報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「事務所に帰る」

2025-02-21 21:42:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月7日12時20分 天候:晴 千葉県市川市八幡2丁目 シャポー本八幡・タリーズコーヒー]

 私はデイライトの車で本八幡駅まで送ってもらっている。
 本当は千葉駅までのはずだが、善場係長が特別に、都営新宿線の始発駅である本八幡駅まで送ってくれることになった。
 もう1つの理由が、沖野献受刑者のことについて打ち合わせしたく、あえて乗車時間を延長させる目的もあったのだろう。

 善場「斉藤容疑者なら、『転生の儀』に成功したとされる白井容疑者の倒し方を知っているのかもしれませんね」
 愛原「……なるほど。斉藤さんは、白井の『転生の儀』を気にしていたわけですね。そしてようやく、白井を本当にこの世から消す方法を見つけ出したと」
 善場「とはいうものの、このままで良いと思っておりません。2人を逮捕して取り調べる義務があります」

 公安調査庁には逮捕権は無いが、現行犯逮捕という形でやるつもりだろうか。

 愛原「斉藤さんは沖縄に向かったはずです。白井も沖縄にいるはずです」
 善場「分かっています。沖縄にデイライトの職員が派遣されています。また、沖縄県警やBSAAも沖縄に展開していて警戒に当たっています」
 愛原「高橋はどこへ行くつもりでしょうか?」
 善場「捜査機密なのであまり大きな声では言えないのですが、高橋容疑者もまた何らかの方法で沖縄に向かうのではないかと見ています」
 愛原「沖縄が最終決戦の地になるわけですね……」

 主人公の私としては、是非ともその最終決戦に参加したいところだが、一介の私立探偵が首を突っ込んで良い話ではないことも分かっている。
 善場係長も、そんな私の気持ちを呼んだようだ。

 善場「色々と気になるでしょうが、白井の事は我々に任せてください。それと……」
 愛原「ん?」
 善場「群馬県のペンションから送られてきた映像なんですが……」
 愛原「は、はい」
 善場「原本のVHSテープだけで解析は可能のようですので、ダビングされたDVDに関してはお返しします」
 愛原「そ、そうですか」
 善場「後ほど宅配便か何かで送らせて頂こうと思っておりますが、リサが手に入れた物に関しては、リサが18歳になるまで見せないでください」
 愛原「は、はい。もちろんです」

 リサの両親による、リサの製造工程記録動画だ。

 白峰「到着しました。公道上なので、速やかに且つ気をつけてお降りください」
 愛原「あ、はい。今日はありがとうございました」
 善場「それではまた何かありましたら、御連絡をお願い致します。こちらからも何かありましたら、御連絡させて頂きます」
 愛原「分かりました」

 私は車を降りると、横断歩道を渡って、駅のショッピングモールに入った。
 その中にタリーズコーヒーがあり、そこで昼食を挟んでから帰ることにした。
 既にパールには、昼は食べてくる旨の連絡はしてある。
 面会中や面会直後は、とても喉を通りそうな感じが無かったが、係長と話をしているうちに、少しは気持ちが落ち着いた。
 私は店内に入ると、ホットドッグとアイスコーヒーを注文した。
 本当に軽い昼食ではあるが、まだ完全にショックから立ち直り切っているというわけでもない。
 今のところは、この量で大丈夫だろう。

[同日13時10分 天候:晴 同地区 都営地下鉄本八幡駅→都営新宿線1335T電車・先頭車]

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。……〕

 昼食を食べて少し寛いでいると、リサからLINEがあった。
 何でも、秋田の太平山美樹から連絡があったという。
 秋田県北部から東京までのルートはいくつかあるが、今回の3連休では上京に飛行機を使うという。
 要は大館能代空港から羽田まで、飛行機で来るということだ。
 彼女と初めて会った沖縄でも、修学旅行ということもあり、飛行機で来ていた。
 きっと、飛行機の方が便利なのだろう。
 合宿を主催している予備校の本部は新宿にあり、そこまで案内を頼まれているという。
 これは空港まで迎えに行って、それから一緒に新宿に向かうパターンだな。
 私は了解の旨を返信しておいた。
 地下鉄のホームに降りると、都営の車両の電車が止まっており、私は先頭車に乗り込んだ。

〔この電車は、各駅停車、笹塚行きです〕
〔「13時10分発、京王新線直通、各駅停車の笹塚行きです。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 

 発車ベルがホームに鳴り響く。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 ホームドアと、電車のドアが両方閉まる。
 電車のドアチャイムは、JR東日本の普通列車のそれと同じ。
 ドアが閉まり切ると、運転室から発車合図のブザーが聞こえ、それからハンドルをガチャガチャ操作する音が聞こえてくる。
 それと連動するようにエアーの抜ける音がして、電車が動き出した。

〔都営新宿線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、各駅停車、笹塚行きです。次は篠崎、篠崎。お出口は、右側です。……〕

 千葉県に唯一存在する東京都交通局の駅を出る事で、私は千葉県から出ることになる。
 善場係長達は、2人だけで千葉県全域を探しているのだろうか?
 いや、違うな。
 千葉刑務所から出て本八幡駅に向かう間、上空ではヘリコプターを何機も見た。
 BSAAのヘリもあったのだろうが、千葉県警のヘリとかもあったのだろう。
 高橋は本当に千葉県内に潜伏しているのだろうか?
 それとも……。

[同日13時31分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 都営地下鉄菊川駅]

 電車が西に向かう度に、電車内が賑わって来る。
 平日とはいえ、まだ夕方のラッシュでもない為、混んではいない。
 それに、途中駅でも下車する乗客はいたりする。
 まあ、菊川駅においては、私もそうなのだが。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 というわけで、菊川駅に無事に到着する。
 電車は短い発車メロディを流した後、すぐに発車して行った。
 エスカレーターに乗り込み、改札階へ向かう。
 改札口を出たところで、私はふとあることを思い出した。
 都営地下鉄に限らないだろうが、駅構内にはフリーペーパーの配布スタンドがある。
 ここは都営地下鉄の駅なので、主に東京都交通局が発行している物が置かれている。
 地下鉄に限らず、都営バスや都電荒川線の沿線ガイドの物もある。
 その中には、都内の地下鉄路線図もある。
 上京者が度肝を抜かされるのは、都内の地下鉄路線図であるという。
 これを太平山美樹に渡して、勉強させておこう。
 場所によっては、グーグルマップも役に立たんぞw
 私がフリーペーパーや路線図を物色していると……。

 リサ「あ、先生!」

 リサが改札口から出て来た。
 制服姿であることから、どうやら今、学校から帰って来たところのようだ。

 愛原「よお、リサ。学校終わったのか?」
 リサ「テスト最終日は、午前中で終わり」

 で、昼食は『魔王軍』のメンバーやレイチェルと食べて来たってわけか。

 リサ「先生も面会終わったの?」
 愛原「まあな」

 私はフリーペーパーを鞄にしまった。

 愛原「一緒に帰るか?」
 リサ「帰るー!」

 リサはそう言って私の腕を取って来た。

 愛原「こらこら、制服姿で引っ付くんじゃない」
 リサ「えー!」
 愛原「誤解される」
 リサ「もー!」
 愛原「いいから、帰って俺は仕事だ。色々やることがある」
 リサ「わたしも手伝うよ。テストは終わったことだし」
 愛原「そうか?自信の方はどうだ?」
 リサ「赤点ゼロ作戦は上手く行きそう」
 愛原「そうか。それならいいな」

 リサの行きたい大学がそんなに偏差値の高い所ではないことから、そこまで猛勉強し、高得点を狙わなければならないわけではないことは知っている。
 そもそも就職先のデイライトが、リサに大卒の学歴を求めていたわけではないので。
 私達は地上へのエスカレーターと階段を昇り、事務所へ向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「真相の情報量が多過ぎて」

2025-02-21 16:20:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月7日11時30分 天候:曇 千葉県千葉市若葉区貝塚町 千葉刑務所]

 沖野献受刑者のあまりにも突拍子も無い真相の独白に、私はただ茫然とするしか無かった。
 その為、後半はほぼ善場係長が質問する形となっていた。
 呆然としていた私であったが、善場係長のある質問と、沖野受刑者の回答については我に帰ることができた。

 善場「あなたの立場は、あくまでも白井伝三郎容疑者の秘書であって、助手ではないのですね?」
 沖野「ええ。なので、研究施設に立ち入る機会はあっても、直接本部長の実験などに立ち会う機会はありませんでした」
 善場「では何故あなたは、愛原氏と上野氏の体が入れ替わったことを御存知なのですか?」
 沖野「それは……本部長がそのように仰っていたからです。『これで“転生の儀”の成功を確信した』とお喜びでしたから」
 善場「つまり、あなた自身は直接は見ていないということですね?」

 沖野受刑者の表場が硬くなる。

 沖野「何が言いたいんですか?」
 善場「いえ、何でも……。話は変わりますが、『転生の儀』とやらは、さぞかし大掛かりな実験なのでしょうね?」
 沖野「そりゃあそうでしょう」
 善場「となると助手が必要ですね。とても白井容疑者1人でできるとは思えません」
 沖野「確かに助手はいましたね」
 善場「それが誰かは御存知ですか?」
 沖野「えーと……確か……。下の名前までは忘れましたけど、斉藤って言いましたよ」
 愛原「……ファッ!?」
 沖野「……ダメだ。下の名前は思い出せない」
 善場「秀樹という名前ではありませんでしたか?」
 沖野「あー……確か、そんな名前だったかも」
 愛原「斉藤元社長が、白井の助手だったって!?」
 善場「これで、また1つ斉藤容疑者の罪が増えましたね。助手という立場から、『転生の儀』の事はあなたよりも詳しく知る立場にありそうですね」
 沖野「そりゃあ、私は所詮事務方の秘書ですから……」
 善場「もう1つ確認ですが、その斉藤助手、今はどこで何をしておられるか御存知ですか?」
 沖野「日本アンブレラを辞めて、大日本製薬の社長になられたんでしょう?器用な方ですね。潰れかかった製薬会社の役員となって、それを立て直したんですから」
 善場「大日本製薬の立て直しには、日本アンブレラからも多大な支援があったと聞いていますが、なるほど……。ここで繋がったのですね。分かりました」
 沖野「お話はこんなところで宜しいですか?」
 善場「はい。本日は長々とありがとうございます。また何かありましたら、宜しくお願い致します」
 沖野「分かりました」
 善場「因みに今、刑務作業では何をされておられるのですか?」
 沖野「革製品の製作です。バッグの製作を行っています。靴を作ることもありますので、もし宜しかったら……」
 善場「なるほど。千葉刑務所では、革製品の製作もしていますね」

 ここで面会は終わった。

 善場「大丈夫ですか、愛原所長?」
 愛原「え、ええ……」

 面会室をあとにし、駐車場に向かう。

 愛原「私は……上野医師なのでしょうか?」
 善場「車の中で、取りあえずお話ししまょう。ただ……私は違うと思います。これは別に気遣いとかではなくて、本当にそう思っています」
 愛原「そうなんですか?」
 善場「はい」

 駐車場に戻り、車に戻る。
 車の中では、白峰主席が運転席で待っていた。

 白峰「お疲れさまです。千葉駅に戻りますか?」
 善場「そうですね……。いえ、本八幡駅まで送ってあげましょう」
 白峰「本八幡ですか?しかし、まだ調査の途中……」
 善場「私達は千葉県内を捜索することになっています。本八幡駅は千葉県市川市内ですので、千葉県を出ることにはなりません。出てなければ、上に対しては何とでも言い繕えます」
 白峰「そ、そうですか。そういうことなら……」

 白峰氏は車を発進させた。
 善場係長は助手席ではなく、リアシートの私の横に座っている。

 白峰「京葉道路経由でいいですか?」
 善場「いいですよ」
 白峰「分かりました」

 車は刑務所を出て、まずは国道51号線に出た。
 そこから最寄りの京葉道路の入口に向かうという。
 京葉道路と言っても、名前のよく似たJR京葉線とはルートが違う。
 京葉線の横を通るのは首都高湾岸線、京葉道路はあくまでもJR総武線の横を通る。

 愛原「ふう……」

 私はペットボトルの水を一気に半分くらい飲んだ。

 善場「お疲れさまでした。色々とショッキングな話が出てきましたが……」
 愛原「全くですね」
 善場「私がその体、上野医師のものではないと申し上げたのは、根拠が無いからです。あくまでも沖野受刑者は、白井容疑者の元秘書として実験の成功を信じていたでしょう。その気持ちが、今でも残っているのだと思われます。実際、私が質問したところ、やや歯切れの悪い回答をしましたね?そういうことです」
 愛原「顔を整形したとか、随分と生々しいことを言ってましたが……?」
 善場「私が見た限り、所長の顔には整形の跡は見られません。また、それ以前にも所長、色々と身体検査をしたことがありましたね?」
 愛原「ええ」
 善場「もしアンブレラに体を弄られた形跡があるのなら、その時に分かるはずです」
 愛原「そ、それもそうですね」
 善場「ただ……これは脅かすつもりは無く、本当に正直な気持ちで話すだけなのですが……」
 愛原「はい?」
 善場「所長の体は最初からTウィルスの抗体ができていました。その為、霧生市ではゾンビの攻撃を受けても、感染することは無かったのでしょう。そこは高橋容疑者とは対照的です」
 愛原「確かに……」

 その為、大山寺で感染した高橋の為に、抗ウィルス剤を探しに行ったりした記憶がある。

 愛原「高野君は……最初からワクチンを打っていたんでしたっけ」
 善場「そうです。でも、所長はどちらでもありませんでした。滅多に無いことです。恐らくは、白井に捕まって実験をさせられた時に、そういう抗体が作られたのでしょう」
 愛原「すると、私も色々と薬を投与されたと?」
 善場「可能性はあります。ただ、検査では何も見つかりませんが……」

 抗体検査ではTウィルスやTアビス、Cウィルスなど、様々な生物兵器ウィルスの抗体が見つかっている。
 白井の研究の対象外であった特異菌だけは別だが。

 善場「ですので、どうかお気になさらず。それでも万が一仮に体調に異常を感じましたら、すぐに御連絡ください」
 愛原「分かりました」
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