[12月19日15:27〜15:40.JR中央本線・高尾〜藤野 稲生ユウタ、威吹邪甲、威波莞爾、マリアンナ・スカーレット、蓬莱山鬼之助、栗原江蓮]
ユタ達を乗せた中央特快は、立川から各駅停車へと変わる。
東京から離れるごとに、少しずつ車内は空いて行くものの、そんなにガラガラでもない。
そんな状態の中、高尾山で有名な高尾駅に到着する。
通常の中央快速線は、ここが終点。
しかしユタ達が乗る東京からの中央特快は、その先にも進路を取る。
よく見ると、高尾山に向かって登って行く京王線がいた。
ここまでは確かに東京という気がするが、それを過ぎると景色は一変する。
〔この電車は中央本線、普通、大月行きです。次は、相模湖です。……〕
高尾駅から次の相模湖駅までは9.5キロ。
都心から離れる度に駅間距離が伸びてはいたが、ここまで来ると地方ローカル線並みである。
そして景色も、それまでは家々の中を走っていたのが、いきなり山間部へと変わる。
列車種別も中央特快から各駅停車、そして普通へと変わった。
各駅停車と普通列車の違いについては……まあ、説明が長くなるので、ウィキペディアでも見てほしい。
で、山岳区間の特徴の1つが、断続的に続くトンネル区間である。
高尾から西の区間は東の区間と違って線形が悪く、電車もそんなにスピードを出して走らない。
それが尚更、トンネルが長く感じるのだ。
そしてその断続的に続くトンネルで、ユタ達に緊張が走った。
「妖気が……!」
「マジ?」
妖怪達にはもちろん、霊感の強いユタや江蓮は外から妖怪達の気配を感じた。
「江蓮、窓を開けるなよ!」
キノが江蓮に警告を発する。
「開けねーよ!」
と、江蓮は言い返した。
「まあ、あまり窓を開ける人はいないだろうけど……」
と、ユタ。
実際、今乗車している車両をざっと見渡すと、開いている窓は無かった。
「! 車掌室の窓が開いているみたいだけど……」
ユタ達は最後尾の車両に乗っている。
乗務員室ドアではなく、運転席すぐ横の小窓が開いているように見えた。
「まあ、あれくらいなら大丈夫だと思うけど……」
威吹は首を傾げて言った。
相模湖駅を出て、次の藤野駅に向かう間もトンネル区間はある。
そこも妖気が充満していた。
「一体、どういうことなんだ?まるで、魔界高速電鉄の地下鉄みたいだ……」
「師匠がこの近くに呼んだのは、魔界の穴が開いているからなんだそうだ。それを塞ぐついでに、魔法使いを紹介するとのことだ」
と、マリアが答えた。
「魔法使いが住んでいるのはたまたまだ」
とも付け加える。
「お前はその穴埋めに同行しなくて良いのか?それも修行なんだろう?」
威吹が問うと、マリアは少し苦笑した。
「私はユウタ君達を連れて来るように言われたのでしょうがない。多分、師匠とその魔法使い達で人手は十分ということだろう」
「なるほど……」
〔まもなく藤野、藤野。お出口は、右側です〕
最後のトンネルを出て、電車はユタ達の下車駅に到着した。
高尾から西はドアが半自動になるので、自動では開かない。
仙台地区や上野駅発着中距離電車で慣れているユタは、何の躊躇いも無く、ドアボタンを押してドアを開けた。

(藤野駅ホーム。JR最狭である)
「こっちですね」
ユタの案内でガラガラとキャリーバッグを引く江蓮。
「エレベーターにします?」
「いや、いい。荷物持ちがいるから」
江蓮が言うと、ヒョイと片手で江蓮の荷物を担ぐキノ。
「おお」
しかし、何故か開けて中に手を入れるキノ。
「下着漁らない!」
ボコッ!
「ぶっ!」
江蓮が肩に担ぐ布袋の中身は竹刀ではなく、木刀のようである。
それでキノをどついた。

(藤野駅外観。この時点で駅周辺の地形が分かれば凄い)
「こんな小さい駅でも、自動改札なんだな」
階段を昇り降りする際にも、キノが先に行くか江蓮が先に行くかでもめる。
先に改札口に向かったユタ達だったが、
「ユウタ君、どうして日本のあのコ達は学校のユニフォームのスカートを短くしてるの?」
と、マリアに聞かれるユタ。
「さあ……。本人に聞いてもらえます?」
ユタは苦笑いして首を傾げた。
「鬼の男を誘っているようだが、否定している……?よく分からない」
「ツンデレなんですよ、栗原さんは」
ユタはそう答えた。
「つんでれ……?新しい魔法か?」
「いえ、違います」
更に笑うユタ。
駅の外に出る。
ここでトイレ休憩。
駅の改札口を出て、右手の方にある。
東京駅から1時間10分以上掛かった。
しかし、ここも東京都心への通勤圏内なのである。
(さすがに、1時間以上も通勤してられないな……)
ユタは小便器の前に立ちながら言った。
(大宮から京浜東北線か埼京線なら、都心まで1時間も掛からない)
「おう、イブキ」
「何だ?まだ出てる最中だ。ちょっと待て」
小便器が2つしか無い件。
「そうじゃなくてよ、あのトンネルの連中、オレ達に気づいたみたいたぜ」
「ああ。気づくだろうな」
「はいよ、キノ。お待たせ」
「おう」
ユタが小便器を開けた。
「襲ってこなくて良かった。さすが、高等妖怪が睨みを利かせてると違うなぁ……」
ユタが洗面所で手を洗いながら言った。
「……だと、いいんだがな」
「え?」
どうやらキノ達は違う警戒心を持っているようだ。
(なるほど、袴の裾をたくし上げてオシッコするんだ、この人達……)
どこを見てるんだ、ユタ。
[同日16:00.神奈川県相模原市緑区 上記メンバー]
駅から宿舎まではかなりキツい、アップダウンを体験しなくてはならなかった。
相模湖に直結する川に架かる大きな橋を渡るのに、アップダウンしているという感じだ。
「ちっ、妖気の臭いがプンプンするぜ」
キノが不快な顔をして言った。
「相模湖に!?」
「大丈夫だ。師匠が先ほど穴を塞いだと言ってきた。いずれその“臭い”は消えるだろう」
と、マリアが静かに言った。
「へえ……」
その橋も渡って、キッツい坂を登る。
「まるで……陸の孤島だな……」
女子の中では体育会系で体力に自信のある江蓮も、息を荒くするほどだ。
これでは体力の無いマリアは大変だろうと思いきや……。
「くぉらっ!魔法使い!魔法使うな!」
マリアは地面から少し浮いていた。数センチくらい。
それでスイスイと坂を登って(?)いたのだった。
「自分だけ楽しやがって!」
「うるさい。魔道師の特権だ」
鬼族の睨みを涼しい顔で平然と受け止めるマリアだった。
「……いや、大丈夫です!僕1人で登れるんで!」
ユタはマリアが魔力を付与した人形達によって担がれるところだったが、強く固辞した。
「余計なことするな!」
これには威吹が反発した。
そんなこんなで、まずは宿舎に到着した。
ユタ達を乗せた中央特快は、立川から各駅停車へと変わる。
東京から離れるごとに、少しずつ車内は空いて行くものの、そんなにガラガラでもない。
そんな状態の中、高尾山で有名な高尾駅に到着する。
通常の中央快速線は、ここが終点。
しかしユタ達が乗る東京からの中央特快は、その先にも進路を取る。
よく見ると、高尾山に向かって登って行く京王線がいた。
ここまでは確かに東京という気がするが、それを過ぎると景色は一変する。
〔この電車は中央本線、普通、大月行きです。次は、相模湖です。……〕
高尾駅から次の相模湖駅までは9.5キロ。
都心から離れる度に駅間距離が伸びてはいたが、ここまで来ると地方ローカル線並みである。
そして景色も、それまでは家々の中を走っていたのが、いきなり山間部へと変わる。
列車種別も中央特快から各駅停車、そして普通へと変わった。
各駅停車と普通列車の違いについては……まあ、説明が長くなるので、ウィキペディアでも見てほしい。
で、山岳区間の特徴の1つが、断続的に続くトンネル区間である。
高尾から西の区間は東の区間と違って線形が悪く、電車もそんなにスピードを出して走らない。
それが尚更、トンネルが長く感じるのだ。
そしてその断続的に続くトンネルで、ユタ達に緊張が走った。
「妖気が……!」
「マジ?」
妖怪達にはもちろん、霊感の強いユタや江蓮は外から妖怪達の気配を感じた。
「江蓮、窓を開けるなよ!」
キノが江蓮に警告を発する。
「開けねーよ!」
と、江蓮は言い返した。
「まあ、あまり窓を開ける人はいないだろうけど……」
と、ユタ。
実際、今乗車している車両をざっと見渡すと、開いている窓は無かった。
「! 車掌室の窓が開いているみたいだけど……」
ユタ達は最後尾の車両に乗っている。
乗務員室ドアではなく、運転席すぐ横の小窓が開いているように見えた。
「まあ、あれくらいなら大丈夫だと思うけど……」
威吹は首を傾げて言った。
相模湖駅を出て、次の藤野駅に向かう間もトンネル区間はある。
そこも妖気が充満していた。
「一体、どういうことなんだ?まるで、魔界高速電鉄の地下鉄みたいだ……」
「師匠がこの近くに呼んだのは、魔界の穴が開いているからなんだそうだ。それを塞ぐついでに、魔法使いを紹介するとのことだ」
と、マリアが答えた。
「魔法使いが住んでいるのはたまたまだ」
とも付け加える。
「お前はその穴埋めに同行しなくて良いのか?それも修行なんだろう?」
威吹が問うと、マリアは少し苦笑した。
「私はユウタ君達を連れて来るように言われたのでしょうがない。多分、師匠とその魔法使い達で人手は十分ということだろう」
「なるほど……」
〔まもなく藤野、藤野。お出口は、右側です〕
最後のトンネルを出て、電車はユタ達の下車駅に到着した。
高尾から西はドアが半自動になるので、自動では開かない。
仙台地区や上野駅発着中距離電車で慣れているユタは、何の躊躇いも無く、ドアボタンを押してドアを開けた。

(藤野駅ホーム。JR最狭である)
「こっちですね」
ユタの案内でガラガラとキャリーバッグを引く江蓮。
「エレベーターにします?」
「いや、いい。荷物持ちがいるから」
江蓮が言うと、ヒョイと片手で江蓮の荷物を担ぐキノ。
「おお」
しかし、何故か開けて中に手を入れるキノ。
「下着漁らない!」
ボコッ!
「ぶっ!」
江蓮が肩に担ぐ布袋の中身は竹刀ではなく、木刀のようである。
それでキノをどついた。

(藤野駅外観。この時点で駅周辺の地形が分かれば凄い)
「こんな小さい駅でも、自動改札なんだな」
階段を昇り降りする際にも、キノが先に行くか江蓮が先に行くかでもめる。
先に改札口に向かったユタ達だったが、
「ユウタ君、どうして日本のあのコ達は学校のユニフォームのスカートを短くしてるの?」
と、マリアに聞かれるユタ。
「さあ……。本人に聞いてもらえます?」
ユタは苦笑いして首を傾げた。
「鬼の男を誘っているようだが、否定している……?よく分からない」
「ツンデレなんですよ、栗原さんは」
ユタはそう答えた。
「つんでれ……?新しい魔法か?」
「いえ、違います」
更に笑うユタ。
駅の外に出る。
ここでトイレ休憩。
駅の改札口を出て、右手の方にある。
東京駅から1時間10分以上掛かった。
しかし、ここも東京都心への通勤圏内なのである。
(さすがに、1時間以上も通勤してられないな……)
ユタは小便器の前に立ちながら言った。
(大宮から京浜東北線か埼京線なら、都心まで1時間も掛からない)
「おう、イブキ」
「何だ?まだ出てる最中だ。ちょっと待て」
小便器が2つしか無い件。
「そうじゃなくてよ、あのトンネルの連中、オレ達に気づいたみたいたぜ」
「ああ。気づくだろうな」
「はいよ、キノ。お待たせ」
「おう」
ユタが小便器を開けた。
「襲ってこなくて良かった。さすが、高等妖怪が睨みを利かせてると違うなぁ……」
ユタが洗面所で手を洗いながら言った。
「……だと、いいんだがな」
「え?」
どうやらキノ達は違う警戒心を持っているようだ。
(なるほど、袴の裾をたくし上げてオシッコするんだ、この人達……)
どこを見てるんだ、ユタ。
[同日16:00.神奈川県相模原市緑区 上記メンバー]
駅から宿舎まではかなりキツい、アップダウンを体験しなくてはならなかった。
相模湖に直結する川に架かる大きな橋を渡るのに、アップダウンしているという感じだ。
「ちっ、妖気の臭いがプンプンするぜ」
キノが不快な顔をして言った。
「相模湖に!?」
「大丈夫だ。師匠が先ほど穴を塞いだと言ってきた。いずれその“臭い”は消えるだろう」
と、マリアが静かに言った。
「へえ……」
その橋も渡って、キッツい坂を登る。
「まるで……陸の孤島だな……」
女子の中では体育会系で体力に自信のある江蓮も、息を荒くするほどだ。
これでは体力の無いマリアは大変だろうと思いきや……。
「くぉらっ!魔法使い!魔法使うな!」
マリアは地面から少し浮いていた。数センチくらい。
それでスイスイと坂を登って(?)いたのだった。
「自分だけ楽しやがって!」
「うるさい。魔道師の特権だ」
鬼族の睨みを涼しい顔で平然と受け止めるマリアだった。
「……いや、大丈夫です!僕1人で登れるんで!」
ユタはマリアが魔力を付与した人形達によって担がれるところだったが、強く固辞した。
「余計なことするな!」
これには威吹が反発した。
そんなこんなで、まずは宿舎に到着した。