うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

ねこの一生

2017年10月16日 | きくの事

暇だ。

きくが居ないと、こんなに暇なのか・・・

 

おはようございます。

取り急ぎの報告で、皆さまには驚かせてしまい、

申し訳ありませんでした。

今日は、じーっくり長ーい記事で、ご報告です。

忙しい週初めに、恐縮ですが、

どうぞ、お時間のある時にでも、

お付き合いいただければ、幸いでございます。

 

14日金曜日、

その一週間ほど前だろうか。

母さんから、新たなニット作品が届いた。

きく用の服と、ベッドだ。

服はとりあえず、おたまに着せてみて、

ベッドは、きくのお部屋に置いてみた。

元々慎重な猫だから、すぐには入らない。

ついに入ったのが、その金曜日だった。

 

15日土曜日の朝、

きくの様子が、急変していたので、

かかりつけの動物病院へ行った。

朝イチを狙ったが、

すでに、3組の患者さんが待っていた。

 

この動物病院は、

お世辞にも大きくて立派な作りとは言い難く、

よく言えば、誰が来ても親しみやすいと思える空間だ。

小さな病院だから、診察室と待ち合い室の距離が近く、

診察室の声が丸聞こえだから、

待っている間だって、退屈はしない。

 

この日の一番目の患者さんは、

一昨日保護された、生後3~4か月のメス猫だった。

待ち合い室でキャリーケースを覗かせてもらうと、

そこには、オドオドしている、可愛い三毛猫が居た。

その猫を連れてきた女性の旦那さんが、

意を決して、なんとか捕まえたそうだ。

良かったね。そう話していると、

診察室から、院長の声がして、いよいよ診察開始だ。

と、その数秒後、

「あっ、逃げた!」という飼い主さんの声がして、

その直後、ドッシャーンガラガラガラー!

そして「網、ねえ、網を持ってきてー」という叫び声や、

戸がドンドンと震えたり、

とにかく、尋常じゃないドタバタが伝わってきた。

そして、看護師さんの

「捕ったー!」という雄たけびに、院長が、

「うん、元気だね。この子、すごい元気。」という

視診の診断が下された。

「アッハッハッハ、確かに元気ですよね」と飼い主さんも、

息を切らせながら、笑っていた。

良かったね。と、色々ひっくるめて、そう呟いた。

 

2番目の患者さんは、待合室でも、

リードを付けてウロウロしている、キジトラのメス猫さん。

数か月前に捨てられていたのを保護して、

今日は、避妊手術の抜糸だそうだ。

良かったね。そう猫に話しかけると、

飼い主さんは、「もう元気過ぎて、家がズタズタなの」と笑う。

さぁ、いよいよ診察室で抜糸が始まった。

ギャーーーギャーーーーワオーーーーーン

ウギャーーーグーーーギャオーーーー・・・・

待ち合い室で待っている飼い主さんは、

手を叩いで笑いながら、

「まぁ、大げさな子やね。本当に、元気が良すぎる子やね。」

ところが、たった数分で終了して、出てきた猫さんは、

どこ吹く風のご機嫌さんだった。

良かったね。また、そう話しかけた。

すると今度は、

きくの入ったキャリーバッグを覗き込んできた。

この子もね、昔は、あなたみたいに、元気で威勢のいい女の子だったのよ。

そう、こっそり教えた。

 

3番目は、大きな黒猫さんだった。

男の子?と聞くと、

「女の子なの。すごい強くて、爪も切らせてくんないんだよぉ」と

飼い主さんは、困り顔だ。

看護師さんが慣れた風に、診察室へ連れて行くと、

ウウウウウ~・・・・

シャーーー!シャーーーー!!

「ねっ、ほんと、凄いでしょ?!」と、

待ち合い室の飼い主さんは、やっぱり困り顔だったが、

戻ってきた黒猫さんに、優しい笑顔で、

「良かったねぇ、偉かったね。」と、笑顔いっぱいだった。

 

そして、ようやく、我が家のきくさんの番だ。

ある日、被毛の違いに気付いた。

見た目は元気そうで食欲もあったが、注視していたところ、

この日の朝、一気に様子が変わった。

起き上がらない。

瞳に輝きが無く、瞳孔が開いたまま。

7月、体調を崩した時と、同じ状態だった。

また、きたか!と、今回はきくに聞くまでもなく、

病院へ走ったという訳だ。

 

検査結果は、7月の時と、ほぼ同じだった。

肝リピドーシスの状態。

原因は不明。

投薬と強制給仕の再開をする事となる。

 

私は家に帰って、倒れ込む、きくを撫ぜながら、

動物病院での事を振り返った。

すると、あれは、まるで、

一匹の猫が辿る、一生のストーリーのようだと気付いて、

なぜだか、暖かい涙が流れた。

 

そして、今回は、こう思った。

食べたければ、食べさせ、

食べたくなければ、食べさせず、

飲みたければ、飲ませ、

飲みたくなければ、飲ませず、

諦める訳でもなく、

願いを乗せる訳でもなく、

ただ、きくのやりたいように、やらせてやろうと。

 

その日の夜、

薬を混ぜたご飯を、注入器に詰めて、きくの口に入れた。

7月のように、怒りながら、がむしゃらに飲み込むかと思いきや、

なかなか、喉を通らない様子だったから、

薬が混ざっている最初の一指しだけで、給仕を止めた。

いつもなら、夜はきくとの時間を小一時間とって、

きくが落ち着いて寝に入ったら、

おやすみと声を掛けて退室するのだが、

この日はそのまま一緒に寝た。

 

15日日曜日の朝、

目覚めてすぐ、トイレに入って用を足す姿を見て、

私は、ちょっと薬が効いてきたかな?と思った。

台所へ向かって、他に猫達のご飯をやり、

きくには、後で一緒に食べるぞと声を掛けに行ったら、

ベッドの横に寝転がっていた。

よく見る光景だった。

 

6時頃、

そろそろきくのご飯をやろうかと思い、

きくの部屋を覗いてみると、

今度は、きくは青いベッドに寝ていた。

母さんベッドではなく、使い古しのベッドに。

寝てるのか?

ご飯、作ってくるぞ!

そう声を掛けて、台所へ戻った。

 

6時半を過ぎていただろうか、

きくの元へ行ったら、

きくは、もう動かなくなっていた。

まるで、静かに寝ているようで、

でも、もう動かなかった。

 

嘘だろ、きく?

ごめん、ごめんな、きく。

独りで逝かせちゃって、ごめん・・・

その言葉しか、出せなかった。

 

その後、

母さんの服を着せて、白い菊と黄色の菊を添えて、

霊園へと向かった。

驚くほど、きくにピッタリだった。

 

15年前、スーパーの店頭で、

小さな女の子から、譲り受けた、美しい三毛猫。

それがきくだった。

あれ以来、私は、何度きくに謝っただろう。

 

至らない飼い主と、気難しい三毛猫は、

いつも、騙し合い無しの、真剣勝負だった。

真剣に喧嘩して、真剣に泣いた。

真剣に悩んで、真剣に向き合った。

きくは、嘘を許さなかった。

思い通りにならず、コノヤローっと思いながら、

でも「可愛いね」なんて言葉でてごまそうったって、

きくは、そんな嘘を見事に見抜いた。

その反面、私が心の底から、願った事は、

きくは、必ず叶えてくれた。

そんな時は、心の底から喜び合った。

 

きくは、凄い猫だった。

凄く繊細で、凄く美しくて、凄く正しくて、

凄く強くて、凄く頭が良くて、凄く情が深くて、

凄く、凄く、私の自慢の猫だった。

 

そんな凄い猫だったから、

こんな私の所に来ちゃって、ほんと、ごめん。

15年、私はきくに、何度も言った。

結局、最期も謝った訳だが、

きくさん?

お前はこれで、良かったのか?

お前は、私で、良かったのか?

謝ってばっかりで、ごめんな、きくさん。

本当は、お前にも良かったねって、そう言って欲しかったのか?

私はね、お前と会えて、本当に、良かった。

真剣に、そう思う。

10月15日、きく、永眠。