報恩坊の怪しい偽作家!

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“アンドロイドマスター” 「シンディのメモリー」

2014-09-04 02:20:43 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月1日15:00.廃ホテル“シークルーズ”跡 敷島孝夫&キール・ブルー]

「警戒を保ちつつ、調査に当たれ」
 財団仙台支部長、森須の言葉を背に、何故か対象物であるボックスが移動していることを不思議に思う敷島とキール。
 その理由が明らかになる。
「またあいつか?!」
 先程、敷島達に牙を剥いてきた、ずんぐりむっくりのクリーチャーがズリズリと這いつくばって移動していた。
 キールはその個体をスキャンした。
「確かに、あいつの腹部にボックスらしいものがあります」
「よーし!ぶっ壊して回収だ!」
「はい!」
 キールは銃弾を移動している個体に向けて放った。
 ようやくキール達の存在に気づいたか、それでやっと先程の個体と同じように牙を剥いてくる。
 しかし、崩壊前のホテルに現れた2足歩行のクリーチャーよりも更にザコさが増しているため、キールにとってはゴミ同然であった。
「グオオオオ!」
 ボンッ!という爆発がして、中から黒い工具箱のようなボックスが現れる。
 確かに表面には、アルファベットでカスタム・パーツと書かれていた。
「開けてみます」
「おう」
 キールはそのボックスを開けてみた。
「あっ?!」
 すると、中に入っていたのは本当に部品類だった。
「どこにフラッシュメモリーがあるんだ!?」
「……もしかして、ハズレですか?」
「なにーっ!?」
 と、その時、
「グワアアアッ!」
 瓦礫の山から、またさっきのと同じ種類の別の個体が現れた、
「またか!何なんだよ、さっきから!」
「キール、排除しろ」
「かしこまりました」
 無論、森須の命令が無くても、キールはそうするつもりだった。
 そして、キールはその命令を忠実に守ったのである。
 で、その甲斐はあった。
「あれ、また似たようなのが……」
 今度は色違いの、黄色に塗られたボックスが現れた。
「開けてみます」
「ああ」
 キールが開けてみると、今度こそメモリーカードの束が現れた。
 ラベルに英語でシンディだのメモリーだのと読める単語が見える。
「これだ。恐らく、これで間違いないだろう」
「意外と早く見つかるものですなぁ……。って、もしかして、最初に現れたヤツも何か持ってたりして?」
「可能性はあるな」
 敷島の言葉に、大きく頷く森須だった。

 さっきの場所に戻る。
 ボックスを吐き出した個体は爆発したが、最初の個体は爆発していなかった。
「表面だけ見ると、まるで何かの生き物のようですな」
「うむ。本当はこれごと持って帰って調査したいところだが、そうもいかないので、体の一部と体内の部品をサンプルとして持ち帰ることにする」
「体の表面は何でできているんでしょう?」
「分からんが、恐らく人工タンパク質の類に見えるな。多少、腐敗しているようだ」
 キールは最初の個体をスキャンした。
「……確かに、何か隠し持っているようです」
「本当か」
「取り出してみます」
「大丈夫か?」
「はい」
 キールはその個体を仰向けにひっくり返した。
 そして、牙が剥き出しの大きな口の中に手を入れる。
「これだけ見ると、まるで何かの哺乳類のようですな」
 敷島が言うと、
「それでピンと来た。もしかしたら、本来こいつらは水中に適応したタイプなのかもしれん」
 と、森須。
「水中、ですか?」
「崩壊前、このホテルの水回りとかはチェックしなかったのか?プールとか温泉とか……」
「いやー、無かったですねぇ……。強いて言えば社員食堂の厨房ぐらいですが、そこにはいませんでしたし」
 敷島は右手を後頭部にやりながら答えた。
「ありました!」
「なにっ!?」
 キールは体内から、シンディのものとは違う形状のフラッシュメモリーを取り出した。
「手持ちのPCやタブレットには差さらなさそうです」
「これは、こちらで解析しよう」
 森須が謎のメモリーを受け取った。

[同日16:00.同場所 敷島、キール、森須]

 更に周辺を探索してみるが、後は特に目ぼしい物は見つからなかった。
 さっきのザコや、それ以外のクリーチャーが現れたということもない。
「よーし!もうここでの探索は十分だ。引き上げるとしよう」
「はい」
「あー、2人とも。今日はご苦労だった。シンディのメモリーと思われる物は、そのまま支部に持ち返ってくれ」
「支部ですか」
「ああ。アリス君を疑うわけではないが、危険な“思想”をそのままシンディにインストールされても困るしな。それに、せっかく見つけておいて何だが、ダミーかもしれないし、ウィルスに汚染された罠かもしれん。アリス君には私から言っておくから、安心して支部に持って行ってくれ」
「分かりました」
「あとの探索物は、私が本部へ直接持って行く」
「本部ですか?」
「ああ、さっきの電話だ。ここでの捜索権が急遽、うちの支部から本部直轄にするとのお達しだ」
「いきなりですか!?」
「ああ。ここには、まだ“お宝”が眠ってるということかな」
「はあ……」
「とにかく、ここで見つけたもの……特に、メモリー関係についてだけは死守したよ」
 森須は口元を歪めた。
「キミ達は今日のところは宿舎に泊まって、ゆっくり休むといい。メモリーの本格的な解析は明日からだ」
「支部長は休んで行かれないんですか?」
「本部から、早いとこ持って来てくれと催促されてだな……。キミ達の手際の良さもあって、今から秋田駅まで行けば、今日中の新幹線で上京できるだろうとのことだ」
「あらま!もう少し、ゆっくりやった方が良かったですかねぇ……」
「いやいや。どうせ本部に呼ばれる身だ。早い方がいいさ。私は私で、東京で一泊することになるだろう」
「お察し致します」

 メモリー以外の探索物は大きなキャリーバックに詰め込み、それを森須の車に乗せた。
 敷島は大館市内でレンタカーを借りたが、森須は秋田市内で借りたとのこと。
「今から飛ばして、最終の新幹線に間に合うようにするよ」
 森須は運転席から顔を覗かせて言った。
「お気をつけて」
 先に現場をあとにする森須を見送った後、
「じゃあ俺達も行こうか」
「はい」
 と、車に乗り込む2人。
「まあ、俺達の荷物は軽いからな。楽なもんだよ」
「はい」
 敷島は車のエンジンを掛け、森須の後を追うように国道7号線の上り線に入った。

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