報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「実験の結果」

2014-10-09 20:37:37 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月9日12:00.東京・汐留のテレビ局(って、バレバレじゃん) 敷島孝夫、初音ミク、鏡音リン・レン]

 敷島はプロデューサーとして、スタジオセットの裏にいた。
 3人は情報番組にゲストとして呼ばれている。
(地方局もいいけど、こういうキー局に出られるなんていいなぁ……)
 敷島はうんうんと頷く。
「……それでは歌ってもらいましょう。初音ミク、鏡音リン・レンで……」
 歌の時間もある。

「お疲れさまでしたー」
 3人の出演が終わり、スタジオを出る。
「よし。じゃあ出る準備したら、次の現場に行くぞ」
「はーい」
「たかおさん、本部の方はどんな感じですか?」
「実験は今のところ順調らしいな。だけど、どの曲がダメでどれがいいのかも分からないらしい」
「んー?」
「クラシックがダメってわけじゃないんだよ。比較的、ヒーリング系のものが危険らしいな」
「んじゃあ、リン達の歌なら大丈夫だよね。何たって、元気が出る歌ばっかりなんだから」
「そうだな。今のところ、ボカロ曲で危険なものは検出されていないらしい」
「おお~!」
「まあ、昔の旧ソ連製だからな。当たり前と言えば当たり前だが……」

[同日15:00.財団本部 敷島孝夫、初音ミク、鏡音リン・レン]

「よし。今度は夕方からボーカロイド劇場でのミニライブだからな、それまでちょっと休憩だ」
「はい」
 敷島達が本部に戻る。
 すると、まだ実験が行われていた。
「あっ、これ!KAITOっとの持ち歌じゃん!」
「ボク達が後ろでコーラスしてるヤツだね」
「かーごめ♪かーごめ♪カゴの中の鳥は♪」
「赤い月が空高く舞い上がる♪これは神の啓示か♪はたまた仏の智慧か♪」
「KAITOの歌も、結構激しいのが多いからな。それをピアノ、フルート、ヴァイオリンで演奏するんだからよくやるわ」
 敷島は半分呆れた顔をした。
 しかも同じ曲で、楽器を変えてやるらしい。
 エミリーの場合は鍵盤楽器担当なので、ピアノだけでなく、チェンバロだったり、オルガンだったり……。
 シンディはフルートだけでなく、ピッコロやオーボエも吹かせている。
 で、キールはヴァイオリンだけでなく、チェロやコントラバスもだ。

「今度はルカ姉とMEIKOりんの歌だね。月の明るい夜は♪1人空を見上げ~♪」
「あの空の彼方へ♪飛んで行ける日を夢見てー♪」
「おっ、いいな。今度その歌、リンとレンのカバー曲としてリリースしてみるか」
 敷島、ここで商売っ気が出る。
「ちょっと!いま実験中なんだからね、ボーカロイドの売り込みは外でやって!」
 アリスが旦那に文句を言った。
「怒られちったねー」
「ごめんなさい、博士」
 リンは舌をペロッと出し、レンは素直に謝った。
「どうやらお呼びではないようだな。休憩したら、すぐ現場に行こう」
「宿泊先のホテルは?」
「劇場近くのホテルだよ」
「おおっ!温泉付きの!」
「お前ら、水風呂しか入らんだろう」
「博士と一緒だと、変な耐久実験させられますから」
「はははっ!そうだな」

[同日18:00.東京・秋葉原 ボーカロイド劇場 敷島孝夫、初音ミク、鏡音リン・レン]

 ミクがソロで歌う。
 ボーカロイドの中でも随一の人気を誇るミクは、ステージに出るだけで大歓声だ。
 入口に置かれたファンからのプレゼントやファンレター入れの箱は、いつもミクが真っ先に一杯になる。
「みくみく、凄いね……」
「何だか、圧倒されちゃうよね」
 ステージ袖で見ているリンとレンは、ファンの大歓声を浴びて歌うミクに羨望の眼差しを向けていた。
 歌い終えて、ミクがステージ裏に戻って来る。
「お疲れさん!」
「さすがみくみく!」
「ありがとうございます!」
「よし!次はリンとレンだ。スタンバイしてくれ」
「はい!」

[同日20:00.同場所 同メンバー]

「ありがとうございまーす!」
「みんなー!どうもありがとー!」
 ボーカロイド達のライブが終わる。
 控え室に戻ると、アリスとエミリー、シンディがいた。
「おっ、いたのか」
「タカオの仕事は終わった?」
「ああ。今日のところはな。そっちはどうだ?」
「ええ。何曲か危ない曲が分かったわ。それ以外は大丈夫だと思う。ボカロ曲は特にね」
「それは良かった」
 敷島はホッとした。
「危険な曲はどうして危険なんだ?」
「いや、まだ分かんない。どういうメカニズムなのかはね。もしかしたら、脳科学の分野に入るかもしれない」
「ええっ!?」
「音楽を聴いて脳幹が停止するなんて、そんなのアタシ達の分野じゃないよ」
「確かに……」
「“アヴェ・マリア”を演奏させると、特殊な波長が検出されるのよ。それと同じものが検出された曲が、危険な曲だと思う」
「へえ……」
 敷島はバッグを取り出した。
「まあ、とにかく今日のところはホテルに入って休もう。実験は明日もあるんだろ?」
「そう」
「いずれはあの3人に演奏会でもやらせてみたいな。あ、もちろん、安全な曲でな」
「んでー、リン達が歌う」
 リンが右手を大きく挙げて言った。
「それじゃ、どっちがメインか分からんだろー?」
「えーっ!だってボカロ曲でしょう?」
「ボカロ曲以外でも、安全が確認されたクラシック曲ならいいの」
「ふふふっ!」

 劇場からホテルまでは同じ秋葉原界隈ということもあって、歩いて向かう。
 その時、キールが連絡してきた。
{「情報の共有としての連絡なんですが、少し十条博士の体調がよろしくないようです。もし具合が悪いようなら、博士は来られないかもしれません」}
 とのことだった。
「まあ、御年80代だもんな。無理はできんよ。十条理事には、お大事になさるように伝えてくれ」
 連絡を受けた敷島は、キールにそう言った。
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“アンドロイドマスター” 「東京へ」

2014-10-09 15:23:30 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月9日06:30.JR仙台駅・東北新幹線ホーム 敷島孝夫、アリス・シキシマ、初音ミク、鏡音リン・レン、エミリー、シンディ]

〔14番線に停車中の電車は、6時36分発、“はやぶさ”2号、東京行きです。……〕

 大きな欠伸をしてホームを歩くアリス。
「ほら、寝るならせめて座席に座ってからだ」
 敷島は自分の嫁の背中を押しながら言った。
「徹夜は得意なのに……朝の早起きはVery hard……」
「あー、そうかい」
「アリス博士も充電したら元気になるんじゃない?」
 鏡音リンがいたずらっぽく言った。
「あー、それでそうなるなら、是非そうしてやりたいくらいだ。てか十条理事、『端っこのいい車両ぢゃよ』って、つい10号車の“グランクラス”だと思ったら、そうじゃなくて、1号車じゃんよ」
 定員の少ない1号車に乗り込む敷島達。
「高速バスにされるところを“はやぶさ”まで格上げされたんだから、いいと思いなさい」
 シンディは文句の多い敷島を窘めた。
 敷島に辛辣な物言いをするアンドロイドは、マルチタイプではシンディ、ボーカロイドではMEIKOか。
「へーへー。アリス、お前は窓側だ」
「Year...」
 するとアリス、ポーチの中から取り出すは、アイマスクに耳栓。
 そして、リクライニング全倒。
「朝飯食わなくていいのか?」
「zzz...」
「早っ、寝入り早っ!」
 敷島は改めてびっくりした。
「凄いヤツと結婚しちゃったな……」
 敷島はアリスの横の通路側に座る。
「たかおさん、駅弁買ってきましょうか?」
 と、ミクが言った。
 ボーカロイド年少組は、3人席に座らせている。
「いいよ。お前達はアリスを見張っててくれ。こいつ、意外と寝相が悪……」
「ううーん……」
「何だ?」
「……牛タン弁当買ってきて……」
「お前、寝るのか食うのかどっちかにしろよ!」

 列車は定刻通りに発車した。

[同日07:00.東北新幹線“はやぶさ”2号1号車内 敷島]

 敷島は手持ちのPCを出していた。
 アリスは弁当を食べ終わった後で、また寝入ってしまった。
 PCでボーカロイド達のスケジュールをチェックしている。
(よしよし。KAITOのヤツ、撮影現場に到着したな)
 KAITOからその旨の信号が送られて来た。
 もし仮にアクシデントがあって、予定通りに現場に着けない場合も、そういった信号が送られて来る手筈になっている。
「ねえ、プロデューサー」
「ん?」
 敷島の後ろの席に座るシンディが、上から覗き込んできた。
 上を向くと、シンディの巨乳で顔が見えない。
「普通にこっち来いよ。で、何だ?」
「アタシ達、楽器持って来てないけどいいの?」
「向こうで用意するってさ。もしかしたら、こっちで使ってる楽器のせいかもしれないだろ?」
「そーかなー?」
「研究者は色んなこと考えて大変なこった。俺は事務職だから、もっと気軽にやらせてもらおう」
「ふーん……。これは要らなかったわね」
 シンディはコスチュームの中から、犬用の首輪とロープを出した。
「要らねーよ!てか、持って来んなよ」
 ノースリープから突き出た白い二の腕には、ボーカロイドと同じくナンバリングが施されている。
 ボーカロイドが英数字なのに対し、マルチタイプはローマ数字だ。
 エミリーの右腕には『Ⅰ』と赤字でプリントされ、シンディには『Ⅲ』と印字されている。
 派生型のキールには、何もペイントされていない。
 恐らくオリジナルの5号機の方のキールには、『Ⅴ』と書かれていたのだろうが。

[同日09:00.東京都新宿区西新宿 財団本部 敷島、アリス、ミク、リン・レン、エミリー、シンディ、平賀太一]

「おはようございます。朝早くから、ご苦労様です」
 財団本部に到着すると、平賀が出迎えた。
「あっ、おはようございます」
「Hi.」
 アリスは右手を挙げたが、平賀は明らかにスルー。
 師匠である南里から受け継いだエミリーには二言三言何か言ったが、シンディの方は見もしない。
「じゃあ、研究室にどうぞ」
「お邪魔します」
 エレベーターに向かう面々。
「すっかり嫌われちゃいましたね、博士?」
 シンディがこそっとアリスに言った。
「いざとなったら、七海を預かるわよ」
「それはいい考えです。ご命令下さったら、あとは私が……」
「ルイージが惚れ込んでるから、あいつにも協力させるわね」
「お前ら、信頼を勝ち取るくらいの気概が無いのか」
 敷島は2人を窘めた。

 まずは会議室で実験の概要が説明される。
 敷島達が昏倒した“アヴェ・マリア”など、危険と思われる楽曲については、防音室内でエミリー、シンディ、キールが演奏する。
 研究者達はその外で、その曲が演奏されている時、何が発せられているのかを調査するという寸法だ。
(俺は約束通り、ここまで来たんだから、あとはボカロ達連れて行ってもいいな)
 敷島だけはここから立ち去ったという。
 相変わらず、逃げ足は速い。
コメント (1)
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“ユタと愉快な仲間たち” ショートストーリー 「人形の館」

2014-10-09 00:21:11 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月9日15:00.長野県北部の山間部 マリアの屋敷 ミク人形(ミカエラ)]
(ミク人形の1人称です)

 西の方の火山が噴火シた。
 屋敷は遠く離れているカラ特ニ心配無イと大師匠様が仰っていたガ、イリーナ様が大事を取って、前の場所に戻るこトにしタ。
 屋敷ごと引っ越すのは大変そうダ。
 しかも今週末からノ3連休にハ、ご主人様のお気に入りの男がやってくるらしイ。
 私にハ正直、あの男のどこが良いのカ分からなイ。
 特に、連れの銀髪金眼の男。
 廊下で気持ち良ク寝ていた私ヲ勝手に掴んで、壁に叩き付けやがった恨みは忘れなイ。
 御主人様の命令が無かったラ、槍で串刺シにしてやるところだワ。

 だけド……。

「♪♪~」

 あんなニ御機嫌な御主人さまヲ見るのハ、あの男が来る時だけだワ。
 それにしてモ……。

(マリアの周りを見渡すミク人形)

 チょっと作り過ぎじゃなイ?
 あの男……稲生ユウタの人形。
 名前ハ確か、“ユタぐるみ”って言ったっケ。
 サイズも大中小あるワ。
 全部で何十体あるカシラ?

「できた!今までで最高の出来よ!うふふふふふふ!」

 イリーナ様。マリア様も、こんなお顔ヲしてくれるようニなりましたヨ。

「どこに飾ろうかなぁ……」

 私達みたいニ魔法を掛けテ、動かそうとしなイだけマシってものネ。

「ミカエラ。ユウタ君、この家、気に入ってくれるといいね」
「!」
 こうしてハいられなイ!
 こノぬいぐるみのモデルとなっタ男が来るマデニ、掃除を済ませテおかないト!

「ミカエラ~、お茶入れて……って、やっぱいいや」
 御主人様のお屋敷デ寛いでいたイリーナ様ニ、声を掛けられタ。
 だケど私達、フランス人形が忙しく動き回っているのヲ御覧になっテ、空気を読まれたみたイ。
 申し訳アリマセン。

 個人的にハそんなに好きなタイプじゃないけド、御主人様を笑顔ニしてくれル稲生ユウタ氏、移転したばかりのこノ家、気に入っテくれるかしラ?
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