[8月16日11:30.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・教育資料館(旧校舎)]
リサ:「花子大先輩、いますかー?」
リサは白い仮面を着けて、教育資料館を訪れた。
花子さん:「おお、来たか」
リサと同じく、白い仮面を着けてセーラー服を着た“トイレの花子さん”が現れた。
リサ:「オリンピック観戦、楽しかったですか?」
花子さん:「まさかこの世にいる間に、2回もオリンピックが観れるとは功徳だな。今度はパラリンピックを観戦するぞ」
花子さんは校長室に設置されたテレビを指さして言った。
花子さん:「今ではトイレよりも、ここにいる時間の方が長いくらいだ」
リサ:「“トイレの花子さん”じゃなくなりましたね」
花子さん:「それより、憎き白井伝三郎の情報は何か掴んだか?」
リサ:「まだです。本当に日本にいるのかなぁ……と。先輩は何か思い出されましたか?死ぬ前の人間だった頃の記憶……」
花子さん:「ダメだ。むしろ、日に日に記憶が薄らいでいくよ。小耳に挟んだ噂では、新校舎だかどこかにも、私みたいな幽霊が棲み付いているらしいな?」
リサ:「いや、すいません、聞いたことないです。私、霊感は無いんですよ」
花子さん:「そうか。いや、そいつは長いこと幽霊をやっているうちに、悪霊化してきたというんだな。今もそこにいるのかどうかは分からんが、もしかしたら、私もいずれそうなるのかもしれない」
リサ:「花子さんは意識がハッキリしていますから、大丈夫なんじゃないですか」
花子さん:「いや、いずれ私もそうなる。遅いか早いかだけだ。そうなる前に、ここに白井伝三郎を連れて来てもらいたいものだな」
リサ:「警察か国家機関が逮捕したら、それは無理ですよ」
花子さん:「ならば、ヤツが逮捕されたら、教えてほしい。オマエの話しぶりからして、かなりの大悪人なのだろう?それが逮捕されれば新聞に載るはずだ。それを持って来てくれればいい」
リサ:「分かりました。先輩は、ここから出られませんもんね」
花子さん:「いや、出る方法は1つだけある」
リサ:「何ですか?」
花子さん:「オマエに憑依することだ」
花子さんは青白く冷たい手を、リサの顔に伸ばしてきた。
思わずリサは、大きく飛び退いた。
その動きは、さすがBOWといった感じである。
因みに、ここでのリサは第1形態に戻っている。
どちらも人外として会っているからだ。
リサ:「私のこの姿は鬼と呼ばれています。幽霊が鬼に憑りつくなんて、お笑いのネタですよ」
花子さん:「はは、冗談だ。さすがの私も、憑依するなら人間と思っている。オマエへの憑依は無理だ」
リサ:「でしょうね。それじゃ、私はこれで」
花子さん:「その制服、かわいくなったな。私の時なんて、こんな野暮ったいセーラー服だ」
リサ:「白井は萌えていたようですよ。だから、あなたを模した人体実験者達にセーラー服を着せたんだ」
花子さん:「気持ち悪い……」
リサは第0形態に戻り、白い仮面を取った。
白い仮面は目の部分に横長の切れ込みが入っているだけなので、夏は結構蒸れて暑かったりする。
絵恋:「お帰り、リサさん」
リサ:「ただいま」
絵恋:「花子さんとは会ったの?」
リサ:「ああ。オリンピック、開会式から閉会式までコンプしたそうだ。今度は、パラリンピック観るんだって」
絵恋:「テレビが好きなのね」
リサ:「花子先輩が生きていた頃は、テレビくらいしか無かっただろうからね。私が死んで化けたら、スマホやゲーム機差し入れてもらう」
絵恋:「リサさんはそんなこと無いから!リサさんはマグナム撃ち込まれても死なないんでしょう!?」
リサ:「ああ……。まあ、そうだな」
2人して学校の裏門から出ようとした時だった。
善場:「登校、ご苦労さま」
リサ:「善場さん」
絵恋:「あなたは……」
善場:「お久しぶりです。NPO法人デイライト東京事務所の善場優菜です。斉藤絵恋さんに、大事なお話があります」
絵恋:「おあいにくさま、私はリサさんに大事なお話がありますので」
リサ:「サイトー。善場さんの話、私も一緒に聞く」
絵恋:「えぇえ?リサさんがそう言うなら、吝かじゃないですがぁ……!」
善場:「ここでは何ですので、車に乗ってください」
裏門の前の通りには、黒塗りの高級ミニバンが止まっていた。
もっとも、絵恋の実家の車の1台と同じ車種なので、絵恋にとっては馴染み深い車種かもしれない。
また、都内ではたまにタクシー車両に使われていることがあるので、一般人も乗車可能である。
絵恋:「どこまで行くんですか?」
善場:「菊川に帰るところでしょう?送って行きますよ」
絵恋:「はあ……。でも、私、リサさんと昼食……」
リサ:「サイトー。事務所に行けば、そこで昼食食べれる」
絵恋:「はあ、分かりました」
リサ達は車に乗った。
善場:「じゃ、出して」
部下:「はい、主任」
最後に善場が乗り込むと、車が走り出した。
善場:「斉藤さん、埼玉の実家、リフォーム中なんですって?」
絵恋:「地下の水道管が故障したので、その修理ですよ。プールが使えなくなって残念です」
善場:「そう。でも工事しているのは、プールの下じゃないかしら?」
絵恋:「プールの排水口が詰まったそうで、要はその先の水道管が壊れたわけですから、そうなりますね」
善場:「ふーん……。最近そのプール、誰か入った?」
絵恋:「いいえ。これからリサさんと入ろうとしていた矢先に壊れて残念です」
善場:「あなたはプールの下に行ったことは?」
絵恋:「は?水道管なんか入れないですよ」
善場:「誰が水道管だと言ったの?プールの下には、更に地下2階があるんでしょう?」
絵恋:「ちょっと何仰ってるか分かりません。うちは地下1階までですよ」
善場:「まあ、いいわ」
リサ:「サイトー……」
リサは愛原と高橋が、実際にあのエレベーターで地下2階まで行ったことを言いたい衝動に駆られた。
実際に絵恋が愛原達の妨害をしたのかの真偽はともかく、地下2階の存在まで否定されると、まるで愛原達が嘘をついていることになってしまうからだった。
だが、ここでそれを言ってしまうと、余計ややこしくなるような気がしたので、リサは黙っていることにした。
リサ:「花子大先輩、いますかー?」
リサは白い仮面を着けて、教育資料館を訪れた。
花子さん:「おお、来たか」
リサと同じく、白い仮面を着けてセーラー服を着た“トイレの花子さん”が現れた。
リサ:「オリンピック観戦、楽しかったですか?」
花子さん:「まさかこの世にいる間に、2回もオリンピックが観れるとは功徳だな。今度はパラリンピックを観戦するぞ」
花子さんは校長室に設置されたテレビを指さして言った。
花子さん:「今ではトイレよりも、ここにいる時間の方が長いくらいだ」
リサ:「“トイレの花子さん”じゃなくなりましたね」
花子さん:「それより、憎き白井伝三郎の情報は何か掴んだか?」
リサ:「まだです。本当に日本にいるのかなぁ……と。先輩は何か思い出されましたか?死ぬ前の人間だった頃の記憶……」
花子さん:「ダメだ。むしろ、日に日に記憶が薄らいでいくよ。小耳に挟んだ噂では、新校舎だかどこかにも、私みたいな幽霊が棲み付いているらしいな?」
リサ:「いや、すいません、聞いたことないです。私、霊感は無いんですよ」
花子さん:「そうか。いや、そいつは長いこと幽霊をやっているうちに、悪霊化してきたというんだな。今もそこにいるのかどうかは分からんが、もしかしたら、私もいずれそうなるのかもしれない」
リサ:「花子さんは意識がハッキリしていますから、大丈夫なんじゃないですか」
花子さん:「いや、いずれ私もそうなる。遅いか早いかだけだ。そうなる前に、ここに白井伝三郎を連れて来てもらいたいものだな」
リサ:「警察か国家機関が逮捕したら、それは無理ですよ」
花子さん:「ならば、ヤツが逮捕されたら、教えてほしい。オマエの話しぶりからして、かなりの大悪人なのだろう?それが逮捕されれば新聞に載るはずだ。それを持って来てくれればいい」
リサ:「分かりました。先輩は、ここから出られませんもんね」
花子さん:「いや、出る方法は1つだけある」
リサ:「何ですか?」
花子さん:「オマエに憑依することだ」
花子さんは青白く冷たい手を、リサの顔に伸ばしてきた。
思わずリサは、大きく飛び退いた。
その動きは、さすがBOWといった感じである。
因みに、ここでのリサは第1形態に戻っている。
どちらも人外として会っているからだ。
リサ:「私のこの姿は鬼と呼ばれています。幽霊が鬼に憑りつくなんて、お笑いのネタですよ」
花子さん:「はは、冗談だ。さすがの私も、憑依するなら人間と思っている。オマエへの憑依は無理だ」
リサ:「でしょうね。それじゃ、私はこれで」
花子さん:「その制服、かわいくなったな。私の時なんて、こんな野暮ったいセーラー服だ」
リサ:「白井は萌えていたようですよ。だから、あなたを模した人体実験者達にセーラー服を着せたんだ」
花子さん:「気持ち悪い……」
リサは第0形態に戻り、白い仮面を取った。
白い仮面は目の部分に横長の切れ込みが入っているだけなので、夏は結構蒸れて暑かったりする。
絵恋:「お帰り、リサさん」
リサ:「ただいま」
絵恋:「花子さんとは会ったの?」
リサ:「ああ。オリンピック、開会式から閉会式までコンプしたそうだ。今度は、パラリンピック観るんだって」
絵恋:「テレビが好きなのね」
リサ:「花子先輩が生きていた頃は、テレビくらいしか無かっただろうからね。私が死んで化けたら、スマホやゲーム機差し入れてもらう」
絵恋:「リサさんはそんなこと無いから!リサさんはマグナム撃ち込まれても死なないんでしょう!?」
リサ:「ああ……。まあ、そうだな」
2人して学校の裏門から出ようとした時だった。
善場:「登校、ご苦労さま」
リサ:「善場さん」
絵恋:「あなたは……」
善場:「お久しぶりです。NPO法人デイライト東京事務所の善場優菜です。斉藤絵恋さんに、大事なお話があります」
絵恋:「おあいにくさま、私はリサさんに大事なお話がありますので」
リサ:「サイトー。善場さんの話、私も一緒に聞く」
絵恋:「えぇえ?リサさんがそう言うなら、吝かじゃないですがぁ……!」
善場:「ここでは何ですので、車に乗ってください」
裏門の前の通りには、黒塗りの高級ミニバンが止まっていた。
もっとも、絵恋の実家の車の1台と同じ車種なので、絵恋にとっては馴染み深い車種かもしれない。
また、都内ではたまにタクシー車両に使われていることがあるので、一般人も乗車可能である。
絵恋:「どこまで行くんですか?」
善場:「菊川に帰るところでしょう?送って行きますよ」
絵恋:「はあ……。でも、私、リサさんと昼食……」
リサ:「サイトー。事務所に行けば、そこで昼食食べれる」
絵恋:「はあ、分かりました」
リサ達は車に乗った。
善場:「じゃ、出して」
部下:「はい、主任」
最後に善場が乗り込むと、車が走り出した。
善場:「斉藤さん、埼玉の実家、リフォーム中なんですって?」
絵恋:「地下の水道管が故障したので、その修理ですよ。プールが使えなくなって残念です」
善場:「そう。でも工事しているのは、プールの下じゃないかしら?」
絵恋:「プールの排水口が詰まったそうで、要はその先の水道管が壊れたわけですから、そうなりますね」
善場:「ふーん……。最近そのプール、誰か入った?」
絵恋:「いいえ。これからリサさんと入ろうとしていた矢先に壊れて残念です」
善場:「あなたはプールの下に行ったことは?」
絵恋:「は?水道管なんか入れないですよ」
善場:「誰が水道管だと言ったの?プールの下には、更に地下2階があるんでしょう?」
絵恋:「ちょっと何仰ってるか分かりません。うちは地下1階までですよ」
善場:「まあ、いいわ」
リサ:「サイトー……」
リサは愛原と高橋が、実際にあのエレベーターで地下2階まで行ったことを言いたい衝動に駆られた。
実際に絵恋が愛原達の妨害をしたのかの真偽はともかく、地下2階の存在まで否定されると、まるで愛原達が嘘をついていることになってしまうからだった。
だが、ここでそれを言ってしまうと、余計ややこしくなるような気がしたので、リサは黙っていることにした。