報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「くりこま高原駅」

2018-06-25 19:12:06 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日08:00.天候:晴 JR東北新幹線“やまびこ”41号9号車内]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。仙台の次は、古川に止まります〕

 朝一の下り列車が仙台市内を走行する。
 仙台からは既にそこ始発の下り列車が出ている為、もうこの列車は初電ではなくなる。

 敷島:「ここから平賀先生が乗って来るはすだ。……おい、リン。そろそろ席を空けとけ」

 敷島は平賀の席に座っているリンに言った。

 鏡音リン:「ぶ、ラジャー!」

 リンはパッと立ち上がると、自分の席に戻った。

 敷島:「人の席に座りたがる奴らだな」
 シンディ:「この前、社長の椅子に座ろうとしていたので、すぐに注意しておきましたけどね」
 敷島:「それでか。俺の執務室のドアの鍵だけ、やたら厳重になってたの」
 シンディ:「そういうことです」
 エミリー:「オマエの電子キー設定のせいで、私まで入れなくなっていたぞ?」
 シンディ:「ゴメンナサーイ!」
 敷島:「それでか!エミリーがドアの修理していたの!」

 どうやらエミリーがマルチタイプ特有の腕力でこじ開けたようである。

 アリス:「面白い会社ね」
 リン:「博士も遊びに来てよー!」
 鏡音レン:「歓迎しますよ」
 アリス:「そうしたいけど、アタシも忙しくてねー」

 そう話しているうちに列車は大きく揺れて、下り副線の11番線に到着した。

〔「仙台に到着です。仙台から先は、終点盛岡まで各駅に停車致します。……」〕

 仙台駅で降車する乗客は多い。
 だが、乗車客もそれなりにいる。
 その中の1人に平賀がいた。

 敷島:「平賀先生、おはようございます」
 平賀:「敷島さん、おはようございます」
 村上:「これで、全員集合じゃの」
 敷島:「そうですね。どうぞ、平賀先生。この席です」
 平賀:「どうもどうも。……ん?温かい?」
 敷島:「ああ。さっきまでそこにリンが座ってたもんで……」

 敷島がそんなことを言っていると、タタタッとリンがやってきた。

 リン:「殿!温めておきました!」
 平賀:「ああ……うん。サンクス」
 敷島:「そりゃ反応に困りますよね」

 発車の時間が迫り、ホームからオリジナルの発車メロディが聞こえて来る。

 平賀:「あれから何か状況は変わりましたか?」
 村上:「全然。情報なし、手掛かりなし、皆無じゃ」
 平賀:「じゃ、どうするんですか?」

 ピー!という客終合図が聞こえてくる。

 村上:「取りあえず、彼らが今どこにいるかは分かっておる。そこに向かうしか無いじゃろう」

 少し揺れて列車が走り出した。

 平賀:「罠の可能性は?」
 敷島:「先生。私達にその予見は不要ですよ。迷ったらとにかく行動です」
 村上:「敷島社長の言う通り。もし仮に平賀君の言う罠じゃったとしたら、尚更先遣隊が危険な目に遭っとるということじゃないか。人命救助に、迷っているヒマは無いぞ」
 平賀:「それはそうですが……」
 敷島:「もちろん、実際に探索を行うのはロイド達です。私達は安全な場所を確保して、そこから見ていればいい」
 エミリー:「お任せください」
 シンディ:「任務遂行が最優先です」
 ロイ:「その通りです!」
 シンディ:「オマエは残って、博士達の護衛でもしてな」
 ロイ:「そんな、御無体な!」
 村上:「いや、まあ、そこは……シンディの言う通りじゃな。スマンが、それで頼む」
 ロイ:「博士がそう仰るのでしたら……」

 ロイは渋々応じた。

[同日08:27.天候:曇 宮城県栗原市 JRくりこま高原駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、くりこま高原です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。くりこま高原の次は、一ノ関に止まります〕

 車窓には田園風景が広がるが、ようやく大型のショッピングモールなどが見え始めた頃に放送が流れた。
 ぐんぐん列車は速度を落として行く。

 村上:「調査チームもまた、この駅で降りたはずなんじゃよ」
 敷島:「なるほど」

 列車がホームに停車する。
 東北新幹線開通時には開業しておらず、後付けで設置した駅の為、ホームは狭い。
 通過線が無い為に、この駅には早くからホームドアが設置されていた。

〔くりこま高原、くりこま高原です。ご乗車、ありがとうございました〕

 敷島達はホームに降りた。

 敷島:「新幹線にはよくお世話になってるが、この駅を利用したのは初めてだな……」
 アリス:「そうね」

 エミリーとシンディが大きなスーツケースを両手に降りて来た。
 因みに平賀も持っている。

 ロイ:「平賀教授、お持ちしましょう」
 平賀:「あっ?……ああ、すまない」

 ロイはヒョイと人間なら重たいスーツケースを簡単に持ち上げた。
 中身はもちろん、平賀が開発したサブウェポンである。

 敷島:「途中で職質されたら、間違い無くタイーホだな」
 平賀:「えっ!?国家公安委員会の許可を取って来たんじゃ!?」
 敷島:「禁止事項にサブウェポンが入っていなかったから、まあいいかと思いまして……」
 平賀:「……相変わらず、敷島さんの度胸にはヒヤヒヤさせられますよ」
 敷島:「どうもすいません」
 村上:「それで、ワシらはこれからどうやって行けばいいのかね?言っておくが、調査チームは駅近にいるわけではないぞ?」
 敷島:「分かってますよ。ちゃんとレンタカーを予約しています。こっちです」
 村上:「それならいいがな」

 ホームは高架上にあるが、改札口は地上にある。
 いかに新幹線の駅と言えど、1時間に1本しか列車が止まらない小さな駅である為、まるで在来線の駅のような雰囲気だ。

 敷島:「それじゃ、私はレンタカーの手続きをしてきますので……」
 村上:「うむ。よろしく頼む」
 平賀:「敷島さん、自分も行きますよ」

 まずは、現地に向かう為の足となる車を確保することから始まる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“戦う社長の物語” 「始発電車」

2018-06-25 10:22:47 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日06:15.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅・新幹線乗り場]

 アリス:「ねむ……」

 アリスは大きな欠伸をした。

 敷島:「着くまで寝てていいよ。その代わり、朝飯は抜きな」
 アリス:「いや、食べるって」

 まずは在来線改札口に入る。
 朝早いということもあってか、多くの人で賑わうエキナカも今は人がまばらだ。

 敷島:「朝飯は駅弁でいいな」
 エミリー:「私が買ってきますよ」
 敷島:「いや、お前達は荷物を見ててくれ」

 エミリーとシンディは、大きなスーツケースを両手に2個ずつ持っていた。
 まるで、これから海外にでも行くかのようだ。
 ……というのは日本人の観点で、もしかしたら、『帰国する』という見方の方が適切かもしれない。
 もちろん、それぞれ中にあるのはRデコイなどのサブウェポンやロイド達の交換パーツなどが入っているのである。

 敷島:「何がいい?」
 アリス:「……ベーコンエッグ弁当」
 敷島:「無ェよ!」
 アリス:「『三元豚とんかつ弁当』」
 敷島:「これか。朝から随分とボリューミーなの食うな。まあいいや」

 敷島も自分のを探す。

 敷島:「どれにしようかな……。おっ、『日本のおもてなし弁当』なるものがあるぞ」
 アリス:「おもてなしする側が、されてどうするのよ?」
 敷島:「うるせぇな。……おっ、『深川めし』も美味そうだ。これにしよう。あとはお茶を……」
 アリス:「じゃ、お会計よろしくw」
 敷島:「ちょw おまwww 自分の飯代くらい……」

 だが、アリスは商品を敷島に託して行ってしまったのである。

 エミリー:「あの、社長。そろそろ列車が来る時間ですので……」
 敷島:「おっと!いけね!」

[同日06:30.天候:晴 JR大宮駅・新幹線ホーム→JR東北新幹線“やまびこ”41号9号車内]

〔17番線に、“やまびこ”41号、盛岡行きが10両編成で参ります。この電車は途中、宇都宮、郡山、福島、仙台と仙台から先の各駅に止まります。グリーン車は9号車、自由席は1号車から7号車です。まもなく17番線に、“やまびこ”41号、盛岡行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 自動接近放送がホームに響き渡る。

 敷島:「エミリー。リンとレンはもう列車に乗ってるかな?」
 エミリー:「はい。予定通り、乗車しております。あと、上野駅からは村上博士とロイが乗車しました」
 敷島:「上野から?珍しいな。ついリン・レンと一緒に東京駅から乗るか、平賀先生と一緒に仙台駅から乗るかのどっちかだと思ってたのに……」
 エミリー:「東京でのご自宅が京成線の沿線にあるみたいですよ」
 敷島:「ふーん……?まあ、東京都心大学に行くには、上野から地下鉄に乗ってもいいのか」
 エミリー:「そういうことですね。都営浅草線直通に乗っても良いみたいです」
 敷島:「都営浅草線で行けたっけ?」

 敷島が首を傾げていると、列車がやってきた。
 東北新幹線では最古参となったE2系である。

 敷島:「平賀先生みたいな人ならグランクラスでもいいと思ったんだけど、E2系じゃ無いからな」
 アリス:「じゃ、アタシが代わりに乗るわ」
 敷島:「だから無ェっつってんだろ」

〔「おはようございます。大宮ぁ、大宮です。17番線に到着の電車は6時30分発、東北新幹線“やまびこ”41号、盛岡行きです。……」〕

 ドアが開いて列車に乗り込む。

 シンディ:「社長、荷物はここに置いていいですか?」
 敷島:「いいよ。盗難防止装置は作動させとけよ」
 シンディ:「はい」

 デッキには大きなスーツケースを置いておくスペースがある。
 当然ながら客席からは見えない位置となるので、防犯については考える必要がある。

 村上:「よお!おはようさん」
 ロイ:「おはようございます」
 敷島:「村上教授、おはようございます」
 エミリー:「社長方の御席はこちらです……って」

 本来、敷島とアリスが座る席には何故か鏡音リンとレンがいた。
 しかも2人とも、携帯型ゲーム機に夢中だ。

 エミリー:「おい」
 シンディ:「あんた達……」
 鏡音リン:「……あ。殿、温めておきました!」

 リンとレンは慌てて席を立った。

 エミリー:「アホか!」
 シンディ:「あんた達の席はこっち!」

 エミリーとシンディが鏡音姉弟を退かした。
 そんなことしている間に、列車が走り出す。

 エミリー:「本当にあんなので役に立つのですか?」
 敷島:「まあ、やってみなきゃ分からんさ」
 村上:「おお〜、敷島社長とアリス君も駅弁じゃな」
 敷島:「旅の楽しみですからねぇ……」
 アリス:「アムトラックじゃ、なかなか売ってないもの」
 村上:「アムトラックか。だがその代わり、向こうには日本では無くなった食堂車があるではないか」
 アリス:「そうね」
 敷島:「それは羨ましい。またアメリカに行く機会があったら、今度はグレイハウンドバスじゃなく、アムトラックに乗ってみようかな」
 アリス:「タカオ、本来なら車かアメリカン航空で移動するのが普通だからね?」

 実はそうである。
 映画の“ホームアローン”シリーズでも、主人公を置いてけぼりにした家族は、国内旅行でも飛行機を使っていた。
 中流の上以上の家庭では飛行機を使い、中流の下以下の家庭ではバスか鉄道というのが向こうのセオリーである。
 ……日本と同じか?

 敷島:「向こうには新幹線が無いからいいの」
 村上:「日本の新幹線みたいな列車のようなものに、アセラ・エクスプレスなるものがあるが、まあ限定的じゃからの」
 ロイ:「あそこの車内販売限定サンドイッチは美味でしたね」
 村上:「うむ」
 敷島:「へぇ!いいなぁ……」
 ロイ:「シンディ様も是非御一緒に……」
 シンディ:「私達は食えねーだろ、コラ!」
 敷島:「まあまあ。村上博士は上野駅から何か駅弁でも?」
 村上:「牛肉弁当ぢゃ」
 敷島:(爺さん、元気!?)
 村上:「これから死地に赴くに当たって、『テキにカツ(敵に勝つ)』為のゲン担ぎじゃわい」
 敷島:「はあ……」

 敷島は老博士の元気ぶりに少し呆れた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする