報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「天国と地獄」

2018-02-12 21:05:05 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月6日12:30.天候:曇 宮城県仙台市青葉区]

 仙台市内を走る1台のプリウス。
 運転しているのは平賀で、助手席に敷島が乗り、その後ろにエミリーが乗っている。
 これはビジネスマナーとしては正解。
 オーナードライバーが上席者の場合、次の上座は助手席になるのだ。

 敷島:「お子さん達、大きくなりましたね」
 平賀:「もう既に、上は小学校ですからねぇ……。ていうか敷島さん、お年玉ありがとうございました」
 敷島:「何の何の。私も初めてあげましたから」
 平賀:「敷島さんの所はどうなんですか?」
 敷島:「幸いうちは、二海やシンディのおかげで保育所には入らずに済みましたし、あとは幼稚園ですかね」
 平賀:「そうですか。自分で良かったら、相談に乗りますよ」
 敷島:「それは頼もしい。正に、先輩ですな」
 平賀:「いやいやいや」

 年齢的にも平賀の方が数歳ほど上。

 平賀:「この辺りでいいか」

 街中に出た敷島達。
 タワー式の立体駐車場に車を止める。

 平賀:「向こうに美味いラーメン屋があるんですよ」
 敷島:「それは楽しみですね」
 平賀:「今日は特に寒いですから、温かいものでも食べたいですからね」
 敷島:「いや、全く」
 エミリー:「夕方から雪が降るようです。お気をつけください」
 敷島:「分かったよ」
 平賀:「エミリーは店の外で待っててくれ」
 エミリー:「かしこまりました」

 個人商店の店だが、街中にある為に駐車場は無い。
 そこで付近の有料駐車場を利用することになる。

 平賀達がラーメンを食べている間、エミリーは外で待ち惚け。
 寒風が吹くものの、ロイドには気にならない。

 エミリー:(……シンディはまたやっているのか……)

 東京ではまた何かあった様子。
 ちょっとそちらを中継してみよう。

[同日同時刻 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 MEIKO:「無い……」
 巡音ルカ:「無い……」
 Lily:「無い!」
 未夢:「無いわ」
 シンディ:「なに、どうしたの、皆?」
 井辺:「どうかしましたか?」
 初音ミク:「プロデューサーさん、シンディさん、大変です〜!」
 シンディ:「だから、何があったの?」

 何があったかというと……。

 井辺:「下着ドロ……ですか?しかも、ボーカロイドの女性皆さんが被害に?」
 ミク:「そうなんです!わたしのお気に入りの縞パンが全部無くなってるんですぅ〜!」
 MEIKO:「これは大事件ね」
 ルカ:「怖いですね」

 そこへMEGAbyteのセンターを務める結月ゆかりがやってきた。

 井辺:「結月さんも被害に遭われたんですね?今日は大変な日になりそうで……」
 結月ゆかり:「私のだけ盗まれてないんだけど……?」

 逆に不機嫌な顔をするゆかりだった。
 シーンと静まり返る事務所内。

 井辺:「は、はあ……そうですか……」
 ミク:「ひどいです!泥棒のくせに胸の差別なんて!」
 ゆかり:「ね!?そうですよね!?ミク先輩!」
 ミク:「絶対に犯人を捕まえます!ですよね、シンディさん!?」
 シンディ:「まあまあ、落ち着け、ミク。泥棒がどういう基準でパクッたのかは知らんが、少なくともリンも盗まれてない」
 ゆかり:「ってことは、やっぱり胸の大きさで差別したんじゃないですか!ひどい!」
 シンディ:「いいから落ちつけって。因みに私も着替え用の服と下着をここに置いているが、私のも盗まれてない」
 井辺:「良かったじゃないですか、結月さん。シンディさんはGカップです。それが盗まれていないということは、けして胸の大きさで差別したわけじゃないという……」
 MEIKO:「おい、プロデューサー。そういうこと真顔で言わない」
 井辺:「は、はあ……」
 シンディ:「あ、いや、胸部パーツ交換やったもんで今はHカップになったけど?」
 結月:「
 MEIKO:「シンディも余計なこと言わない方がいいよ」
 シンディ:「まあ、それよりもだ……」

 シンディが睨みつけたのは……。

 KAITO:「な、何でボク達が……」
 マリオ:「当然ノヨウニ……」
 ルイージ:「疑ワレルンデスカ!?」
 シンディ:「だってお前ら、四捨五入したら問答無用で下着泥棒側だろうが」
 KAITO:「ヒドい言われよう!」
 鏡音レン:「大変です!事務所内を裸足で歩き回った跡が!」
 井辺:「裸足!?」

 事務室の外に出る。
 人間の足跡ではない、黒い足跡があった。

 シンディ:「スキャンしてみるわ!……これ、確かに人間の足跡ではないわ。……金属反応が僅か。あと、機械油の反応ね」
 KAITO:「ということは、ボクは潔白だね。ボクはこうして靴履いてるし、油漏れなんかさせてない」
 マリオ:「俺ラモ……」
 ルイージ:「油漏レナンテサセテナイデス!」
 シンディ:「まだ分からんぞ。ボーカロイドのKAITOはともかく、お前らロボットはいつどこで油漏れさせるか分からんからな」
 マリオ:「エエッ!?」
 ルイージ:「全然信用サレテナイ……」
 レン:「足跡は一組だけ。もし何かロボットが侵入したんだとしたら、1機だけってことになるね」
 井辺:「強いロイドを避けて泥棒を……。凄いスペックを搭載したロボットですね」
 マリオ:「確カニ痴漢モ実際ハ派手ナ女ヨリ、地味デ大人シソウナ女ヲ狙ウと言ウシナ」
 ルイージ:「ソウダソウダ」
 シンディ:「マジでお前ら氏ね!」
 井辺:「しかし、ロボットがボカロの皆さんの下着を盗んでどうしようというのでしょうか?」
 KAITO:「転売……ですかね?」
 シンディ:「よし、白状したな。ちょっとこっちに来い。姉さんに代わってお仕置きしてやる」
 KAITO:「いや、ちょっと予想しただけですよ!?」
 レン:「大変です!例の足跡が……秘書室に!」

 秘書室というからには、エミリーやシンディが控え室として使用している部屋だ。
 社長室と事務室の間に位置している。

 シンディ:「! この野郎!!」

 シンディは秘書室のドアをバァンと開けた。

 黒いロボット:「

 黒いロボットはシンディのロッカーを開け、中にあった黒いビキニブラジャーを装着していた。

 シンディ:「……おい!」
 黒いロボット:Σ(゚Д゚)

 次の瞬間、黒いロボットがシンディにバラバラになるほどボコボコにされたのは言うまでもない。

 マリオ:「マサカ、着ル目的ダッタトハ……!」
 KAITO:「ロボットのくせに、随分と生々しいことを……!」
 ルイージ:「ダガソレヨリ意外ナノハ……」

 ルイージは床に散乱した下着の1つをスキャンした。

 ルイージ:「シンディ様モ、白い下着ヲオ持チダッタトハ……。黒カ紺オンリーダト思ッテイタ」
 シンディ:「

 ついでにルイージもボコられたという。

[同日13:15.天候:小雪 宮城県仙台市青葉区]

 敷島:「ふぅーっ、食った食った。ごちそーさんでした」
 平賀:「どうです?美味いラーメン屋だったでしょ?」
 敷島:「ええ。麺にコシがあって、スープの味も抜群でしたね。……お待たせ、エミリー」
 エミリー:「お帰りなさいませ」
 敷島:「何か面白いことでもあった?」
 エミリー:「事務所で事件があったようです。シンディからの通信です」
 敷島:「事務所で!?何があった!?」

 最初は深刻な顔をしていた敷島だったが、上記の出来事を聞いて笑いを堪えることができなかったそうだ。
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“戦う社長の物語” 「平賀家の間取りの設定を考えていなかった件について」

2018-02-12 10:18:43 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月6日11:19.天候:曇 “はやぶさ”69号9号車内→JR仙台駅]

 列車が最初の停車駅、仙台に差し掛かる。
 市内に入ると線形が悪くなる為に、速度を在来線電車並みの速度に落として走行する。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線と仙台空港アクセス線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。仙台の次は、古川に止まります〕

 敷島:「こっちは曇ってるなぁ……」

 町に日差しが差し込んでいない。
 空はどんよりとした雲が空一面を覆っている。

 エミリー:「今日の仙台市の予報は曇のち雪です」
 敷島:「こっちも雪は少ない方なんだが……。まあ、南里研究所のあった泉区はそうでもなかったか。何か、毎年雪かきをやっていた記憶がある」

 ほとんどは力自慢のエミリーがやってのけていたが。

〔「まもなく、仙台です。12番線到着、お出口は左側です。……」〕

 敷島:「何だか外は寒そうだ」

 敷島は荷棚に置いておいたコートを羽織った。
 機械の体であるエミリーは薄着でも良いのだが、それだと周囲の目から見ても不自然なので、一応ワインレッドのコートを羽織る。

 エミリー:「気温は低い方が活動しやすいです」
 敷島:「お前達はな」

 列車がホームに入線する。
 終点は新青森ながら、この駅でも下車する客は多く……。

 敷島:「やっぱり寒い……」

 吐く息が白かった。

 エミリー:「私の廃熱で温めましょうか?」
 敷島:「えっ?いや、いいよ!それより、早く平賀先生の家に行こう」

 2人は足早に改札口を出ると、タクシー乗り場に歩いて行き、そこからタクシーで平賀の家に向かった。

[同日11:50.天候:晴 宮城県仙台市太白区 平賀家]

 仙台市西部の高台の住宅街に、平賀の家はある。

 敷島:「昔とちっとも変わらんなぁ……」

 この高台の住宅街。
 高級住宅街の1つとされているが、大雪の際は【お察しください】。
 料金の支払いをしていたエミリーが降りて来る。

 エミリー:「一応、領収証はもらっておきました。経費で落としますか?」
 敷島:「それは、これからの会議の内容次第だよ」
 エミリー:「かしこまりました」

 エミリーが先に入る。
 敷島がインターホンを押した。

 敷島:「ちわーっ!三河屋でーす!……なんちゃってw」
 エミリー:「社長……」

 エミリーは呆れながら玄関のドアを開けた。

 エミリー:「失礼しま……」
 猛犬:「ワンワンワンワンワン!!」
 エミリー:「!!!」

 すると、獰猛な白いシェパードがエミリーに飛び掛かって来た。
 エミリーの左手に噛み付く。

 敷島:「エミリー!」

 バチッ!(エミリー、左手から放電する)

 猛犬:「キャゥン!キャン!キャン!」

 猛犬は慌てて逃げ出した。

 敷島:「! 思い出した!確か平賀先生って……!」
 七海:「お待たせしました!申し訳ございません!」

 奥からメイドロイドの七海が慌てて走って来た。
 昔の七海なら、ここでスッ転ぶドジっ子メイドをやらかして萌えポイントを稼ぐところだが、今はそんなことも無くなっている。

 エミリー:「平賀博士は、また獰猛なロボット犬を造られたのか?」
 七海:「そうなんです。ここ最近は、ロイドよりも動物犬を造られることが多くて……」
 敷島:「誰得だ、それ?」
 七海:「どうぞ、お上がりください。太一様がお待ちです」
 敷島:「まあ、ここで会議をするわけじゃないんだけどな」
 七海:「分かっております。事前の打ち合わせですね」
 敷島:「会議の為の会議。四季グループでも横行してるけど、日本の悪い癖だ。そういう無駄業務が企業のブラック化を招くんだよ」

 敷島は頭をかいた。

 ロボット犬:「ウウウ……!」

 先ほどのロボット犬は今は鎖に繋がれている。
 エミリーを見て唸り声を上げたが……。

 エミリー:「!」

 キッとロボット犬を睨みつけるエミリー。
 更に左手を出して、パチッと火花を散らす。

 ロボット犬:「クゥーン……」

 先ほどの高圧電流攻撃が効いたか、ロボット犬はすごすごとゲージに引き下がった。
 右手は銃火器(光線銃)、左手は有線ロケットパンチや高圧電流攻撃が標準のマルチタイプ。

 平賀:「やあ、どうも敷島さん。遠いところをわざわざ……」
 敷島:「明けまして、おめでとうございます」
 平賀:「こちらこそ。今年もよろしくお願いします」
 敷島:「早速、新たなロボット開発ですか。凄いですね」
 平賀:「幸いにしてメイドは量産体制に入れたので、今度は別の路線を模索しているところです」
 エミリー:「失礼ですが、犬に関してはもう少し躾を厳しくした方がよろしいかと思います」
 平賀:「あ、ああ、あれか。すまない。プロトタイプでね、見た目をホワイトシェパードにしてみたら、中身まで獰猛になってしまった。もちろん、不審者以外にはおとなしいヤツだよ」
 敷島:(エミリーは不審者扱いされたか……)

 平賀の研究室にはクラシックが流れている。
 今はパッヘルベルの“カノン ニ長調”だ。
 PCから流しているらしく、平賀はそれを止めた。

 平賀:「じゃあ、どうぞ。部屋を移動しましょう」
 敷島:「はい」

 応接間に移動する。

 七海:「コーヒーと紅茶、紅ヒーのどれになさいますか?」
 敷島:「まだ紅ヒー出しとるんかい。いや、コーヒーで」
 七海:「メイド長は何になさいますか?」
 エミリー:「その呼称はやめろ。というか、今じゃお前がハウスキーパー(メイド長)だろ」
 七海:「そうでした。すぐにお持ち致します」

 七海は敷島と平賀にコーヒー、エミリーにはE缶を持って来た。
 E缶とは、まあ、とあるロボットアクションゲームに登場する回復アイテムのことである。
 DCJではしっかり本当に回復薬として作ってしまった。
 エンジンオイルなどをベースにして作ったようだが、もちろんその経緯や製法については企業秘密とのこと。

 平賀:「ていうかもうお昼ですね。ナツ達が帰って来たら、どこか食べに行きましょう」
 敷島:「そういえば奈津子先生とかいませんね。どうしたんですか?」
 平賀:「買い物に行ってるんですよ。あと、子供達がお年玉もらったんで、それで色々買いに行ったりとか」
 敷島:「おおっ、そうでしたね」

 敷島はポンと手を叩いた。
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“戦う社長の物語” 「黒いロボット対策会議」 1

2018-02-11 21:35:14 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月6日10:00.天候:晴 JR大宮駅]

 大宮駅新幹線改札口を通った敷島とエミリー。

 エミリー:「“はやぶさ”69号は、16番線からです」
 敷島:「そうか。大宮始発の新幹線に乗るのは初めてだ」
 エミリー:「臨時列車のせいか、車内販売は無いようです。予め、飲み物とかはここで購入した方が良さそうです」
 敷島:「そうだな。コーヒーくらい買って行こう」

 エミリーがニューデイズでカップ入りのコーヒーを購入した。
 それを手に普段は列車の来ない臨時ホームに上がる。

〔16番線に停車中の電車は、10時10分発、“はやぶさ”69号、新青森行きです。この電車は途中、仙台、古川、一ノ関、北上、盛岡、八戸に止まります。……〕

 ホームに上がるとエメラルドグリーン(厳密には『常盤グリーン』)の塗装が目立つE5系“はやぶさ”が停車していた。

 エミリー:「9号車です」
 敷島:「分かった」

 車内販売が無いということは、グランクラスでもシートサービスが無いということだ。
 その分料金が安くなっているとは思うのだが、敷島とエミリーが乗ったのはグリーン車の方だ。

 エミリー:「社長でしたらグランクラスにも乗れましたのに……」
 敷島:「いや、いいんだ。グランクラスは、うちの会社が四季エンタープライズ並みに大きくなってからにしよう」

 敷島は進行方向左側の窓側席、エミリーはその隣の通路側席に座った。

〔「ご案内致します。この列車は10時10分発、東北新幹線下り“はやぶさ”69号、新青森行きでございます。全車両指定席で、自由席はありません。お手持ちの指定席特急券をご確認の上、指定の席にお掛けください。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車です。この列車には、車内販売はございません。飲食物等ご希望のお客様は、予め駅での購入をお願い致します。……」〕

 敷島:「それにしても……」

 敷島は手持ちのタブレットを取り出した。

 敷島:「仙台にも黒いロボットが現れただなんて、ちょっと驚きだよ」
 エミリー:「同時多発的に発生しているようですね」
 敷島:「いつどこで、誰が製造したのやら……。本来なら昨日、科学館に現れたヤツのメモリーやデータを調べて判明するはずだったんだが……」
 エミリー:「妹が本当に申し訳ありません」
 敷島:「頭部をシンディが攻撃しやがったせいで、メモリーがブッ壊れてデータが飛んでいたという有り様だ」
 エミリー:「2度とご迷惑をお掛けしないよう、シンディはよく叩き聞かせておきましたので」
 敷島:「いや、言い聞かせてくれればいいんだけどな。ボディは手に入れられたし(シンディがブッ壊したんで、破片と部品の一部だけど)、あとはDCJさんで解析してもらうだけだ」
 エミリー:「仙台では現れても捕獲できなかったのですか」
 敷島:「向こうにはお前達のような無双ロイドがいないからな、どうしようも無い。まだ人間に被害が出ていないだけマシってなもんだ。つまり、お前の任務はその黒いロボットを捕獲することだ。シンディのように、すぐにブッ壊したりしたらダメだぞ?生け捕りだぞ?」
 エミリー:「分かっております。私は妹のようにはいきません」

 エミリーは大きく頷いた。
 そんなことを話しているうちに、ホームからは発車ベルが聞こえて来た。
 本線ホームと比べると、少し音色が低い。

〔16番線から、“はやぶさ”69号、新青森行きが発車致します。次は、仙台に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 3連休初日の臨時列車は、ほぼ満席の状態で大宮駅を発車した。
 敷島も言う珍しい大宮始発の臨時列車が設定されたのは、偏に大宮〜東京間の線路容量の逼迫にある。
 北陸新幹線や北海道新幹線が開通したことで列車本数が増え、特に全路線が集中する大宮以南は過密ダイヤになっている。
 トリビアだが、実は上越新幹線は新宿駅始発という計画だったらしい。
 その為、計画通りに上越新幹線を新宿駅に逃がすか、或いは大宮〜東京間は北陸新幹線と併結させるかの計画が立てられたらしい。
 だが、どちらも頓挫している。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北新幹線“はやぶさ”号、新青森行きです。次は、仙台に止まります。……〕

 敷島:「それにしても、お前達のスキャンにも掛からない連中なんてなぁ……」
 エミリー:「シンディの言う通り、高度なステルス機能を搭載していることは間違い無いようです」
 敷島:「うん。それについては、俺も同意見だ。まさかとは思うが、この列車に乗り込んでいるなんてことは無いよな?」
 エミリー:「それは多分、大丈夫だと思いますが……」
 敷島:「うん、それならいいんだ。どうせ現れてくれるのなら仙台だ。そこでエミリーが最低1機確保する」
 エミリー:「はい」

 新幹線の後を追うように大宮駅地上ホームを通過する宇都宮線の貨物列車。
 そのコンテナ車に積まれている赤紫色のコンテナ。
 どうも行き先は仙台貨物ターミナル駅(旧称、宮城野貨物駅)のようだが、そのコンテナの中に……。

 黒いロボットA:「ザビ?」
 黒いロボットB:「ザビ」
 黒いロボットC:「ザビィ!」

 シンディに破壊されたものとは別の黒いロボット3連星が何故か乗り込んでいた。
 本当に正規な手続きをして『荷物』として運搬されているのか、或いは無賃乗車なのかは分からない。
 ただ確実に言えることは、この列車は高速貨物列車で、これは旅客列車で言う特急に相当する。
 それに乗って、しかも仙台貨物ターミナル駅で降ろされるコンテナに乗っているということは……。

 黒いロボットA:「ザビ?」

 黒いロボットAは照明の無い暗いコンテナの中で、器用にメイドロイドのイラストを描いた。
 それにやんややんやと手を叩くBとC。

 黒いロボットB:「ザビィ!ザビィ!」

 更にAは、今度はエミリーのイラストを描く。

 黒いロボットC:「ザビィ!ザビィ!」

 再びやんややんやと手を叩き、Aの肩をバンバン叩いた。
 決してスペックが低いロボットではないようだが、一体彼らは何の目的で行動しているのだろうか。
 そしてもっと言えることは、機械の者として、本来はエミリーなどのロイドも貨物列車で運搬するのが正式であることだ。
 なまじ人間そっくりに造られているだけに、そこは誰もツッコまない。
 ツッコむのは、金属探知機のある航空だけだ。
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“戦う社長の物語” 「黒いロボット達の行動目的は?」

2018-02-10 19:53:10 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月5日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 DCJ科学館では新年会が行われていた。
 会場は大会議室にて。
 食べ物や飲み物はケータリングで賄っていた。

 敷島:「すいません。部外者の私もお呼ばれしちゃって……」

 すると白髪が目立つ館長の西山は、眼鏡をキラッと光らせた。

 西山:「いいんですよ。いつぞやはKR団の誘拐事件から助けて頂いて、お世話になりましたから。どうぞ、一緒に盛り上がっちゃってください」

 この時、常設展示のロボット達が何かをするわけではない。
 人間達だけでパーッとやるのが、科学館の決まり。
 なので、館内のロボットやロイド達は暇を持て余していた。

 シンディ:「おいで、アルエット。一緒に体洗おう」
 アルエット:「うん!」

 バックヤードにあるシャワー室。
 主に仮眠前や仮眠直後に警備員達が使うことが多いが、まだ夕方で仮眠に入る者などいない。
 むしろ閉館1時間後ということもあって日勤者は帰り支度をしているし、夜勤者は館内外巡回や警備報告書の作成などで忙しい。
 機械警備体制に入ると、セキュリティロボットの警戒レベルも引き上げられる為、人間の警備員であっても館内を自由に動き回れなくなる。
 そうなる前の閉館後巡回であった。
 なので、人間の警備員達が落ち着くまで、セキュリティロボットもヒマなのだ。

 エミリー:「アルエット」

 エミリーは8号機のアルエットに声を掛けた。
 マルチタイプ1号機はエミリー、3号機はシンディで、アルエットは8号機になる。
 オリジナルタイプが7号機のレイチェルまでで、8号機はフルモデルチェンジ(という名のロリ化)になる為、通し番号であるものの、実の姉妹機ではない。
 どちらかというと、従姉妹のような感覚である。

 アルエット:「なぁに?お姉ちゃん」
 エミリー:「服と下着、洗っておく。あなたは水素電池駆動だから、『排尿』するだろう?服が汚れやすい。だから、洗っておく」
 アルエット:「ありがとう」

 水素を使った燃料電池で発電すると、廃水が出る。
 アルエットなどのロイドの場合、より人間に似せる為に、わざわざその排水を排尿行為に見立てて行わせている。
 エミリーやシンディなどのリチウムバッテリー駆動だと、毎日の充電やバッテリーそのものの交換などがあるが、もちろん廃水が発生することはない。
 洗濯室へエミリーが向かい、シャワー室にはシンディとアルエットしかいなくなる。

 マリオ:「……オイ、モウチョットソッチヘ行ケ」
 ルイージ:「駄目ダ、兄サン。コレ以上行クト、俺ガ見エナクナル」

 美女ロイドと美少女ロイドの入浴シーンを出刃亀するバージョン5.0兄弟。
 バージョンシリーズはこの2機が最新機で、一応これでテロ用途としてのバージョンシリーズの開発は終了ということになっている。
 この最新機はそれまでの4.0と違い、体型がスラッとしたスマートなものになり、その動きもより人間らしくなっている。
 AIもこの出刃亀行動から見ても分かる通り、ほとんどロイドと変わらないくらいである。
 つまり、ロボットなのは見た目だけという機種だ。
 世界的なマッドサイエンティスト、ウィリアム・フォレスト博士が設計だけして死亡した為、本来は世に出るロボットではなかった。
 ところが施設から引き取られたアリスがウィリアムの意思を継いで組み立てた為、この世に産声を上げることになった。
 但し、設計図通りに作った試作機はアリスの趣味に合ったデザインでは無く、彼女から見れば機能美だけを追及し、造形美を全く無視した不細工なものだったという。
 その試作機はエミリーと敷島に破壊され、この世には存在していない。
 アリスが独自にアレンジして造形美も意識した設計となり、再び世に出たのがこの出刃亀兄弟なのである。
 1機目が赤く塗装され、2機目が緑色に塗装された為、名前はマリオとルイージと付けられた。
 もちろん、その名の由来は【お察しください】。

 ゴンスケ:「オラッちニモ、見セテケロダス」
 マリオ:「ゴンスケ!?」

 農業用2足歩行ロボット、ゴンスケも現れた。
 科学館では主にイモ類を栽培している。
 収穫したイモは当初、売店での販売が検討されたが、保健所への届け出やら何やらが猥雑だった為、無料配布ということに落ち着いている。

 ルイージ:「オマエ、図々シイゾ」
 ゴンスケ:「ロボットの女神様ト天使様ノ裸体ハソウソウ拝メルモノデハ無ェダス」
 マリオ:「ソレハソウダガ……」

 科学館の3馬鹿ロボット、グググとシンディとアルエットのシャワールームを覗く。
 と、そこへルイージが何かにぶつかった。

 ルイージ:「ア、サーセン」

 ルイージがペコリと頭を下げて、ぶつかった方を見た。
 すると、そこにいたのは……。

 黒いロボットA:「…………」
 黒いロボットB:「ザビ?」
 黒いロボットC:「ザビ」

 一緒にシャワー室を覗き込もうとしていた黒いロボット3連星だった。

 マリオ:「ウォッ!?何デココニ黒イロボット達ガイルンダーッ!?」
 ルイージ:「ココ、錦糸町ジャネェダローガヨ!?」

 バージョン5.0兄弟が驚愕の声を上げていると……。

 シンディ:「……オイ、コラ
 アルエット:「きゃーっ、エッチー!」(´∀`*)
 マリオ:「テイウカバレターッ!!」

 科学館内に爆発音が響いたのは、言うまでもない。

[同日19:00.天候:晴 同科学館]

 敷島:「何だって!?黒いロボットが!?」

 騒ぎを聞きつけた敷島達が駆け付けた。

 アリス:「本当だわ!北海道の時に会ったヤツに……似てるような、何か違うような……?」

 黒いロボット三連星と三馬鹿ロボットは、一緒に拘束されていた。

 西山:「よくやった、シンディ君!すぐにこのロボット達のメモリーやデータを根こそぎ抜き取り、研究部門へ回すんだ!」
 シンディ:「かしこまりました。それさえやれば、あとはコイツらブッ壊していいということですね?」
 西山:「う、うむ。だが、しかし……」

 シンディは右手だけでバキッと骨を鳴らした。
 人間ならバキッと骨の鳴る音だが、ロイドだと金属の音が混じっている。

 マリオ:「チョット待ッテクダサイ、シンディ様!?」
 ルイージ:「セメテ俺達ヲ解放シテカラニシテクダサイ!」
 ゴンスケ:「オ慈悲ヲ〜!女神様〜!オラと女神様ノ間柄デネェッスカ〜」
 シンディ:「じゃかぁしぃ!全員、あの世に行けーい!!」

 再び館内に爆発音とロボット達の絶叫がこだましたという。

 警備隊長:「今日も異常無し!」

 その様子は警備室の監視カメラに映っていたのだが、警備隊長は普通に指差・連呼しただけだった。

 新人警備員:「マジっすか、隊長?これで異常無し?
 隊長:「キミ、これでビビッてたら、ロボット科学館の警備員は務まらないよ?」
 新人:「マジっすか……
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“戦う社長の物語” 「黒いロボット達の行動」

2018-02-07 19:27:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日18:00.天候:晴 東京都墨田区 錦糸町の風俗街]

 バージョン4.0:「サァ〜、イラッシャイマセ、イラッシャイマセ。当店ニハ可愛いセクサロイドが沢山イマスヨ〜」

 かつてはテロロボットとして人類の脅威となり、多くの個体がマルチタイプ達に破壊されたが、残った個体は『心を入れ替え』させられ、一部の個体は人間に引き取られて働いている。
 もちろん、搭載していた銃火器は全て取り外されていた。
 ずんぐりむっくりした体型はある意味愛嬌的で、テロさえしなければ親しみがあるとさえされた。

 バージョン4.0:「エッ?錦糸町デでポン引きヤッテモイイノカッテ?人間ガヤルカラ問題ナノデス。ロボットがヤル分ニハ合法デス。トイウワケデソコノお兄サン、寄ッテッテ〜ナァ?可愛いセクサロイドがドンナプレイでもヤリマッセ〜。ソコノイケテル黒イオ兄サン、オ1ツイカガ〜?」
 黒いロボット:「ザビ?」
 バージョン4.0:「オオッ、オ仲間デシタカ〜。初メテ見ル機種デスナ。新型サンデスカ〜?」
 黒いロボット:「ザビィ!」

 黒いロボット、バージョン4.0の頭部を引きちぎった。

 その頃、錦糸町駅に向かう都営バスの車内に井辺が乗っていた。
 井辺は錦糸町のマンションに住んでおり、豊洲まで都営バスで通っている。

 萌:「今日も井辺さんと一緒に過ごせて幸せです〜」
 井辺:「いいですか?あなたは科学館さん専属なのです。科学館さんがオープンする日には、そちらに戻るんですよ」
 萌:「はーい」

 萌は唯一の妖精型ロイドで、東北地方にあったKR団の秘密研究所を井辺と脱出したことからある種の親近感が芽生え、井辺を1番慕っている。

 井辺:「今日は早く帰れたので、お惣菜でも買って帰りますか」
 萌:「そうしましょ〜」

 ガンッ!(バスのフロントガラスに何かが当たった)
 ギギィィッ!!(バスが急ブレーキ!)

 井辺:「うわっ!な、何だ?」

 フロントガラスには蜘蛛の巣状のヒビが入っている。

 萌:「駅前が何か騒がしいよ!?」
 井辺:「何かあったんですかね?」
 萌:「ボク、見てくる!」

 萌はバスの小さな窓から外に出ると、まずはバスにぶつかった何かを探した。

 萌:「こ、これは!?」

 それはバージョン4.0の頭だった。

 萌:「井辺さん、バージョン4.0の頭がバスにぶつかったみたいだよ!?」
 井辺:「何ですって!?……一瞬またバージョン達がテロ活動を始めたのかと思いましたが、だったらそいつが頭だけで飛んで来るはずがないですね」
 萌:「そ、そうだよね」
 井辺:「と、とにかく社長に連絡です。社長も帰宅中のはずですから」

 井辺は自分のスマホを出した。

[同日同時刻 天候:晴 JR東京駅]

 敷島は井辺から電話を受けた。

 敷島:「えっ、バージョン4.0が?……分かった。萌の調査を待とう」

 新幹線のデッキで電話していた敷島。

 敷島:「バージョン4.0の頭部を胴体から引き離すことのできるヤツ……って言ったら、マルチタイプしかいないよなぁ……?」

 敷島は首を傾げて座席に戻った。

 シンディ:「どうかしましたか?」
 敷島:「井辺君からだ。錦糸町で今、大変なことが起きてるらしい」
 シンディ:「大変なこと?」
 敷島:「井辺君の乗ったバスに、バージョンがぶつかってきたらしい」
 シンディ:「!」
 敷島:「頭だけ」
 シンディ:「頭だけ!?それはどういう意味ですか?」
 敷島:「俺もよくは分からんのだが、自爆したってことは考えられないかな?」
 シンディ:「今のあいつらには、火薬は詰まれていないはずですけど?」
 敷島:「だよなぁ……」

 次の連絡があるまでに、帰宅の途に就いている敷島達を乗せた“なすの”265号は東京駅を発車した。

[同日19:00.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島:「ただいまァ」
 アリス:「お帰り。東京じゃ大変みたいだったわね」
 敷島:「大変?」
 アリス:「黒いロボットのことよ。北海道にいた奴らでしょ?」
 敷島:「あっ、そうだったな」
 エミリー:「お帰りなさいませ」
 敷島:「おっ、エミリー。オーバーホールは無事に終わったみたいだな」
 エミリー:「おかげさまで。今、とても快調です」
 敷島:「それは良かった」
 エミリー:「御夕食の準備が整っておりますので」
 敷島:「うん、分かった」

 敷島が着替えてからダイニングに行くと、アリス達がテレビに釘付けになっていた。

 敷島:「どうした?」
 アリス:「これ、北海道にいたヤツと同じ種類!?」
 敷島:「ええっ?」

 テレビでは錦糸町で起きた事件について報道していた。
 防犯カメラに映っていたという黒いロボットの凶行について公開されていた。
 ポン引きしていたバージョン4.0の頭部を引きちぎり、それを遠くに向かってポーンと投げた黒いロボット。
 どうやらそれが井辺の乗った路線バスに当たったようである。
 すると、どこからともなく黒いロボットが5機ほど現れて、セクサロイドの風俗店に突入していった。
 そして、店で働いていたセクサロイドを抱えて連れ出していた。
 サービス中であってもお構いなく連れ出したのか、真っ裸のロイドや客の人間も一緒に連れ出されていた。
 この黒いロボット、そんな真っ裸の人間を外に放り出すと、わざわざ指さして嘲笑するような素振りをするほどの緻密な動きをしていた。

 敷島:「ほ、北海道にいた凶暴なヤツと違う!」
 アリス:「こいつら、何がしたかったんだろう?」
 エミリー:「やってることは盗賊団と変わりませんね」
 シンディ:「でも、また画面の外に消えたわ」

〔「不思議なことにこの黒いロボット集団、いつの間にか消えてしまいました。警察では……」〕

 シンディ:「高度なステルス機能を搭載しているんだと思います」
 敷島:「あれは一体誰の……何の命令で動いてるんだろう?」

 セクサロイドはメイドロイドの亜種で、人間に対して性的奉仕目的で製造されたガイノイドのことである。
 その為、概してガイノイド(女性型アンドロイド)がとても多い。
 ロイドなら人間ではない為に何の規制の対象にもなっておらず、それこそロリ専用の個体もあるという。

 敷島:「あのセクサロイドのGPSを使って捜索できないか?」
 アリス:「それは無理よ。メイドロイドでさえ、GPSはオプションなんだから。ましてや裏産業で稼働するセクサロイドに、わざわざそんなオプション付けるとは思わないね」
 敷島:「うーむ、そうか……」

 対策会議のメンバーで襲われていないのは敷島だけ。
 鷲田と村中を始め、職務上、警視庁の庁内にいた者も無事だった。
 車で移動していた者だけが襲われたのだ。
 この時ばかりは、地下鉄移動を選んだ敷島の英断と言えよう。
コメント (4)
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