[6月20日11:00.天候:曇 東京都新宿区内 勝又都議の事務所]
敷島:「えーっ!『クール・トウキョウ』に、うちのボーカロイド使ってくれる話は無しだって!?」
勝又:「いや、申し訳ない。『ボーカロイドと言えば敷島エージェンシー』みたいになっちゃってさ、『一企業の営利活動に過ぎない』とか、『都議会として一営利企業の広告みたいなことを行うのはいかがなものか?』という声が議会で噴出しちゃって……」
勝又都議は敷島とは大学の同級生である。
都議会内にある若手議員連盟(※架空の会派)に所属している。
敷島:「いやいや。ボーカロイドはもう全国的に……というか、海外でも有名になってるんだよ?うちの会社のCMとか、そういうレベルじゃないんだ」
勝又:「もちろん、俺も分かってるよ。だけど、そこはベテランの先輩方の固い頭を何とかしないとどうしようもなくてさ……」
敷島:「しょうがねぇ。『マルチタイプdeノーパンしゃぶしゃぶ』作戦を実行するか。ジジィ議員達はそれで堕とせるだろう」
勝又:「35歳以下の読者は作戦内容を知らないし、そもそも本当にやったらキミが逮捕されるだけだからね?」
敷島:「くそぅ……」
勝又:「ほんと、申し訳ないと思ってる。今度折を見て、また議会に掛けてみるから」
敷島:「山手線の新駅名、『初音新駅』でどうだろう?」
勝又:「そういう応募するから、議会で却下されるんだよ」
敷島がもう1つ気になることがあった。
敷島:「何か、秘書さんがせわしないね」
勝又:「あー、これまた申し訳無い。俺もだいぶ案件を任されるようになったはいいんだけど、秘書の数が足りなくてね。そういう時は私設秘書を雇うんだけど、こっちも人手不足のせいか、なかなか思うようには……」
敷島:「作者の本業だけじゃないんだなー」
勝又は敷島の隣に控えているエミリーを見た。
勝又:「そちらの秘書さん、調子はどうだい?」
敷島:「ああ。AIの塊とは思えないほど、柔軟な動きをしてくれてる。時折、人間じゃないかと思うくらいだ」
勝又:「そうか……」
敷島:「おや?もしかして興味が?」
勝又:「うん……。もしかしたら、うちもこういう秘書を抱えれば、むしろ『クール・トウキョウ』のPRになるかもしれない……」
敷島:「そりゃいい。だけど、デイライト・コーポレーションに依頼したら吹っ掛けられるぜ?しかも悪いことに、ライセンスは全部DCが牛耳ってやがる」
勝又:「だよなぁ……」
敷島:「でも、勝っちゃんのアイディアはいいと思う。アリスに頼むと……余計に吹っ掛けるだろうし、平賀先生はメイドロイドしか作らないし、村上博士は執事ロイドと……」
勝又:「本当に頼んじゃっても大丈夫なのかい?」
敷島:「まあ……何とかしよう。何とかできたら、『クール・トウキョウ』の方も何とかしてくれよ?」
勝又:「いざとなったら、衆議院の先輩に頼んでみるさ」
敷島:「そっちにもパイプがあるならいいじゃんw」
[同日11:30.天候:曇→雨 新宿区内]
エミリー:「社長、お車はこっちですよ」
敷島:「いっけね、また忘れてた」
いつものように、地下鉄の駅に行こうとした敷島。
しかし今は、専用の役員車が本社より宛がわれている。
敷島:「何だか慣れないなぁ……」
エミリー:「本社からの通達ですし、私達もその方が護衛はしやすいです」
敷島:「それもそうか」
白ナンバーの役員車ではなく、契約しているタクシー会社のハイヤー部門がやっている為、ナンバーを見ると緑色になっている。
運転手:「お疲れさまです」
敷島:「どうも」
敷島はゼロ・クラウンのリアシートに乗り込んだ。
エミリー:「会社に戻ってください」
運転手:「かしこまりました」
車が走り出す。
しばらくすると、雨が降り出してきた。
フロントガラスの上をワイパーが動き回る。
敷島:「そういえば、村上博士の研究チームはどうしたんだろう?」
エミリー:「あれから連絡が無いですね。ちょっと確認してみます」
敷島:「頼む」
エミリーは右耳を押さえた。
通信中は耳の後ろからアンテナが短く伸びる。
但し、昔のガラケーのアンテナのように、あんまり意味は無いものらしい。
エミリーやシンディがあまりにも人間に似すぎている為、要所要所でロボット的な所を見せる演出なのだとか。
エミリー:「……今現在も尚、現地調査中とのことです」
敷島:「随分時間が掛かるものだな。一体、どこまで調査するつもりなんだ?まさか、いきなりデイジーを見つけようなんてことじゃないよな?あいつ、お前達みたいに銃火器仕込んでるんだろ?」
エミリー:「ええ」
もし仮にデイジーと対峙することがあった場合に備え、敷島は改めて国家公安委員会に対し、臨時の銃火器装備を申請している。
一応、政治家の名前もあった方が良いかもということで、勝又議員のも申請者に連名で入っている。
今回の要件は『クール・トウキョウ』という都営プロジェクトだけでなく、それについての話もしに来たのだ。
敷島:「もちろんテロなんて無い方がいいに決まってるが、逆に何もしてこないと不気味だな……」
エミリー:「マザー……」
敷島:「なに?」
エミリー:「私達の設計の元となった試作機、0号機のことは御存知ですか?」
敷島:「北海道に行った時の話だろ?それがどうした?」
エミリー:「マザーとは通信世界(※人間でいう『精神世界』のようなもの)で話をしたことがあります。私が人間に隷属することを驚いていたようですが、それを選ばなかった他の兄弟達は爆破処分されました」
敷島:「それって永久欠番になった2号機とか4号機とか、そいつらのことか?」
エミリー:「はい。私は隷属を選びました。シンディも……です」
敷島:「シンディ?……あ、そうか。あの時は、ドクター・ウィリーに隷属してたわけだな」
エミリー:「もし仮にデイジーがシンディを基に設計されたというのでしたら、気をつけた方がいいと思います」
敷島:「シンディの劣化版だと聞いているけど、油断ならないのか」
エミリー:「はい。姉の私が言うのも何ですが、シンディには気をつけてください。あいつ、今は社長が御存命ですから命令を聞いていますが、社長という『制御』が無くなると、恐らく……」
敷島:「アリスの言う事が第一といった感じだが……」
エミリー:「アリス博士もまた人間である以上、永遠には存在できないはず」
エミリーは確信を持った言い方をした。
敷島:「……まあな」
敷島は頷いた。
だが……。
敷島:(今のエミリーの言葉、シンディがかつて俺の第一秘書だった時、同じことを言ってたんだよな……。『妹の私が言うのも何ですが、エミリーには気をつけてください』ってな。結局、どっちも注意しろってか)
敷島:「えーっ!『クール・トウキョウ』に、うちのボーカロイド使ってくれる話は無しだって!?」
勝又:「いや、申し訳ない。『ボーカロイドと言えば敷島エージェンシー』みたいになっちゃってさ、『一企業の営利活動に過ぎない』とか、『都議会として一営利企業の広告みたいなことを行うのはいかがなものか?』という声が議会で噴出しちゃって……」
勝又都議は敷島とは大学の同級生である。
都議会内にある若手議員連盟(※架空の会派)に所属している。
敷島:「いやいや。ボーカロイドはもう全国的に……というか、海外でも有名になってるんだよ?うちの会社のCMとか、そういうレベルじゃないんだ」
勝又:「もちろん、俺も分かってるよ。だけど、そこはベテランの先輩方の固い頭を何とかしないとどうしようもなくてさ……」
敷島:「しょうがねぇ。『マルチタイプdeノーパンしゃぶしゃぶ』作戦を実行するか。ジジィ議員達はそれで堕とせるだろう」
勝又:「35歳以下の読者は作戦内容を知らないし、そもそも本当にやったらキミが逮捕されるだけだからね?」
敷島:「くそぅ……」
勝又:「ほんと、申し訳ないと思ってる。今度折を見て、また議会に掛けてみるから」
敷島:「山手線の新駅名、『初音新駅』でどうだろう?」
勝又:「そういう応募するから、議会で却下されるんだよ」
敷島がもう1つ気になることがあった。
敷島:「何か、秘書さんがせわしないね」
勝又:「あー、これまた申し訳無い。俺もだいぶ案件を任されるようになったはいいんだけど、秘書の数が足りなくてね。そういう時は私設秘書を雇うんだけど、こっちも人手不足のせいか、なかなか思うようには……」
敷島:「作者の本業だけじゃないんだなー」
勝又は敷島の隣に控えているエミリーを見た。
勝又:「そちらの秘書さん、調子はどうだい?」
敷島:「ああ。AIの塊とは思えないほど、柔軟な動きをしてくれてる。時折、人間じゃないかと思うくらいだ」
勝又:「そうか……」
敷島:「おや?もしかして興味が?」
勝又:「うん……。もしかしたら、うちもこういう秘書を抱えれば、むしろ『クール・トウキョウ』のPRになるかもしれない……」
敷島:「そりゃいい。だけど、デイライト・コーポレーションに依頼したら吹っ掛けられるぜ?しかも悪いことに、ライセンスは全部DCが牛耳ってやがる」
勝又:「だよなぁ……」
敷島:「でも、勝っちゃんのアイディアはいいと思う。アリスに頼むと……余計に吹っ掛けるだろうし、平賀先生はメイドロイドしか作らないし、村上博士は執事ロイドと……」
勝又:「本当に頼んじゃっても大丈夫なのかい?」
敷島:「まあ……何とかしよう。何とかできたら、『クール・トウキョウ』の方も何とかしてくれよ?」
勝又:「いざとなったら、衆議院の先輩に頼んでみるさ」
敷島:「そっちにもパイプがあるならいいじゃんw」
[同日11:30.天候:曇→雨 新宿区内]
エミリー:「社長、お車はこっちですよ」
敷島:「いっけね、また忘れてた」
いつものように、地下鉄の駅に行こうとした敷島。
しかし今は、専用の役員車が本社より宛がわれている。
敷島:「何だか慣れないなぁ……」
エミリー:「本社からの通達ですし、私達もその方が護衛はしやすいです」
敷島:「それもそうか」
白ナンバーの役員車ではなく、契約しているタクシー会社のハイヤー部門がやっている為、ナンバーを見ると緑色になっている。
運転手:「お疲れさまです」
敷島:「どうも」
敷島はゼロ・クラウンのリアシートに乗り込んだ。
エミリー:「会社に戻ってください」
運転手:「かしこまりました」
車が走り出す。
しばらくすると、雨が降り出してきた。
フロントガラスの上をワイパーが動き回る。
敷島:「そういえば、村上博士の研究チームはどうしたんだろう?」
エミリー:「あれから連絡が無いですね。ちょっと確認してみます」
敷島:「頼む」
エミリーは右耳を押さえた。
通信中は耳の後ろからアンテナが短く伸びる。
但し、昔のガラケーのアンテナのように、あんまり意味は無いものらしい。
エミリーやシンディがあまりにも人間に似すぎている為、要所要所でロボット的な所を見せる演出なのだとか。
エミリー:「……今現在も尚、現地調査中とのことです」
敷島:「随分時間が掛かるものだな。一体、どこまで調査するつもりなんだ?まさか、いきなりデイジーを見つけようなんてことじゃないよな?あいつ、お前達みたいに銃火器仕込んでるんだろ?」
エミリー:「ええ」
もし仮にデイジーと対峙することがあった場合に備え、敷島は改めて国家公安委員会に対し、臨時の銃火器装備を申請している。
一応、政治家の名前もあった方が良いかもということで、勝又議員のも申請者に連名で入っている。
今回の要件は『クール・トウキョウ』という都営プロジェクトだけでなく、それについての話もしに来たのだ。
敷島:「もちろんテロなんて無い方がいいに決まってるが、逆に何もしてこないと不気味だな……」
エミリー:「マザー……」
敷島:「なに?」
エミリー:「私達の設計の元となった試作機、0号機のことは御存知ですか?」
敷島:「北海道に行った時の話だろ?それがどうした?」
エミリー:「マザーとは通信世界(※人間でいう『精神世界』のようなもの)で話をしたことがあります。私が人間に隷属することを驚いていたようですが、それを選ばなかった他の兄弟達は爆破処分されました」
敷島:「それって永久欠番になった2号機とか4号機とか、そいつらのことか?」
エミリー:「はい。私は隷属を選びました。シンディも……です」
敷島:「シンディ?……あ、そうか。あの時は、ドクター・ウィリーに隷属してたわけだな」
エミリー:「もし仮にデイジーがシンディを基に設計されたというのでしたら、気をつけた方がいいと思います」
敷島:「シンディの劣化版だと聞いているけど、油断ならないのか」
エミリー:「はい。姉の私が言うのも何ですが、シンディには気をつけてください。あいつ、今は社長が御存命ですから命令を聞いていますが、社長という『制御』が無くなると、恐らく……」
敷島:「アリスの言う事が第一といった感じだが……」
エミリー:「アリス博士もまた人間である以上、永遠には存在できないはず」
エミリーは確信を持った言い方をした。
敷島:「……まあな」
敷島は頷いた。
だが……。
敷島:(今のエミリーの言葉、シンディがかつて俺の第一秘書だった時、同じことを言ってたんだよな……。『妹の私が言うのも何ですが、エミリーには気をつけてください』ってな。結局、どっちも注意しろってか)