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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

本日の雑感 0614

2014-06-14 19:30:43 | 日記
 日付を書かないと、いつの雑感のことなのかアーカイブで分からなくなるので、タイトルに番号を振った。
 けして私の銀行キャッシュカードの暗証番号ではないので、悪しからず。
 さて、高速太郎さんからの質問に答えていて、ふと思ったことがある。
 差別用語には色々あるが、中には差別意識など全く無くて使う場合もある。
 私もさほど気にする必要は無いものだと思っていたが、それは私が東日本の人間だからだろうか。
 それは「」である。
 西日本ではこの単語を発するだけで、大変な目に遭うらしい(奈良県出身のある人談)。
 同じく宮城県在住の高速太郎さんならご存知かも分からないが、東北の片田舎では、特にお年寄りを中心に、自分達の村や集落のことを「」と呼んでいる。
 そこに差別意識は全く無い。
 “ユタと愉快な仲間たち”で、稲生ユウタ達が何故か田植えを手伝わされた話を紹介したが、その農家のモデルとなった親戚にその話をしたら、かなり驚かれた。
 因みに物語では仙台市東部だが、モデルにさせて頂いた場所は宮城県北部のどう見ても“のんのんびより”の東北版にしか見えない登米市である。
「なに?んじゃあ、関西(から西)の人達は何て呼んでるのっしゃ?」
 なんて。
 まあ、普通に『村』とか『集落』とか呼んでいるんだろうな。
 恐らくは西日本の農村地帯を舞台にしていると思われる“のんのんびより”でも、アニメ版第1話では、メインキャラクターの1人が、
「ここがウチの村。のんびりのどかな所なん」
 と紹介していることから、そう思う。
 因みに“のんのんびより”の舞台が西日本だと思うのは、登場キャラクターの殆どが西日本訛り(関西弁ではない)であること、ミカンの産地であること、登場する鉄道車両に首都圏色のキハ40系が出てくること(今はJR西日本にしか無い……はず)、温かいうどんのつゆの色が薄いことが挙げられる。

 しかし自分で読み直してみて、改めて誤字・脱字の多さには閉口するね。
 何度もチェックしているにも関わらず、後になってまた読んでみると新たに発見してみたり。
 表現の誤りがあった時には、もう目も当てられない。
 赤面しながら手直ししているよ。
 さすがに表現自体を修正したら、後で修正しましたと書くけど、誤字・脱字はもう勘弁して頂きたい。

 閑話休題。
 正信会の公式サイトが閉鎖され、顕正会より先に滅び行く団体だろうと述べたが、どうやらリニューアルしただけのようである。
 トップページに正信会の主張が書かれているが、顕正会とほぼ同じで、どう違うのだろうと思った次第だ。
 本門戒壇の大御本尊を否定するものではないとか、宗開両祖の教えを守るとか、だけども日顕上人の血脈を認めないとか、言ってることは顕正会と同じだ。
 実は現役会員時代に、そのことについて上長に質問したことがある。
 すると、
「だけども、正信会は国立戒壇の御遺命は否定してるでしょ?だからやっぱり唯一正しいのは顕正会だけだよ」
 とのことだった。
 それだけなら正信会と突き詰めて、いっそのこと合流しちゃえばいいのに……と思ったものだった。
 反創価学会の精神も、まあ顕正会と同じだったし。
 あとは、あれか。
 顕正会は広宣流布が実現したら団体は解散し、顕正会が持っている財産の全てを宗門に寄進するという方針だが、正信会は宗開両祖の教えを正しく守った法主上人が現れたら、それに心伏追従するということだ。
 でも、それは顕正会も同じか。
 だから……分かれてる必要があるのだろうか。
 顕正会もあまり正信会をイジらないし、正信会も宗門や学会の批判はしているが、顕正会に関してはほぼスルーである。
 まあもっとも、僧侶嫌いの浅井会長のことだ。
 いくら考え方が似通っているといっても、向こうさんの僧侶とは仲良くできないだろう。

 まこと、仏法の不思議である。(←いや、違う!)

 更に話は私の作品に及んで……。
 “ユタと愉快な仲間たち”外伝を書き終えた感想だが、実は彼女らを主人公にした話も書けるということが分かったということだ。
 テンションが低い時はのんびり屋、高い時はおきゃんなイリーナ。
 モデルとなった人物達が決してテンションの高い人物達ではないために、結局はテンションの低い設定となったマリア。
 モデルが全くおらず、結果的にキャラが固まらないままスタートしてしまったポーリン。
 どうしても霧雨魔理沙のイメージが崩れないエレーナ。いや、どちらかというとテンションが低い設定の原作版魔女宅のキキのような……。
 つまりは、これくらい癖のある人物にしないとストーリーが作れないというわけである。
 まあ、恐らくは今後も作中で彼女達が大暴れして人間界を荒らすことになるだろうが、温かく見守ってやってください。

 ところで安倍春明は後日、銀座ウインズで、藤谷から接待競馬を受けたとのことである。
 無論、あのサトー様も交えて。
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“ユタと愉快な仲間たち”外伝 「導かれし見習魔道師たち」 3

2014-06-14 16:20:41 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[同日11:30.東京都北区赤羽台トンネル付近 エレーナ・マーロン]
(エレーナによる一人称です)

 敵の魔道師が私に魔法を掛ける。

 白い光に私は包まれた。

 私は人間としても、魔道師としても生きるのに失敗した。

 いま正に私は敵の魔道師から、存在自体を消される魔法を掛けられた。

 一応の情けというわけか。

 確かこれ、魔法を掛けられている間は、『優しさに包まれたならこんな感じ』みたいだって、先生が言ってたっけ。

 ……私って、一体何だったの……?

 情け無さ過ぎて涙も出ない……。

 ああ……傷だらけの体から、痛みが消えてきた……。

 死ねば痛みなんて感じないもの……。

 今度は私、何に生まれ変わるのだろうか……。

[同日同時刻 同場所 マリアンナ・スカーレット]
(再び三人称に戻ります)

「……おい。いつまで寝てるんだ?もう終わったぞ」
「……はい?」
 聞き覚えのある声がして目を開けたエレーナは、目の前に件の敵の魔道師がいるのを察知した。
「……生きてる」
「ああ。今回は殺さない」
 と、マリアはしたり顔で言った。
「このままここに放置としても良いのだが、後々の禍根になるといけないので、“大回”の魔法を掛けておいた。それで十分、傷は治ったはずだ」
 “大回”とは『大分(だいぶ)回復』の略で、それより弱い“少回(少々回復)”より強く、“完回(完全回復)”より弱い回復魔法のことである。
 ドラクエ・シリーズで言うところのベホイミ、ファイナルファンタジー・シリーズにおけるケアルラまたはケアルガに相当する。
「どうして!?どうして助けたの!?」
 起き上がると痛みは全く無くなっていた。
 折れた骨はくっつき、擦り剥いて裂けた肉も元通りである。
 “完回”は瀕死の重傷状態から完全回復させる高度な魔法なので、これは師匠レベルでないとムリだろう。
「私を殺しに来たんじゃなかったの!?」
「ああ。もしあなたが私達を悪意でもって自分からやったというのなら、そうした。だけど、あなたはポーリン師の命令でやったという。私もイリーナ師匠から言われたら、やらざるを得ない。だから、私があなたを殺すのは違うって思う」
「だけど、恨んでるでしょう!?」
「ああ。恨んでる。本当はこの手で、更に傷を深めてやりたい。だけど、それはダメだって師匠が言ってた。大師匠様が何て仰ったのか、その意味を考えろってな」
「切磋琢磨しろって言ったってムリよ!」
 エレーナは吐き捨てるように言った。
「言葉に気をつけろ。どこで大師匠様が御覧になってるか分からんぞ?」
「どんなに言葉に気をつけたって、どこで大師匠様が御覧になっていたって同じことよ」
「?」
 マリアは訝し気な顔をした。
「どうせ私は、もうすぐ破門になるんだからっ」
「……何だと?どういうことだ?」
「任務に失敗するわ、敵に助けられるわ、もう散々!それに……」
 エレーナの手に握られたのは、黒猫のぬいぐるみ。
 傷だらけである。
「先生からもらった猫も、こんなんなっちゃって……」
 イリーナは黒猫のぬいぐるみを覗き込んだ。
「……ポーリン師はどこかで見てるか?」
 マリアは辺りをキョロキョロ見渡した。
「今日は幻想郷に行ってるみたいだから、多分今は見てないと思う」
(安倍首相と入れ替わりで幻想郷?なぜ?)
 幻想郷という名の魔界。
 魔界という名の幻想郷。
 元は安倍春明が所信表明演説で、
『この魔界を幻想郷のような世界にしたい』
 と述べたのが始まりであり、それに呼応した魔道師達などが魔界を幻想郷と呼ぶようになった。
「明日には帰ってくると思う。だから、魔道師としての私の命も今日まで……」
「分かった。じゃあ、今日中に直せばいいんだな」
「……え?」
「この傷くらいなら、治せる。私は『人形使い。〜人の形弄びし魔道師〜』だ。人形作りはもちろん、修理もできる。これなら今日中に直せる」
「うそ……!?」
「嘘だと思うなら今夜、私の家に来るといい。それまでに治っていなかったら、いいさ。私を襲撃すればいい。『ぬいぐるみはマリアンナは壊されました。襲撃して殺しました』ってことにすれば、あなたも救われるだろう。まあ、簡単にやられるつもりはないがな」

[同日同時刻 東京都中央区銀座 安倍春明&藤谷春人]

「もうすぐ完成ですな」
「ええ」
 安倍は銀座の一角にある新築のビルを訪れていた。
 銀座に数ある小規模ビルの中の1つなので、ビルの規模自体は大きくない。
 消防法上の高層建築物ではないのでスプリンクラーは無いし、非常エレベーターも無い。
 防災センターも無かった。
 管理人室みたいな部屋はあるが。
「政治結社さんからのご依頼ということもあって緊張しましたよ」
 藤谷は施工主である安倍に揉み手をしながら応対していた。
「はは……。普通の法人さんのようなものだと思って頂いて構いませんよ」
「この前なんか、右翼団体から新事務所の工事依頼を受けましてね。ほら、今は暴力団関係とか厳しいでしょう?ただの政治結社さんならいいんですが、政治結社を騙った暴力団だったら大変ですからね」
「お察し致します」
 入口にある工事のお知らせには、こう書いてあった。
『アルカディア共和党東京支部』
 と。

[同日23:00.長野県某所にあるアリスの屋敷 マリアンナ・スカーレット&エレーナ・マーロン]

「どうした、ミカエラ?」
 マリアが針仕事をしていると、初音ミクにフランス人形の衣装を着せたような人形が寄ってきた。
 なので稲生ユウタは、『初音ミク』と呼んでいる。
 どう呼んでもらっても構わないので、そのままにしている。
 マリアは従来通りの名前で呼んでいるが。
「来客?……ん?ああ、エレーナのヤツ、本当に来たのか。じゃあ、通してあげて」
 マリアが言うと、ミカエラはスーッと部屋から退出した。
 しばらくして、そのミク人形に誘導されてエレーナが入って来る。
「1人でこんな広い家に住んでるの?」
「まあな」
「……さすが幻想郷の入口を押さえてるだけあるね」
「入口なら師匠が魔法の鍵で封印してるぞ。誰彼かまわず出入りできる所じゃないからな」
「まあ、それは当然か……。で、『クロ』は?」
「クロ?……もしかして、この黒猫の名前?」
「そう」
「鋭意修理中だ」
「……今日中に直すって言ったはずだけど?」
「まだ、あと1時間あるだろう?」
「0時いっぱいまでやるつもり?」
「今日中であることに変わりは無い」
「はー……」
 エレーナは呆れたような感心したような……。
「『クロ』か。私はつい『ジジ』か『ウィズ』だと思ったけどな」
「それ、何かのアレじゃない?」
「そうかな」

[同日23:59.同場所 マリア&エレーナ]

「できた。これで問題無いな?」
 マリアはエレーナに黒猫の『クロ』を引き渡した。
「ありがとう……」
 エレーナはクロを受け取った。
 傷は全て無くなっていた。
 魔力を入れてやると、まるで本物の猫のように動き出した。
 そして、エレーナの右肩に乗っかる。
「しばらく日本にいるのか?」
「そうなると思う。マリアンナ、別の幻想郷の入口は知らない?」
「それが今回の目的か。あいにくと、私も知らん。うちの師匠は知ってる素振りだが、何しろあの性格だから、面と向かって聞いても、笑ってはぐらかされるだけだろう」
「……そう」
「しかし、目の付け所はいいと思う。探せばきっと見つかるはずだ」
 もっとも、幻想郷の入口を押さえることに何のメリットがあるのかまではマリアも詳しくは聞かされていない。
 何かの利権、既得権益だとは思うが、今さら魔道師がそんなものに拘るのかとも思う。
「じゃあ、私はもう行く」
「滞在先はあるのか?」
「一応ね」
「そうか……。私は師匠と大師匠様の仰せに従うから、あなたとは戦えない」
「分かってるよ。私1人、怒られてくるよ」

 エレーナはホウキの先に、クロを乗せて飛び立った。
 満月から1日経ってはいるが、未だ月は煌々とした輝きを放っている。
「月の見えない夜に♪1人空を見上げて♪悲しく歌う故郷は♪闇夜が包んでいる〜♪」
 邸内に戻ると、ミク人形がピアノの音色に合わせて歌を歌っていた。
「あの空の彼方の♪月へ〜♪」

[日が変わった0時過ぎ 同場所 マリア&イリーナ]

「師匠、あれで良かったのですか?」
 いつの間にか邸内にいた師匠に、マリアは話し掛けた。
「ええ。十分よ。よく我慢できたわね」
「……これも修行ですから」
 そう言いつつ、制作中の人形の山の中に、エレーナのものがあったのは内緒である。
 しかも、何故かボロボロ。
「ポーリンがどう出るか分からないけど、そこは任せておいて。あなたはもういつもの通りでいいから」
「エレーナがまた来たらどうします?」
「普通に対応して。何だったら弟子同士、お友達になったら?あのコも、あなたと同じ。人間だった頃も孤独に生き続けて来たコだから……」
「そうですか……。首相の方はどうですか?」
「今頃、銀座で豪遊してるんじゃない?」
「いい身分ですねぇ……」
「まあまあ。あとは夏になるのを待つだけ。平和が続けば、あとは予定通り、ユウタ君の所に遊びに行けるよ?」
 その言葉に、ようやく笑みが浮かんだマリアだった。
                                   終
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“ユタと愉快な仲間たち”外伝 「導かれし見習魔道師たち」 2

2014-06-14 02:24:58 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[当日08:03.長野新幹線“あさま”510号車内 マリア、イリーナ、安倍春明]

「えっ?列車内警乗までして頂けるのですか?」
 日が昇って、JR長野駅まで送って貰った安倍は2人の魔道師に礼を述べた。
 するとイリーナは諸事情があるということで、途中まで一緒に乗ることにしたという。
「首相は東京駅まで乗って行かれるのですね?」
「ええ。向こうで、色々とやることがあるので……」
「せっかくの休暇ですのに、大変ですわね」
「いや、別に……」
 そんな会話があって、8両編成のE2系は出発して行った。
 安倍の手持ちのキップには東京と書かれていたのは無論だが、マリアのキップには大宮と書かれていた。

[当日9:15.埼玉県さいたま市中央区付近上空 エレーナ・マーロン]

 昨夜とは打って変わって穏やかな梅雨晴れ。
 出発地からワープしながら、日本国内に進入した。
 彼女が跨っているホウキには、先端に黒猫が鎮座している。
 しかしよく見ると、黒猫の背中にはGPSが取り付けられており、エレーナ自身も右耳にはインカムを着けていた。
 小説原作・某アニメ映画の魔女とは、この辺で違う所がある。
(先生の話だと、安倍春明首相は東京都内にいる人物に会う可能性があるという。だったら、その人物が留守のうちに襲撃しなきゃね)
 ワープの最中、亜空間の中でエレーナはそんなことを考えていた。
 GPSに入力した東経と緯度の地点付近で、亜空間を抜け出す。
「!!!」
 目の前には黒い鳥が何羽も羽ばたいていた。
 カラスの群れの中に出てしまったようだ。
 突然の侵入者に、カラス達は大きな鳴き声を上げてエレーナに襲い掛かった。
「ちょっ……!このっ!」
 エレーナは急降下と急上昇を繰り返しながら、カラスの群れを惑わしていく。
 中には仲間同士、正面衝突し、目を回しながら堕ちて行く個体もいた。
 そんな哀れなカラスを、振り向いて嗜虐的な笑みを浮かべる見習魔道師。
(ふふ……ざまぁみろ!カラスの分際で、私に立てつくからよ!所詮、魔道師の使い間程度の小間鳥が!)
 だが、そんな魔道師の油断を突いた1羽のカラスが、
「!?」
 ホウキの先端に座っていた黒猫のぬいぐるみを咥えて奪い取って行った。
「ちょ……ちょっと!返して!返しなさい!」
 カラスはぬいぐるみを咥えたまま、埼京線の上空まで飛んだ。
「返せっ!」
 エレーナはカラスに突進した。
 ホウキの先端をまともに食らったカラスは、ぬいぐるみを放すと地上に落下していった。
「くっ……!」
 エレーナは黒猫を回収しようとしたが、

 パァァァァン!(電子警笛の音)

 黒猫は上りの埼京線電車の屋根の上に落ちた。

「待って!」
 エレーナは高速で走る電車を追い掛けた。
 今現在の彼女の魔力だと、せいぜい時速90キロくらいが精一杯だ。
 昔のパーマンと、どっこいどっこいである。
「待ちなさい!」
 焦る魔道師見習。
 だが、待てよ、と思った。
 どうせ通勤電車なのだから、すぐ駅に止まるはずだ。
 慌てて余計に魔力を消費するよりも、その方が効率がいい。
 だが、現実は甘かった。
「!? どうして!?どうして、止まんないの!?」
 ホームの先端に『南与野』と大きく書かれた駅。
 しかし電車は減速すること無く、ホームと離れた通過線を猛スピードで通過したのである。
 その時、エレーナは初めて、その電車の運転席の上の表示板を見た。
 『通勤快速 新宿』と書かれていた。
「フザけやがって……!」
 これが稲生ユウタだったら武蔵浦和で回収することを考えるだろうが、到底エレーナには考えもつかなかった。
 むしろ再び、彼女の嗜虐性に火が点いた。
「こうなったら、あの電車を脱線させて……!」
 しかし火の点いた嗜虐性のおかげか、それともたまたま電車が減速したのかは不明だが、黒猫が落ちた車両のある所に追いついた。
「待っててね!今助ける!」
 エレーナは電車の進行方向右側から、黒猫に手を伸ばした。
「やった!」
 見事、回収成功。
 だが!

 パァァァァン!(警笛ペダルを軽く踏むと、比較的音が小さい電子警笛)
 プアーーーーン!(更にもう一段踏み込むと、今度は音がデカい空気笛が出る)
 ゴッ!

「きゃっ!!」
 直後にやってきた下り電車と接触!
 弾かれたエレーナは何とか体勢を整えつつも、黒猫は弾かれて……。
「げっ……!?」
 今度は隣を走る上りの新幹線の車両の上に落ちた。
「勘弁してよ、もうーーーーー!」

[同日11:00.東京都北区赤羽台トンネル付近 エレーナ・マーロン]

 エレーナはトンネル近くの人気の無い場所で、仰向けになっていた。
 黒猫は回収できたものの、代償は大きく、黒猫は大きく損傷し、自分も大怪我を負った。
 幸いなのは、ホウキが折れなかったことか。
 ホウキは折れなかったが、自分の体の骨のあちこちが折れたようだった。
 新幹線と格闘するのは、何とも……。
 まだ魔界のダンジョンで、ドラゴンとでも格闘する方がよっぽど楽だった。
「先生に……何て言おう……」
 黒猫のぬいぐるみは何体かあったのだが、大石寺奉安堂の上で妖狐達にやられてからは、残りはもうこれ1体しか残っていなかった。
 任務先でこんな大失態をやらかしたからには、もう叱責だけでは済まぬまい。
 下手すると破門……。
 本当なら大泣きしたいところだが、あまりにも情けなさ過ぎて涙も出なかった。

 ザシャッ……!

「!?」
 誰か来る。
 逆光で、遠目には誰だか分からなかった。
 警察か?
 だいぶ騒ぎを引き起こしたので、出動していても不思議ではない。
 やってきたのは警官でもなければ、地元の住民でもなく……。
「お前が……エレーナ・マーロンか?」
 近くまで来た時、エレーナは1番会いたく無い人物だということに気が付いた。
 緑色のローブを羽織り、青を基調とした魔道師の服を着ている。
 顔は緊張した表情だが、目は自分と同じ目付きをしていた。
 即ち、『人に手を掛けたことがある目』だ。
「そのローブ……。確か、イリーナ師の弟子の……マリアンナ何とかとか言ったか……。私を殺しに来たの?」
「そうだ、と……言ったら?」
 エレーナはズキズキ痛む体の上半身を起こした。
「死なばもろとも……!」
 マリアを睨みつけた。
 痛みで震える右手を前に突き出す。
 擦り剥いて、血だらけになっていた。
「やめておけ。私に当てる前に、自爆するだけだ」
「それでも構わない……」
「? 死に急ぐ前に、聞きたいことがある。答えてから死ね」
「……なに?先生の居場所と、今回の目的なら教えないよ」
「違う。この前、お前は私のことを週刊誌に流したな?」
「そうよ」
「それと、大石寺で御開扉を妨害しようとしたな?」
「……あの儀式ね。そうよ」
「どういうつもりでやった?」
「どういうって……。先生がやれって言ったからやっただけだよ」
「それだけ?」
「ええ。『任務遂行に私情を挟むな』って、先生に言われてるからね」
「つまり、ポーリン師に命令されなかったらやらなかったというわけだな?」
「余計なことして、また先生にドヤされたくないからね」
「そうか、分かった」
 マリアは頷くと、右手を大きく挙げた。
 無論エレーナには、そこに魔力を溜めているのだとすぐに分かった。
「一思いにやってね……」
 エレーナはそれだけ言った。
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