報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「黒いロボット、再び」

2018-02-07 10:25:05 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日13:23.天候:晴 東京都江東区豊洲 東京メトロ豊洲駅]

 敷島は警視庁で行われるロボットテロ対策会議に出席する為、シンディと会社を出た。

 シンディ:「タクシーかハイヤーで向かうという手がありますよ?」
 敷島:「いいよいいよ。地下鉄ならお前みたいなヤツが狙撃してくることも無いだろうし、日本の地下鉄なら安全だ」
 シンディ:「確かに、私みたいなヤツは地下で狙撃はしませんけどねぇ……」

 但し、前期型の時は走行中の東西線電車に体当たりした経験を持つ。
 南里志郎存命中の時だ。
 地下鉄のトンネル内にある倉庫に南里を捕まえて監禁したものの、逃げられた。
 任務に失敗した怒りでほぼ八つ当たり的に、たまたまやってきた東西線電車に体当たりを食らわせて大破させたのだった。

 シンディ:「体当たりはしますよ」
 敷島:「滅多に無いって」

〔まもなく4番線に、和光市行きが10両編成で到着します。乗車位置で、お待ちください。ホームドアから手や顔を出したり、もたれ掛かったりするのは危険ですからおやめください〕

 ホームに接近放送が鳴り響く。
 風を巻き起こしながら、東京メトロの自社車両10000系が入線してきた。
 開業当時から運転されている旧型ではなく、新型の方である。
 HIDの白いライトが眩しい。

〔豊洲、豊洲です。4番線の電車は各駅停車、和光市行きです〕

 電車に乗り込む敷島とシンディ。
 敷島は空いているオレンジ色の座席に腰掛けた。
 シンディはその前に立つ。
 ホームから、発車メロディ(サイン音)が流れる。
 各曲ごとに曲名が付けられていて、豊洲駅4番線は“きらめくホーム”という。

〔ドアが閉まります。駆け込み乗車はおやめください〕

 敷島:「そういえばミク、電車移動の時は発車メロディに歌詞付けて歌ってたっけなぁ……」

 もちろん、適当にではない。
 曲名を知った後、そこからどうも『予想』して歌うようである。
 最初から原曲があって、歌詞もある場合は別だが。

 電車が東京都心に向かって走り出す。
 行き先の和光市駅とは、埼玉県和光市のことである。
 つまり東京都心を突き抜けて、反対側の埼玉県に抜けるということだ。

〔次は月島、月島です。乗り換えのご案内です。都営大江戸線は、お乗り換えください〕
〔The next station is Tukishima.Y-21.Please change here for the Toei-Oedo line.〕

 この10000系にはドアの上にモニタがある。
 最近の流行りであろうか。
 向かって左側はCMや天気予報やニュースを流し、右側は停車駅案内や運行情報などを流している。
 そのモニターでは、ニュースを流していた。

『晴海ふ頭で海上コンテナ“内側から”破壊される』『コンテナの中は空洞。荷物が“脱走”か?』

 敷島:「高田馬場駅で“鉄腕アトム”歌い出した時には、もうびっくりしたなぁ……」
 シンディ:「姉さんが人身事故を防ぐ為に、電車に体当たりしたんですよね」
 敷島:「体当たりじゃない。体を張って止めたんだ」

 モニタの方は全然見ていなかったので、ニュースには気がつかなかった。

[同日13:32.天候:晴 東京都千代田区 東京メトロ桜田門駅]

 豊洲駅から10分ほどで電車は警視庁の最寄り駅に到着する。

〔まもなく桜田門、桜田門です。出口は、右側です。足元とホームドアにご注意ください〕

 無事に電車から降りる敷島達。

〔桜田門、桜田門です。2番線の電車は各駅停車、和光市行きです〕

 敷島:「ほら、何にも無かっただろ?」
 シンディ:「まあ、そうですねぇ……」

 警視庁への最寄りは4番出口である。
 そこへの階段を登ると……。

 敷島:「んっ!?」
 シンディ:「社長、危ない!」

 何故か車が宙を飛んでいて、それが4番出口に向かって来た。
 シンディが前に立ちはだかって、車を受け止める。
 その車は黒塗りの役員車のようだった。

 敷島:「何なんだ、一体!?」

 車に乗っていたのは……。

 敷島:「あれ!?確かあなた、公安委員会の……」

 これから敷島と一緒に会議の出席する公安委員が乗っていた。

 公安委員:「テロだ!テロロボットが現れた!!」
 敷島:「な、何ですって!?」
 シンディ:「社長、あれを!」

 シンディが指さしたのは、通りを我が物顔で歩く黒いロボットの集団だった。

 敷島:「あれは“黒いロボット”!?北海道で見たヤツだ!」
 公安委員:「あれが急に車を襲って来たんだ!会議の他の参加者もやられた!」
 敷島:「何ですって!シンディ、一網打尽にしろ!」
 シンディ:「かしこまりました!」
 黒いロボットA:「ザビィ?」
 黒いロボットB:「ザビィ」
 黒いロボットC:「ザビィ!ザビィ!」
 敷島:「何か会話してるぞ?!」
 シンディ:「解読不能です!」
 敷島:「なにぃっ!?それはどういうことだ!?」
 シンディ:「原始人が『ウホウホ』しか言わないのに、ちゃんと仲間同士で会話が成立しているようなものです」
 敷島:「じゃ、あれは『ウホウホ』と会話してるんかい!」

 その黒いロボット。
 北海道で現れた個体にあっては、バージョンシリーズのように銃火器を使用してくることはなく、持ち味たる怪力と耐久力を駆使して特にエミリーを苦しめた。

 シンディ:「だぁりゃーっ!」
 黒いロボットA:「ザビィ!?」

 シンディは黒いロボットAを掴み上げると、それをBにぶつけた。

 黒いロボットB:「ザビィーっ!」

 チュドーン!(AとB、大破して爆発する)

 黒いロボットC:「ザビィ!」

 Cは背中からドローンのようなプロペラを出して飛び上がった。

 敷島:「と、飛んだ!?」
 シンディ:「逃がすか!」

 シンディも足下からジェットエンジンを吹かしてCに……。

 シンディ:「速っ!?何アイツ!?」

 しかしC、今度はプロペラではなくジェットエンジンの気筒を出して一気に加速した。

 シンディ:「ちくしょう!ゴキブリみたいな奴らめ!!」

[同日14:00.天候:晴 警視庁庁舎内会議室]

 鷲田:「せっかくご足労頂いた所で申し訳無いが、会議は中止だ」
 敷島:「さっきの委員さん以外、全員病院送りですって!?」
 村中:「そうなんだ。例の黒いロボット達に襲われてね。幸い死者がいなかったからいいようなものの、これでは警察や公安の面目丸つぶれだ」
 鷲田:「奴ら、地面や物陰からいきなり現れて襲って来たらしい」
 敷島:「地面から!?」
 村中:「マンホールの中にじっと潜んでいたらしいよ。ますますゴキブリみたいな奴らだね」
 鷲田:「おい、シンディよ。オマエのセンサーか何かに引っ掛からなかったのか?」
 シンディ:「それが全然」
 敷島:「北海道の時もそうだったっけ、それ?」
 シンディ:「どうでしたかねぇ……。とにかく、今回にあっては全く反応しませんでした。恐らく、ステルス機能が搭載されているものと思われます」
 村中:「なるほど、そうか」
 敷島:「あの黒いロボット達は、いつどうやって東京に?」
 鷲田:「ニュースを見たか?晴海埠頭の海上コンテナが襲われたというものだ」
 敷島:「えーっと……」
 村中:「もしかしたら、あれに荷物として積まれていたのかもしれないね。何しろ、内側からこじ開けられてたんだから」
 敷島:「外国から来たんですか。北海道の時は、危うく北方領土を通してロシア領内に入り込む所でしたからね。もしかしたら、今度のテロ組織はロシアンマフィア辺りかな?」
 鷲田:「まだ捜査中だから、何とも言えんよ。とにかく、だ。そもそも、何機脱走したのか皆目分からん。もし途中で見つけたら生け捕りにしてくれ」
 敷島:「生け捕り!バラバラにしてやるより難しいですなぁ……。せめて、首と胴体を切り離した状態じゃダメですか?」
 村中:「なるべく、の話だよ。もちろん、自分の安全を優先にして協力してくれればいい。ですよね、部長?」
 鷲田:「私としては、相討ちを望んでいるがな」

 鷲田は侮蔑の目をシンディに向けた。
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“戦う社長の物語” 「敷島エージェンシーの仕事始め」 4

2018-02-04 21:40:10 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日11:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 シンディ:「失礼致します。車寄せにお車が到着しました」

 シンディが社長室に入って来る。

 敷島:「おっ、了解。すっかり話し込んじゃったね」
 勝又:「確かに。それじゃ、クールトウキョウのプロジェクトはよろしくお願いしますよ」
 敷島:「承知。勝山先生のお手並みを拝見と行きますよ。シンディ、車寄せまで送ってあげて」
 シンディ:「かしこまりました」

 敷島はエレベーターホールまで見送った。
 シンディは一緒にエレベーターに乗る。

 勝又:「敷島社長の御協力には頭が下がります」
 シンディ:「社長には東京都に貸しがあるので、都議の先生には頭が上がらないのです」

 その割にはフレンドリーなのは、大学の同級生だからか。

 勝又:「貸し?」
 シンディ:「『東京決戦』の時に都営バスを無断拝借して、敵ロボット達の集団に突っ込んだことです。それでそのバス、全損させてしまったので」
 秘書:「乗員乗客が全員避難した後、無人となっていたバスですよ、先生」
 勝又:「ああ、そうだったのか。別に非常時だったわけだし、それでその事件を解決する糸口になったわけだし、何年か後、その全損させたバスを新車で弁償したんだろ?だったらいいんじゃないか」
 秘書:「特に交通局から訴訟などの話はありません」
 勝又:「というわけだから、もう時効だよ。ま、それで協力してくれるのはありがたいけど」

 エレベーターがB2F車寄せに到着する。

 シンディ:「タクシーで宜しかったのですか?ハイヤーの手配なども……」
 勝又:「いえいえ、これでいいんです」
 秘書:「『庶民の味方』たる無所属の若手議員がハイヤーなどに乗っていては、都民から顰蹙を買います。先生がハイヤーにお乗りになるのは、国選に選出されてから」
 シンディ:「うちの社長も似たようなこと言って、ハイヤーに乗りたがらないのです。本社からは乗るように指示されているのですが……」
 勝又:「それは指示に従うべきだと思いますよ。民間企業の経営者と、テロと戦う正義の味方の二足の草鞋を履いているんですから、別に顰蹙を買うことは無いと思いますね」
 シンディ:「ありがとうございます」

 車寄せに止まっているのは、黒塗りのタクシーである。
 敷島エージェンシーが呼んだこともあって、タクシー会社は敷島が出勤の時に乗った所とは違う。

 勝又:「その右手に仕込まれた光線銃が、正義の為に使われることを望みますよ」

 タクシーに乗り込んで、窓を開けた勝山がそう言った。
 だが、シンディは笑みを浮かべてこう答えた。

 シンディ:「敷島社長の望みは違います」
 勝又:「違う?」
 シンディ:「1度も使わずに、この右手が廃棄処分になることを望んでいるのです」
 勝又:「こりゃ負けた」

 タクシーが発進する。
 シンディは深々とお辞儀をしてそのタクシーを見送った後、再び18Fに戻った。

 敷島:「お帰り。ちゃんとお見送りできた?」
 シンディ:「はい。やはり社長は、ハイヤーに乗られるべきだと勝又先生も仰ってました」
 敷島:「俺が議員さんよりいい車に乗っちゃダメだよ」
 シンディ:「勝又先生も本来なら、ハイヤーで移動しても良い御方だと思いますよ。でも、庶民の顰蹙を買わない為にあえて乗らないのだそうです」
 敷島:「でもタクシーだろ?庶民なら、電車かバスで移動しろってんだ」
 シンディ:「まあまあ。その庶民の乗り物を武器に使用した社長は、それ以上口出ししない方がよろしいかと思います」
 敷島:「ブッ!」

 敷島、シンディの思わぬツッコミにお茶を噴き出した。

 敷島:「今度はリムジンで特攻してやらぁ……」
 シンディ:「エアポートリムジンですか?」
 敷島:「そっちじゃない!……とにかく、クールトウキョウの成功の為に、あいにくと武力を持ったロボット達も稼働させないと行けないかもしれないってことだ」
 シンディ:「KR団や、それの派生組織から全て崩壊したはずですけど?」
 敷島:「俺が引いた御神籤が本当だとしたら、今年中に第2、第3のKR団が現れるってよ」
 シンディ:「はあ……。大吉を引いた私が全面的に協力しますよ。姉さんは何を引いたんですか?」
 敷島:「大凶だよ」
 シンディ:「は?」
 敷島:「俺も初めて見た大凶。凶を引いたヤツの手助けをしたら何とかなるみたいなことが書いてあった」
 シンディ:「それはつまり、姉さんは社長を助けろと……」
 敷島:「お前達、ロボットやロイドの創造主は人間だ。だが、その人間が崇める神ってのは、どうやらギャンブル狂みたいだぞ」
 シンディ:「それで社長、時折パチンコやスロットで稼がれるのですね」
 敷島:「そいつはちょっと違うな」

 敷島は苦笑した。
 その時、社長室のドアが開けられた。

 鏡音リン:「シンディ、ヘアメイク手伝って〜」
 シンディ:「こぉら!何度も言ってるでしょ!?社長室に勝手に入るなって!お客様がいたらどうするの!!」
 敷島:「まあまあ。リンもクールトウキョウの協力者だ。少なくとも、勝っちゃんは文句言わんよ」
 リン:「ごめんなさい……」
 敷島:「リンも午後から仕事だったな」
 リン:「うん。ドラマの撮影の打ち合わせ」
 敷島:「打ち合わせだけなら、特にメイクは要らないと思うが……」
 リン:「メイキング映像を撮るんだって。打ち合わせをしている所も少し撮るんだよ」
 敷島:「製作側も大変だな。まあいいや。シンディ。手伝ってやれ」
 シンディ:「分かりました。ほら、おいで」
 リン:「わぁい」

 シンディとリンが社長室から出るのと入れ違いに、井辺が入って来た。

 井辺:「失礼します。クールトウキョウの打ち合わせの資料、DCJさんにはどうしましょうか?」
 敷島:「そうだな……。今さっき勝っちゃん……勝山先生と打ち合わせをした。その時の話も込みで資料を作り直すから、その時まで待って」
 井辺:「分かりました。ボーカロイドの数も増えてきましたし、うちの事務所も油断できなくなったと思います」
 敷島:「油断はしない方がいいと思うが、あまり心配する必要も無いと思う」
 井辺:「そうですか?」
 敷島:「確かに最近のボカロも量産体制には入ったけど、量産機見た?いかにも量産型って感じで、あんまり個性が見受けられない。アイドルってのは個性を全面的に磨き、それを前面に押し出して売るのがベタな法則だ」
 井辺:「私もそう思います」
 敷島:「だけど最近の量産機は何だか迷走しているような気がしてね」
 井辺:「恐らく、色々な方面にオールマイティに売り出せるようにしたからだと思いますね」
 敷島:「それじやダメだ。汎用機にロクな性能は無い。やっぱり専用機にしないと」
 井辺:「メーカーとしては、量産して売り出さないと売り上げにならないのでしょうね」
 敷島:「だからこそ、うちは少数精鋭で行くつもりだよ」
 井辺:「はい」

 それでも、各ボカロにマネージャーが付くほどまでには売れるようになった。
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“戦う社長の物語” 「敷島エージェンシーの仕事始め」 3

2018-02-04 10:14:15 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日09:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島:「えー、皆さん、明けましておめでとうございます」

 始業時刻になり、朝礼が始まる。

 敷島:「それぞれ年末年始を過ごしたかと思いますが、今日の仕事始めからまた頑張りましょう」

 尚、アリスが研究主任を務めるアメリカ資本のデイライト・コーポレーションでは朝礼はやらないそうだ。
 但し、完全に日本式の運営を行っている科学館にあっては朝礼をしているとのこと。
 科学館は日本法人デイライト・コーポレーション・ジャパンの直営で、アメリカ本社は直に関わっていないため。

 篠里:「じゃあ、ミク。そろそろテレビ局に行くぞ」
 初音ミク:「はい。たかお社長、行ってきます」
 敷島:「ああ、気をつけて」
 MEIKO:「ジャーマネ!私の予備バッテリーどこへやったのよ!?」
 徳森:「え……ええと、確か向こうの棚にぃ……」
 MEIKO:「無いからどこって言ってんのよっ!」

 売れっ子アイドル、マネージャーに当たるの図。

 敷島:「騒がしいぞ、MEIKO。予備バッテリーなら、今装着してるだろ」
 MEIKO:「あら、ほんと」
 敷島:「今朝来たら、お前だけケーブル外れててメインバッテリーがゼロに成りかかってさ。お前の仕事は午後からだから、急いで充電すれば大丈夫だろうと思ったんだが、一応念の為、やっぱり予備バッテリーに交換しておいた」
 MEIKO:「ジャーマネ!ケーブル外れてたって、どういうこと!?」
 徳森:「ぼ、ほぼ、僕はちゃんと取り付けたよぉ……」
 敷島:「徳森君、確認はしっかりと行うように。いいね?ロイドにとって、バッテリーは心臓のようなものだ。どんなに人工知能が優秀でも、原動力が無かったらただのお人形さんだ」
 MEIKO:「そうよ。危うくドールになる所だったじゃないの!」
 徳森:「ご、ごご、ごめんなさい……」
 MEIKO:「分かったら、さっさと予備バッテリーからメインバッテリーに交換してちょうだい!」
 徳森:「ぼ、ぼぼ、僕が?」
 MEIKO:「ほら、早くぅ……」

 MEIKO、赤い上着を脱いで白い背中を見せる。

 敷島:「徳森君、バッテリーの交換もボーカロイドマネージャーの業務だぞ?」
 徳森:「は、ははは、はいーっ!」

 徳森とMEIKOは奥の部屋に向かった。

 敷島:「MEIKOのヤツ、絶対遊んでるな」
 シンディ:「さすがはボーカロイドの最古参ですね。いいんですか?徳森さんみたいな人が、あんなボカロの大御所みたいなヤツのマネージャーで」
 敷島:「MEIKO自身、自分でスケジュール管理はできるし、徳森君もいい勉強になるだろう」
 シンディ:「四季エンタープライズから来た人ですよね。もう既に何人ものアイドルから嫌がられて、ついにここに流れて来たとありますわ」
 敷島:「人間のアイドルの方が、扱い難しいからね」

 敷島も何度か四季エンタープライズに行ったことがあり、そこで人間のアイドルと面談もしたことがある。
 そこで思ったのは、自分には人間のアイドルの扱いは無理だということである。

 シンディ:「それにしても、まさかボーカロイド達がここまで売れるとは思いもしませんでした。私がまだ前期型で活動していた頃は、ただのロボット研究の一環に過ぎなかったはずなのに……」
 敷島:「うちの親戚が芸能事務所やってて良かったよ。試しに見よう見まねでプロデュースしてみたら、案外上手くいった。それだけのことさ」

 シンディは敷島にコーヒーを入れた。

 シンディ:「社長の御予定は、10時から都議会議員の勝又先生がこちらに来られます。14時からは警視庁でロボットテロ対策会議です」
 敷島:「ま、仕事始めの俺の予定はこんなもんだ。勝っちゃんも若手議員だから、向こうから挨拶に来られる側ではなく、こちら側から行く方か……」

 敷島はズズズとコーヒーを啜った。

 敷島:「ロボットテロ対策会議にお前が出るとは、凄い皮肉だな。さすがは皮肉大好き鷲田警視だ」

 シンディの前期型はロボットテロを起こす方だった。
 後期型の今は鎮静化させる方であるが。

 シンディ:「これも贖罪の1つだと思えば、何てことありません」
 敷島:「そうか」

[同日10:00.天候:晴 豊洲アルカディアビルB2F車寄せ→18F敷島エージェンシー]

 勝又が到着したので、秘書のシンディが迎えに行く。
 若手議員くらいだとまだ専用車は無い為、タクシーで来たようだ。
 他のフロアに入居している企業の役員が出入りするのだろう。
 それらの高級車に挟まれるようにして、東京無線の緑のタクシーが止まっていた。

 勝山:「おはようございます!」
 秘書:「おはようございます」
 シンディ:「おはようございます。この度はお疲れさまです。すぐにご案内致します」

 エレベーターのドアが開く。
 これからどこかに出かけるのだろう。
 車寄せに高級車を待たせている役員達が降りて来た。
 敷島と比べれば全然年配だ。
 一緒に降りて来た女性秘書は、もちろん人間である。
 それは勝山が連れている男性秘書も同じだ。

 勝又:「敷島社長はお元気ですか?」

 エレベーターに乗り込んでから、勝山が話し掛けて来た。

 シンディ:「はい。相変わらずです」
 勝又:「今日は第二秘書のあなたが?」
 シンディ:「はい。第一秘書の姉は今日、オーバーホール中です。……ので、私めが本日務めております」
 勝又:「そうですか」

 勝又は敷島とは大学の同級生である。

 勝又:「元々はあなたが専属秘書だったんですよね」
 シンディ:「はい。姉が『覚醒』したので、私は代理に回ることになりました」
 勝又:「覚醒?」

 高層用エレベーターは低層用または貨物用エレベーターよりもスピードが速い。
 途中で止まらなければ、あっという間に着く。

 敷島:「よぉ〜、勝っちゃん」
 勝又:「敷島社長、明けましておめでとうございます!」
 敷島:「お、おめでとうございます!……いやいや、そんな堅苦しくしなくても……。ま、今年もよろしくお願いしたいのは、こっちも同じだからさ」
 勝又:「ぜひ!」
 敷島:「ままま、どうぞ掛けて」

 敷島達、ソファに座る。

 敷島:「外は寒かったでしょう。何か温かい物でも出そうね。コーヒーがいい?それとも紅茶?」
 勝又:「いえいえ、そんな、お構いなく」
 敷島:「『クールトウキョウ』についての話でしょ?ゆっくりしようよ。何だったら、『メイドロイド七海プロデュース、オリジナル紅ヒーブレンド』なんてのもあるよ?」
 勝又:「それ、嫌な客撃退用だろ?」

 尚、実際にそれにチャレンジした者がいたかどうかは【お察しください】。
 因みに七海がいたことのある東北工科大学または東京都心大学では、過去に被害が発生したもよう。
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“戦う社長の物語” 「敷島エージェンシーの仕事始め」 2

2018-02-03 20:17:52 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日07:30.天候:晴 東京都江東区豊洲 タクシー車内→豊洲アルカディアビル]

 

 敷島とシンディを乗せたタクシーが、敷島エージェンシーの入居するビルへ接近する。
 するとシンディ、自らのボディに搭載された通話機能でどこかに電話する。
 別に何も着けなくてもいいのだが、それだとまるで独り言を言っているかのように見えてしまう為、わざわざインカムを着けて喋る。

 シンディ:「おはようございます。こちら18階に入居しております敷島エージェンシーの者で、シンディと申します。……はい。まもなく敷島社長がお乗りのタクシーが到着致しますので、よろしくお願いします。……はい。会社名は日の丸リムジン、車番は6296、黒のホンダ・オデッセイです。あと5分ほどで到着の見込みです。……はい。よろしくお願い致します。失礼します」

 シンディ、そこで電話を切る。
 果たしてシンディはどこに電話したのだろうか。
 しかしながら、これが敷島の到着時に毎朝行われている光景なのである。

 運転手:「地下駐車場へお入りですか?」
 シンディ:「はい、お願いします。連絡はしておきましたので、駐車料金は掛かりません」
 運転手:「分かりました」

 アルカディアビル(架空のビル)は地下駐車場を有している。
 月極の駐車場から一般の時間貸し駐車場から荷捌き場もあり、入居する企業の役員車・ハイヤーの車寄せも同じ入口にある。
 ハイヤーや役員車で通勤する者はビルの管理会社に登録しておけばパスが支給され、駐車場の料金所ではそのパスを機械に通すだけで無料で行き来できる。
 月極駐車場の契約者もそこは同じである。
 ところがタクシーで来館しようとすると、予めビルの駐車場警備室に連絡を入れておかないと駐車料金が課金されるどころか、そもそも車寄せに進入できないのである。
 その為、タクシーで来館する者は1階のエントランス前で乗り降りするのがデフォとなっている。
 しかしながらビルの正面エントランスの開放時間は平日の朝8時からとなっており、敷島の通勤時間ではまだ入れない。
 尚、地下駐車場は24時間営業であり、車寄せも朝7時から開いている(単なる駐車場利用者の人の出入口は別にある)。
 その為、シンディが予め連絡したのだった。
 普段は第一秘書のエミリーが行っているが、シンディもそこは知っているし、人間と違って忘れることもない。

 駐車場の出入口に着くと、運転手は駐車券を取った。
 駐車券発券機の横に、パスの読取機が設置されている。
 タクシーが急坂を下り、地下2階の役員用車寄せに到着した。
 コートを着た警備員が立哨していて、何も登録や連絡の無い車はそこで根掘り葉掘り事情を聞かれ、場合によっては追い出される。

 運転手:「こちらでよろしいですか?」
 シンディ:「はい、お願いします。支払いはチケットで」
 運転手:「かしこまりました」

 シンディはタクシーチケットに料金を書き込んだ。

 警備員:「おはようございます」
 敷島:「おはよう。ご苦労様」
 シンディ:「おはようございます」

 敷島達は木目調のシックな壁や間接照明、ベージュ色のカーペットが敷かれた役員エリアに足を踏み入れた。
 この後で車寄せに立哨していた警備員は、運転手が入口で取った駐車券に無料スタンプを押してあげるのである。
 それで晴れてこのタクシーは、無料で駐車場から出られるというわけである。

 エレベーターに乗り込む。
 ドアが閉まって上昇してから、シンディが口を開いた。

 シンディ:「私や姉さんは特にあんな労は惜しみませんけど、ここの警備員さん達に余計な仕事をさせてしまってますわ。こういうこともあるので、ハイヤーにした方がよろしいと思います」
 敷島:「何か俺もそんな気がしてきた。やっぱ、来月からにしておくか」
 シンディ:「そうしてください」

 エミリーやシンディの電話を取る為に、受付を早めに開けておかなくてはならないという点と、敷島達のタクシーを出迎える為に車寄せの外で待たなくてはならないという点である。
 朝7時から開いているというのは、緊急の為に自動ドアだけ動かしておくという意味で、受付自体を開けているというわけではない。
 そりゃそうだ。
 重役出勤という言葉があるように、本来の役員は一般社員よりも遅めに出勤してくるものである。
 そもそもが敷島、役員のくせに出勤時間が早過ぎるのである。
 それでも予め登録されたハイヤーであれば、わざわざ車寄せの外に出て行く必要も無い(到着したタクシーが本当に連絡のあった物なのか確認しないといけない)為、まだ泊まり勤務の警備員は楽でいいのである。
 敷島の何気ない行動が実は、下々の者に余計な労力を掛けさせてしまっているのである。

 エレベーターが18階に到着する。

 敷島:「どーれ、ボーカロイド達は元気かな」
 シンディ:「年末年始の間はずっと電源を落としていましたからね。バッテリーがちょっと心配ですわ」
 敷島:「幸い今日は、まだ皆してそんな大きな仕事は無い。いざとなったら、バッテリー交換だけで今日1日終わらせてもいいな」

 シンディが共用のエレベーターホールから敷島エージェンシーに入るエントランスの電気錠を開けようとした。

 シンディ:「あら?もう空いてるわ」
 敷島:「俺が1番だと思っていたのに、もう誰か来てるのか」

 シンディは電気錠の出入管理データにアクセスし、今日の出入りの履歴を見た。

 シンディ:「井辺プロデューサーです。井辺プロデューサーが既に7時に出勤されてますわ」
 敷島:「なにっ?」

 敷島達は会社の中に入った。

 井辺:「社長、シンディさん。明けまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願い致します」
 敷島:「あ、ああ。こちらこそ、どうぞよろしく」
 シンディ:「よろしくお願いします」
 敷島:「随分と早いね?何かあった?」
 井辺:「私の担当するMEGAbyteの3人の様子を見る為です。早めに動作チェックをしておこうと思いまして」
 敷島:「なるほど、そうか」
 井辺:「何しろ昨年は、結月ゆかりさんとLilyさんのバッテリーが上がっていましたから。幸いあの日は、何も仕事が無かったから良かったようなものの……」
 敷島:「あいつら、どこのメーカーだ?」
 井辺:「後で確認しておきます」
 敷島:「そう聞くとミク達が心配になってきた。あいつらも早いとこ起動させよう」

 敷島は社長室に入ると、更にその隣にある小部屋に入った。
 そこがボーカロイド達を遠隔監視する端末室になっているのである。
 ボーカロイドの管理権は敷島にあるということが分かる一面だ。
 ここにある端末が親機であり、それぞれのマネージャーが持つ端末が子機ということになる。
 敷島は端末を操作して、MEGAbyteの3人を除く残りのボーカロイド達を起動した。
 尚、MEGAbyteに関しては敷島が持っている方が子機、井辺の持っている方が親機である。

 敷島:「ぅあちゃー。MEIKOのバッテリーが切れ掛かってる。充電ケーブル外れてたな」
 シンディ:「予備バッテリーの方がまだ残量が多いです。そちらと交換しますか?」
 敷島:「MEIKOの今日の予定は?」
 シンディ:「午前中はオフ。午後は14時から都内でラジオの収録、あとは18時から都内のホテルでディナーショーです」
 敷島:「だったらメインバッテリーのまま、そいつをフル充電だ。電力をMEIKOに回してやれ」
 シンディ:「かしこまりました。……あと、リンのバッテリーも残量少なめです」
 敷島:「あいつ絶対、勝手に起動して社内で遊んでたな。むしろリンのメインバッテリーの方を外してやれ」
 シンディ:「かしこまりました」

 普通のアイドル事務所には無い光景。
 毎年行われている敷島エージェンシーの仕事始めである。
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“戦う社長の物語” 「敷島エージェンシーの仕事始め」 1

2018-02-02 20:01:31 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日06:38.天候:晴 JR大宮駅・新幹線ホーム]

〔14番線に、“なすの”252号、東京行きが10両編成で参ります。この電車は途中、上野に止まります。グリーン車は9号車、自由席は1号車から8号車と10号車です。まもなく14番線に、“なすの”252号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 高架ホームに朝日が差し込んでくる。
 東北新幹線上り列車を待つ場合、その朝日に背を向けることになる。

 敷島:「随分と地味な年末年始になったな。次回はもっとド派手な過ごし方でもしようかな」
 シンディ:「家族旅行に行かれるのが良いと思います」
 敷島:「家族旅行ねぇ……」
 シンディ:「あ、私と姉さんは留守をお預かりしておきますよ?」
 敷島:「いや、まあまだ先の話だ」

〔「14番線、ご注意ください。“なすの”252号、東京行きの到着です。お下がりください。9号車のグリーン車以外、全部自由席です」〕

 東北新幹線では古参のE2系電車が入線してくる。
 唯一の小山始発ということもあり、車内はガラガラの状態だった。
 メインは東京駅からの折り返し列車で、回送で向かうついでに客扱いするだけなのかもしれない。

〔「おはようございます。大宮、大宮です。14番線の電車は“なすの”252号、東京行きです」〕

 近距離利用の敷島達はグリーン車ではなく、先頭の1号車に乗った。
 尚、第一秘書のエミリーが一緒でないのは、エミリーは月初めにオーバーホールを受けることになっているからである。
 この場合は第二秘書のシンディが代理を務める。
 本来は週末に受ければ良いのだろうが、外資系のDCJは平日しかアフターサービスを行っていないからだ。

 敷島:「こうして、ボーッと景色を見ながら通勤するのも1つの楽しみだったんだがな」
 シンディ:「ハイヤーでもできますよ」

 車両の外から無機質な電子ベルが聞こえてくる。
 仙台駅などは発車メロディだが、大宮駅は電子ベルのままである。
 大宮駅で発車メロディが流れないのは、新幹線ホームとニューシャトルのホームだけになっていた。

〔14番線から、“なすの”252号、東京行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 発車メロディの後で、客終合図が微かに聞こえてくる。
 それだけ車内が静かだということだ。
 朝一の始発でもそれなりに乗客は乗っているのだが、皆が皆通勤客だからだろう。
 車内にインバータの音が響いて来て、それが流れ始めた景色と共に列車が出発したことを教えてくれる。
 JR東海や西日本が導入しているタイプのインバータ音は、それはもう眠気を誘うような音色である(作者の主観。JR東海373系や西日本207系、西日本223系など)。

 シンディ:「ハイヤー通勤になれば、列車の時差通勤などもせずに済みます。御朝食も、自宅で取れますよ」
 敷島:「それはそうなんだけどねぇ……」

 新幹線通勤の敷島は、車内でエミリーもしくはシンディの作った軽食の弁当を食べている。

 シンディ:「とにかくエンタープライズ本社からの指示ですので、来月よりハイヤー通勤に切り換えてください」
 敷島:「いや、そこは来年度だろう。4月からでいいさ」
 シンディ:「ダメです。昨日、会長も仰ったではありませんか」
 敷島:「あの爺さん、覚えてるかな?」
 シンディ:「覚えてると思いますよ。井辺プロデューサーも心配してましたからね」
 敷島:「井辺君も外面的なことを気にするようになったなぁ……」
 シンディ:「井辺さんは今や総合プロデューサー。つまり、敷島エージェンシー営業部門の責任者なんです。当たり前ですよ」
 敷島:「固い所があって、どらかというと総務向きかなと思ったんだが、何とか成長してくれたみたいだ」

 敷島はカツサンドを頬張りながら頷いた。

[同日07:04.天候:晴 JR東京駅]

 JR東日本の大宮以南は徐行区間である。
 これは線形が悪いことも去ることながら、住宅密集地を通る為に騒音対策ということにもなっている。
 但し、これのせいでダイヤが過密状態になり、ちょっとのダイヤ乱れですぐ渋滞してしまうという現象の元にもなっている。
 上野駅新幹線ホームは新幹線駅の中でも珍しい地下ホームだが、これを抜けるとすぐに東京駅である。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線と京葉線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 東京駅ホーム入線直前、進行方向左手には三菱地所の再開発地区がある。
 既に取り壊しが行われている旧・JXビル。
 取り壊されて無くなった今だから白状するが、このビルが作者の数年前まで防災警備先として派遣されていたビルである。
 尚、東京決戦で敷島がバスでバージョン軍団の包囲網の突破口を開ける為に突っ込んだビルのモデルではない。
 場所は大手町ということになっているが。
 呉服橋交差点に乗り捨てられていた都営バスを無断拝借して、JRのガード下を占拠していたバージョン軍団に特攻した。

 敷島:「……東京決戦の思い出もあるから、新幹線通勤は止められなかったのにぁ……」
 シンディ:「ちょうどこの真下でしたわね。社長がバスで突入したのは」
 敷島:「旧式の3.0だけで良かったよ。4.0がいたら、突っ込む前にバスごと吹っ飛ばされていただろうなぁ……」
 シンディ:「社長の場合、4.0が迎撃しても生き残ってそうな何かを感じます」
 敷島:「ロイドのお前が?」
 シンディ:「ええ」

 ややもすれば人間型大量破壊殺戮兵器としての用途もできるマルチタイプだが、何故かどう計算しても敷島を殺害できる確率が低めに計算されてしまうのだそうだ。
 例えばこうして横に座っているのだから、いきなりナイフでブスリと、或いは銃で頭を素早く打ち抜くなんてことも、やろうと思えばできるだろう。
 その成功率が敷島に関してだけは、どうしても低く出てしまうのだそうだ。
 ロイドは自分で出した計算の答えには絶大な自信を持つ。
 それが低く出るということは、そもそも最初からそのような行動はしないということだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京、東京です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 上りの始発列車が東京駅に到着する。
 敷島とシンディは他の乗客達と共にホームに降りた。

〔「……20番線に到着の電車は、折り返し7時16分発、“はやて”111号、盛岡行きとなります。……」〕

 折り返し列車を待つ乗客達は、長い列を作っていた。

 敷島:「この足で都営バスの乗り場に行って、豊洲駅行きか深川車庫行きに乗っていたものだが……」

 今は長蛇の列を作る都営バスの乗り場を横目にタクシー乗り場に行き、そこからタクシーに乗るようになった。

 敷島:「都営バスならWi-Fiがあるのになぁ……」
 シンディ:「別に、スマホくらいパケット通信でもいいじゃないですか」

 タクシーの中にもWi-Fiを搭載している車もあるのだが、必ずというわけではない。
 敷島達が乗ったのは黒塗りのセダンだったのだが、Wi-Fiは完備していなかった。

 シンディ:「豊洲のアルカディアビルまでお願いします」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 東京駅八重洲口から出る際は、タクシーもバスも一緒の交差点に並ぶ。
 だから、タクシーが前後脇の3方向をバスに固められるということも多々あるわけだ。
 尚、タクシーにはカーナビがあって、GPSで位置情報を提供しているわけだが、シンディなどのロイドもまたGPSで位置を管理されているのである。
コメント (2)
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