[10月1日23:20.天候:晴 福島県福島市栄町 JR東北新幹線223B列車内]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、福島です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。福島の次は、白石蔵王に止まります〕
〔「福島でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。まもなく福島、福島です。13番線到着、お出口は左側です。福島からのお乗り換えをご案内致します。東北本線下り、普通列車の藤田行きは、4番線から23時29分。上り、普通列車の松川行きは3番線から23時30分です。どちらも本日の最終列車となっております。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください。尚、山形新幹線、山形線、阿武隈急行線、福島交通飯坂線は本日の運転を終了致しております。……」〕
リサ達を乗せた最終列車が福島県の県庁所在地駅に入線した。
ホームには疎らながら、列車を待つ乗客も散見される。
右側に中線が見えるが、これは通過線である。
この“はやぶさ”“こまち”編成の“やまびこ”は、今日はこの副線に入るが、運用によっては、通過用の本線を爆走するのだろう。
乗車客は少ないが、降車客は多かった。
ホームの肉声放送では、しきりに東北本線の最終電車の案内をしている。
そして、ホームからは発車メロディが聞こえてくる。
高校野球で有名な、“栄冠は君に輝く”である。
〔13番線から、“やまびこ”223号、仙台行きが発車致します。次は、白石蔵王に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
列車は定刻通りに発車した。
スーッと走り出すと、高橋が席を立つ。
高橋:「ちょっとトイレ行ってきます」
愛原:「ああ」
リサ:「行ってらっしゃい」
高橋は7号車側のトイレに行こうとした。
高橋:(待てよ。せめてトイレくらいVIP用のを使わせてもらってもいいんじゃねぇか?)
高橋はそう考えて、9号車に向かった。
9号車は8号車よりもガラガラであった。
高橋:(寂しいもんだな)
しばらく歩くと、車両の中央の方に荷物だけ置かれた座席があった。
高橋:(……?)
そして、トイレに向かう。
で、9号車のトイレに向かった時だった。
パール:「それでは御嬢様、私は先に戻ってますので」
多目的トイレから出て来たパール。
パール:「!!!」
高橋:「お、オマ……!」
ドゴォッ!(パール、高橋のみぞおちにアイアンクロー!)
高橋:「はぐはっ!?」
ガシッ!(高橋を捕まえて、多目的トイレに連れ込む)
高橋:「オメ……!いきなりかよ……!」
パール:「うるさい!何で普通車の客がここに来るんだよっ!?」
高橋:「い、いいじゃねぇか、別に……!ていうか、何でオメーが新幹線に乗ってるんだよっ!?」
パール:「シーッ!」
パールは高橋の口を塞ぎ、多目的トイレの向かい側の個室トイレの様子を伺う。
どうやら、絵恋はそちらのトイレに入っているようだ。
パール:「御嬢様が、どうしてもリサ様の後を追いたいって御命令なの!メイドしてはダメとは言えないじゃん!」
高橋:「いや、言えるだろ!『ダメと言ったら、ダメでございます!』とか、『旦那様の御命令です』とか、色々言い様があるだろうが!」
パール:「あの状況だ。旦那様は、とても御嬢様にとやかく言える状況じゃない」
高橋:「それにしても、それにしてもだ!俺達はこれから危険な場所に行くんだから、着いてこられちゃ迷惑だっつーの!」
パール:「やはりそうか」
高橋:「……まさか、この期に及んで遊びに行くとか思ってたんじゃないだろうな?」
パール:「どうかな」
高橋:「オマエなぁ!」
パール:「とにかく、愛原先生は旦那様が信頼される名探偵だ。後で旦那様にバレて、怒られたくない」
高橋:「だろう?なら、さっさと帰れ」
パール:「終電なので無理だ」
高橋:「あー……まあ、そりゃそうか」
パール:「適当な所までついて行って、それから宥めて引き返すさ」
高橋:「そうしてくれ」
パール:「だから頼む。この事は愛原先生やリサ様には内緒に……」
高橋:「分かったよ。で、どうする?このまま席に戻ろうとすれば、俺はあいつに見つかるが?」
話をしているうちに、絵恋はトイレから出て席に戻ってしまったようだ。
高橋が8号車に戻るには、どうしても9号車の中を通らなくてはならない。
パール:「任せろ。私にいい考えがある」
ボーイッシュなスタイルであるが、パールが男性に間違われたことはない。
高橋のバイセクシャルに対応できるよう、あえて中性的な見た目をしているのだ。
髪はベリーショート、当初は一人称を『ボク』にしていた。
パール:「私が合図をしたら、一気に戻れ」
高橋:「あいよ」
パールは座席に戻った。
絵恋:「パール、遅かったわね」
パール:「申し訳ございません。化粧直しをしていたもので……」
絵恋:「化粧直し」
パール:「それより御嬢様、お手洗いの中に忘れ物がございます。御嬢様の物かどうか、確認して頂きたいのですが……」
絵恋:「えっ、何か落としたっけ?」
パール:「それを確認して頂きたいのです」
絵恋:「分かったわ。案内して」
パール:「こちらでございます」
パールはまんまと絵恋を連れ出すことに成功した。
そして、先ほど絵恋が使用していたトイレの個室に連れ込む。
パール:「これなんでございますけどね」
パールは絵恋と一緒に個室に入ると、わざと強くガチャンと閉めた。
その音は向かい側の多目的トイレにも聞こえるほど。
それを聞いた高橋は、多目的トイレのドアを開けると、一目散に8号車へと走って行った。
絵恋:「これは私がパールに預けたハンカチじゃない?」
もちろん、パールが予め仕掛けたものである。
パール:「いえ、あいにくですが、私がお預かりしたのは別のハンカチでございます。これは、御嬢様に預けさせて頂いたものです」
絵恋:「そうだったっけ?……おかしいわねぇ……」
絵恋は首を大きく傾げた。
パール:「それより、落とし物が回収できて、ようございました。お席に戻りましょう」
パールはドアを開けて、トイレから出た。
リサ:「この話、殆ど私の出番無いじゃん!」
と、後にリサが言っていたかどうかは【お察しください】。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、福島です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。福島の次は、白石蔵王に止まります〕
〔「福島でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。まもなく福島、福島です。13番線到着、お出口は左側です。福島からのお乗り換えをご案内致します。東北本線下り、普通列車の藤田行きは、4番線から23時29分。上り、普通列車の松川行きは3番線から23時30分です。どちらも本日の最終列車となっております。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください。尚、山形新幹線、山形線、阿武隈急行線、福島交通飯坂線は本日の運転を終了致しております。……」〕
リサ達を乗せた最終列車が福島県の県庁所在地駅に入線した。
ホームには疎らながら、列車を待つ乗客も散見される。
右側に中線が見えるが、これは通過線である。
この“はやぶさ”“こまち”編成の“やまびこ”は、今日はこの副線に入るが、運用によっては、通過用の本線を爆走するのだろう。
乗車客は少ないが、降車客は多かった。
ホームの肉声放送では、しきりに東北本線の最終電車の案内をしている。
そして、ホームからは発車メロディが聞こえてくる。
高校野球で有名な、“栄冠は君に輝く”である。
〔13番線から、“やまびこ”223号、仙台行きが発車致します。次は、白石蔵王に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
列車は定刻通りに発車した。
スーッと走り出すと、高橋が席を立つ。
高橋:「ちょっとトイレ行ってきます」
愛原:「ああ」
リサ:「行ってらっしゃい」
高橋は7号車側のトイレに行こうとした。
高橋:(待てよ。せめてトイレくらいVIP用のを使わせてもらってもいいんじゃねぇか?)
高橋はそう考えて、9号車に向かった。
9号車は8号車よりもガラガラであった。
高橋:(寂しいもんだな)
しばらく歩くと、車両の中央の方に荷物だけ置かれた座席があった。
高橋:(……?)
そして、トイレに向かう。
で、9号車のトイレに向かった時だった。
パール:「それでは御嬢様、私は先に戻ってますので」
多目的トイレから出て来たパール。
パール:「!!!」
高橋:「お、オマ……!」
ドゴォッ!(パール、高橋のみぞおちにアイアンクロー!)
高橋:「はぐはっ!?」
ガシッ!(高橋を捕まえて、多目的トイレに連れ込む)
高橋:「オメ……!いきなりかよ……!」
パール:「うるさい!何で普通車の客がここに来るんだよっ!?」
高橋:「い、いいじゃねぇか、別に……!ていうか、何でオメーが新幹線に乗ってるんだよっ!?」
パール:「シーッ!」
パールは高橋の口を塞ぎ、多目的トイレの向かい側の個室トイレの様子を伺う。
どうやら、絵恋はそちらのトイレに入っているようだ。
パール:「御嬢様が、どうしてもリサ様の後を追いたいって御命令なの!メイドしてはダメとは言えないじゃん!」
高橋:「いや、言えるだろ!『ダメと言ったら、ダメでございます!』とか、『旦那様の御命令です』とか、色々言い様があるだろうが!」
パール:「あの状況だ。旦那様は、とても御嬢様にとやかく言える状況じゃない」
高橋:「それにしても、それにしてもだ!俺達はこれから危険な場所に行くんだから、着いてこられちゃ迷惑だっつーの!」
パール:「やはりそうか」
高橋:「……まさか、この期に及んで遊びに行くとか思ってたんじゃないだろうな?」
パール:「どうかな」
高橋:「オマエなぁ!」
パール:「とにかく、愛原先生は旦那様が信頼される名探偵だ。後で旦那様にバレて、怒られたくない」
高橋:「だろう?なら、さっさと帰れ」
パール:「終電なので無理だ」
高橋:「あー……まあ、そりゃそうか」
パール:「適当な所までついて行って、それから宥めて引き返すさ」
高橋:「そうしてくれ」
パール:「だから頼む。この事は愛原先生やリサ様には内緒に……」
高橋:「分かったよ。で、どうする?このまま席に戻ろうとすれば、俺はあいつに見つかるが?」
話をしているうちに、絵恋はトイレから出て席に戻ってしまったようだ。
高橋が8号車に戻るには、どうしても9号車の中を通らなくてはならない。
パール:「任せろ。私にいい考えがある」
ボーイッシュなスタイルであるが、パールが男性に間違われたことはない。
高橋のバイセクシャルに対応できるよう、あえて中性的な見た目をしているのだ。
髪はベリーショート、当初は一人称を『ボク』にしていた。
パール:「私が合図をしたら、一気に戻れ」
高橋:「あいよ」
パールは座席に戻った。
絵恋:「パール、遅かったわね」
パール:「申し訳ございません。化粧直しをしていたもので……」
絵恋:「化粧直し」
パール:「それより御嬢様、お手洗いの中に忘れ物がございます。御嬢様の物かどうか、確認して頂きたいのですが……」
絵恋:「えっ、何か落としたっけ?」
パール:「それを確認して頂きたいのです」
絵恋:「分かったわ。案内して」
パール:「こちらでございます」
パールはまんまと絵恋を連れ出すことに成功した。
そして、先ほど絵恋が使用していたトイレの個室に連れ込む。
パール:「これなんでございますけどね」
パールは絵恋と一緒に個室に入ると、わざと強くガチャンと閉めた。
その音は向かい側の多目的トイレにも聞こえるほど。
それを聞いた高橋は、多目的トイレのドアを開けると、一目散に8号車へと走って行った。
絵恋:「これは私がパールに預けたハンカチじゃない?」
もちろん、パールが予め仕掛けたものである。
パール:「いえ、あいにくですが、私がお預かりしたのは別のハンカチでございます。これは、御嬢様に預けさせて頂いたものです」
絵恋:「そうだったっけ?……おかしいわねぇ……」
絵恋は首を大きく傾げた。
パール:「それより、落とし物が回収できて、ようございました。お席に戻りましょう」
パールはドアを開けて、トイレから出た。
リサ:「この話、殆ど私の出番無いじゃん!」
と、後にリサが言っていたかどうかは【お察しください】。