[8月16日12:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
愛原:「そろそろ、リサ達が来る頃だな……」
高橋:「善場の姉ちゃん、上手いことビアンガキを捕まえたみたいですね」
愛原:「まあな」
しかし、私は何だか腑に落ちない顔になっていた。
ここまで来て、斉藤社長が全く出てこないことに、何かあるのではないかと勘ぐっているのだ。
と、その時、事務所の電話が鳴った。
高橋が電話に出る。
高橋:「はい、愛原学探偵事務所です。……ああ、姉ちゃんか。……下に着いたのか?……ああ、分かった。先生に伝える。それじゃ」
高橋は電話を切った。
高橋:「先生、姉ちゃん達が下に着いたそうです。すぐに検査を始めるので、下に来いってことです」
愛原:「俺達も検査を受けることになるわけだ。こりゃ、昼飯抜きかな?」
高橋:「カンベンして欲しいっスね」
愛原:「まあ、しょうがない。大口契約先の依頼じゃな……」
私と高橋は事務所を出てエレベーターに乗り込んだ。
そして1階に下り、駐車場側の出口から出る。
するとそこには見覚えのある黒塗り高級ミニバンと、マイクロバスタイプの移動診療車が3台駐車していた。
傍から見れば、レントゲン車や献血バスのようである。
うち1台はハイエースであった。
善場:「お疲れ様です。愛原所長」
愛原:「善場主任、お疲れ様です」
善場:「早速ですが、検査をさせて頂きます」
高橋:「どんだけ本格的にやるつもりだ?」
善場:「愛原所長と高橋助手にあっては、血液検査と尿検査、それとX線検査のみで結構です」
高橋:「そうなのか」
善場:「プラス、医師による問診ですね」
愛原:「あくまで私達が、特異菌に感染していないかどうかの検査だからですね?そしてそれは、そのような簡単な検査で分かる、と……」
善場:「そういうことです。特異菌は、あくまで新種のカビを生物兵器に転用したものです。それまでのウィルスと違い、簡単に検出できます。これは、今までの生物兵器ウィルスは、使用者はもちろん、開発者をも自滅に追い込んでしまうことが多々あった為の対策でしょう」
ウィルスみたいに、ただばら撒くのでは、使用者も制御しきれない。
リサやエブリンのように、明確な意思を持った制御者が調整しながら感染させるのが良いという判断に至ったようである。
愛原:「だけど、絵恋さんは違うと……」
善場:「はい。所長方のように、単なる感染者ではないと見ています」
愛原:「分かりました。それで、絵恋さん達は?」
善場:「あっちのバスの中です」
善場主任は、献血バスのようなマイクロバスを指さした。
何だか知らないが、そのバスが少し揺れている。
善場:「よほど納得できないのか、抵抗しているようです」
愛原:「リサは?」
善場:「同じバスの中です。彼女からも絵恋さんを説得してもらっているのですが、それでも嫌がる有り様で……」
高橋:「けっ、アホビアンが。先生、俺達はさっさと済ませましょう」
愛原:「そ、そうだな」
私達はまず検尿を行なった。
それからレントゲン車で、レントゲンを取る。
その前に本人確認の為、虹彩を撮られた。
検査技師A:「はい、目を大きく開いてー。虹彩を撮ります。……はい、愛原学さん。本人確認が取れました。それでは、あちらでレントゲンの撮影を……」
政府機関に虹彩データが保存されているとは……。
検査技師B:「はい、息を大きく吸ってー。はい、息を止めまーす。……はい、撮りました。次は、血液検査になります。隣のバスへどうぞ」
愛原:「はい」
何だか本当に健康診断を受けてるみたいだなぁ……。
愛原:「レントゲンの撮影で、特異菌の感染状況が分かるのですか?」
善場:「アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件においては、感染者の肺に特異菌が寄生していたというデータがあるそうです。そして、それは感染者が変質化する前には既に撮られていたとのことです」
つまり、私も感染者であるのなら、肺に何かしらの影が写るということか。
特に今のところ、変な咳が出るとかは無いんだがな。
私達が他の検査をしている間、リサ達はバスを降りたようである。
検査技師C:「それでは血液検査を行います。少し、チクッとするかもしれませんよ」
愛原:「はい」
特に、問題は無かった。
検査技師C:「それでは、今度は隣のワゴン車で、先生による問診です」
愛原:「分かりました」
私が隣のワゴン車に行くと、先に高橋が問診を受けていた。
高橋:「何だか、ネンショーや少刑に入る前の身体検査を思い出しましたよ」
愛原:「別に番号札持って、写真撮影したわけじゃないだろう?」
問診も至って普通だった。
健康診断の時に行われるものとほぼ同じ。
両目をライトで照らされたり、体に異常が無いかどうか聞かれたり、聴診器を胸や背中に当てられたり、ペンライトとアイスの棒みたいなヤツで口の奥を覗かれた。
医師:「あとは検査の結果次第ですが、特に心配は無いでしょう」
とのことだ。
愛原:「主任、私達は昼食を取っても?」
善場:「はい、結構です」
愛原:「リサ達は……」
善場:「あの2人はもう少し時間が掛かるので、所長達は先に食べててください」
リサ:「わたしも食べたーい!」
善場:「あなたはまだ検査項目が残ってるでしょ!全部終わるまで昼食抜き!」
リサ:「そんなぁ……!」
後輩BOWには厳しい先輩BOW(元、だけど)であった。
愛原:「しょうがない。俺達は事務所に戻って弁当食べよう」
高橋:「そうっスね」
私達は一旦、事務所に戻ることにした。
リサ達にも一応、食事は用意しておいてあげなきゃ。
高橋:「先生、俺達は大丈夫みたいですね」
愛原:「そのようだな。問題はリサと絵恋さんだが、まあ、俺の予想ではリサも大丈夫だろう。問題は絵恋さんだな。絵恋さんは何がしかの特異菌が見つかるんじゃないかと、俺は思ってる」
高橋:「俺も同感です。いっそのこと、BSAAに射殺してもらいたいもんですね」
愛原:「そのBSAAなんだが、欧州本部辺りではキナ臭いことが起こったらしいぞ?」
高橋:「何スか?」
愛原:「今年の2月、ルーマニアで起きたバイオハザード事件に投入されたBSAA部隊に、BOWの兵士が使われたらしいんだ」
高橋:「何スか、それ?リサみたいなヤツを使ったってことっスか?」
愛原:「分からないが、多分そうなんだろうな。リサだって、大人になれば、善場主任の部下として就職が決まってるしな」
この時、私はまだBSAA欧州本部の事について、楽観的に捉えていた。
愛原:「そろそろ、リサ達が来る頃だな……」
高橋:「善場の姉ちゃん、上手いことビアンガキを捕まえたみたいですね」
愛原:「まあな」
しかし、私は何だか腑に落ちない顔になっていた。
ここまで来て、斉藤社長が全く出てこないことに、何かあるのではないかと勘ぐっているのだ。
と、その時、事務所の電話が鳴った。
高橋が電話に出る。
高橋:「はい、愛原学探偵事務所です。……ああ、姉ちゃんか。……下に着いたのか?……ああ、分かった。先生に伝える。それじゃ」
高橋は電話を切った。
高橋:「先生、姉ちゃん達が下に着いたそうです。すぐに検査を始めるので、下に来いってことです」
愛原:「俺達も検査を受けることになるわけだ。こりゃ、昼飯抜きかな?」
高橋:「カンベンして欲しいっスね」
愛原:「まあ、しょうがない。大口契約先の依頼じゃな……」
私と高橋は事務所を出てエレベーターに乗り込んだ。
そして1階に下り、駐車場側の出口から出る。
するとそこには見覚えのある黒塗り高級ミニバンと、マイクロバスタイプの移動診療車が3台駐車していた。
傍から見れば、レントゲン車や献血バスのようである。
うち1台はハイエースであった。
善場:「お疲れ様です。愛原所長」
愛原:「善場主任、お疲れ様です」
善場:「早速ですが、検査をさせて頂きます」
高橋:「どんだけ本格的にやるつもりだ?」
善場:「愛原所長と高橋助手にあっては、血液検査と尿検査、それとX線検査のみで結構です」
高橋:「そうなのか」
善場:「プラス、医師による問診ですね」
愛原:「あくまで私達が、特異菌に感染していないかどうかの検査だからですね?そしてそれは、そのような簡単な検査で分かる、と……」
善場:「そういうことです。特異菌は、あくまで新種のカビを生物兵器に転用したものです。それまでのウィルスと違い、簡単に検出できます。これは、今までの生物兵器ウィルスは、使用者はもちろん、開発者をも自滅に追い込んでしまうことが多々あった為の対策でしょう」
ウィルスみたいに、ただばら撒くのでは、使用者も制御しきれない。
リサやエブリンのように、明確な意思を持った制御者が調整しながら感染させるのが良いという判断に至ったようである。
愛原:「だけど、絵恋さんは違うと……」
善場:「はい。所長方のように、単なる感染者ではないと見ています」
愛原:「分かりました。それで、絵恋さん達は?」
善場:「あっちのバスの中です」
善場主任は、献血バスのようなマイクロバスを指さした。
何だか知らないが、そのバスが少し揺れている。
善場:「よほど納得できないのか、抵抗しているようです」
愛原:「リサは?」
善場:「同じバスの中です。彼女からも絵恋さんを説得してもらっているのですが、それでも嫌がる有り様で……」
高橋:「けっ、アホビアンが。先生、俺達はさっさと済ませましょう」
愛原:「そ、そうだな」
私達はまず検尿を行なった。
それからレントゲン車で、レントゲンを取る。
その前に本人確認の為、虹彩を撮られた。
検査技師A:「はい、目を大きく開いてー。虹彩を撮ります。……はい、愛原学さん。本人確認が取れました。それでは、あちらでレントゲンの撮影を……」
政府機関に虹彩データが保存されているとは……。
検査技師B:「はい、息を大きく吸ってー。はい、息を止めまーす。……はい、撮りました。次は、血液検査になります。隣のバスへどうぞ」
愛原:「はい」
何だか本当に健康診断を受けてるみたいだなぁ……。
愛原:「レントゲンの撮影で、特異菌の感染状況が分かるのですか?」
善場:「アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件においては、感染者の肺に特異菌が寄生していたというデータがあるそうです。そして、それは感染者が変質化する前には既に撮られていたとのことです」
つまり、私も感染者であるのなら、肺に何かしらの影が写るということか。
特に今のところ、変な咳が出るとかは無いんだがな。
私達が他の検査をしている間、リサ達はバスを降りたようである。
検査技師C:「それでは血液検査を行います。少し、チクッとするかもしれませんよ」
愛原:「はい」
特に、問題は無かった。
検査技師C:「それでは、今度は隣のワゴン車で、先生による問診です」
愛原:「分かりました」
私が隣のワゴン車に行くと、先に高橋が問診を受けていた。
高橋:「何だか、ネンショーや少刑に入る前の身体検査を思い出しましたよ」
愛原:「別に番号札持って、写真撮影したわけじゃないだろう?」
問診も至って普通だった。
健康診断の時に行われるものとほぼ同じ。
両目をライトで照らされたり、体に異常が無いかどうか聞かれたり、聴診器を胸や背中に当てられたり、ペンライトとアイスの棒みたいなヤツで口の奥を覗かれた。
医師:「あとは検査の結果次第ですが、特に心配は無いでしょう」
とのことだ。
愛原:「主任、私達は昼食を取っても?」
善場:「はい、結構です」
愛原:「リサ達は……」
善場:「あの2人はもう少し時間が掛かるので、所長達は先に食べててください」
リサ:「わたしも食べたーい!」
善場:「あなたはまだ検査項目が残ってるでしょ!全部終わるまで昼食抜き!」
リサ:「そんなぁ……!」
後輩BOWには厳しい先輩BOW(元、だけど)であった。
愛原:「しょうがない。俺達は事務所に戻って弁当食べよう」
高橋:「そうっスね」
私達は一旦、事務所に戻ることにした。
リサ達にも一応、食事は用意しておいてあげなきゃ。
高橋:「先生、俺達は大丈夫みたいですね」
愛原:「そのようだな。問題はリサと絵恋さんだが、まあ、俺の予想ではリサも大丈夫だろう。問題は絵恋さんだな。絵恋さんは何がしかの特異菌が見つかるんじゃないかと、俺は思ってる」
高橋:「俺も同感です。いっそのこと、BSAAに射殺してもらいたいもんですね」
愛原:「そのBSAAなんだが、欧州本部辺りではキナ臭いことが起こったらしいぞ?」
高橋:「何スか?」
愛原:「今年の2月、ルーマニアで起きたバイオハザード事件に投入されたBSAA部隊に、BOWの兵士が使われたらしいんだ」
高橋:「何スか、それ?リサみたいなヤツを使ったってことっスか?」
愛原:「分からないが、多分そうなんだろうな。リサだって、大人になれば、善場主任の部下として就職が決まってるしな」
この時、私はまだBSAA欧州本部の事について、楽観的に捉えていた。