2005年には、わらべ賞大賞をいただきました。
「箪笥」
霾(つちふる)や空ろな家に鍵をかけ
麗らかや絵だけで食うてゆけぬちふ
引越しの荷にものの芽のふたつみつ
たんぽぽに箪笥二棹捨てにけり
まつさきに祠参りや花馬酔木(はなあしび)
東(ひんがし)に鳥居傾ぎて暖かし
武蔵野の山の名残りも笑ひけり
山吹に一吠えだけや裏の犬
春暑し錆てんてんと移植鏝
くたぶれて囀りに身をまかせけり
朝粥の匙の中なる朧かな
蕗味噌にけふ何曜日なりしかと
つばくらめ合鍵三つ拵へし
蓬(よもぎ)摘む大字小字つくところ
蝌蚪(かと)の紐池半分を覆ひけり
いつまでも岸を離れず花筏(はないかだ)
茎立(くくだち)や砥石はなだらかに凹み
椿落ち長き雌蕊の残りけり
まだだれも遊びに来ない蝶々かな
つぎつぎと春の灯を点けにけり
今の家に引っ越してきたときのことを作った一連の句です。こうして読むと甘さがかいま見えますが、主宰、副主宰、編集長の3者による総合点で大賞をいただきました。
考えてみると、《大賞》というのは、児童文学も合わせても、これだけです。大賞を取ることの大変さを思うと、かけがいのない受賞でした。写真はうちの南側にある鎮守の森(?)と祠の後ろ姿。 こんなのも玄関に(これは今年現れた〈かぶとむし〉……いちおう東京です。)