fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

お知らせ・防備録。
記事および画像の無断転用はお断りいたします

Information

『アゲイン アゲイン』(あかね書房)『わくわくもりのはいくえん はる おともだちできるかな』『みちのく山のゆなな』(国土社)『ファミリーマップ』、エンタメシリーズ『家守神』1~4巻、『おはようの声』幼年童話『ヘビくんブランコくん』『オンチの葉っぱららららら♪』、短編集『友だちの木』・歴史物語『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』他、好評発売中です。各種ご依頼は、左側のメッセージからお願いいたします。    

『お笑い芸人 なんでやねーん!』(安田夏菜作・)講談社

2018年01月21日 | 本の紹介
              

 小学校3年生は、まさに本ばなれをしてしまう過度期です。幼稚園までは絵本がまわりにたくさんあって、お母さんやいろんな人が読んでくれます。小学校に入って低学年もまだその時期が残っている。でも、だんだんとゲームが楽しくなり、自分で本を読もうにも、どれがいいのかよくわからない。
 こんな本は、きっとそんな時期の子たちが、大喜びで読むでしょう。

 なにしろ、大好きなお笑い芸人の話。

 良平は小学3年。
 冒頭、給食前の手洗いのシーンで、ひたすらまじめに手を洗っていると、後ろからバーンと背中を叩かれ、手あらい場に顔をつっこみそうになります。そしてお笑い芸人を両親に持つ拓斗と、まさにボケツッコミのやりとりが始まります。

 シリーズ「おしごとのおはなし」の一冊なので、お笑い芸人になるためには、というのが巻末に載ってもいます。ほかには、看護師、サッカー選手、花屋さん、パティシエなどなど既刊、そしてこれからも発売になるようです。
 中学年向けなのでしょうが、あっという間に読める分量というのもいいです。

 安田さんは、落語をきっちり学んでいらっしゃる方。『あしたも、さんかく 毎日が落語日和』という本も書いていらっしゃいます。そして大阪在住。まさにどんぴしゃです。大阪弁も、自在。

 私は、拓斗の両親が二人に語る言葉に、胸を打たれました。

 芸人は、一生努力や。
「せやな。毎日考えて、毎日工夫して、もっともっと成長していこな!」

「マジメで、がまん強くないと、この仕事はできへんで。」


 これは、芸人に限ったことではありません。でも、傍目では楽しそうにやっている芸人もまた、そうだということ。
 きっと安田さんも。
 私もまた。

 ということで、実は3年生主人公の物語に難渋していた私は、きのうからこの一冊をすべて書き写しました。拓斗のお父さんも言っています。

 芸はうまい人を、マネすることから始まるんや。マネをすんのも、勉強のうちや。  

 そして、ふうん。なるほど、これは原稿用紙換算すると、○○枚なんだな。と。(教えない)
 これから、起承転結など、ちょっと分析したり、勉強させていただきます! 
 
 なんでやねーん! 

 ところで私がお仕事シリーズを書くとしたら、何を選ぶかなあ。俳人じゃあ、仕事にできてる人はほんの一握りだしなあ。保育士? 本屋? 動物園の人? 声優? なんて思い浮かびますが、どれを書くにしても、取材しないと無理ですね。きっと安田さんも、他の作家さんもそうやって書かれたのでしょう。

『オオカミのお札(一)カヨが聞いた声』の書評(「季節風」133号)

2018年01月21日 | 自作紹介
            

 森くま堂さんが、「神話のはじまり」として、1巻「カヨが聞いた声」の書評を書いてくださいました。
 全てを書きたいのですが、そうもいかないので、一部分だけ。

 神にたよらなければならないほど怖ろしい物に対峙したとき、カヨは自分にある恐ろしい物を自覚する。この巻は二巻、三巻へと続くはじまりの書である。
 人々の喜怒哀楽、信仰、襲いかかる大きな力などが折り重なる長い時、時代時代の光と影が巧みに織り込まれた分厚い緞通、その最初の糸がことんと織られた瞬間に、読者は立ち会うことになる。


 森くま堂さんの考察は、土偶の一説にも及び、「神話とは過去を記すと同時に未来を強く思う物語である。現代の混迷を、重層的に過去を描くことで、おおぎやなぎは未来への夢を開こうとしているとも考えられる」と。

 これは、『オオカミのお札』を書いていたときは意識していなかったけれど、去年から今年にかけて書いていた別作品で、悩んでいたことです。深層意識にはあったのかも。森くま堂さん、すごい。
ありがとうございました!!

 また、私は、戸森しるこさんの『理科準備室のヴィーナス』の書評を書かせていただきました。タイトルは、「危ういベクトルに、翻弄される」。

 今号も熱く、そして厚く、昨年の大会推薦作及び投稿作品が掲載されています。そして、厳しい作品評も。これは、斜め読みなんて絶対できない。しっかり読んで、考えます。