[10月8日13:00.天候:晴 豪華客船“正信号”船内図書館・蔵書室]
私はリサがある場所に見入っているのに気がついた。
話し掛けようとすると、先に高橋が話し掛けて来た。
高橋:「先生、これ何でしょうね?」
それは床に落ちていた鍵。
拾い上げてみると、それは何だか見覚えがあった。
善場:「それは客室の鍵ですね」
とのこと。
それは重要ではない。
何故ならBSAA隊員達は既にマスターキーを手に入れている為、客室の鍵なら基本的に全て開けられるからだ。
実際、この船における顕正号では私達が泊まっていた部屋の鍵が開いていたのも、彼らがマスターキーで開けたからである。
高野:「先生がお持ちのと同じカードキーもありますね」
机の上にはカードキーが置いてあり、それは今まで黄色い金庫やこの部屋のドアを開ける時に必要なものと酷似していた。
善場:「これはこちらでお預かりします」
もし私が持っているのと同じカードキーなのだとしたら、もう私の出る幕は無いということだ。
しかし、リサが見つめていたのは違った。
愛原:「リサ、どうした?」
リサ:「何だか、私に似てる……」
それは壁に掛けられた肖像画。
リサは自分に似ていると言ったが、パッと見、私はそう見えなかった。
年恰好は似ているだろうが。
黒髪の美少女がモナ・リザ風に座って微笑を浮かべている絵。
髪はセミロングがウェーブが掛かっている。
善場:「これはリサ・トレヴァーですよ!」
善場さんが驚いたように言った。
愛原:「ええっ!?」
善場:「昔、オリジナルの『リサ・トレヴァー』がアメリカのアンブレラの施設にいた頃、これをステンドグラスにしたものが発見されました。まさか、そのオリジナルの絵画がここにあったなんて……」
善場さんの話によると、アンブレラに捕まる前、まだ普通の少女だった頃を描いたものであるとのことだ。
こんないたいけな少女を捕まえて実験に使うとは、何たる非道!
しかし、私が他に気になった絵もあった。
愛原:「他にも少女を描いた絵がありますが、あれは何でしょう?」
善場:「ナタリア・コルダとエヴリン……!」
愛原:「こちらも化け物か何かの化身ですか?」
善場:「いえ。ナタリア・コルダ……今はBSAA北米支部のバリー・バートン顧問に引き取られているので、ナタリア・バートンでしょうか。こちらは特に心配ありません。ただ、エヴリンは……」
善場さんが言い終わらぬうちに、また電話が掛かって来た。
善場:「すいません」
愛原:「いえ……」
善場さんが電話に出ている間、リサが言った。
リサ:「エヴリンは家族が欲しくて暴走したコだよ」
愛原:「えっ?」
高橋:「正確には最初からラスボスとして作られた、人型クリーチャーですよ」
愛原:「そうなのか。詳しいな」
高橋:「ゲームに出てきましたから」
愛原:「ゲームって……」
もはや何が何だか分からん。
善場:「失礼しました。上司命令で、愛原さん達は速やかにここを離れるようにとのことです。御協力ありがとうございました」
愛原:「一体何が?」
善場:「安全の為です。この船には、まだ他にもBOWが潜んでいる恐れがあります」
高橋:「一応、こっちには『BOW発見機』があるけどな」
高橋はリサを見て言った。
善場:「そういう問題ではありません」
愛原:「そりゃそうだ。さすがに霧生市のバイオハザードの再来は勘弁さ。さっきのウーズみたいな新種のクリーチャーがやってこられたら、さすがにかなわんよ」
高橋:「はあ……」
高野:「『1匹出たら30匹』って言うしね」
と、高野君は高野君で某害虫みたいなことを言う。
善場:「それでは引き上げましょう」
私達は船の外へと向かった。
愛原:「それにしても、オリジナルのリサ・トレヴァーの肖像画がどうしてあの部屋にあったんだろうな?」
高野:「アンブレラと何らかの関わりのある船なんでしょうね」
善場:「現在、アンブレラは『悪の製薬会社』ではなく、『民間軍事会社』として再スタートしています」
愛原:「存在してんの!?」
善場:「はい。但し、日本に支部はございません。国民感情もありますので」
高橋:「民間軍事会社かよ。そりゃまた何でだ?」
善場:「生き残りの有志が、『製薬企業時代に犯した罪を償う為、バイオテロに立ち向かう』という目的で設立したそうです」
高野:「自分達の蒔いた種を、自分達で摘みに行くってことか」
善場:「アンブレラが開発したウィルスやBOW、或いはそれらの製造方法が世界各地のテロ組織に渡ってしまったので、その罪滅ぼしの為ということです」
高橋:「その割にゲームん中じゃ、クリスにケツ拭かせてたけどな」
リサ:「私もやったー」
高橋:「お前、そこまで行ったのかよ!?」
BOW、BOWを倒すゲームに興じるの図を想像して、私は吹いてしまった。
善場:「今回ご協力頂きました件について、後ほど報酬の話をさせて頂きます」
愛原:「了解しました」
まあ、口止め料も含まれているだろうな、その中に。
ゲームや映画だと外に出られず、そこでまた何か非常事態でも発生して、それに対処させられるような展開が予想されるところだが、実際はそんなことは無かった。
[同日13:30.天候:曇 神奈川県横浜市中区 横浜港大さん橋]
船を降りると、私達はすぐに迎えの車に乗り込んだ。
愛原:「このまま事務所まで送ってくれるんですか?」
善場:「そうですねぇ……。それもいいんですけど、どこか寄りたい所があればそこで降ろしますよ?」
高野:「それじゃ、桜木町駅付近で降ろしてもらうのはどうかしら?」
愛原:「えっ?」
高野:「せっかく横浜まで来たんだし、少し遊んでから帰りましょうよ。なかなか滅多に来ない所じゃないですか」
愛原:「まあ、そうだな。もうお昼時も過ぎたし、どこかでランチでもしたい」
善場:「了解しました。それなら、ランドマークタワーの前にしましょうか。テナントで、色々とお店も入っていることですし」
愛原:「すいません。じゃあ、そこでお願いします」
私達を乗せた車は桜木町の横浜ランドマークタワーへと出発した。
立入禁止のゲートを過ぎると、マスコミ達が一斉に車に向かってシャッターを切ってくる。
愛原:「マスコミが……」
善場:「船内での取材が中止されたので、唯一民間人で調査が許された愛原さん達をせめて……ということみたいですね」
愛原:「後でうちの事務所とかに来るかなぁ……?」
高橋:「俺がこれで追い払いますよ?」

愛原:「やめなさい。別の意味で取材される」
善場:「愛原さん達への銃の所持許可は、もう少し先になりそうです。取りあえず高橋さんのそれは黙認ということで。ですので、あまり他人に見せびらかしませんように」
愛原:「ええ、ええ。分かってますよ。高橋には私からよく言っておきますので」
高野:「バカだねぇ……」
私はリサがある場所に見入っているのに気がついた。
話し掛けようとすると、先に高橋が話し掛けて来た。
高橋:「先生、これ何でしょうね?」
それは床に落ちていた鍵。
拾い上げてみると、それは何だか見覚えがあった。
善場:「それは客室の鍵ですね」
とのこと。
それは重要ではない。
何故ならBSAA隊員達は既にマスターキーを手に入れている為、客室の鍵なら基本的に全て開けられるからだ。
実際、この船における顕正号では私達が泊まっていた部屋の鍵が開いていたのも、彼らがマスターキーで開けたからである。
高野:「先生がお持ちのと同じカードキーもありますね」
机の上にはカードキーが置いてあり、それは今まで黄色い金庫やこの部屋のドアを開ける時に必要なものと酷似していた。
善場:「これはこちらでお預かりします」
もし私が持っているのと同じカードキーなのだとしたら、もう私の出る幕は無いということだ。
しかし、リサが見つめていたのは違った。
愛原:「リサ、どうした?」
リサ:「何だか、私に似てる……」
それは壁に掛けられた肖像画。
リサは自分に似ていると言ったが、パッと見、私はそう見えなかった。
年恰好は似ているだろうが。
黒髪の美少女がモナ・リザ風に座って微笑を浮かべている絵。
髪はセミロングがウェーブが掛かっている。
善場:「これはリサ・トレヴァーですよ!」
善場さんが驚いたように言った。
愛原:「ええっ!?」
善場:「昔、オリジナルの『リサ・トレヴァー』がアメリカのアンブレラの施設にいた頃、これをステンドグラスにしたものが発見されました。まさか、そのオリジナルの絵画がここにあったなんて……」
善場さんの話によると、アンブレラに捕まる前、まだ普通の少女だった頃を描いたものであるとのことだ。
こんないたいけな少女を捕まえて実験に使うとは、何たる非道!
しかし、私が他に気になった絵もあった。
愛原:「他にも少女を描いた絵がありますが、あれは何でしょう?」
善場:「ナタリア・コルダとエヴリン……!」
愛原:「こちらも化け物か何かの化身ですか?」
善場:「いえ。ナタリア・コルダ……今はBSAA北米支部のバリー・バートン顧問に引き取られているので、ナタリア・バートンでしょうか。こちらは特に心配ありません。ただ、エヴリンは……」
善場さんが言い終わらぬうちに、また電話が掛かって来た。
善場:「すいません」
愛原:「いえ……」
善場さんが電話に出ている間、リサが言った。
リサ:「エヴリンは家族が欲しくて暴走したコだよ」
愛原:「えっ?」
高橋:「正確には最初からラスボスとして作られた、人型クリーチャーですよ」
愛原:「そうなのか。詳しいな」
高橋:「ゲームに出てきましたから」
愛原:「ゲームって……」
もはや何が何だか分からん。
善場:「失礼しました。上司命令で、愛原さん達は速やかにここを離れるようにとのことです。御協力ありがとうございました」
愛原:「一体何が?」
善場:「安全の為です。この船には、まだ他にもBOWが潜んでいる恐れがあります」
高橋:「一応、こっちには『BOW発見機』があるけどな」
高橋はリサを見て言った。
善場:「そういう問題ではありません」
愛原:「そりゃそうだ。さすがに霧生市のバイオハザードの再来は勘弁さ。さっきのウーズみたいな新種のクリーチャーがやってこられたら、さすがにかなわんよ」
高橋:「はあ……」
高野:「『1匹出たら30匹』って言うしね」
と、高野君は高野君で某害虫みたいなことを言う。
善場:「それでは引き上げましょう」
私達は船の外へと向かった。
愛原:「それにしても、オリジナルのリサ・トレヴァーの肖像画がどうしてあの部屋にあったんだろうな?」
高野:「アンブレラと何らかの関わりのある船なんでしょうね」
善場:「現在、アンブレラは『悪の製薬会社』ではなく、『民間軍事会社』として再スタートしています」
愛原:「存在してんの!?」
善場:「はい。但し、日本に支部はございません。国民感情もありますので」
高橋:「民間軍事会社かよ。そりゃまた何でだ?」
善場:「生き残りの有志が、『製薬企業時代に犯した罪を償う為、バイオテロに立ち向かう』という目的で設立したそうです」
高野:「自分達の蒔いた種を、自分達で摘みに行くってことか」
善場:「アンブレラが開発したウィルスやBOW、或いはそれらの製造方法が世界各地のテロ組織に渡ってしまったので、その罪滅ぼしの為ということです」
高橋:「その割にゲームん中じゃ、クリスにケツ拭かせてたけどな」
リサ:「私もやったー」
高橋:「お前、そこまで行ったのかよ!?」
BOW、BOWを倒すゲームに興じるの図を想像して、私は吹いてしまった。
善場:「今回ご協力頂きました件について、後ほど報酬の話をさせて頂きます」
愛原:「了解しました」
まあ、口止め料も含まれているだろうな、その中に。
ゲームや映画だと外に出られず、そこでまた何か非常事態でも発生して、それに対処させられるような展開が予想されるところだが、実際はそんなことは無かった。
[同日13:30.天候:曇 神奈川県横浜市中区 横浜港大さん橋]
船を降りると、私達はすぐに迎えの車に乗り込んだ。
愛原:「このまま事務所まで送ってくれるんですか?」
善場:「そうですねぇ……。それもいいんですけど、どこか寄りたい所があればそこで降ろしますよ?」
高野:「それじゃ、桜木町駅付近で降ろしてもらうのはどうかしら?」
愛原:「えっ?」
高野:「せっかく横浜まで来たんだし、少し遊んでから帰りましょうよ。なかなか滅多に来ない所じゃないですか」
愛原:「まあ、そうだな。もうお昼時も過ぎたし、どこかでランチでもしたい」
善場:「了解しました。それなら、ランドマークタワーの前にしましょうか。テナントで、色々とお店も入っていることですし」
愛原:「すいません。じゃあ、そこでお願いします」
私達を乗せた車は桜木町の横浜ランドマークタワーへと出発した。
立入禁止のゲートを過ぎると、マスコミ達が一斉に車に向かってシャッターを切ってくる。
愛原:「マスコミが……」
善場:「船内での取材が中止されたので、唯一民間人で調査が許された愛原さん達をせめて……ということみたいですね」
愛原:「後でうちの事務所とかに来るかなぁ……?」
高橋:「俺がこれで追い払いますよ?」

愛原:「やめなさい。別の意味で取材される」
善場:「愛原さん達への銃の所持許可は、もう少し先になりそうです。取りあえず高橋さんのそれは黙認ということで。ですので、あまり他人に見せびらかしませんように」
愛原:「ええ、ええ。分かってますよ。高橋には私からよく言っておきますので」
高野:「バカだねぇ……」