[12月20日09:00.神奈川県相模原市緑区某所 合宿所・プレイコート 稲生ユウタ&マリアンナ・スカーレット]
「これでいいんですか?マリアさん」
ユタはアスファルトの上に、チョークで魔法陣を書いた。
「ありがとう」
これから、新しい魔法の実験をするという。
マリアは魔道書を開いた。
ユタが覗き込むと、ロシア語のような文字が書いてある。
「……パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。我が門に入らんとする汝、一切の望みを捨てよ。嗚呼、神の復讐よ」
マリアが呪文の詠唱を行う。
(あれ?これって確か、どこかで……)
「……そして、私の復讐よ!ヴェ・ギュラ・マ!」
魔法陣から、炎の渦が巻き起こる。
「ベギラマだ!!」
ユタが驚いた。
炎の渦は帯となって、的である木の棒に当たった。
それは激しく燃え上がる。
「ひえー……」
「ユウタ君、知ってるの?何か、瞬間移動の魔法といい、知ってる感じだね?」
マリアは首を傾げた。
「い、いや、その……たまたまです。(まさか、ドラ◯エの呪文とは言えねぇ……)」
「ふーん……。まあ、いいや。魔族との激戦になりそうだから、片っ端から魔法を覚えていこうと思う。ユウタ君も見ててくれると、後で役に立つよ」
「えっ?」
「魔道師になる時に……」
「ああ。僕も、こうするんでしょうか?」
「そうだよ。大丈夫。やり方は師匠が教えてくれるし、私で良ければ私も教える」
「僕にできるんでしょうか?」
「大丈夫。まさか、私も5年前までは魔法を使うだなんて考えもしなかったから」
「なるほど……」
[同日10:00.合宿所の近所 タチアナ・イシンバエワの家 イリーナ・レヴィア・ブリジッド&タチアナ]
「ヒマだー……」
タチアナの手伝いをするとやってきたイリーナだったが、タチアナとは同じ魔法使いでも、ジャンルが違うため、タチアナから工房から追い出されたイリーナだった。
「せっかく弟子がいるんだから、弟子の指導でもしてきな、ヒマ人!」
「個人的には、うちのマリアはもう1人前なんだけどねぇ……。大師匠が免許皆伝してくれないんだよぉ」
「まだ、5年前に弟子にしたばっかりだろ?確かに素質は物凄くありそうだけどさ。まだ、吸収するべき知識が足りないってことじゃないか。聞けばつい最近まで、電車の乗り方も知らなかったんだって?このご時世、魔界でも電車くらい走ってるんだから……」
「それは言い過ぎだよぉ。ちゃんとそれは教えたさ。ただ、バスは前から乗るもんだと思っていただけさ……」
ちょうどその時、家の前に地元の路線バスが止まった。
そこにバス停があるからだが、普通は後ろから乗って前から降りる。
普通は、だ。
「その天然ぶり、何とかしな!だいたい、あんたがよく弟子を取ったもんだとびっくりしたよ。素質のあるコは今や引っ張りだこなのに、変なルートで手に入れたのかと思ったよ」
「大丈夫。確かにポーリンとか、他の魔道師も目を付けてたみたいだけど、入札でアタシが競り落としたから」
「カネ出してる時点で真っ当じゃないって、何回言わせんの!オマケに弟子入りの試験もしてないみたいだし……」
「試験ならしたも同然だよ。悪魔ベルフェゴールと契約できて、その力を駆使し、そして魔道師になるに当たって、一切の望みは捨ててもらった。もう合格点よ」
「話を聞いたダンテがひっくり返ったって噂は本当みたいね」
「おっと!その名前は普段言ってはいけないよ」
「別にDQNネームでもないのに、何を気にしてるんだか……」
「とにかく、今はただ単に大師匠で通ってるから」
「他の魔道師一味は元気なの?ポーリン以外」
「ああ。おかげさまでね」
「ケインは?」
「先月、ナイロビで会った」
「アフリカにいんのかよ……」
「因みにアリシアはバンクーバー」
「皆して散り散りだね。まあ、アタシも日本人と結婚してなきゃ、今頃ブタペストか……」
[同日11:00.合宿所・体育館 蓬莱山鬼之助、栗原江蓮、威吹邪甲、威波莞爾]
4人の剣士達はそれぞれ、来るべき決戦に備え、各々の腕を磨いていた。
「シメるぞ、コラァ!」
「お、落ち着け!落ち着けって!」
何故かブチギレの江蓮。
竹刀をブンブン振り回してキノを追い回す。
「何をしてるのだ?」
威吹がカンジに聞いた。
「痴情のもつれです」
カンジはポーカーフェイスを崩さずに答えた。
「よそでやってもらいたいものだな」
「ええ」
「で、キノが何をやったんだ?」
「『袴の下はノーパンの方がいい』と、無理やり栗原女史の下着を脱がそうとしたそうです」
「鬼族同士では有りうる話だが、それを人間に強要してはいかんな」
「仰る通りです」
バシッ!バシッ!バシッ!
「おおっ!?」
「むむっ!?栗原女史の強さを見くびっていたようです!」
妖狐達は江蓮に霊力の解放を見たという。
江蓮の霊力はA級。
但し、Aクラスの中でもトップクラスのAAA(トリプル・エー)だという。
それの上がSだ。
「もう少し培養すれば、ユタくらいの強さにはなるんじゃないのか?」
「ええ。しかし、キノとしてはなかなか我慢の限界のようです」
「ここで食ってしまうと、培養はできんぞ、キノ?おい、聞いてるか?」
江蓮からボコされたキノ、意識が飛んでいた。
「威吹さん」
江蓮が険しい顔のまま威吹を呼んだ。
「な、何でござるか?」
「このバカじゃなくて、威吹さんからも教わりたい。威吹さん風のやり方、教えて」
「それは構わぬが、キノから恨まれはせぬか?」
「大丈夫。その時はまたシメるから。いいでしょ?」
そこへカンジが威吹にそっと耳打ち。
「先生。ここは逆らわぬ方が……」
「そ、そうだな。……では、妖狐と鬼族はそもそも基本形が違う故、そこから教示させて頂こう」
「ありがとう!よろしくお願いしまッス!」
[同日12:00.合宿所1F・ロビー ミカエラ(ミク人形)&クラリス(フランス人形)]
共に人間形態の2体の人形。
「見慣れた筈の地で♪雲翳るこの世界で♪罰を受けるように♪心を失ったの♪心さえも♪貴方から奪うの♪此処で♪扉の向こうの世界へ♪誘ってあげるわ♪……」(心の在り処。原曲:東方Project“東方妖々夢”より、“人形裁判 〜人の心弄びし少女〜”)
ミカエラがアップライトピアノを弾き、ミク人形が歌う。
「おっ、ミクが歌ってる」
ロビーの隣にある食堂へやってきたユタとマリア。
「幸いピアノが置いてあるし、人形達はヒマだろうから、ここで歌ってもらっている」
「いいことです」
他のメンバーを待っていると、一曲歌い終わる。
で、今度は一転して、軽快なリズムを引くクラリス。
「ほんとにほんとにほんとにほんとにご苦労さん♪」
「え?」
「嫌じゃありませんか法華講♪命題、命題と責められて♪心休めるヒマもない♪これじゃケンショーと変わらない♪ほんとにほんとにほんとにほんとにご苦労さん♪ソレ!」
「……こ、これいいんですか、マリアさん?」
「……魔力の調整、失敗したかな???」
「……いいじゃありませんか男なら♪何をクヨクヨするものか♪真っ赤な褌引き締めて♪行くぞこの仏道(みち)どこまでも♪ほんとにほんとにほんとにほんとにご苦労さん♪」
「おう、悪ィ!待たせたな!」
一番最後にやってきたのはキノ。
「江蓮にリンチされて、体が痛くてよぉ!」
「黙れ、てめぇ!」
「いいから早く、昼ごはん食べよ」
イリーナがメンバーを促す。
ユタ達が食堂に入った時、既にミク達は人間形態から人形形態に戻っていた。
「これでいいんですか?マリアさん」
ユタはアスファルトの上に、チョークで魔法陣を書いた。
「ありがとう」
これから、新しい魔法の実験をするという。
マリアは魔道書を開いた。
ユタが覗き込むと、ロシア語のような文字が書いてある。
「……パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。我が門に入らんとする汝、一切の望みを捨てよ。嗚呼、神の復讐よ」
マリアが呪文の詠唱を行う。
(あれ?これって確か、どこかで……)
「……そして、私の復讐よ!ヴェ・ギュラ・マ!」
魔法陣から、炎の渦が巻き起こる。
「ベギラマだ!!」
ユタが驚いた。
炎の渦は帯となって、的である木の棒に当たった。
それは激しく燃え上がる。
「ひえー……」
「ユウタ君、知ってるの?何か、瞬間移動の魔法といい、知ってる感じだね?」
マリアは首を傾げた。
「い、いや、その……たまたまです。(まさか、ドラ◯エの呪文とは言えねぇ……)」
「ふーん……。まあ、いいや。魔族との激戦になりそうだから、片っ端から魔法を覚えていこうと思う。ユウタ君も見ててくれると、後で役に立つよ」
「えっ?」
「魔道師になる時に……」
「ああ。僕も、こうするんでしょうか?」
「そうだよ。大丈夫。やり方は師匠が教えてくれるし、私で良ければ私も教える」
「僕にできるんでしょうか?」
「大丈夫。まさか、私も5年前までは魔法を使うだなんて考えもしなかったから」
「なるほど……」
[同日10:00.合宿所の近所 タチアナ・イシンバエワの家 イリーナ・レヴィア・ブリジッド&タチアナ]
「ヒマだー……」
タチアナの手伝いをするとやってきたイリーナだったが、タチアナとは同じ魔法使いでも、ジャンルが違うため、タチアナから工房から追い出されたイリーナだった。
「せっかく弟子がいるんだから、弟子の指導でもしてきな、ヒマ人!」
「個人的には、うちのマリアはもう1人前なんだけどねぇ……。大師匠が免許皆伝してくれないんだよぉ」
「まだ、5年前に弟子にしたばっかりだろ?確かに素質は物凄くありそうだけどさ。まだ、吸収するべき知識が足りないってことじゃないか。聞けばつい最近まで、電車の乗り方も知らなかったんだって?このご時世、魔界でも電車くらい走ってるんだから……」
「それは言い過ぎだよぉ。ちゃんとそれは教えたさ。ただ、バスは前から乗るもんだと思っていただけさ……」
ちょうどその時、家の前に地元の路線バスが止まった。
そこにバス停があるからだが、普通は後ろから乗って前から降りる。
普通は、だ。
「その天然ぶり、何とかしな!だいたい、あんたがよく弟子を取ったもんだとびっくりしたよ。素質のあるコは今や引っ張りだこなのに、変なルートで手に入れたのかと思ったよ」
「大丈夫。確かにポーリンとか、他の魔道師も目を付けてたみたいだけど、入札でアタシが競り落としたから」
「カネ出してる時点で真っ当じゃないって、何回言わせんの!オマケに弟子入りの試験もしてないみたいだし……」
「試験ならしたも同然だよ。悪魔ベルフェゴールと契約できて、その力を駆使し、そして魔道師になるに当たって、一切の望みは捨ててもらった。もう合格点よ」
「話を聞いたダンテがひっくり返ったって噂は本当みたいね」
「おっと!その名前は普段言ってはいけないよ」
「別にDQNネームでもないのに、何を気にしてるんだか……」
「とにかく、今はただ単に大師匠で通ってるから」
「他の魔道師一味は元気なの?ポーリン以外」
「ああ。おかげさまでね」
「ケインは?」
「先月、ナイロビで会った」
「アフリカにいんのかよ……」
「因みにアリシアはバンクーバー」
「皆して散り散りだね。まあ、アタシも日本人と結婚してなきゃ、今頃ブタペストか……」
[同日11:00.合宿所・体育館 蓬莱山鬼之助、栗原江蓮、威吹邪甲、威波莞爾]
4人の剣士達はそれぞれ、来るべき決戦に備え、各々の腕を磨いていた。
「シメるぞ、コラァ!」
「お、落ち着け!落ち着けって!」
何故かブチギレの江蓮。
竹刀をブンブン振り回してキノを追い回す。
「何をしてるのだ?」
威吹がカンジに聞いた。
「痴情のもつれです」
カンジはポーカーフェイスを崩さずに答えた。
「よそでやってもらいたいものだな」
「ええ」
「で、キノが何をやったんだ?」
「『袴の下はノーパンの方がいい』と、無理やり栗原女史の下着を脱がそうとしたそうです」
「鬼族同士では有りうる話だが、それを人間に強要してはいかんな」
「仰る通りです」
バシッ!バシッ!バシッ!
「おおっ!?」
「むむっ!?栗原女史の強さを見くびっていたようです!」
妖狐達は江蓮に霊力の解放を見たという。
江蓮の霊力はA級。
但し、Aクラスの中でもトップクラスのAAA(トリプル・エー)だという。
それの上がSだ。
「もう少し培養すれば、ユタくらいの強さにはなるんじゃないのか?」
「ええ。しかし、キノとしてはなかなか我慢の限界のようです」
「ここで食ってしまうと、培養はできんぞ、キノ?おい、聞いてるか?」
江蓮からボコされたキノ、意識が飛んでいた。
「威吹さん」
江蓮が険しい顔のまま威吹を呼んだ。
「な、何でござるか?」
「このバカじゃなくて、威吹さんからも教わりたい。威吹さん風のやり方、教えて」
「それは構わぬが、キノから恨まれはせぬか?」
「大丈夫。その時はまたシメるから。いいでしょ?」
そこへカンジが威吹にそっと耳打ち。
「先生。ここは逆らわぬ方が……」
「そ、そうだな。……では、妖狐と鬼族はそもそも基本形が違う故、そこから教示させて頂こう」
「ありがとう!よろしくお願いしまッス!」
[同日12:00.合宿所1F・ロビー ミカエラ(ミク人形)&クラリス(フランス人形)]
共に人間形態の2体の人形。
「見慣れた筈の地で♪雲翳るこの世界で♪罰を受けるように♪心を失ったの♪心さえも♪貴方から奪うの♪此処で♪扉の向こうの世界へ♪誘ってあげるわ♪……」(心の在り処。原曲:東方Project“東方妖々夢”より、“人形裁判 〜人の心弄びし少女〜”)
ミカエラがアップライトピアノを弾き、ミク人形が歌う。
「おっ、ミクが歌ってる」
ロビーの隣にある食堂へやってきたユタとマリア。
「幸いピアノが置いてあるし、人形達はヒマだろうから、ここで歌ってもらっている」
「いいことです」
他のメンバーを待っていると、一曲歌い終わる。
で、今度は一転して、軽快なリズムを引くクラリス。
「ほんとにほんとにほんとにほんとにご苦労さん♪」
「え?」
「嫌じゃありませんか法華講♪命題、命題と責められて♪心休めるヒマもない♪これじゃケンショーと変わらない♪ほんとにほんとにほんとにほんとにご苦労さん♪ソレ!」
「……こ、これいいんですか、マリアさん?」
「……魔力の調整、失敗したかな???」
「……いいじゃありませんか男なら♪何をクヨクヨするものか♪真っ赤な褌引き締めて♪行くぞこの仏道(みち)どこまでも♪ほんとにほんとにほんとにほんとにご苦労さん♪」
「おう、悪ィ!待たせたな!」
一番最後にやってきたのはキノ。
「江蓮にリンチされて、体が痛くてよぉ!」
「黙れ、てめぇ!」
「いいから早く、昼ごはん食べよ」
イリーナがメンバーを促す。
ユタ達が食堂に入った時、既にミク達は人間形態から人形形態に戻っていた。