報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「高尾山」 3

2025-03-07 20:48:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日10時40分 天候:晴 東京都八王子市高尾町 南無飯縄大権現の碑]

 

 高尾山の登山道を進むと、道が2つに分岐する。
 どちらも登山道で、また1つに合流するので、どちらのルートを選んでも良い。
 尚、画像前方に見える階段を『男坂』、右に分岐している方を『女坂』という。
 前方の方が距離は短くなるが、御覧の通り、キツい階段を登らなくてはならない。
 一方、女坂の方は迂回する分、距離は長くなるが、階段は無く、緩やかな坂が続くだけとなる。

 愛原「俺は右側に1票だな」
 リサ「じゃあ、右」
 美樹「階段は嫌いっけ?」
 愛原「勘弁してくれ。俺はもう40過ぎのオッサンなんだよ」
 美樹「しょうがねェっスね」

[同日10時50分 天候:晴 同地区内 権現茶屋]

 https://www.youtube.com/watch?v=hG0naNuqDBA(BGM)

 愛原「取りあえず、ここで一休みしよう」

 店の中は冷房が効いて涼しい。
 私は冷たい飲み物を注文した。
 そこは鬼娘達も同じだが、やはり食べ物も頼むらしい。

 リサ「鶏唐揚げ」
 美樹「あたしも」
 愛原「マジか……」
 リサ「山登りは疲れるもんね」
 美樹「ンだ」
 愛原「いや、全然疲れているように見えないが?」
 美樹「先生は人間だから……」

[同日11時20分 天候:晴 同地区内 高尾山薬王院]

 

 https://www.youtube.com/watch?v=7DzSg6j_1wA
(イメージBGM)

 ここで薬王院に到着する。
 山号から見て分かる通り、『高尾山』とは、この薬王院の山号のことである。

 愛原「じゃあ、入るぞ」
 リサ「『邪な鬼が入ってしまった』って、大騒ぎになる?」
 美樹「ひいじっちゃん、ひいばっちゃんの時代ならそうかもな」
 愛原「今は人間の姿をしていれば、誰でも救われる時代だよ。入ろう入ろう」

 私達は境内に入った。

 リサ「鬼はいなさそうだねぇ……」
 愛原「いるのは天狗だよ」
 リサ「テング!?」
 美樹「あー、ここは天狗の山だったんけ。ンだら、鬼はいねェが……」
 リサ「都合良くいないものなの!?」
 美樹「天狗に負けで、追い出されたのかもなぁ……」
 愛原「まあ、人にとっては、鬼より天狗の方が頼りになったってことだな」
 リサ「ふーん……」

 

 

 愛原「ほら、これが天狗のお面」
 美樹「本当に天狗の山なんだべねェ……ヒィッ!?」

 赤い天狗の方は、『大天狗』と呼ばれる。

 リサ「どうした?」
 美樹「……今、天狗が睨んで来たど!?」
 リサ「ウソぉ?」
 愛原「気のせいだろ?」
 美樹「『こごは鬼のいる所でねェ!』っで、言ってるみてェだ……」
 リサ「お賽銭入れれば、許してくれるんじゃない?」
 愛原「そういえば、ここのお寺は、節分の時、『鬼は外』とは言わないそうだ」
 リサ「そうなの!?鬼も歓迎してくれる!?」
 愛原「というか、『鬼も救われる』という教えなんじゃないの?」
 リサ「尚更、お賽銭入れろってことだね。分かった」

 金で解決しようとする所は、元・人間、あるいは人間の中で生活してきたからか。

 美樹「先生、あの青い方は何だァ?」
 愛原「あれは『小天狗』。烏天狗のことだよ」
 美樹「カラス天狗がぁ……。ひいじっちゃん、ひいばっちゃんから聞いた話、京都の小天狗が来たって話、しでだなぁ……」
 愛原「鞍馬天狗か?いやいや……」

 何だ?
 鬼が実在するのは目の前にいるから分かるが、天狗まで実在してんのか?
 すると、リサがコッソリ私に耳打ちした。

 リサ「『鬼はすぐウソを付く』って言われてるから気をつけて」
 愛原「そ、そうなのか」
 リサ「生え抜き組の方がウソ付きじゃん」
 愛原「むむ……」

[同日12時00分 天候:晴 同地区内 高尾山大見晴台→やまびこ茶屋]

 https://www.youtube.com/watch?v=KeKatUXE5mM(BGM)

 

 愛原「はー……やっと着いた」
 リサ「ここが頂上……」
 美樹「天狗の棲む山が」
 愛原「どうだい?鬼もいてそうかい?」
 美樹「いンや……。ここまで連れて来てもらっで、申し訳無ェんだけっど、さっきの寺、あれで鬼はいねェど分かったよ。ここにいるのは、人間と天狗だけだ。鬼はお呼びでねェど分かっだよ」
 愛原「そうか。で、これからどうする?俺的には昼飯食って、少し休んだら下山したいんだが?」
 リサ「そうしよう。わたしも鬼がいるかどうか気になっただけだから」
 美樹「ここまで来だんだから、猪肉でも食いてェな!」
 リサ「猪肉!?何それ!?食べたことない!」
 美樹「精がついて美味ェど」
 愛原「ここじゃ、そんなもの食べれないから。この辺りの茶屋は、蕎麦とかうどんがメインだよ」
 リサ「えー……」
 愛原「まあ、店が何軒かあるみたいだから、少し回ってみよう」

 

 メニューにカレーがある店に決まった。

 愛原「山小屋の飯はカレーと相場が決まってるんだ」
 リサ「中等部の野外活動でも、カレー作りをやったことがある」

 私は何の疑いも持たずに店に入ったが、このコ達、途中で色々と食べ歩いていたような気がしたが……。

 美樹「先生。山小屋でねぐて、茶屋スよ」
 愛原「そうだったな」

 私は他の客のカレーをチラッと見た。
 ステンレスの皿に盛られている様は、山小屋のカレーそのものなのだが。

 リサ「食べたらすぐに下山するの?」
 愛原「いや、せっかく来たんだから、少しこの辺りを散策してしみよう。ビジターセンターとかも見てみよう」
 リサ「それはいいね!」
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“私立探偵 愛原学” 「高尾山」 2

2025-03-07 16:35:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日10時15分 天候:晴 東京都八王子市高尾町 高尾登山電鉄清滝駅→高尾鋼索線ケーブルカー車内]

 

『ケーブルカーに乗りますか? はい いいえ』

 ゲームだと、こんな選択肢が出てきそうだ。

 

 私達はケーブルカーに乗り込んだ。
 那須でロープウェイには乗ったことがあるが、ケーブルカーは初めてだ。

 

 車内はボックスシートになっており、向かい合って座る。

 リサ「ここに、人食い鬼が出たりして?トンネルを出たら、誰か1人いなくなってる、みたいな?」
 美樹「面白い発想だべね。ンでも、難しいべな」
 愛原「あんなのマンガやアニメの話だろうがw」

〔お待たせ致しました。発車致します〕

 ホームから発車ベルが鳴り響く音が聞こえてくる。
 電子電鈴ではなく、昔懐かしいジリジリベルである。

〔「右側のドアが閉まります」〕
〔ドアが閉まります〕

 ドアチャイムは、ピンポンと1回鳴るだけだが、普通の電車のようだ。

〔「お待たせ致しました。上り、高尾山行きケーブルカー、まもなく発車致します」〕

 ケーブルカーはゆっくりと動き出した。
 因みに前方の運転席らしき場所に座っている乗務員は運転士ではなく、車掌である。
 ケーブルカーというのは、運転士は山頂駅にいて、そこからケーブルカーを遠隔操作するのが仕事なのである。

〔「本日も高尾登山電鉄ケーブルカーをご利用くださいまして、ありがとうございます。これより約6分ほど掛けまして、終点の高尾山駅まで、乗務員の田山が御案内致します。途中、事故防止の為、やむを得ず急停車をする場合がございますので、ご注意ください」〕

 ケーブルカーの速度はそんなに速くなく、ロープウェイの速度と同じくらいだろうか。
 レールは普通の鉄道線路のそれと同じなので、ガタンゴトンという鉄道車両ならではのジョイント音は聞こえてくる。
 途中でトンネルに入る。

 リサ「で、出てくると、1人いなくなってる」
 美樹「ンだったら、全員眠らせて全員食った方が早いべっしゃ」
 リサ「! それもそうか」
 愛原「某無限列車みたいなこと言うのやめろ」

 因みに車両の前方にはワイヤーがあって、これで山頂駅から車両を引っ張っているわけである。
 線路は単線。
 しかし、ケーブルカーは2台での運行である。
 よーいドン!で、高尾山駅からも下山電車が出発したはずだ。
 ということは、途中に信号場があるはずである。

〔「ケーブルカーの中間地点に差し掛かります。下りの車両とすれ違います」〕

 やはり、信号場があった。
 といっても、ケーブルカーは閉塞運転を行っているわけではないので、信号機があるわけではない。
 また、普通鉄道の信号場と違い、互いの列車がそこで一旦停止するわけでもなく、絶妙なタイミングですれ違うのである。

〔「これより先、大きく揺れますので、ご注意ください」〕

 ポイントの通過で、電車が大きく揺れる。
 これでもう、下りケーブルカーとすれ違うことはない。

 リサ「本当の山の中だぁ……。美樹の村もこんな感じ?」
 美樹「家のある所は、もっと平地だよ。ンでも、こういう山道はフツーにある」
 リサ「なるほど」

 そして、日本のケーブルカーでは日本一勾配がキツいという箇所を通過する。
 ここも放送で案内があるのだが、乗っている分には、そんなに変わった感じはしない。
 そこを通過すると、またトンネルがある。
 その先に、高尾山駅があるという。

[同日10時21分 天候:晴 同地区内 高尾登山電鉄ケーブルカー車内→高尾山駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。終点の高尾山に到着でございます。お忘れ物なさいませんよう、ご注意ください。お出口は進行方向、左側でございます。停車の際揺れますので、ご注意ください」〕

 高尾山駅の車止めの上には、こちらを見下ろす職員の姿がある。
 そこがケーブルカーの運転室で、そこにいる職員が運転士である。
 車掌が乗っている場所には、ドアの開閉スイッチやマイク、無線電話の他、ケーブルカーが暴走した際に使用する非常ブレーキがある。
 確かに、マスコンハンドルのような物は無い。

〔「左側のドアが開きます。ご注意ください」〕

 停車すると、ドアチャイムと共にドアが開き、乗客達はそこから降りた。
 私達も後から続く。

 https://www.youtube.com/watch?v=_zjLJw8Nnn8
(高尾山がイメージされるBGM)

 

 愛原「着いた」

 駅に着くと、私達はマップを確認した。
 どこまで行くかが鍵となる。

 リサ「山頂まで40分だって」
 美樹「そんなもんか。ンじゃ、山頂目指すべ」
 愛原「た、確か、ちゃんとした舗装路だったよな……」

 富士山みたいな、ガチガチの登山道ではなかった……はず。

 愛原「あの……ここまでにしないか?」

 私はマップ上にある『高尾山大見晴台』を指さした。

 リサ「ここ?」
 愛原「そこが山頂になるんだろう。今から行けば、昼飯もそこで食って帰れるよ」
 美樹「すぐに帰るんけ?」
 愛原「温泉に入りたいんだろ?だったら、早めに高尾山口駅に戻って、そこの極楽湯でゆったり入浴だ」
 美樹「それはいいスね!」
 リサ「先生がそう言うなら……」
 愛原「よし、決まりだな。行くぞ」

 私達は登山道を進んだ。

 愛原「因みに途中にお寺とかあるけど、鬼として大丈夫なの?」
 美樹「別に、寺荒らしさ行ぐわけでねェべし、こうして今は、人間に化けてっから大丈夫スよ」
 リサ「鬼狩りがいないといいねぇ……」
 愛原「そうか」

 尚、登山道は東京都が管理する都道189号線である。
 その殆どが登山道であり、車両が通行できる箇所は少ない。

 美樹「ここは人間の通る道だな」
 リサ「鬼の通る道が、他にもあるって?」
 美樹「それを探してェところだ……」
 愛原「先生が一緒じゃ、やめた方が良くない?」
 美樹「……それもそうか」

 リサは私の手を取った。

 リサ「途中で食べ歩きしていいんだよね!?」
 愛原「食べ歩くのか?!まあ、いいけど……」
 リサ「やった!」

(特別出演 ケーブルカー車掌:報恩坊信徒『田山ひろし』さん)
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