報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「幻想郷の穴」

2014-06-16 19:29:40 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月16日09:15.JR埼京線、通勤快速、新宿行き、9号車 稲生ユウタ]

「あふ……」
 ユタは電車の吊り革に掴まりながら、大きな欠伸をした。
 これから大学へ通学する所である。
 昨夜は大学の友達が来て、夜遅くまでゲームをやっていたこともあって少し寝不足だった。
 ユタを乗せた電車は地下ホームを発車した後、坂を駆け上り、地上に顔を出した後、一気に高架線に登って行った。
(そういえば魔界高速電鉄にも、こんな区間があったな……)
 ふと、そんなことを考えてしまう。

 
 ポロロロン〜♪ポロロロン〜♪

 ドアの上にある2つのモニタのうち、右側のモニタが運行情報を流した。
 それによると、さいたま新都心駅で人身事故が起きたという。
 それで、その沿線は運転を見合わせているとのことだ。
(世知辛いね……)
 ユタは顔をしかめた。
 幸い埼京線には影響は無いが、逆に埼京線に逃げてくる利用者で今後混んでくるかもしれない。
 困ったものだ。
 そう思っていると、今度は左側のモニタに目が移った。
 左側のモニタは主にCMやニュース、天気予報を流しているのだが、たまたま面白いのがやっていたのだった。

『ここでクイズです。魔法使いと言えば、何を思い浮かべるでしょう?』

 ユタはマリアのイメージから、ついミク人形やフランス人形を思い浮かべた。
 その後、黒猫やカラスが出てきたので、
(あっ、やっぱそっちか……)
 と、思った。
「ん?」
 その時、ユタは自分の目を疑った。
 ちょうど今、電車は南与野駅を通過したところなのだが、窓の上に目をやると、ホウキに跨った魔女が飛んでいたのだった。
(栗原さん?あ、いや、待てよ……)
 確か、栗原江蓮と顔の似た魔道師がいて、それの名前は……。
(何をしてるんだ?)
 黒いベストに白いブラウス、赤いリボンタイに目が行くが、それが急接近してきた。
(もしかして、僕に用があるとか……)
 そう思ったが、屋根の上に手を伸ばしたようだ。
(何かを取った?)
 それが何なのか分からなかったが、警笛のけたたましい音が聞こえた。
 警笛を鳴らしたのはユタの電車と思ったが、そうではなかったらしい。
 対向してきた電車が急ブレーキを掛ける音がしたからだ。
「!?」
 一体、何をしているんだろうと思った。

 それが分かったのは、だいぶ後のことである。

[6月17日09:00.さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ、威吹邪甲、威波カンジ]

「何か今、魔界の首相が日本に外遊に来てるようですよ?」
 カンジは配達された異世界通信の新聞を広げて言った。
「それって、もしかして……」
「ええ。安倍春明総理です」
「やっぱり!」
 ユタはパッと明るい表情をした。
「安倍総理殿か……」
 威吹も笑みを浮かべた。
「懐かしいね」
「ああ」
 因みにユタは今日、大学は午後からである。
「色々とお世話になったねぇ……」
「いやいや……」
「聞きたいです。その話」
 カンジがポーカーフェイスのまま身を乗り出してきた。
「確か、『死生樹の葉』を探しに行ったんだっけね」
「そうそう!魔界に着いた途端、モンスター達に取り囲まれてさぁ……。威吹がいなかったら、大変だったよ」
「ふっ……」
 しかし、幸い威吹の知り合いの妖狐がアルカディアシティにいたこともあって、それらの情報を元に政府関係者と接触することができた。
 そして、女魔王ルーシー・ブラッドプール1世への謁見の前に、安倍春明総理と面会することができたのである。
 初めてグール(西洋の人喰い鬼)や総理のSPだというダークエルフを見ることができた。
「しかし、その安倍首相が何故人間界に?」
「休暇で帰国したとありますが……」
 カンジは新聞記事を広げながら答えた。
「外遊と休暇は違うだろう?」
 威吹が突っ込むと、
「ですので、単なる帰省ではないのかもしれませんね」
 カンジは首を縦に振りながら答えた。
「確か大魔王バァル帝政だった頃、宮廷魔導師という役職があったんですよ」
「何か、ファンタジーの世界にあるね、それ」
 カンジの言葉に、ユタは自分のゲーム機に目をやった。
「イリーナ師が一時期その役職に就いていたという噂があります」
「何だって!?」
 威吹の驚きに、ユタは面食らった。
「何なの?」
「大魔王バァルというのは、それこそそのゲームに登場するような悪辣な魔王です。あ、因みに第六天魔王とはまた別の存在です」
 カンジが説明する。
「迷い込んだ人間達は最下層に置かれ、奴隷となるか、人喰い妖怪のエサになるかのどちらかだったそうです」
「うえ……」
「宮廷魔導師というのは……そうですね……宮内庁長官みたいな存在でしょうか……」
 さしものカンジも、日本の政権に例えがしにくいようだ。
「とにかく、政府高官の一員であり、絶対王政の場において、常にその王の傍に控えることが許される……と言いますか、むしろそれが仕事のような役職です」
「イリーナさん、そんなに偉い人だったの!?」
「それがいつの間にか退いたようですが、その時期や理由については不明です」
「今の安倍政権で、宮廷魔導師はやらないんだろうか?」
「そもそも、立憲君主制の政治でそんな役職は必要なのかという疑問もありますが……」
「うーん……」
「今は随分と人間がデカい顔をしているようだな?魔界なのに……」
「そりゃ、首相が人間ですからね。魔王も吸血鬼が出自ということもあって、人間を蔑ろにはできないようです。虐殺なんかすると、血を吸う相手がいなくなりますから」
「なるほどねぇ……」

[同日16:00.ユタの通う大学 稲生ユウタ]

「さーて、終わったことだし、さっさと帰るか……」
 ユタは荷物をまとめて、教室をあとにした。
 校舎を出た後、ユタはある人物が立っているのに気づいた。
「あれ!?」
「やあ、久しぶりだね」
「安倍総理!?」
 にこやかに手を振るユタよりずっと年上の男。
 しかし、こちら側の安倍総理とは似ても似つかない。
「キミがこの大学に通っていると聞いてね。近くまで来たので、寄ってみた」
「こ、光栄です」
「ははは。今の私は、休暇で帰省しているだけだ。そう固くならなくていいよ」
「あ、あの……。『死生樹の葉』の時は、ありがとうございました!」
「いいよいいよ。うちのルーシーもびっくりしてたけどね」
「でも、どうして今更僕なんかに……?一国の総理ともあろう御方が……」
「キミの並外れた霊力。うちのルーシーの目に留まっているってことだよ。もし大学を卒業して就職先に困ったら、魔界に来るといい。共和党の党員資格を用意しよう」
「ええっ!?ぼ、僕、政治のことなんかさっぱり……」
「はははは。いいんだよ。それは少しずつ覚えて行けばいいよ。ま、卒業まであと何年かあるだろう。ゆっくり考えておいてくれ。もしこっちの世界で就職したけども、やっぱり魔界の政治に興味がありますってなった時でもいいから。行き方は分かるでしょ?」
「は、はい……」
「そうだ。もしそうなった時の為に、党本部の入館証を後で送ろう。高い霊力者は、とかく歓迎されるよ。何しろ今の魔王陛下が喜ぶ人間だ。粗末にできるわけがない」
「あ、ありがとうございます」
「さてと、私はまた行かなくちゃいけない」
「あ、そうなんですか。大変なんですね」
「稲生ユウタ君」
「はい」
「ちょっと魔界側の都合で申し訳無いんだが、魔界……幻想郷との間に空間の歪みができて、色々と人間界側に不都合を掛けそうなんだ。向こうでもルーシーが対策を取っているけど、あまり気にしないようにね」
「気にするなって言われても……どんなことが起こるんですか?」
「そうだなぁ……」

 ピロリン♪(←ユタのスマホのiコンシェルに地震速報が着信)

「福島県沖で震度4?ここ最近、3だか4の地震が東北で多い……えっ!?」
「それもその1つだよ。そのうち収まるから。それじゃ」
「ひえー……」
 無論こんなことを公表しても、誰も信じてくれないだろうなと思ったユタだった。
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夕刊冨士 0616

2014-06-16 15:16:42 | 日記
「東方」キャラ吹き替え女性を脅迫 容疑で男逮捕(神戸新聞) - goo ニュース

 実はYou Tubeでも東方アニメらしい動画が紹介されているのだが、ゆっくり見ると、そのまま戻れないような気がするので私はあくまでも音楽派であるので、見たことはない。
 確かに“中の人”の中には、キャラとあんまりマッチしない、原作のイメージとは随分違う声の人がいることがたまにある。
 ゲームが原作で最初からキャラに声が割り当てられている某アイドル成長物語アニメとか、ボーカロイドなら、こういったトラブルも無かっただろう。ボーカロイドを使ったアニメがなかなか出てこないのは、この為と思われる。
 いかに“中の人”が気に入らないからといって、脅迫してはなりませんな。
 これは東方厨の仕業と言えるのかどうか……。
 モノホンの東方厨は、シューティングゲームしかやらんだろう。多分……。

 先述したように、私は原作のゲームとかそれを元にしたアニメには興味は無く、あくまで音楽からである。
 アイドルマスターやボーカロイドなど、音楽から入ってアニメやら小説やらに手を出したのとは大違いである。

 私は夜中に制作する時以外は、音楽を聴きながらやっている。
 時にはYou Tubeから聴くこともある。
 そんな時、ボカロ、東方、アイマスは鉄板である。
 小説のネタが思い浮かばない時があって、たまたま流れていた上海アリス幻樂団(東方Projectの製作元)リリースの音楽が、これまたたまたま日蓮正宗愛唱歌とマッチすることに気づいた時とか、小説だけでなく、作詞にもチャレンジしてみようと思ったことがあったが、まず間違いなく宗門に採用されるとは思えず豪快に挫折した。
 いや、でも、東方Projectの楽曲に詞を乗せる方がよっぽどいい歌になると思うけどなぁ……。
 今日びの覇気に欠ける宗門愛唱歌よりは……。

 他にも通勤の行き帰りや登山の行き帰りなどに聴いている。
 そういった所では東方の音楽はいいと思う。

 早いとこ同人レベルではなく、商業化してくれればいいのだが。
コメント (4)
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“ユタと愉快な仲間たち”外伝 「もう1人の安倍総理」

2014-06-16 02:18:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
(安倍春明の一人称です) 

 私の名前は安倍春明。
 魔界にいくつかある国家の1つ、アルカディア王国で首相職を務めている。
 その経緯を話すと長くなるので端折らせて頂くが、今回は休暇で故郷の日本に“帰国”した。
 もっとも、そこでいくつかの公務に相当する行為もあるのだが、いかんせんどこの国でも首相動向については細かくチェックされる。
 それはイコール国民在権がちゃんと機能していることの証でもあるのだが、政治的には裏の活動をしなければならぬこともある。
 今回はそれに当たるので、表向き休暇とした次第だ。
 王国の首都アルカディアシティの中心駅から、人間界に向かう冥界鉄道公社の電車に乗った。
 無事に長野県内の小さな駅に到着した私は予定通り、旧政権で一時期宮廷魔導師をしていたという人物と合流した。
 彼女の名前はイリーナ・レヴィア・ブリジッド。
 魔道師ならではの長い名前だ。
 因みにどういうわけだか、政府付きだと魔師となる。
 誤字ではないので、念のため。
 直弟子のマリアンナという少女?だかが管理しているという屋敷で一泊させて頂くに辺り、うちの女王陛下であるところのルーシー・ブラッドプール1世がヤケに心配されていたが、杞憂に終わった。
 ここには王宮と直で出入りできる場所があるのだが、一部の政府関係者しか知らないことになっており、超A級の事態でもなければ、使用を禁止されている。

 翌日、私は長野駅から東京行きの新幹線に乗車した。
 予定では単身、上京するはずだったが、何故か魔道師2人が付いてきた。
 しかもそのうち1人は、途中の大宮駅で下車していった。
「何か緊急事態でも?」
 という私の質問にイリーナは、
「こちらのことですわ。首相はお気になさらず、ご自分の予定を進めてください」
 と、笑顔で答えるだけだった。
 そのイリーナも上野駅で降りていった。
 やはり何かあるのだろうが、私は彼女達の勧めに従うことにした。

 私が最初にこなした予定は、私のもう1つの顔であるところの共和党党首として、今度新たにオープンする党支部事務所の工事の進捗具合の視察だった。
 場所は都内でも一等地の銀座だ。
 応対した施工会社の専務取締役だという男は、強面ながら終始腰の低い男だったが、工事が予定通り進んでくれればそれで良い。
 もっとも翌日、接待と称して同じ銀座地区にある中央競馬の場外馬券場に連れて行かれた時は正直ヒいたが。
 日本国でもカジノの導入が検討されているようだが、我が国では既に鋭意営業中である。
 ルーシーもお忍びで遊びに行っているという。
 さすがに競馬までは無いが、そもそも2足歩行の馬モンスターが闊歩しているような国なので、彼らにマラソンしてもらう必要は無いかな。
 ま、参考までにさせてもらった。

 話は前後するが、新事務所の視察の後、午後からは再びイリーナ師との会談の場を設けた。
 旧政権での辣腕を再びうちの政権でも振るってもらいたいという、言わば“スカウト”兼“面接”であったが、
「それはうちの弟子が一人前になったら考えますね」
 と、笑顔ではぐらかされてしまった。
 更に、
「バァルと違って、今は立憲君主制がしっかり機能していますし、私がいてもやることは無いでしょう」
 とのことだ。
 魔族達にとって、彼女の存在は神レベルだ。
 彼女がいて何か発言してくれるだけでも、彼らに対する影響は大きい。
 なればこそ、異世界通信社の“週刊魔境”に弟子の醜聞が掲載された時も、大きく騒がれたのである。
 但し、魔族達にとっては、
「お弟子さんからして、頼もしい限りだ」
 と、大好評だったが。
 彼女は本音を語った。
「私のミドルネームは、“嫉妬”の悪魔から取ったものです。確かに私は政権内部にいるだけでお役に立てるでしょうが、必ず嫉妬する者が現れ、気が付いた時には政権が崩壊するまでになるでしょう。私も首相の政治方針に賛成です。だからこそ、長命政権でいてもらいたい。その為には、私はいない方がいいです」
「そんなご謙遜を……」
「いいえ。ポーリンの私に対する態度も、マリアの週刊誌も、私を依り代にしている悪魔が引き起こしたものです。所詮、魔道師というのは悪魔と契約した者でもあるわけです。ですから、新政権の為にも辞退させて頂きます」
 とのことだった。
 では、彼女が旧政権で宮廷魔導師を務めていた理由とは何だったのだろうか。
 マスコミ関係者なら知っているかもしれないが、変に探られるのもあれだしな。
 うちの横田なら知っているかもしれない。
「ならばせめて、ルーシーがどれだけ長く王位の座にいられるのか、占って頂けますか?」
 との依頼には、
「もう既に予知夢は見ております」
「おおっ」
「近々、陛下に試練が訪れることでしょう。それを乗り越えた時、この政権は長期に渡って王国を統治することができます」
「その試練とは?」
「……そこまでは予知夢の中には出て来ませんでしたが、うちの師匠がそちらにお邪魔していましたわ」
「ブリジッド先生のお師匠様……ですか?」
「ええ」
 それはいかなる存在なのか。
 いま私の目の前にいる美しき魔道師では対処できない程のものなのか。
 更に詳しい内容を聞こうとしたが、
「私もそろそろ行かなくては……」
 と、席を立ってしまった。
「こう見えて、私も色々と歩き回らなくてはなりませんのよ。では、ごきげんよう……」
 弟子を取る程の実力派ともなると、ベタな法則のようなホウキに跨るわけでもなく、瞬間移動してしまうようだ。
 ここが個室の貸会議室で良かった。

 まあ、どんな試練が訪れようとも、私とルーシー、そして党の仲間と一致団結して乗り切ってやるさ。
 こう見えても、私は魔王ルーシーを討伐しようとした“勇者”だったのだから。
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