報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夢幻号」

2024-10-13 22:13:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明(夜) 天候:雨 場所不明(どこかの船?)]

 ここは……どこだ……?
 私はベッドの上で寝ていた。
 当たり前だ。
 脳の手術をしたのだから。
 それにしても、何か様子がおかしい。
 室内は殆ど真っ暗だし、何より、室内が病院という感じではない。
 何か……ホテルの一室のようだ。
 しかも、少し揺れているような気がする。
 地震か?
 それにしては、ゆっくりな揺れ方だ。
 そう。
 それはまるで、船のような揺れ方。
 一体ここはどこだ?

 愛原「ん……?」

 不思議とベッドからは起きられた。
 脳の手術をした後なのだから、しばらくは安静のはずだ。
 恐らく腕にも点滴が刺されているのだろう。
 だが、そんなことはなかった。
 もっと言えば、そもそも手術などしていないかのように、頭も何ともなかった。

 愛原「ど、どうなってるんだ?」

 丸い窓にはカーテンが閉められており、開けると、外は暗かった。
 そして、驚くべきことに、私は海の上にいた。
 具体的には、海の上に浮かぶ船!
 ここは船室なのだ!
 私は室内の照明を点けた。
 すると、室内が明るくなる。
 確かに、ここは船室……というか、客室の中だった。

 愛原「何で、こんな所に?一体、どうなってるんだ?」

 神奈川県の山奥の施設から、一気に海まで飛んだ?
 船室の外に出て、プロムナードデッキのような所に出る。
 そこは照明は点いておらず、月明りだけの薄暗い所だった。

 ???「ふふふ……あはははは……」

 その時、少女の笑い声が聞こえて来た。
 振り向くと、赤い火の玉をいくつか飛ばしながら、宙に浮いて不気味な笑みを浮かべる少女がいた。
 その姿は、まるで悪霊だった。
 しかも、顔が幼少の頃のリサに似ている。

 愛原「リサ!リサなのか!?」
 ???「……死んじゃえ」

 声もリサに似ている。
 そのリサに似ている少女の亡霊は、右手を私に突き出した。

 愛原「うっ!?」

 突然体がスーッと浮き上がり、船室の壁に叩き付けられる。

 愛原「いでっ!?何するんだ!?」

 しかし、少女は笑いを浮かべたまま、次の攻撃体勢に入る。

 少女「今度はァ……海の底に落ちちゃえ……!」

 少女は私を反対方向に浮かべる。
 デッキの外に落とすつもりだ!
 私は何とか抵抗しようともがくが、彼女の妖術?からは逃れられない。
 と、そこへ突然、デッキの明かりが点いた。

 少女「きゃあああああ!眩しいぃぃぃぃぃぃ!!!」

 少女の亡霊は両手で顔を覆うと姿を消した。
 私を浮かべていた力も無くなり、私はデッキの床に落ちた。

 愛原学「いでっ!……な、何なんだ……?」
 愛原公一「光じゃ。奴らは、光を嫌う」
 学「お、伯父さん!?」

 スイッチボックスの所には、親戚の愛原公一伯父さんがいた。
 元・農学者で、開発した化学肥料を悪用したとかされたとかでデイライトに追われている。

 公一「まさか、お前がここに来るとはな……」
 学「伯父さん、ここはどこなの!?」
 公一「簡単に言えば、夢の中じゃよ」
 学「夢!?」
 公一「ああ。実際のお前は、藤野の施設で昏睡状態じゃ。奴らの罠に掛かってな」
 学「罠!?」
 公一「コネクションという組織は聞いたことあるな?奴らは確かに、重要な情報をチップに込め、お前の頭の中に隠した。じゃが、何の予防策も無しに頭から取り外すと、脳死状態に陥らせる罠を仕掛けておった」
 学「の、脳死!?俺は死んじゃうの!?」
 公一「このままではな。じゃが、ワシらも手をこまねいたわけではない。ワシら“青いアンブレラ”は“青いアンブレラ”で、対抗策を講じた。それはお前の助手の頭に別のチップを埋め込み、そこからお前の脳死を止めるという方法じゃ。原理は複雑じゃから、今ここでそれを説明するつもりはない」
 学「すると、伯父さんも?」
 公一「ああ。ワシもとある施設で昏睡状態となり、ここに来たというわけじゃ。まあ、ワシの場合はすぐに目が覚めるようになっているのじゃがな。ワシは高橋君がこうなったと思っていたのじゃが、やはりお前じゃったか……。全く。コネクションの連中め……」
 学「それで、俺は何をすればいいの?何をすれば助かるの?」

 すると、公一伯父さんは先ほどの船室のドアを開けた。

 公一「ここで待っておれ。ここは船長室じゃ。照明も点くし、ここなら安全じゃ。ワシらに任せて、ここで寝ておれ」
 学「寝ていろったって……」
 公一「いいか?この船には、様々な幽霊が乗り合わせている幽霊船“夢幻号”じゃ」
 学「夢幻号って、確か……」
 公一「顕正号の姉妹船で、顕正号の前に謎の行方不明を遂げた豪華客船じゃな。今はもう、どこかで海の藻屑となっていると言われておる。実際は幽霊船となって、その名の通り、夢の世界を漂流しているというわけじゃ」
 学「どうやってこの船から降りるの!?」
 公一「降りるんじゃない。現実の世界へ帰るのじゃ。いいか?この船に乗り合わせている幽霊には、2つのタイプがある。1つはただの幽霊、もう1つは悪霊じゃ。悪霊は文字通り、生きているワシらを招かざる客として襲って来る。見分け方は簡単。火の玉が青ければ安全、赤ければ危険じゃ。赤い火の玉のヤツと遭遇したら、一目散に逃げろ。或いは、手近の明かりを点ければ消える。いいか?戦おうと思うなよ?」
 学「伯父さんは、これから何をしようというの?」
 公一「もちろん、お前を助ける為に老体に鞭打って、船内を駆け回る。恐らく、船底がゴールじゃろうな」
 学「船底……」
 公一「ではな。ここで大人しく待っているのじゃよ?」
 学「伯父さん……」

 公一伯父さんは、再びプロムナードデッキに出た。
 そして、下に下りる階段を下りて行った。
 本当に大丈夫なのだろうか?

 ???「話は終わりましたか?」
 愛原「!?」

 すると、伯父さんと入れ替わるようにして、別の人物が入って来た。
 その人物は、青い火の玉をはべらせていた。
 幽霊だろうが、何故だ!?
 明かりが点いているのに!?

 ???「明かりを嫌うのは、怨念を持っているからです。怨念を持たない者は、明かりが点いていても平気です。もちろん私も、あなたを襲うつもりは無いので、ご安心ください」

 ほ、本当だろうか?
 よく見ると、船長のような姿をしているが……。
 私は問うた。

 愛原「あなたは誰ですか?」

 と。

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