講談社 (すべての母に捧げます)とあります
初出は2007年です。テレビドラマ化されたのが数年前、そのときに原作を読みたいと思いつつ、今にいたっていました。薬局の待合室にあり、パラパラとめくって、アマゾンで中古を買いました。連続ドラマになった部分は、海容の2冊分。昨年、絆も単発でドラマ化されたようですが、見ていません。
ネタバレはもうオーケーの時期ですよね。小学一年生の男の子が殺害され、犯人は別の小学校に通う六年生の男の子(ドラマでは5年生だった?)。その両方の家族の苦悩が見事に描かれています。もちろん加害者となった男の子も。殺害された子も含めて、見事にそれぞれが描かれていて、感心しました。いや、こんなさめた感じではなく、それぞれの立場になって感情移入できるのです。(*ここが大事)
ラスト近くで、被害者の少年の母は、「あなたと私は加害者の親、被害者の親です。でも『嘆き悲しむ親』という同じ姿を鏡に映しているのではないか」と手紙を書きます。それを読んだ加害者の少年の母は、「この人が私の気持ちを一番理解してくれるなんて」と泣き崩れます。この象徴的なシーンが見事でした。(*こういうシーンがひとつあるかないかで、作品の印象が違ってくるんだなあと)
その後、加害者の少年には弟が生まれます。その弟の視点で描かれたのが、「絆」編の二冊です。たぶん「海容」だけでは、やはりその後被害者とそのと家族がどうなったか、読者は知りたいと思います。それに対しては、答えが出されたのだなと思う2冊。ただ独立した作品としては「海容」には及びません。(←えらそーにね)加害者の家族は、こんなにも追い詰められるのか、調べられ、傷ついてしまうのか? という疑問がひとつ。あとは、残念ながら絵の問題として、加害者だった少年は成長して大人になり、けっこうな年になるのですが、その絵がマズイ。彼の一生が、悔恨の生き地獄のようなものというのはいたしかたないのですが、救われない。ただひとつの救いが弟の存在なのでしょうが。
ドラマでは、加害者の少年の母を稲森いずみが、父を山本太郎が、被害者の少年の父は佐野史郎が演じていましたね。被害者の少年の母は申し訳ないけど役者さんのお名前は知りません、でもとてもよかった。映像が今でもくっきりと思い浮かぶ出色のドラマでした。
(かっこ内のつぶやきは、自作への自戒でした)