冨樫亨さんは、「童子」秋田句会の世話役をしてくださっている、冨樫風花さんのお父様です。昨年風花さん経由でご恵贈いただき、少しずつ拝読していたのですが、このお正月一気に読み終えました。
私もかつて、短歌も作っていたことがあるのですが、似ているようで、全く違う世界であると、改めて感じました。でも、言葉を大事に紡ぐという点は同じ。
冨樫さんの短歌は、日々の暮らしを大切にされている様子に心温かくなります。
特に好きだったのは、
巨岩のかげに身を寄せ聴きゐたり高原をゆく疾風の音
編み物に余念なき妻の背を見をりハンマースホイの絵を見るごとく
命終のまだ見えざればある時は夕べをまちて街に酒汲む
黒揚羽庭に入りきてただよへば今朝みし夢を妻はかたりぬ
いち日の雪降るさまを書き終へて余白の多き日記を閉じぬ
ペンキ屋と板金工がそれぞれの思ひを込めて屋根雪下ろす
衰ふる五感にちひさき火を点せ庭に咲き群るる水引草の花
こうして書き写すと、漢字と仮名の表記に心配ってらっしゃるのがわかります。また奥様やご自宅の庭を慈しんでいらっしゃるのも伝わってきます。
風花さんのお姉様も、俳人です。お父様は短歌で、娘さんお二人は俳句というのも、おもしろい。
どうぞ、これからも、佳き歌を作り続けていただきたいと願っております。