[10月6日18:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
高橋:「先生。そろそろ暗くなるというのに、リサのヤツ、帰って来ませんよ?」
愛原:「そうだねぇ……」
高橋:「先生の言い付けを破るとはいい度胸だ。マグナム撃ち込んでやりましょう」
愛原:「だからリサには効かないって」
私は部屋の窓から通りを見下ろした。
すると待ってましたとばかりに、マンションの入口に白塗りの高級車っぽい車が止まる。
どうやらリサが帰って来たようだ。
愛原:「高橋、ちゃんと夜になる前にリサが帰って来たぞ?」
高橋:「マジっスか?でも遅刻ですね」
愛原:「何で?」
高橋:「冬ならもう真っ暗な時間ですよ?」
愛原:「今はまだ秋だっつの」
それも、時々まだ暑い。
愛原:「リサの友達の斉藤さんってコ、物凄い金持ちなんだな。運転手付きの高級車だぜ?」
高橋:「いや、あんま大したこと無いですよ」
愛原:「そう?何か、ロールスロイスっぽい車だぞ?」
高橋:「ロールスっぽく造ってる、光岡のガリューですよ。ベースはティアナです」
さすがは元暴走族。
車にも詳しい。

(これなら御法主上人が乗り降りしても、『ヤクザの車みたい』というほどの威圧感は無いだろう?)
愛原:「ティアナだって、タクシーでも使えないくらいの高級車だぞ?」
お手頃価格のハイヤーってところかな。
都内なら個人タクシーとか、法人タクシーでもハイグレードタイプとして走行しているのを見ることがある。
高橋:「敵対してたVIPカーのチームに、ティアナを使ってたアホがいましたがね、俺が真っ先に……」
と、そこへ電話が掛かってきた。
スマホの他に、固定電話も部屋には引いている。
高橋:「はい、愛原学探偵事務所です」
愛原:「高橋、ここ事務所じゃない」
高橋:「あっ……」
まあ、北区王子時代は事務所兼住宅だったからしょうがなかったが……。
高橋:「あっ、先生っスか?ちょっとお待ちください」
高橋は電話を保留にした。
高橋:「先生、善場さんからですよ」
愛原:「善場さんか」
私は電話に出た。
愛原:「もしもし。お電話代わりました。愛原です」
その間にリサが帰って来る。
リサ:「ただいまぁ!」
高橋:「遅ぇぞ!今何時だと思ってんだ、あぁっ!?」
リサ:「ええ〜?まだ6時過ぎだよ〜?」
高橋:「アホか!中坊はもっと早く帰って来るもんだ!」
愛原:「……あ、はい。いえ、大丈夫ですよ。御用件は?」
リサ:「まだ夜になってないもん!」
高橋:「お前は先生の御心が分かってんのか!?あぁっ!?暗くなり始める前に帰れってことなんだよ!」
リサ:「暗くなる前に帰れって言われたんだもん!」
愛原:「……あ、すいません。ちょっとよく聞こえないんで、もう少し大きな声で……」
高橋:「先生が御心配なさったんだぞ!?そういうのを察して、暗くなり始める前に帰るって考えりゃ分かんだろうが、あぁっ!?」
リサ:「わたしは言われた通りにしただけだもん!!」
愛原:「あー、もう!うるせぇな!何やってんだ!?」
高橋:「はっ、先生!申し訳ありません!こいつが先生に御心配をお掛けしたというのに、全く反省の態度を見せないので息の根を止め……いえ、強く注意してやろうと……」
リサ:「わたしは言われた通りにしたよ!?」
愛原:「後でお前らの言い分は聞くからね、今俺は大事な電話をしているんだから、うるさくしないように!……あ、もしもし。すいません」
高橋:「けっ、テメーのせいで怒られただろうが」
リサ:「お兄ちゃんのせいでしょ」
高橋:「『ごめんなさい』だろ?テメ、コラ」
リサ:「何よ!?」
愛原:「あ、えーと……明後日ですか?ええ、大丈夫ですよ。明日の何時頃……」
ピーーーーーーーー!
愛原:「……ぉぉうぁっ!?何なんだ、一体!?」
高橋:「ああ、すいません。ヤカンの音です」
高橋はガスコンロに掛けていたヤカンの火を止めた。
リサ:「うるさいね、全く」
高橋:「あぁっ!?」
愛原:「ピーピーピーピーうるさいんだっての、高橋!」
高橋:「いや、俺じゃないですよ。ピーピー言ってたの、ヤカンですよ?」
愛原:「俺は今電話中なんだから、静かにしろ!……あ、もしもし。何度もすいません。どこまで話しましたっけ?……ああ、えーと、明後日の……はい」
リサ:「どうしてヤカンをコンロに掛けてたの?」
高橋:「電気ポットがぶっ壊れたんだよ。確かあれもリサイクルショップで買った中古品だったからよ」
リサ:「新品を買わないの?」
高橋:「今よりも貧乏事務所で買えなかったんだよ」
高橋はそう言うと、ヤカンで熱したお湯をポットの中に入れた。
リサ:「ポットは壊れたんでしょ?」
高橋:「いや、取りあえずボタンを押せばお湯は出る。湯が沸かなくなっただけだ」
普通のポットとしては使えるというわけだ。
愛原:「……分かりました。じゃあ、明後日お伺いします。……はい。すいません、騒がしくて……はい。それじゃ、失礼します」
私は電話を切った。
愛原:「お前らなぁ……」
高橋:「サーセン」
リサ:「サーセン」
高橋:「お前は『ごめんなさい』だろ?」
リサ:「何でよ?」
愛原:「兄妹ゲンカみたいでいいね」
高橋:「はあ!?何言ってるんスか!?」
愛原:「で、ヤカンがどうしたんだ?」
高橋:「あ、いえ。電気ポットが壊れたんで、ヤカンで湯を沸かしてたんですよ」
愛原:「電気ポット壊れたら、言ってくれたら良かったのに」
高橋:「サーセン」
愛原:「今ならドンキやヨドバシで新品買えるくらいの金はあるぞ?ぶっちゃけ、電気ポットってここで使うか?」
高橋:「使う時は使いますけどね……」
リサ:「私は使わないなぁ……」
高橋:「事務所では使います」
愛原:「事務所用は事務所用で新しいの買ったからな、アスクルで。来客のお茶出しとかにも使うし」
高橋:「アスクルで売ってるもんなんですねぇ……。それじゃ、ここ用のもアスクルで買いますか」
愛原:「いや、だからここで電気ポット導入してもあんまり必要無いような気がする。電気ケトルでいいんじゃないか?」
高橋:「あ、それなら安くていいですね。それこそドンキで買える代物です」
愛原:「だろ?明日、ちょっと行って来よう」
高橋:「うッス」
愛原:「それより、夕飯にしようぜ」
高橋:「今日はトンカツ定食です」
愛原:「いいね〜!リサはどうする?取りあえず俺と高橋、亀戸駅前のドンキまで行って来る」
ここから都営バス一本で行けるからな。
都営新宿線で岩本町駅まで行って、そこからアキバへ向かってもいいのだが、少し歩くので、特に電気街に行こうとすると不便である。
リサ:「今度はサイトーが遊びに来るの」
愛原:「そうなのか」
リサ:「宿題も一緒にやる」
愛原:「そりゃいい」
高橋:「中学からのダチは、一生モンだ」
愛原:「お、いいこと言うねぇ」
高橋:「俺が今付き合ってる連中も、半分以上は中学ん時のダチですから」
愛原:「なるほど」
高橋:「ところで先生、さっきの電話何だったんスか?」
愛原:「ああ、あれねぇ……」
私は電話の内容を高橋達に話した。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
高橋:「先生。そろそろ暗くなるというのに、リサのヤツ、帰って来ませんよ?」
愛原:「そうだねぇ……」
高橋:「先生の言い付けを破るとはいい度胸だ。マグナム撃ち込んでやりましょう」
愛原:「だからリサには効かないって」
私は部屋の窓から通りを見下ろした。
すると待ってましたとばかりに、マンションの入口に白塗りの高級車っぽい車が止まる。
どうやらリサが帰って来たようだ。
愛原:「高橋、ちゃんと夜になる前にリサが帰って来たぞ?」
高橋:「マジっスか?でも遅刻ですね」
愛原:「何で?」
高橋:「冬ならもう真っ暗な時間ですよ?」
愛原:「今はまだ秋だっつの」
それも、時々まだ暑い。
愛原:「リサの友達の斉藤さんってコ、物凄い金持ちなんだな。運転手付きの高級車だぜ?」
高橋:「いや、あんま大したこと無いですよ」
愛原:「そう?何か、ロールスロイスっぽい車だぞ?」
高橋:「ロールスっぽく造ってる、光岡のガリューですよ。ベースはティアナです」
さすがは元暴走族。
車にも詳しい。

(これなら御法主上人が乗り降りしても、『ヤクザの車みたい』というほどの威圧感は無いだろう?)
愛原:「ティアナだって、タクシーでも使えないくらいの高級車だぞ?」
お手頃価格のハイヤーってところかな。
都内なら個人タクシーとか、法人タクシーでもハイグレードタイプとして走行しているのを見ることがある。
高橋:「敵対してたVIPカーのチームに、ティアナを使ってたアホがいましたがね、俺が真っ先に……」
と、そこへ電話が掛かってきた。
スマホの他に、固定電話も部屋には引いている。
高橋:「はい、愛原学探偵事務所です」
愛原:「高橋、ここ事務所じゃない」
高橋:「あっ……」
まあ、北区王子時代は事務所兼住宅だったからしょうがなかったが……。
高橋:「あっ、先生っスか?ちょっとお待ちください」
高橋は電話を保留にした。
高橋:「先生、善場さんからですよ」
愛原:「善場さんか」
私は電話に出た。
愛原:「もしもし。お電話代わりました。愛原です」
その間にリサが帰って来る。
リサ:「ただいまぁ!」
高橋:「遅ぇぞ!今何時だと思ってんだ、あぁっ!?」
リサ:「ええ〜?まだ6時過ぎだよ〜?」
高橋:「アホか!中坊はもっと早く帰って来るもんだ!」
愛原:「……あ、はい。いえ、大丈夫ですよ。御用件は?」
リサ:「まだ夜になってないもん!」
高橋:「お前は先生の御心が分かってんのか!?あぁっ!?暗くなり始める前に帰れってことなんだよ!」
リサ:「暗くなる前に帰れって言われたんだもん!」
愛原:「……あ、すいません。ちょっとよく聞こえないんで、もう少し大きな声で……」
高橋:「先生が御心配なさったんだぞ!?そういうのを察して、暗くなり始める前に帰るって考えりゃ分かんだろうが、あぁっ!?」
リサ:「わたしは言われた通りにしただけだもん!!」
愛原:「あー、もう!うるせぇな!何やってんだ!?」
高橋:「はっ、先生!申し訳ありません!こいつが先生に御心配をお掛けしたというのに、全く反省の態度を見せないので息の根を止め……いえ、強く注意してやろうと……」
リサ:「わたしは言われた通りにしたよ!?」
愛原:「後でお前らの言い分は聞くからね、今俺は大事な電話をしているんだから、うるさくしないように!……あ、もしもし。すいません」
高橋:「けっ、テメーのせいで怒られただろうが」
リサ:「お兄ちゃんのせいでしょ」
高橋:「『ごめんなさい』だろ?テメ、コラ」
リサ:「何よ!?」
愛原:「あ、えーと……明後日ですか?ええ、大丈夫ですよ。明日の何時頃……」
ピーーーーーーーー!
愛原:「……ぉぉうぁっ!?何なんだ、一体!?」
高橋:「ああ、すいません。ヤカンの音です」
高橋はガスコンロに掛けていたヤカンの火を止めた。
リサ:「うるさいね、全く」
高橋:「あぁっ!?」
愛原:「ピーピーピーピーうるさいんだっての、高橋!」
高橋:「いや、俺じゃないですよ。ピーピー言ってたの、ヤカンですよ?」
愛原:「俺は今電話中なんだから、静かにしろ!……あ、もしもし。何度もすいません。どこまで話しましたっけ?……ああ、えーと、明後日の……はい」
リサ:「どうしてヤカンをコンロに掛けてたの?」
高橋:「電気ポットがぶっ壊れたんだよ。確かあれもリサイクルショップで買った中古品だったからよ」
リサ:「新品を買わないの?」
高橋:「今よりも貧乏事務所で買えなかったんだよ」
高橋はそう言うと、ヤカンで熱したお湯をポットの中に入れた。
リサ:「ポットは壊れたんでしょ?」
高橋:「いや、取りあえずボタンを押せばお湯は出る。湯が沸かなくなっただけだ」
普通のポットとしては使えるというわけだ。
愛原:「……分かりました。じゃあ、明後日お伺いします。……はい。すいません、騒がしくて……はい。それじゃ、失礼します」
私は電話を切った。
愛原:「お前らなぁ……」
高橋:「サーセン」
リサ:「サーセン」
高橋:「お前は『ごめんなさい』だろ?」
リサ:「何でよ?」
愛原:「兄妹ゲンカみたいでいいね」
高橋:「はあ!?何言ってるんスか!?」
愛原:「で、ヤカンがどうしたんだ?」
高橋:「あ、いえ。電気ポットが壊れたんで、ヤカンで湯を沸かしてたんですよ」
愛原:「電気ポット壊れたら、言ってくれたら良かったのに」
高橋:「サーセン」
愛原:「今ならドンキやヨドバシで新品買えるくらいの金はあるぞ?ぶっちゃけ、電気ポットってここで使うか?」
高橋:「使う時は使いますけどね……」
リサ:「私は使わないなぁ……」
高橋:「事務所では使います」
愛原:「事務所用は事務所用で新しいの買ったからな、アスクルで。来客のお茶出しとかにも使うし」
高橋:「アスクルで売ってるもんなんですねぇ……。それじゃ、ここ用のもアスクルで買いますか」
愛原:「いや、だからここで電気ポット導入してもあんまり必要無いような気がする。電気ケトルでいいんじゃないか?」
高橋:「あ、それなら安くていいですね。それこそドンキで買える代物です」
愛原:「だろ?明日、ちょっと行って来よう」
高橋:「うッス」
愛原:「それより、夕飯にしようぜ」
高橋:「今日はトンカツ定食です」
愛原:「いいね〜!リサはどうする?取りあえず俺と高橋、亀戸駅前のドンキまで行って来る」
ここから都営バス一本で行けるからな。
都営新宿線で岩本町駅まで行って、そこからアキバへ向かってもいいのだが、少し歩くので、特に電気街に行こうとすると不便である。
リサ:「今度はサイトーが遊びに来るの」
愛原:「そうなのか」
リサ:「宿題も一緒にやる」
愛原:「そりゃいい」
高橋:「中学からのダチは、一生モンだ」
愛原:「お、いいこと言うねぇ」
高橋:「俺が今付き合ってる連中も、半分以上は中学ん時のダチですから」
愛原:「なるほど」
高橋:「ところで先生、さっきの電話何だったんスか?」
愛原:「ああ、あれねぇ……」
私は電話の内容を高橋達に話した。