホームに出ても良い。

 愛原「10時33分発、普通列車の高崎行き、これに乗ろう。およそ1時間で高崎に着く」
 リサ「すると、途中でお昼挟むかな?」
 愛原「多分、昼頃の新幹線に乗ることになるだろうな。そこで駅弁でも買って、新幹線の中で食べればいいさ」
 リサ「おー!」

 私はその為、留守番しているパールにはお昼は要らないとLINEをしておいた。
 その後は善場係長にメールを送った。
 音声通話にしようかとも思ったが、日曜日だし、特に今、トラブルに巻き込まれているというわけでもないので。
 パールと違ってすぐには返信は来なかったが、一応これで報告はできた。
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